ある夏の、雨の日の・・・
作:フェレット




ザーーー・・・・・・・

 雨が音をたてて降り続いている。
 ある田舎の、バス待ち用の小屋の屋根を、勢いよく叩いている。
 その中に、二つの人影がある。
 一つは、形容する特徴も少ないどこにでもいそうな男。
 一つは、長い黒髪が印象的な、おそらく美人の部類に入るだろう女性。
 二人の姿が、小さな小屋の中にあった。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

 この沈黙は、すでに20分は経過しているだろう。
 二人が待つのはバスではなく、雨の上がる時。
 1日3本しかないバスは、既にもうない。
 二人は、その3本目のバスに乗っていたのだ。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

 無言。
 雨達の奏でる音楽だけが、この場を支配している。
 会話もなく、ただ雨の止むときを待つ。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

 8月の通り雨かと思われたのかもしれないが、雨は一向に止む気配はない。
 
ゴソゴソ・・・

 男は、脇においてあった荷物から何かを取り出そうとしている。
 そして、目当てのものが見つかりそれを取り出す。
 コンビニに売っているようなおにぎりだった。

 ガサガサ・・・

 男は無言で包装を破る。

 パリッ

 海苔が乾いた音を立てる。
 女性は黙って、降りしきる雨を見つめていた。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

 男はそれを食べ終えると、また自分の荷物を探り始めた。
 そして、今度は2つのおにぎりを取り出す。

「ほら」
「え?」

 男は右手に持ったおにぎりを女性に差し出す。

「やるよ」
「・・・いえ、いいです」
「遠慮する必要はないけど」
「そういう訳じゃ・・・」
「俺一人で食ってると気分悪いし。貰ってくれ」
「・・・はい。あの、ありがとうございます・・・」

 女性はそういっておにぎりを受け取った。
 男はおにぎりを受け取られるとすぐに自分のおにぎりの包装を破く。
 女性の方も同じように包装を破いた。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

 二人は無言のままおにぎりを食べる。
 雨の音が、その存在を誇示するかのように小屋の中に響いた。
 僅かに和らいだかと思われたこの雰囲気が元に戻ってしまったようだ。

「・・・あの、どちらまで行かれるんですか?」
「ん、俺か?」

 男がおにぎりを食べ終わり、ゴミを円柱状の灰皿と一緒になっているゴミ箱へと入れて
 いると、今度は女性の方から男に話し掛けた。

「どこまでって言ってもな・・・目的地って別に無いし。
 休み使って気ままに一人旅してるだけ。あんたは?」
「私は、この街に祖母の家があるので・・・」
「へぇ・・・でもそれなら、そのうち迎えでも来るんじゃないか?」
「あ、それはないと思います」
「どうして?」
「私、行くこと伝えてませんでしたから」
「はぁ・・・?ま、俺には大して関係ないけどな」
「ふふ・・・でも、いいですね。私も一人旅、してみたいな・・・」
「機会があったらしてみればどうだ?悪くないと思うぜ」
「ええ、いつかしてみます」

 女性はにっこりと微笑んだ。
 男は照れたのか、顔を背けてしまった。

「ちっ。どうせ俺は温泉に行くんだし、濡れたってかまわねぇから突っ切って行くか?」

 男は降りしきる雨を見つめ悪態をつく。

「駄目ですよ。お一人で旅行されているのに風邪を引いてしまったら大変ですよ?」
「俺は今まさに雨の中に飛び込もうと考えるような馬鹿だから風邪はひかないんじゃないか?」
「そんな筈ないですよ。もう少し、お話でもしながら待ってみませんか?」
「あんた、何気に俺で暇つぶそうとしてないか?」
「え?そ、そんな・・・!」
「・・・冗談だよ。頼むから真面目にとらないでくれ」

 男は少し呆れたように言った。

「あ、す、すみません・・・」
「あ〜、俺が悪いんだし気にするなよ。
 俺は路峰 葎。あんたは?」
「あ、私は夕凪 静奈と言います」
「へぇ、良い名前だな。あんたによく合ってる」
「ありがとうございます」

