気付いてしまった貴方への想い・・・。
自分ではこの気持ちを抑えることが出来ない。
貴方の声を姿を見るたびに胸が大きく高鳴る・・・。
伝えたいこの想い・・・。




『始まりは突然に・・・』
                             作:Iku



この学園に転校をしてきて7ヶ月。
それなりに色々ありましたが私が本当の私でいられる場所を見つけることも出来ました。
私の抱いていた印象とはだいぶ違っていたクラスの人たち・・・。
その中での生活が私を解放してくれました。
一番私のことを気づかっていただいて、いろいろとお話をしてくださった三上さん。
貴方がいなかったら・・・今の私はここにいないかもしれません。
三上さん、貴方には感謝しています。
私を救ってくれた、貴方に・・・。
そんなある日の出来事・・・・。

「双海さ、この花の名前知ってる?」
突然聞かれた花の名前。
それは・・・私と同じ名前・・・紫苑。
「はい・・・」
薄紫色をした小さな花・・・。
放課後の図書室でのこと。
いつものように図書の仕事をしていた私に、クラスメートの三上さんが
声を掛けてきました。
「紫苑と言う名の花です」
「あっ・・・双海と同じ名前なんだ・・・そうか」
「はい・・・」
詩音は、智也が何を考えて聞いてきたのか測りかねていると。
「実はさ・・・ちょっと照れくさいんだけど・・・」
持っていた鞄の中から小さな袋をとりだして。
「少し早いけどプレゼント」
智也は袋を詩音に渡す。
首を傾げながらも受け取る詩音。
「プレゼント?」
「そう。誕生日の・・・」
もうじき2月3日・・・私の誕生日。
クラスのお友達(三上さん、今坂さん、音羽さん、稲穂さん)が祝ってくれると言う
ことで明日は、私の家にお招きして簡単なパーティをする予定になっています。
でも、どうして今日にプレゼントを持ってこられたのでしょうか?
「大した物じゃないんだけど・・・みんなの前で渡すのがちょっと気が引けたから・・・」
渡された袋を開けてみる詩音。
袋の中には紙切れが2枚。
短冊状に切られた紙。上の方に小さなリボンが付けてある。
紙の表面には押し花が貼ってある。
その花は・・・紫苑。
誕生日のプレゼントに私と同じ名前の花の栞。
詩音は胸の奥で『きゅーん』と締め付けられる想いがした。
なぜか目頭が熱くなるのを感じていた。
「これを私に・・・ありがとう御座います」
詩音は栞の入っていた袋を胸の前に大事そうに抱えて、お礼を述べた。
「あははっ、本当はもっとちゃんとしたプレゼントを渡したかったけど、今月ピンチでさ
双海はいつも本を読んでいるから栞なんかどうかなと思って、作ってみたんだ」
智也は少し照れながら詩音に話した。
「いいえ、そんなことありません。とっても素敵なプレゼントです」
詩音は少し頬を染めて智也を見つめる。
「そう言って貰えると、作った甲斐があったかな」
智也は頭を掻きながら詩音の視線から目をそらした。
ちょっとした沈黙・・・。
でも不快な静けさではなく穏やかな時間の流れのように感じられた。
照れる様子の智也を眺めている詩音。
自分の胸の鼓動が早くなっているのを感じている詩音。
智也に対して友達以上の感情を抱きつつある詩音。
元々はお節介な人と思っていたのが智也の優しさに触れて、話をしているうちに
うち解けていった詩音。
今の詩音がクラスに馴染むことが出来たのも智也のお陰。
詩音は智也に好意的な気持ちを感じていた。
私、変?三上さんを見ていると胸が苦しくて・・・辛い苦しみではなくて。
もしかして・・・これは・・・恋い?私、三上さんのことが好き?
急に恥ずかしくなって、顔を手で覆って俯いてしまう詩音。
たぶん、私の顔は真っ赤でしょうね。恥ずかしい。
詩音の行動を目にした智也は。
「双海、どうした?具合でも悪いのか」
詩音の顔を覗き込もうとする智也。
詩音は顔を横に振って。
「だ、大丈夫です。何でもありません」
俯いたままで声だけを出す。
明らかにいつもの詩音とは違う。
智也は執拗に詩音に問いかけてくる。
「ホントか、俯いたままじゃないか。保健室に行くか」
詩音に近づき肩に触れた途端、『ビクッ』と肩をふるわせる。
瞬間的に手を引く智也。
「おい、大丈夫か」
智也もそれ以上は詩音に触れなかった。
智也に触れられた肩が熱く感じられる。
詩音の鼓動の早さは最大になった。
私、このままでは・・・。
「ごめんなさい。少し一人にしていただけますか?」
何とかそのことだけを智也に伝える詩音。
詩音のことが心配な智也はどうした物かと考えたが・・・。
声だけを聞くとそれほど体調が悪いようには感じられなかったので
詩音の申し出を了承することに。
「わかった。奥の席にいるから何かあったら呼んでくれ」
智也がそう告げると。
詩音は俯いた状態で頷いている。
智也はそのまま奥の席に向かった。

