久遠の絆 再臨詔 御門武の章
                                    作:木村征人


この作品はF・O・Gの久遠の絆 再臨詔を題材にしております。
できれば聡子エンディングを見てから読んで下さい。ていうか、見ないと何の事やらさっぱり分かりません。


 
 
 御門武が世界の為に、いや大切な人達の為に太祖ともに闇に落ちてどれくらい経っただろうか……
 武はかつてヤマタノオロチに捕らえられた太一たちと同じような格好をしていた。
 そして、暗闇の中から五人の男女が武を助ける為に太祖の前へと現れた。その一人は我が身を剣へと姿を変え太祖の前に立ちはだかった。
 そう、その五人こそは高原万葉、斎栞、常盤沙夜、天野聡子、有坂汰一であった。
「みんなお願い。わたしは武君を」
 栞、沙夜、汰一らは剣を構えた。沙夜は結界を作り太祖の動きを封じていた。が動きをとどめるのがやっとだった。
「武君!」
 太祖の攻撃をかいくぐりながら万葉は武に近づいた。
「よお……万葉……老けたな……」
 くたびれた表情ながらもおどけた口調で笑いかける。
「あなたのおかげで苦労したからね」
 武の体を強引に太祖のから引きぬいた。武の体は太祖のせいでぼろぼろになっていた。
「ひどい……薙!」
「分かってるわママ」
「「神気発生」」
 万葉と聡子の声が重なる。光が武を照らす。そして、傷が回復していく。
「これは……」
 武が驚いた声で万葉達を見つめる。
 そして剣を引きずりながら遅れてやたらと目付きの悪い人物が現れた。
「……ぜえぜえ。勝手に行くなよおまえら」
 意外にもそこに現れたのは、
「杵築! お前も来てたのか」
「桐子だけを危険な目にあわせられねえだろ」
「杵築君、遅いわよ」
「しょうがねえだろ、こんな重たいもの持たせやがって。
 ほらよ、受け取りな」
 杵築が武に剣を渡した。それは長剣よりも大きく、大剣というには繊細すぎる剣だった。
「わたしと薙は三本の神剣とその剣を見つける為に日本中を回ったのよ」
 武は杵築から受け取った剣からとてつもない力を感じ取った。
「十拳剣よ」
「……な!」
 万葉の言葉武は驚きの声を上げた。
十拳剣(とつかのつるぎ)――おそらく日本神話でもっとも有名とされるスサノヲがヤマタノオロチを退治したという神話。そのオロチを退治した剣こそが今武が持っている十拳剣であった。
「……この剣はまるで俺に力を与えてくれているみたいだ」
 武は杵築が引きずりながら苦労してもってきた剣を片手で「ビュン」とならせて剣を躍らせた。
「この剣は叢雲と同じように使い手を選ぶの。認められなければ超重量の剣になるけど……武君ならもしかしたらと思ったけど……」
「なかなか面白い物を持ってきよるわ」
 太祖の馬鹿にしたような声が響く。
「わしもおもしろい拾い物をしたのでな」
 太祖がうなると同時に因縁の相手が再び姿をあらわした。目は釣りあがって、頭には冠をかぶっておりそして黒い着物を着ている。
「そんな……」
 万葉が武にすがり付く。
「嘘だろ……おい」
 杵築すらも声が震えている。
 千年前、天叢雲を狙い、悲劇を引き起こした張本人。
「くくくく、鷹久ぁ。会いたかったぞぉ」
 藤原道綱が武達の前に立ちはだかった。
「もう、駄目お願い」
 沙夜が悲痛な声を上げる。今まで結界で太祖の攻撃を封じていたが、限界に近づいていた。
「万葉達はみんなを守りに行け、俺はこいつと決着をつける!」
「……わかったわ……死なないでね」
「がんばってね、パパ」
「ああ」
 武は万葉達の後ろ姿を眺めた後、
「いくぞ、道綱! 今こそ真の決着をつける!」
「十拳剣を手に入れたぐらいで粋がるなぁぁぁぁぁ」
 二人の剣が交差する、
「ちっ」
「くっ」
 双方に浅い傷をつくる。
 そして道綱の速い斬撃をなんとか受け止める。
「なんて力だ、一撃ごとに手がしびれやがる」
 完全に武ほうが分は悪かった。ほとんど剣の力のおかげで防いでくれているとしか言いようがなかった。
「剣さえなければ貴様など」
 道綱が恨めしそうに武の剣を見つめる。
「そうか……それなら、てめえにくれてやるよ」
 武は剣を道綱にむけて投げつけた。
「ばかな!」
 道綱が驚愕の声を上げた。無理もない虎の子の十拳剣を手放すなど考えられなかった。
ガギィン
 道綱は飛んできた剣を弾き飛ばした。
 その瞬間が勝負を分けた。
 武は道綱の懐へ入り込み。急いで五芒星を、印を斬った。
「破ぁ!」
 光の星が道綱の体を貫く。
 道綱は武よりも十拳剣を重要視していた。その中に武は勝機を見つけた。
 武の視線から外れる行動、つまり剣を投げつけた瞬間、武は体勢を低くして、道綱に近づいたのだ。
「おのれ隆久!」
「これで……」
 武は十拳剣を拾い。
「千年にわたる闘いも終わりだぁ!」
 道綱の体を薙いだ。
「があはぁ!」
「道綱よ」
 太祖が道綱に話し掛ける。
「怨みを晴らしたいか……」
「鷹久に復讐するまでは……」
「ならば我に食われよ、ならば復讐を遂げる事ができよう」
「くくくく、そうか、ならば我を食らえ。太祖よぉ!」
 その刹那太祖は道綱を飲み込んだ。
「……やばい! みんな逃げるぞ」
 全員元来た通路に向かって逃げ出した。
「倒さないのか?」
「馬鹿か? 杵築、闇の中ではほとんど不死身なんだぞ」
「そう、ほとんど倒す方法がないのよね」
 万葉が何か策があるかのように、自信ありげに答えた。
「俺は最後尾につくから、汰一と杵築は栞と沙夜先生を頼む」
 武はみんなを促しながら、万葉と一緒に逃げた。
「そういえば万葉、おまえらどうやってきたんだ?」
「あの世とこの世の境目までは前に来た事があるから来れたんだけど、どうしようかと思いあぐねていたらわしも息子を助ける手伝おうって。
 武君に聞けば分かるって行ってたけど……」