 女性・・・静奈は嬉しそうに微笑む。
 葎はどうもこの笑顔が苦手らしく、また顔を背けている。

「夕凪は自分の名前、好きか?」
「はい、とても。あと、私のことは静奈でいいですよ」
「わかった。俺のことも呼び捨てでいいから。
 でも、いいよな。自分の名前を好きになれて』
「葎・・・さんは、自分の名前がお嫌いなんですか?」

 やはり初対面の男をいきなり呼び捨てにするのは恥ずかしかったのか、静奈は葎をさん
 付けで呼んだ。
 葎は大して気にも留めていないようだが。

「まぁ、あまり好きじゃないな。葎ってさ、雑草みたいなものだろ?
 道端に生えてる雑草・・・そんなイメージを持っちまってさ」
「そんな・・・きっとご両親は、そんなつもりで名前を付けたのではないと思います」
「そうかもしれないけど、何でか何てわかんねぇよ、俺には」

 そう言って葎は寂しそうな笑いを浮かべる。
 静奈もあまりこの話題を続けたくないと思ったのだろうか、話題を変えることにした。

「あの、今まではどんな所をまわってきたんですか?」
「ん?そうだな・・・大体こんな田舎ばっかりだよ。
 有名な観光地だとなんか楽しみが無いからな。
 そこに何があるか解らない方が新鮮で楽しいと思うよ、俺は」
「そうなんですか・・・変わってるんですね」
「まぁな。自分でも変わってるとは思う」
「でも、おかしくは無いですよ」

 雨は、少しずつ小降りになってきていた。
 止むまでにはそれほど時間は掛かりそうにない。

「雨、弱くなってきたな・・・」
「あ、本当。よかった」
「ああ、まぁ、ずっと降り続けるよりは、な」

 そう呟いた葎の表情は、少し陰りがあった。
―――もう少し止まなくても良かったんだけどな。
 僅かに寂寥を感じながら、二人は静かに止んでいく雨を見つめていた。


「雨、止みましたね・・・・」
「そうだな・・・」

 数分後、空から降りてくる雫は消え、雨雲は遠く見える山の方へと去っていった。
 葎は荷物を右手に立ち上がり、静奈もそれを追う様に立ち上がる。
 スッと、葎は右を指差し、

「俺、こっちだけど」

 そう、静奈に告げた。

「あ、私もです」

 どこか嬉しそうに、静奈は答えた。
 葎も、ふっと小さく、笑った。
 同じように、どこか嬉しそうに。

「じゃあ、もう少し話しながら行くか?」
「はい」

 二人は歩き出す。
 小さな日常の、小さな出会い。
 何気ない、過ぎ行く時間の中の、僅かな刻。
 それでも。
 2度とは来ない、大切な時間だから。

「葎さんの名前の意味、少しだけ解った様な気がします」
「ん、どんな意味?」
「ふふ・・・きっと・・・」

 どんな自分でも構わない。
 ありのままに、そこに居る・・・。








           あとがき(言い訳?)です〜

ふみぃ〜!なんなんだぁ〜〜。
地味〜!暗い〜!( ̄□ ̄;
そんなこんなの、フェレットですぅ〜。
ちょっとオリジナルっていうか、そんな感じのSS書こうと思ったら〜、まぁなんだかこ
んなお話が出来ちゃいました〜(^−^;
なんとなく書いちゃった話ですんで〜、あまり楽しくないかもしれないと思います〜。
しかも最後は手抜きバレバレな感じですね〜。反省・・・。
せめてこれの1.5倍は書きたかったんですがもうキャラに何を話してもらえばいいのやら・・・
解りにくいお話だと思います〜。ここまで読んでくださった方、申し訳ありませんです〜。そして、ありがとうございます〜。
それでわ、これにて終わりです〜。さよならですぅ〜(⌒▽⌒ノ



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