02/09/30

激しい雨の音が私の部屋を包む。
窓の外に視線を向けると、勢いよくアスファルトに叩きつけられる雨が見える。
雨は嫌い・・・
だって・・・雨を見てると・・・
大切な幼なじみの娘を失った日の事を思い出してしまうから・・・
だから雨の日は違う事を考えるようにしている。
そういえば・・・今日はあの日からちょうど8ヶ月が経つんだっけ・・・
私はフッと、壁に掛けられているカレンダーを見た。
そこには8月1日と記されていた。
あの日からちょうど8ヶ月・・・
初雪が舞い降りる海辺の公園で・・・
初めてのキスをしたあの日から・・・


Only Smile 〜虹色の笑顔〜
作:freebird



「唯笑!唯笑!」
「ふにゃぁぁぁ〜〜〜?」
階下から私を呼ぶ声が聞こえる。
もう・・・お母さん・・・休日の朝から何なのよぅ・・・
「唯笑!唯笑ぇ!」
騒がしく階段を駆け上がってくる音が聞こえる。私を呼ぶ声も、こころなしか切羽詰った声に聞こえる。
「うぅ〜〜〜?」
しかし私は、そんな母の焦燥を混ぜた声よりも、今この休日の朝をいかにゆっくりと過ごすかの方が大切
だった。
寝返りをうち、布団の中に体を完全に埋める。
「唯笑!!」
勢いよく扉が開け放たれ、母が入ってくる。
唯笑・・・何か怒られるような事したかなぁ・・・?
私は呑気にそんな事を考えながら、おそらく次に襲いかかってくるであろう怒鳴り声に備える。
しかし・・・その後私に向かってかけられた言葉は、全くもって予想に反した言葉だった。
「唯笑・・・みなもちゃんが・・・」
「―――!」
みなもちゃん・・・!?
聞きなれた友達の名前―――しかし今の私には、一瞬のうちに眠気を吹き飛ばされるほど重大な意味を持
った名前だった。
私は勢いよく起き上がり、開け放たれた扉の前に焦燥を浮かべた表情で立ち尽くしている母を凝視した。
「みなもちゃん・・・!?みなもちゃんが・・・どうしたの!?」
私は自らが問いかけた質問の答えを、おそらく知っていただろう・・・
しかし・・・私はそれを信じる事が出来なかった。
「みなもちゃんが・・・」
母の言葉の最後の部分を、私は最初、理解出来なかった。
理解しようとしなかった。
それが真実であることを、私は知っていた筈だった。
だけど・・・私は理解したくなかった。
真実を拒絶しようとした。
私はその真実を―――母に否定してもらうという淡い期待を持っていたのだろう―――自らの口で真実を
言葉にして繰り返した。
まるで―――その真実を吐き出すかの様に・・・
「みなもちゃんが・・・亡くなった・・・?」

「みなも・・・ちゃん・・・」
私の目の前には大きな棺が置かれていた。
そして、その棺の大きさには少し不釣合いな小さな体の少女が、棺の中に横たわっていた。
その体は酷く痩せていて、いかにも彼女が生前、病弱な少女であった事を物語っていた。
しかし・・・
その少女はそんな衰弱した体とは裏腹に、あまりにも安らかな笑顔を湛えていた。
彼女は間違いなく死んでいる。
それなのに、まるで突然起き上がって、またいつもの笑顔でいつものように話しかけてくれる―――そん
な錯覚を覚えてしまうほどその少女は生き生きとした笑顔を湛えていた。
その笑顔が私に全てを教えてくれた。
そっか・・・みなもちゃんは・・・幸せの中で眠りにつけたんだね・・・。
大好きな・・・大好きなともちゃんの傍で・・・安らかに眠る事が出来たんだね・・・。
信君は・・・私と交わした約束通り、智ちゃんを説得してくれたんだね・・・
そんな事を考えていた私は、視界に一人の少年の姿を捉えた。
棺の周りにはおそらくみなもちゃんの親類の人達だと思われる人々が立ち尽くしていた。
その人々は、例外無くその顔に酷く悲しそうな表情を浮かべ、静かに泣き続けていた。
そんな人々の中、その少年だけは、空ろな双眸でみなもちゃんが横たわるその棺を凝視していた。
私はその少年に声を掛けた。
「智・・・ちゃん・・・?」
しかしその少年―――智ちゃんは私の掛けた声にまるで無反応だった。
棺の中のみなもちゃんを凝視するその無表情すぎる顔は、そこにいる誰よりも悲しそうに見えたのは、私
の唯の勘違いだったのだろうか?
いや、そんなわけは無い。
彼が一番悲しい筈だから。
自分の腕の中で、かけがえのない大切な人が永遠の眠りについたのだから・・・。
それに・・・失ったのは今回が初めてでは無いから・・・
「智ちゃん・・・」
相変わらず無表情な表情で、私の掛けた声にも反応を見せない智ちゃん。
「智ちゃん!」
「・・・ん・・・?ああ・・・唯笑か・・・」
強い語調で叫んだ私の声に、やっと反応を見せた智ちゃんは、その視線を、棺の中のみなもちゃんから私
の方へと向けた。
「・・・よう・・・来てたのか?・・・どうした?唯笑・・・」
私を見つめる彼の双眸は無感情の色を映し出していた。
その瞳が、私には酷く悲しく見えた。
「う・・・ううん・・・何でもないよ・・・」
果たしてその時、私はどのような表情をしていたのだろうか?
自分としては出来る限りの笑顔を作ったつもりだったのだけど・・・
きっとその笑顔はとてもぎこちないものになっていただろう・・・