 武は少し考えた。自分を息子というなら、現世の母親か樟葉だろうが、そんな力があるとは思えない。だとしたら万葉が死んだあと武は万葉を生き辺らそうとしたときとある人に出会った。その時武のことを「息子のようなもの」と言っていた。おそらくその人だろう。
「なるほどね」
 (ビュン)と武と万葉の間に太祖の腕(そういうふうに形どったのだろう)が伸びた。
「なに!」
 腕は栞の体をつかんだ。
「しまった!」
「やぁぁぁぁぁぁ」
 栞が声を発すると同時に太祖の腕が吹っ飛んだ。
「ぎぃぃぃぃぃぃぃ」
 太祖がうめきをあげた。
「どういうことだ?」
「みんな京都で修業したのよ」
 武の疑問に万葉が答えた。
「あなたと同様、休学届を出してね。おかげで留年決定だけど。
 もっとも沙夜先生は無理だけどね」
「杵築もか?」
「ただの赤点よ」
 万葉は呆れたように行った。
「けっ、うるせいよ。とっとと逃げるぞ」
 太祖は武の背後まで来ていた。だが、武が気付かない。太祖が武を狙う。その瞬間、五芒星が太祖にダメージを与えた。
 五芒星を放ったのは汰一だった。
「たい……清明兄様」
 武には汰一と安倍清明とダブって見えた。
 修業によって栞は魂鎮めの巫女として、汰一は安倍清明に匹敵.する力を手に入れていた。
「逃げ切れないなら、てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 武が太祖の顔らしき場所を貫いた……が、
「おろかな、死ねぇぇぇぇぇ!」
 まったくダメージを受けておらず、再び腕が武を襲う。
「薙!」
「OK、ママ」
 万葉が太祖の腕を斬った。
「剣が通用しないなら!」
 武は五芒星を剣に乗せた。
 ゴッ!
「なにっ!」
 印は想像以上の威力を発揮し太祖の顔を砕いた。
「ばかな! スサノヲの力を引き継いでいるとでもいうのか!
 久遠の時を経てもまだ我の前に立ちはだかると言うのかスサノヲよ!」
 太祖がうめき声をあげている。
「おのれぇぇぇぇぇ! なぜ我は勝てない貴様ごときに!」
「それはお前が弱いからだ」
 武がゆっくりとしかしはっきりとした口調で言った。
「なんだと……」
 太祖は驚いたような声を発した。万葉も同様に意外な顔をしている。当然だろう、太祖といえば魔の根元とも言える最強の存在。それを弱いと武は言ったのだ。
「お前は俺を捕らえた後、俺の心をくらい自分のものにする事ぐらい出来たはずだ。もしそうしたならお前は薙を捕らえたときのように大きな力を手に入れられたはずだ。いや、薙だけじゃない。汰一のときもお前は不完全な同化をしただけだった。
 なぜしなかったかは俺は分かるぜ、お前と半分同化していたからな。お前は怖かったんだよ。完全に同化すればお前は今の太祖じゃなくなる。いままで奪った力で知識と言うものをつくったせいでお前は臆病になった。自分が今の自分でなくなるのが怖いんだよ。
 お前は昔の俺とそっくりだ」
 ……………………………………………
 太祖は黙っていた。そして、
「ならばこんなモノはいらぬ!」
 バキン!
 何かが弾けた音が響く。
「グルォォォォォォォォォォ」
 太祖がうなり声をあげた。今知識を捨てた太祖は本能に突き動かされているだけだった。
「だから、俺はお前を弱いと言ったんだ。なぜそうやって逃げる。捨てる事が出来るならそれを克服する事も出来るだろうが!」
「武君逃げましょう」
 万葉は叫んでいる武の手を引っ張って走り出す。
「ねえ、後悔してる?」
「なにをだ? 万葉」
「今のように過去を思い出し、太祖と闘うようになった事」
「初めてであった時はな、でも今は感謝してる。
 美人な人生の相方も出来たしな」
 万葉の顔が真っ赤に染まる。
 そんなことを言っているうちに、太祖は武達を追いかける。
「このままだと逃げ切れない、もう少しで出口なのに」
「だったら!」
 ふたたび、印を斬って五芒星を剣に乗せた。
 キュゴ!
 走りながら斬った為、集中力が落ち威力はいくらか落ちるが太祖を足止めするには十分だった。
「いまなら!」
 万葉が長方形の箱を取り出し太祖に投げつけた。箱の蓋がはずれ、中から大量の呪符が溢れ出した。万葉が呪文を唱えると、太祖の前に呪符が幾重にも重なり通路を塞いだ。
「これは?」
「いそいで、脱出するわよ」
 武の問いに答えず、万葉は再び武の手を引っ張って走り出した。
「一体、あれはなんだよ」
「あれはぎりぎりまで力を封じ込めているの、おそらく太祖はあの壁を突き破ろうとするわね。そうするとあれは臨海を越えて大爆発を起こすわ」
「……なるほどね、だから出口近くに、そして、太祖が追いつけないときにしか使わないと」
「ええ、私たちも巻き込まれるわ」
 武達は必死に駆け上がると大きな建物が現れた。
「これは……船?」
「ええ箱船よ」
 船としては小さな部類だが、家一件丸々入りそうな木造の船が置かれていた。
「早く中に入って」
「え? ああ。しかしこれどうしたんだ?」
「あっちの神から借りてきたの」
「あっちねえ」
 武はあまり考えない事にした。
 船の中に入るとすでにみんなが待っていた。
「たけちゃん」
 栞がタケルに抱きついた。
「お、おい栞」
「ふうえーん、よかったよう。たけちゃん、たけちゃん、たけちゃん、たけちゃん」
 何度も武の名前を呼んで泣き付いている。杵築はわざと見えないふりをしてそっぽを向いている。
「さ、脱出するわよ。太祖が結界を破らないうちに!」
 箱船が浮き上がり掻き消える。その直後、
「ガァァァァァァァァァァァァァァ」
 太祖が力任せに結界を突き破った。
 グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ
 結界が爆発し、太祖が飲み込まれる。
「…………………………」
 爆音によって、太祖の声は打ち消された。それは恨みの言葉かもしくは……
 