智也の遠のく足音を聞きながら落ち着こうと深呼吸を繰り返す。
私・・・智也さんが好き。
ハッキリとした答えが頭に浮かぶ。
自分の気持ちに偽りのないことを感じる。
自分の気持ちを整理すると急に落ち着いてきた。
呼吸も整って、鼓動もいつも通りに。
脳裏に今坂さんの姿が浮ぶ。
「ご免なさい。今坂さん。私は自分の気持ちに正直に向かい合います。
自分の気持ちを隠すことは出来そうもありません」
そう呟くと席を立って、智也のいる奥の席へと向かった。
智也は机に伏せて寝ている様子。
また寝ていらっしゃる様ですね。
詩音は静かに智也に近づいて。
「智也さん、起きてください」
「・・・・・・・」
起きそうもない智也。
もう一度声を掛ける。
「智也さん起きて」
反応がない。
今度は肩を揺すりながら起こす。
まだ起きそうもない。
「困りました。どうしたら起きていただけるのでしょうか」
少し考える詩音。
「あ、良い考えがあります」
周りの様子を確認する詩音。
図書室には智也と詩音の二人だけ。
「眠り姫は王子様の口づけで目覚めました。その逆も効くのでしょうか?」
そっと智也に近づく。
また、鼓動が早くなってきているがさっきとは違った感じで苦しさがない。
詩音は構わず智也の頬に唇を寄せていく。
「チュッ♪」
軽く触れるキス。
智也は寝ぼけながらも詩音の唇が触れたところを手でなぞる。
次の瞬間、電気でも走ったのか飛び上がるように起きた。
余りにも勢いよく起きたので、座っていた椅子ごと後ろにひっくりがえる。
「痛っ・・・」
頭をなぜながら起きあがる智也。
「ふふふっ・・・・」
おかしさの余り笑っている詩音。
そんな詩音の姿を見て。
「あぁ〜、笑ったな」
「だって、おかしんいだもの・・・です」
訂正しながら笑い続ける詩音。
「今、何かしなかった?」
「・・・・・・・・」
笑って首を振る。
「夢かなぁ〜。それにしてはリアルな夢だったな」
と、言いながら詩音をちらっと見る。
なぜか、顔を赤くして口元に手を添えている詩音。
「ホントに何もしていない?」
もう一度念を押すように聞くと。
「何もしていません。ちょっと・・・」
頬を赤く染めながら微笑む。
何となく頬の当たりを触る智也。
なにやら柔らかな感触だけが残っている。
詩音と目が合うとこれ以上赤くならないと言わんばかりに真っ赤になっている。
「ちょっと?」
「はい・・・」
「まさか・・・」
あることに思い当たる智也。
「ハイ、そのまさかです」
ニコニコ微笑む詩音。
「なんで?」
「智也さんがすぐに起きてくれないからです♪」
「だからって・・・あれ?智也さん?」
「いけませんか?智也さんと呼んでは・・・」
上目づかいで見つめる。
返事が出来ない智也。
「智也さんも私のこと、双海じゃなくて詩音と呼んでください」
まだ固まっている・・・。
「良いですね?智也さん」
「ああ・・・」
やっと声が出た。
智也の応えに微笑む詩音。
「でも、双海じゃなくて、し、詩音?どうしてこんな事・・・」
「お聞きになりたいですか?」
まっすぐに智也を見つめてくる。
「悪戯にしては・・・向こうでは日常なんだろうけど」
詩音は、海外生活が長いので日本人の感覚では理解しにくいところもある。
「悪戯でもこんな事はしません」
真剣な顔つきになって・・・。
「じゃ・・・・」
「自分の気持ちに素直に従ったまでです」
「気持ち?」
「はい。私、双海詩音は三上智也さんのことが好きだからです」
ハッキリと言い放つ詩音。真面目に応えていることが伝わってくる。
「俺?」
間抜けな質問を返す智也。言ってしまってからなんてバカなことを言ったのか気付く。
「ハイ、智也さんです。他に何方かここにいらっしゃいますか?」
詩音が俺のことを好き・・・。
まして、さっきは俺の頬に・・・。
俺は・・・詩音のことどう思っているんだ?嫌いか?それはないな。
好きか?どちらかと言えば好きだな。
彩花と間違えたほどだし・・・。
唯、恋愛感情まで抱いているのか・・・・。
確かに、今では明るくなって素直ないい娘。ちょっと天然なところもあるけど・・・。
たまに変な日本語話すし。変わってはいるけど・・・。
まあ、俺のことを好きという事自体変わっているよな。
俺もまんざらではない。好意を持っていなければこれほどまでに付き合ったりはしてこな
いだろう。
俺も何かと図書室に来ているし・・・詩音がいると分かっているから、話をするのが
楽しかったから・・・。詩音のことよく見ていたしな。
一番は最初に見た笑顔だな。あの笑顔を見たときは苦労した甲斐があったと心から
想った。
そろそろ前に進んでも良い頃だよな。
「智也・・・さん」
不思議そうな顔をして俺の顔を覗き込む。
「わぁっ」
ビックリして後ろに下がる。
「どうかしましたか?」
「いや、ちょっと考え事をしていたから・・・」
上目づかいで俺を見る。
「考えはまとまりましたか?」
微笑みをたたえた瞳で見つめている。
俺の答えを待っているんだな・・・。
「俺も詩音のこと好きだよ」
ゆっくりと近づいてくる詩音。
瞳に涙を浮かべて・・・。
「智也さん・・・」
でも、詩音にまだ言っていないことがある。
彩花のこと・・・俺の幼馴染みで彼女だったこと。
今までそのことを引きずってきていたこと・・・。
このことを隠すわけにはいかない。新しい一歩を踏み出すためにも。
「詩音。聞いて欲しいことがあるんだ」
詩音の表情が変わっていく。
智也さんは、たぶん彩花さんのことを私に話してくれるのですね。
私も周りの方とかから聞いてはいますが・・・。
「彩花さん・・・のことですか?」
「え?どうして・・・彩花だと・・・」
「・・・・・・・」
智也は意表をつかれた感じになったが、気を取り直して
「うん、俺の幼馴染みで、付き合っていたんだ・・・」
それから智也さんは、彩花さんのことを隠さずに話してくださいました。
小さいときからずっと一緒できたこと。
中学の時に付き合い始めたこと。
そして、彩花さんとの永久の別れ。
彩花さんのことで自虐的になっていたこと。
等々・・・。
そして、大きな一歩を踏み出そうと決めたこと・・・。
一緒に歩き出す相手を選んだこと。それが私であること。
このお話を聞いたとき涙が止まりませんでした。
智也さんが背負っていた過去・・・。