あの日―――信君は私との約束通り智ちゃんを説得してくれた。
そして智ちゃんもその信君の言葉で目を覚まし、みなもちゃんの所に行く事を決心した。
そこまでは良かった・・・
そこまでは良かったのに・・・
信君との電話の直後、智ちゃんのもとに一人の来訪者がやって来た。
―――みなもちゃんだった・・・
彼女は酷く衰弱した体で病院を抜け出し、11月の冷たい空気に包まれた夜の藍ヶ丘の街を、唯一人、智
ちゃんの家へと向かったのだ。
智ちゃんは自分の家に訪れた病弱な少女を説得し、病院へと連れ帰ろうと試みた。
―――しかし、みなもちゃんはそれを固く拒んだ。
おそらく・・・彼女は自分の命にはもう時間が無い事を悟っていたんだろう・・・
そして彼女は智ちゃんにある一つの願いを伝えた・・・
『―――夜の海に連れて行って下さい・・・』
かつて二人の間で交された、その約束を・・・
そして智ちゃんは、その約束を叶える為、みなもちゃんを背負って夜の海へと向かったのだ・・・

―――11月30日・・・
11月最後の日だけあって、北風の吹きつける肌寒い夜だった。
火葬場からの帰り道・・・すっかり暗くなった藍ヶ丘の街を、私達は歩いていた・・・
空を見上げれば、オリオン座が輝く冬の夜空が広がっていた。
私と私の少し前を歩く智ちゃんの間には、重苦しい沈黙が延々と張り詰めていた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・ねぇ、智ちゃん・・・」
「・・・・・・ん?」
「寒い・・・ね・・・」
「・・・ああ・・・そうだな・・・」
智ちゃんは私の方を振り向こうともせずに返した。
そのため私は彼の表情をうかがい知る事が出来なかった。
もっとも・・・私も自分の表情をあまり彼には見せたくなかったのだが・・・
沈黙したまま秋の終わりの夜道を歩く。
ふと視線を移すと、海沿いの公園が見えた。
・・・昔から多くの想い出を創り上げてきた公園・・・私と智ちゃんと彩ちゃんでよく遊んでいた公園・・・
そして―――私と智ちゃんとみなもちゃんの三人でオチバミをした、想い出の公園・・・
「・・・ねぇ、智ちゃん・・・」
「・・・・・・ん?」
「公園に・・・寄っていかない?」
何故私はそんな提案をしたのだろうか?
それは解らない・・・けど・・・気付いたらそんな提案をしていた・・・
「・・・・・・」
智ちゃんは振り向く事無く立ち止まり、しばらく黙ったまま考えていた。
「・・・ああ・・・」
横顔だけをこちらに向けて、彼は微かに頷いた。