 そして、脱出した武達は例の石舞台の上にいた。
「いてぇぇぇぇぇぇ」
「あつつつつつ」
「おもいー、どけよぉ」
 武は盛大に背中を打ち、お尻をさすっている沙夜、そして、その他のメンバーの下敷きになっている杵築はおいといて、とにかく全員無事に帰る事が出来た。
「石舞台とはまたいわくありげな場所についたな」
 剣から元に戻っいた聡子に上着を渡しながらひとりごちた。
「パパ達と別れた場所だもんね」
 聡子は目に涙を溜めていた。
「だから、またお別れね」
 だが聡子は笑いながら言った。
 聡子が天へと上ろうとしたとき、
「ストップ」
 武が聡子の手をつかんだ。
「えっ?」
 意外そうな顔をしながら聡子は武の顔を見つめた。
「まだ、土蜘蛛との問題が残ってるから……お前がいなくちゃ困る」
「でも、十拳剣が……」
「この剣は力だけの剣だから……この石舞台に封印する。これからは力だけじゃ駄目だからな。だけど道綱みたいな分からず屋がいないとは限らないしね……だから、な?」
 不器用なウインクをして聡子を見る。
「ありがと、パパ」
 聡子が武に抱きついた。
(はあ、太祖より手強いかも……)
 万葉は聡子に対してなのか、土蜘蛛に対してそう思ったのかは分からないが、また新たな物語が始まるだろう。
                                 劇終



作者のコメント
 しまった、目立たない人がいっぱいいる。でも、いっか。万葉目立ってたし……



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