『幼馴染みから・・・』
                             作:Iku


授業終了のチャイムが鳴る・・・。
「今日も一日、眠かったなぁ〜」
自分の席で、欠伸をしている智也。
「と〜も〜ちゃ〜ん」
声のした方を見ると唯笑が笑顔でやってくる。
間のびしたよびかたで俺を呼ぶ・・・。
「・・・・・・・」
無視する俺。
「と〜もちゃん?」
俺の顔を覗き込む。
「・・・・・・・」
「智ちゃん」
怪訝そうな顔をして・・・。
「・・・・・・・」
唯笑は、プクッと脹れて・・・。
「智ちゃん!!」
「おぅ、唯笑か、どうした?」
わざとらしく応える俺。
「・・・・・・・」
今度は唯笑が、黙り込む・・・。
智也をぐっと睨む唯笑・・・。
暫く沈黙・・・・。
さすがにこのままだと、収拾がつかなくなりそうなので、俺がおれる・・・。
「唯笑?唯笑ちゃん?唯笑さ〜ん?」
唯笑の顔の前で、いろいろなことをやってみる。
手を振る、指を鳴らす・・・etc。
極めつけに百面相・・・。
「ぷっ・・・・くくくく・・・」
少し吹き出す唯笑。
ヨシ、もう一息だ・・・更に俺は百面相を続ける。
「きゃっははははっ」
目に涙をいっぱい溜めて笑い転げる唯笑。
俺も一緒になって笑う。
「やだぁ・・・智ちゃんてば・・・変な顔」
笑い続ける唯笑・・・・。
そんな唯笑を見ながら、いつもの表情に戻る俺。
冷めた目で唯笑を見る。
「ねぇねぇ、三上君。良く飽きないね、毎日毎日・・・・」
隣の席の、音羽さんが呆れた顔をして、話しかけてくる・・・。
「えっ」
「同じ事やていて飽きないの?」
「う〜ん・・・」
「俺達にしてみれば、挨拶みたいなモノだから・・・」
「ふぅ〜ん」
無関心と言った表情で、返事をする音羽さん。
「唯笑、いつまで笑っているんだ。HR始まるぞ」
唯笑は、ハッとして、俺に一瞥をくれて自分の席へ・・・。
HRの始まり・・・。
俺は、ボーっとして先生の話なんか聞いていない・・・。
どうせたいした話ではないし、必要ならば唯笑にでも聞けば済むこと。
机に伏せて、終わるのを待つ。
HRの終了・・・。
大きな、のびをして・・・。
「さて、帰りますか・・・」
鞄を持って、帰ろうとすると・・・。
俺の行く手を阻む、1本のほうき。
「はぁ?ほうき?」
差し出されたほうきの先を目で追うと・・・。
唯笑が立っていた。
「智ちゃん、サボろうとしてもダメだよ」
「えっ?なにを・・・・」
一瞬状況が、良く掴めない智也。
「そ・う・じ・当番!」
ぐいっとほうきを差し出す。
「掃除当番?嘘?でしょ」
頭をフル稼働して、いかにこの状況を打破するか・・・。
考え込む智也。
ここは一つ、いつものデマを吹いて逃げるとするか・・・。
「智ちゃん?逃げようとしてもダメだよ。唯笑は、智ちゃんと一緒の当番なんだから」
先に、退路をふさがれてしまった・・・。
この危機をどう乗り越える智也!
ここは正面突破あるのみ!
俺は、出口を見定めて、足の位置を確認。
スタートダッシュを掛けようとした。まさにその瞬間・・・。
後ろから、羽交い締め似合いおまけに右腕を捕まれる・・・。
「音羽さん?俺の腕を放して貰えないかなぁ」
「ダメ」
首を振る・・。
俺は身体を振って、この呪縛から何とか逃れようと試みるが・・・。
「智也、無駄な抵抗はよせ。おとなしくお縄に付け」
後ろから、信が言い放つ・・・。
「信、放せ!」
「俺は、罪人か。放せ〜!」
「ダメなモノはダメだ。唯笑ちゃんから頼まれたから・・・」
涼しい顔で言う信。
「そう、今坂さんに頼まれたから、稲穂君と一緒に三上君を押さえているわけ」