今の時間は分からなかったが、少なくとも、漆黒の帳が舞い降りた夜の公園は私達以外には誰もいなかっ
た。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
誰もいない静かすぎる夜の公園を、私達は一言も喋らぬまま歩いていた。
やがて、私は一本の大木に辿り着いた。
―――三人でオチバミをした、想い出の場所―――そこがこの大木の前だった。
私は不意に足を止め、目の前の大木を凝視した。
みなもちゃんとの想い出が甦る。
自然に・・・涙が溢れてきた・・・。
ダメだよ・・・唯笑が泣いちゃ・・・
智ちゃんだって悲しいハズなのに・・・唯笑だけ泣いてちゃ・・・
唯笑は・・・唯笑は唯、笑ってなくちゃいけないのに・・・
こんな時だからこそ、笑って智ちゃんを慰めなくちゃいけないのに・・・
智ちゃんを元気にしなくちゃいけないのに・・・
唯笑には・・・慰めの言葉なんて思いつかないんだから・・・
私は、かつて智ちゃんに言われた言葉を思い出した・・・
『唯笑ちゃんは、唯、笑ってなくちゃいけないんだよ・・・』
そうだよ・・・
唯笑って名前なんだから・・・
唯笑は唯、笑ってなくちゃ・・・
だけど涙は止まらない・・・
賢明に涙を堪えようとしても、私の気持ちとは裏腹に涙は絶えず溢れ出てくる・・・
いや・・・それは私の感情に一番正直な行動だったんだと思う・・・
そんな私の両肩に、智ちゃんの両腕が、優しく回された。
そして、智ちゃんは私の耳元で優しく呟いた・・・
「泣くなよ・・・」
それは非常に優しい声だった。
「お前が泣いたら・・・みなもも悲しむだろ・・・?」
「・・・え?」
「悲しむ必要なんて無いんだよ・・・みなもも・・・彩花も・・・いつまでもオレ達の傍にいるんだから・・・」
「・・・・・・!」
「みなもと彩花との想い出は永遠に色褪せる事なんて無いんだから・・・」
「・・・智・・・ちゃん・・・」
両肩に回された彼の腕に力が入る。それと共に彼の体が小刻みに震える。
「みなもと過ごした2ヶ月は・・・オレにとって・・・最高の・・・2ヶ月・・・だったから・・・」
智ちゃんの声は震えていた。
「だから・・・悲しくなんか無いんだよ・・・みなもは・・・みなもはオレに・・・そう教えてくれたん
だよ・・・」
「・・・智ちゃん・・・」
私はそっと振り返る。
智ちゃんは、自らが紡いだ言葉とは裏腹に涙を流していた。
「・・・智ちゃん・・・!」
「だから・・・悲しくなんかないんだよ・・・みなもも・・・彩花も・・・いつまでも・・・オレ達の傍
にいるから・・・オレ達の中で彼女達は生き続けているんだから・・・だから・・・涙なんか・・・流
しては・・・いけないんだよ・・・」
智ちゃんは必死で涙を堪えていた。
私と同じように・・・
だけど・・・涙が止まる筈は無かった・・・
そうだ・・・
智ちゃんは・・・必死で涙を堪えていたんだ・・・
今迄ずっと・・・悲しかった筈なのに・・・
みなもちゃんの為に・・・
みなもちゃんを悲しませないように・・・
必死で堪えていたんだ・・・
気が付けば、私は智ちゃんを強く抱きしめていた・・・
「そうだね・・・みなもちゃんと・・・彩ちゃんの為に・・・泣いちゃいけないよね・・・」
冷たい風が、私たちを優しく包む。
「でもね・・・唯笑思うんだ・・・今だけは・・・きっと二人とも許してくれるよ・・・」
その風が、私に何かを囁いている様に聞こえた。
「泣いてもいいよって・・・今・・・思いっきり泣いて・・・泣いて・・・後で泣かなくてもいいように
って・・・」
その風の囁きが、こころなしかみなもちゃんの声に聞こえた。
「そう・・・言ってくれると思うんだ・・・彩ちゃんも・・・みなもちゃんも・・・」
私も涙が溢れ出てくる・・・
だけどもう・・・堪えようともしなかった・・・
泣く事でみなもちゃんの死を受け入れる事になったとしても・・・
ううん・・・受け入れなくちゃいけないんだ・・・
彼女はもう死んでしまったけど・・・
もう2度と会えないけど・・・
それでも私達のすぐ傍にいるから・・・
私達の心の中に生き続けているから・・・
ずっと・・・ずっと・・・
だから・・・
今・・・泣こう・・・
みなもちゃんと・・・彩ちゃんが・・・
私達の大切な・・・かけがえのないお友達だったよって・・・
その・・・証に・・・
私達はそのまま、静かにキスをした・・・
私は初めてのキスを智ちゃんと交わした・・・
その時、私たちの周りに、小さな白い塊が、ゆっくりと舞い降りてきた。
「・・・雪・・・」
私は、頭上に広がる漆黒の夜空から舞い降りてくるその白い塊を見上げながら呟いた。
「・・・ホントだ・・・今年は早いな・・・」
智ちゃんも同じように空を見上げながら呟いた。

