Detective Player --- 残された偽りと真実 解決編 --- 作:木村征人 |
奈美はもう一度深呼吸して、心を落ちつかせゆっくりと口を開いた。 「それは――あのダイイ二ングメッセージが仕組まれたものだからです」 ざわっと奈美の言葉は浩一だけでなく、他に来ていた警察署員すらをもざわつかせた。 「お、おい。探偵気取りは止めといた方がいいぞ」 「いや、理由だけでも聞いたほうがよさそうだな」 浩一が慌てて止めようとするが、戸川が制した。 「で、仕組まれたものと言っていたな。それじゃああのダイイングメッセージは犯人がつけたものだとでも言うのか?」 「いえ、イニシャル自体はマーカスさんが書いたと思います。しかし、抜けていたものを犯人が付け足したと思うんです」 「さっきからやたらと頼りない発言に聞こえるんだが」 戸川が少し表情を歪ませる。 「ほっといてください。 たまたま抜けていたものを付け足したのが、みどりのイニシャルになっただけなんです」 「それでその抜けていたものとは?」 「はい。『.』です」 「『.』ねぇ。それだけでイニシャルが変わるものなのか?」 「それだけでは不充分です。 イニシャルが書かれたかばんはありますか?」 「ああ、これか」 戸川はビニールに入れられた皮製のかばんを奈美に手渡した。 「そのかばんがどうしたんだ?」 浩一が首をひねる。 「このかばんに書かれたイニシャルで犯人がわかるのは明白です。最初このかばんを持っていこうとしました。 しかし燃えにくい皮製ですし、だからと言って遠くへ持ち出そうとしてもこれから集まる時にいなかったら逆に怪しまれます。だったらいっそのこと、さも初めてたみたいに演技すればと考えたんでしょう」 「ちょっと待てよ。それって……」 浩一が顔を上げる。 「はい、この中に犯人がいると思います。もちろんみどりではないですけどね」 奈美はかばんを掲げた。 「元々このイニシャルは……こうだったんです」 奈美はイニシャルをさかさまにした。 SはそのままSだが。MはWに変わった。 「本来マーカスさんが書いたイニシャルは『S W』だったんです。 そのイニシャルに書かれたダイイングメッセージを逆さまにして、抜けていた『.』を付 け加えれば偽造されたイニシャル『M.S』が完成します」 「この中で『S.W』のイニシャルが当てはまるのは……まさか!」 みんなが一斉にイニシャルの人物……和田悟の視線が集まる。 「ちょ、ちょっと待ってくれよ。なんて俺がマーカスさんを殺さなければ――」 「昔の恨みか……」 戸田が悟の言葉をさえぎる。 「署に連絡してマーカスの事を調べてもらっていたのだが、昔色々とやっていたらしい。 買収なんて言うのもやっていたらしいな。その中に和田修一という名前があったが」 「……そうだよ……俺の親父の名前だよ……」 悟は吐き棄てるように呟いた。 「初めて見た時に気付いたよ……俺の家族を壊した人間だとね。 そのことを話した時奴は『あきらめろ』だと! ふざけるな! 奴だけは許せなかった……絶対にな!」 「でも、結果的とはいえみどりに罪をなすりつけるのは許されないよ……それが例えどんなことであってもね……」 奈美は自分をいましめるように言った。 「なにも知らないお前には分からないよ」 そう言い残して和田は警察につれられていった。 「分かるよ……私も殺したいほど憎んでいる人がいたもの」 空馬は工藤隆志が死んでいるのを知らせていない。だが空馬の言葉によって止められて以来、奈美の中には復讐の言葉は消えうせていた。 みどりは奈美にいきなり抱きついた。 「奈美、ありがとう!」 「え、ええ」 「えーと、すまなかったな……」 浩一はみどりに頭を下げた。 「うーんと、別にいいよ。仕方ないもの……」 みどりは少し気まずそうだった。 「でも、なんとかなったわね」 奈美はそのまま座り込んだ。 「うー、終わらねぇ……」 空馬がかりかりと伝票整理している。 「空馬! 何もたもたやっているさっさと終わらせろ」 部屋の奥から怒鳴り声が響いてくる。 「分かっているよ、父さん。 はーこんなことなら抜け出して事件に行けばよかった」 空馬はがっくりと肩を落とした。 |
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