おのれぇ〜、唯笑の差し金か・・・。まさか行動を読まれていたとは・・・。
三上智也、一生の不覚。
「はい、ほうき」
唯笑がほうきを俺の手に握らせる・・・。
「三上君?諦めたら?」
「智也、もう逃げられないぞ」
しょうがねぇ・・・俺の負けだ、ここはおとなしく従うか・・・。
「あ、三上君?当番逃げちゃダメだよ。今坂さんに一人でやらせるつもり?」
「えっ?」
教室内を見回すと・・・4人だけ。
「俺と音羽さんは、当番じゃないからな」
ハッキリと否定する信。
「マジかよぉ」
俺はあっけに取られて、音羽さんと、信を見る。
二人はニコニコ笑って・・・。
「智也と唯笑ちゃんの二人で掃除するの分かったか?」
「ぐっ・・・」
「じゃね、唯笑ちゃん」
「うん♪バイバイ。信君、音羽さん」
二人に挨拶をして、別れる。
二人だけ・・・なんでだ?
疑問に想いながらも、掃除を始める・・・。
40分ほどして終了・・・。
「ふぅ〜」
一息つく・・・。
「ご苦労様、智ちゃん」
ニコニコ微笑んでいる唯笑・・・。
そう言えば・・・掃除中も何か知らないけど、機嫌が良かったな・・・。
それにしても他の連中はどうした?
「唯笑、他の連中はどうした?」
「用事があるからって帰ったよ」
あっさりと応える。
「な、なにぃ〜!帰ったぁ?何で引き留めないんだよ」
「だって・・・」
智ちゃんと二人でやりたかっただもん・・・。
ごめんね、智ちゃん。
「何で俺だけ・・・」
しかし、俺がサボったらどうするつもりだったんだ・・・。
「しょうがねぇな・・・他の連中に貸しだな」
ぶつぶつ言いながら掃除用具を片付ける。
「さて、じゃ帰るか」
「うん」
俺は鞄を取りに机に戻る。
何気なしに、窓を見ると・・・。
一面の夕焼けで、赤く染まっている・・・。
窓に近づいて外を眺める・・・。
全てが赤く染まって・・・何とも言えない光景が広がっている。
気が付けば、唯笑が俺の隣で外を眺めている。
「智ちゃん、綺麗だね」
ぽつんと呟く唯笑・・・。
何か心にしみこんでくる感じ・・・。
凄く素直な気持ちになれる。
「ああ・・・」
嬉しいな・・・智ちゃんと二人きり・・・。
こんな綺麗な夕焼けがみれて・・・。
「・・・・・・」
智ちゃんは、唯笑のことどう思っているのかな?
唯笑はずっと智ちゃんだけを見てきたんだよ。
智ちゃんは他に好きな人いるのかな・・・。
あんまり話には出てこないけど・・・智ちゃん優しいから、きっと・・・。
そんなことを考えながら、智也を見上げる唯笑・・・。
智也と目が合う・・。
「・・・・・・」
頬を染めている唯笑・・・。
夕焼けのせいなのかハッキリとはしないが、何となくそんな感じがする。
夕日に染まる唯笑の顔が凄く儚く見えて、一瞬ドキリとした。
あれ?唯笑って・・・・こんなに可愛かったか?
急に胸の奥の方で痛みを感じた。でも不快な痛みではなく、快い痛み・・・。
そして、懐かしい痛み・・・。
唯笑の顔が眩しく見えて、視線をずらしてしまう・・・。
「智ちゃん?」
俺は少し照れたような態度を示して、窓の外に視線を向けた・・・。
俺は唯笑のこと嫌いな訳じゃない・・・。
どちらかというと好きなのかもしれない・・・。
唯、俺の中にはもう一人の幼馴染みが居る・・・。
彩花・・・俺が本当に好きだった娘・・・。
彩花の存在が俺の心の中で大きなままで残っている。
彩花を失って、傷ついた俺を励まし続けてくれたのは・・・。
あの時、俺は全てを失った・・・。自分の存在さえも亡くそうとした・・・。