11月最後の夜―――初雪が舞い降りる想い出の公園で、私達はもう一度、キスをした・・・



8月9日―――
今日も相変わらずの暑さで、アブラゼミやミンミンゼミが混声合唱を奏でている。
「にんにんねこぴょ〜〜〜ん♪」
真夏の太陽が照り付けるグラウンドの真ん中で、しゃがみ込む私の目の前に、可愛い笑顔を作っている一
匹の猫がいた。
「ぷにぷに〜〜〜♪」
「おい、唯笑」
「ぷにぷにぷに〜〜〜♪」
「おい、唯笑!」
「ぷにぷにぷにぷにぃ〜〜〜〜〜♪」
「唯笑!!」
ゴスッ!
猫と戯れていた私の頭に、平べったい何かが思いっきり振り下ろされた。
「いったぁぁぁ〜〜〜い・・・何するんだよぉ、智ちゃん」
私は振り返り、背後にいる智ちゃんの姿を見つけ、両手で頭を押さえながら抗議する。
しかし智ちゃんは特に悪びれた様子も無く、右手にファイルの様な物―――おそらく先程私の頭を叩いた
凶器であると思われる物を持ってそこに立っていた。
「呼んでも返事もしない奴が悪いんだろうが」
「何だよぉ〜〜いつも私の事無視してるくせにぃ〜〜〜」
む・・・と口籠る智ちゃん。
ま、図星だからね。
しかし・・・
ゴスッ!
「みぎゃっ!」
再び私の頭部に痛みが走る。
「何するんだよぉ!何度も何度も叩かないでよぉ、智ちゃん!」
「何度も何度もって・・・まだ2回だろ。大体お前、学祭の準備サボって何してんだよ」
「だってぇぇぇ〜〜〜♪久しぶりなんだもぉ〜〜ん♪ニンニンネコピョ〜ン♪」
ゴスッ!
三度走る頭部の痛み。
もはや抗議する事も出来ず、私はその場に蹲ってしまった。
「ったく・・・ああ、それよりさ、信のヤツが来てたぜ、教室に」
「え?信くんが!?」
久々に聞いた友達の名前に、私は頭部の痛みも忘れて飛び上がった。
「ああ、何でも音羽さんに手伝いを頼まれたらしいんだ。オレはもう挨拶済ませたから、お前、挨拶しに
行ってこいよ」
「うん、そだね。じゃ、行ってくるね」
そう言って私は校舎に向かって走り出した。
「ああ、挨拶もいいけど・・・ちゃんと学祭の準備もしろよな」
そんな言葉が後方から聞こえたような気がしたけど・・・
気のせいだよね。
うん、気のせいだ。