私にはとても・・・。
でも、智也さんは自分で自分を信じて壁を乗り越えました。
私が居たからだとおっしゃってくれましたが、私は単に切っ掛けでしかありません。
全て智也さんが自分で決めて決着を付けたこと。
私は、そんな智也さんを信じて付いていくだけです。
私のことを『好き』と言ってくれた。
一緒に歩んでいくことを選んでくれた。
それだけで十分です。
私は智也さんを好きになって良かったと想っています。
彩花さんが愛した智也さん。
同じように愛していけると信じています。
彩花さん・・・貴方の愛した智也さんを取ってしまってご免なさい。
私も貴女に負けないように智也さんを愛していきます。
彩花さんに認められるように・・・智也さんを任せて貰えるようにガンバります。
空の上か私たちのことを見ていてください。
もし、もし二人に何か起こりそうなときは彩花さんのお力を貸してください。
よろしく御願いしますね。

お互いの気持ちを確かめ合った私たちは誕生日を記念日として新たな出発をしました。
私の誕生パーティで皆さんが集まってくれて沢山の言葉とプレゼントを頂きました。
でも一番のプレゼントは・・・智也さん貴方です。
誕生日に私の名前と同じ花を添えたプレゼント・・・。
そして、何よりも嬉しいプレゼント・・・私を好きと言ってくれたこと。
私の思いが智也さんに通じたこと。
今年の17歳の誕生日プレゼントは今まっでに貰った贈り物の中で一番大切で
忘れることの出来ない贈り物になりました。





おわり



-あとがき--------------
久々のSS・・・どんな出来栄えなんでしょうね。
勢いで書いてしまったから・・・。
イラストが描けなくなったので気分転換のつもりで書き出してみたのですが。
詩音ちゃんの誕生日が近いので、詩音ちゃんのSSにしてみました。
今回は智也視線ではなく詩音の視線で書いてみました。
結構難しいですね、これは。
本編とちょっと変わった詩音と智也。
どう感じて貰えたのか緊張しますね。
それでは、御意見、感想批評など遠慮なく頂戴できると嬉しかったりします。

最後に詩音の決め台詞
それでは、ごきげんよう。
                                                     byIku



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