でも、失ったモノを取り戻させてくれたのがもう一人の幼馴染みの唯笑。
傷ついた俺の心を支えてくれていた・・・。
いつも俺の傍にいて・・・。
いつも笑顔で微笑んでくれていた・・・。
俺のために。
「!!」
そうだ、唯笑はいつも俺のために居てくれた。
どんなときも、必ず傍にいてくれる・・・。
単に幼馴染みだからじゃなくて、俺のことを・・・。
俺は・・・なんてバカなんだろう・・・。
今頃気づくなんて・・・。
どうしようもない奴だな、俺って・・・。
『そんなこと無いよ』
「えっ」
『智也はちゃんと分かっていたよ』
俺の心に呼びかけてくるこの声は・・・彩花?
『私のことが気になって、目を向けていなかっただけ・・・』
彩花、おまえなのか・・・。
『まだ分からないの?相変わらずだね智也は・・・』
彩花・・・。
『私は、智也の心の中にいるの。そしていつも見てるよ』
なにを?
『鈍いわね、唯笑ちゃんと智也を見ているの。分かった?』
俺と唯笑を・・・。
『唯笑ちゃんの気持ちを受け止めてあげて、私にしてくれたように』
『智也は気づいてるはずだよ、唯笑ちゃんの気持ちに。私は、二人の心の中で
生き続けているの、だから、智也は私のことから離れても良いんだよ。智也は
これからも歩き続けなければいけないの、私のことは、昔の想い出・・・。
智也には、未来があるのだから、唯笑ちゃんと一緒に歩んで欲しい。
唯笑ちゃんになら智也を任せられるモノ・・・分かった?智也。唯笑ちゃんを
大事にしてあげて、もし裏切ったら・・・一生化けて出てやるからね』
分かったよ彩花。
おまえがそこまで言うのなら・・・俺も自分を偽らないよ。
自分に正直に生きるよ。
『うん、ありがと。智也、私が好きになったでけのことはあるわ』
こっちこそありがとう。
『じゃ、そろそろ行くね』
ああ、またな・・・・。
俺は無意識のうちに唯笑の方を抱き寄せていた。
「智ちゃん!」
驚く唯笑。
「俺、唯笑のこと好きだ」
俺の言葉に驚き目を潤ませる。
「智・・ちゃん」
俺の胸に飛び込んでくる。
肩をふるわせて泣いている。
俺は唯笑を抱きしめた。
「今までごめんな、そしていつもありがと」
「智ちゃん・・・」
「唯笑・・・もう泣くな、顔を上げて・・・」
智也を見つめる唯笑・・・。
俺は唯笑の涙を拭ってやる・・・。
見つめ合う二人・・・。
唯笑の瞳が静かに閉じられる。
二人の唇が重なり合う。
少し涙の味がする・・・。
唯笑の瞳からまた、涙があふれる・・・。
「もう、泣くな。唯笑は笑ってないとダメだよ」
「だって・・・うれしんだもん」
涙を浮かべながら、恥ずかしそうに微笑む唯笑。
俺も微笑みを返す・・・。
俺の肩にそっと寄り添う唯笑・・・。

夕焼けに染まった校庭を肩を寄せ合い、手をしっかりと握り合って、歩く二人の
影が、何時までも長く続いていた・・・。


おわり




-あとがき--------------

やっと出来た。
長かったな・・・やらなかっただけだけど・・。
唯笑ちゃんのSSです。まあこんなもんでしょうと言ったところか・・・。
書いているうちにだいぶ内容が・・・。
とりあえず設定道理のエンディングになったからヨシとしよう。
さて、次もあるし・・・。
これにて失礼します。
最後までお付き合いいただきましてありがとうです。
ではでは・・・・。
                                                     byIku



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