私が校舎内の廊下を走っていると、前方から見覚えのある少女が走ってきた。
その少女は、何故か酷く慌てた様子だった。
「希ちゃん!?」
私はその少女―――相摩希に話しかけた。
「あ・・・今坂さん・・・?」
少女は元気の無さそうな表情と声で応えた。
「どうしたの?希ちゃん。何か・・・酷く慌ててたみたいだけど・・・それに少し元気無さそうだし・・・」
「あ・・・いえ・・・何でも・・・ありません・・・」
彼女は曖昧な返事を残し、再び走り去っていこうとした。
「希ちゃん!?」
「何でも・・・ありません・・・!気にしないで下さい・・・!」
走り去ろうとする希ちゃんを呼び止めようとしたが、そのまま振り返る事も無く、彼女は走り去っていっ
てしまった。
希ちゃん・・・どうしたんだろう・・・
ショートカットのその少女は廊下の奥へと消えていった。
いつも元気そうな希ちゃんのあんな顔を見たのは初めてだった。
私の胸の中で小さな不安が燻る。
「あ、唯笑ちゃん!」
突然、聞き覚えのある声が私を呼んだ。
方向へと視線を向けると、そこには懐かしき級友、稲穂信の姿があった。
「あ、信君!ひさしぶりだねぇ〜〜〜」
「ああ、4ヶ月振りだからなぁ〜〜〜。どうよ、相変わらず智也とはうまくいってるか?」
「ん〜・・・でも智ちゃん酷いんだよぉ!さっきも3回も殴られたんだよぉ!」
「あ〜・・・だからってまた俺に相談しないでくれよ・・・」
「え〜〜・・・少し位聞いてよぉぉ〜〜〜」
懇願する私から逃げようと思案している模様の信君。
もう・・・少し位唯笑の話聞いてよぉぉ〜〜
「ん〜〜・・・ああ!イナケン!!準備終わったから買い物いこうぜ!」
困り果てた表情をしていた信君は、彼の後ろからやってきた見慣れない少年を見つけ、慌てて声を掛ける。
ああ〜〜、逃げられるぅ〜〜〜
「何ぃ!?もう帰るだあ!?ちょ・・・ちょっと待てよぉ、イナケ〜〜〜ン」
イナケンと呼ばれたその少年は信君に何か言った後、信君の制止の声も聞かず踵を返した。
何だかよくわからないけど・・・とにかくこれで信君は逃げられない!
さあ〜〜〜て、唯笑の話を聞いてもらうよぉ〜〜〜
勝利を確信した私は、出来るだけにこやかな笑みを作って信君に近寄る。
その笑みに何を感じ取ったのか、信君は苦笑いを浮かべながら後ずさる。
そして・・・
「あは・・・あはははは・・・・・・ごめん!唯笑ちゃん!!」
あろうことか、信君は踵を返し、先程の少年が走って行った方へと猛ダッシュ!
「あ〜〜〜、にげたぁぁぁ〜〜〜!!」
「また今度!また今度ということでぇぇぇ〜〜〜」
そう言いながら、もの凄いスピードで廊下を走り去っていく信君。
「ま・・・待ってよぉぉぉ〜〜〜」
私も彼の後を追って走り出す。
「どうした!?唯笑!!」
突然目の前に現れる智ちゃん。
「あ、智ちゃん!信君を捕まえてぇぇぇ〜〜〜」
「何!?よし!わかった!!」
即座に理解を示した智ちゃんは、私と共に、廊下を走り去っていく信君を追いかける。
「マテヤコラァァァーーーーーーーー」
「何ぃ!?と・・・智也ぁ!?おのれぇぇぇ・・・援軍を呼ぶとは卑怯だぞぉ唯笑ちゃん!!」
「突然逃げ出す信君が悪いんだよぉぉぉ〜〜〜」
「状況が掴めんが・・・とにかくマテヤコラァァァーーーーー」
廊下を走る私と智ちゃんと信君。
それはまるで4ヶ月前の日々が戻ったような、そんな感覚を覚えた。
だけど・・・だけど私は知っている・・・
過ぎ去った日々は2度と戻らない事・・・
過ぎ去った想い出はいつか色褪せる事・・・
だけど―――それを悲しむ必要は無い事・・・
消えた想い出の代わりに、新しい想い出を創り上げていけばいい―――そして・・・
かけがえのない人は、いつでもすぐ近くにいる事―――それを彼女達が教えてくれた・・・
今は亡き・・・かけがえのない2人の少女達が・・・

私は廊下の窓から外を眺めた。
そこには突き抜けるような青く澄んだ空が広がっていた。
そうだね・・・もう・・・雨はあがったから・・・
悲しみの雨はもう・・・あがったから・・・
今はこの青空に・・・虹色の笑顔を咲かせばいい―――そう教えてくれたよね、みなもちゃん・・・
今なら唯笑・・・咲かせられると思う・・・虹色の笑顔を―――



          今は泣いてもいいんだよ
          たくさん泣いてもいいんだよ
          泣いて泣いていつの日か
悲しみの雨が上がるとき
          この広い広い青空に
虹色の笑顔、咲かせよう


FIN




あとがき

・・・いかがでしたでしょうか?
みなもEDアフターストーリー第3弾唯笑編『Only Smile 〜虹色の笑顔〜』
それでは今回のツッコミ所を(爆)
1. 唯笑が別人(爆)
2. みなもが今回も少ししか喋らない(死爆)
・・・ええ、唯笑別人です。心の中の一人称「私」だし。・・・だってねぇ・・・難しいですよ、唯笑の
一人称は・・・彼女の思考は常人には理解し難いですし。まぁ、その前に私は常人なのかという突っ込み
は無しで。
そして・・・みなも・・・(汗)まぁ、今回は少し喋らせる事が出来たので・・・。何処かは自分で推理
してみてください(マテ)
作品の内容については、みなもED後の唯笑と智也のストーリー、そして2nd相摩編の学祭準備スト
ーリーの裏側の二つから創り上げました。何故2nd相摩編を出したかというと・・・まぁ、私がソウマ
ーですからね・・・(核爆)それに想君を完クリしたら、相摩EDアフターストーリーを創る予定なので・・・
まぁ、その時の伏線って事で。・・・全然伏線になってないと思うけど・・・(爆)
さて、次回作みなもEDアフターストーリー第4弾は、待望(激違)みなも編!!
『Lost Memories 〜失われた想い出〜(仮)』です!
でわでわ、freebirdでした!



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