盗っと勇者 ザ・シーフブレイバー -- 第四話 反乱 -- 作:木村征人 |
「ミルカ」 ミルカは振り返るとそこにはシーバ王が立っていた。豪華な服装がなければおそらく王に見えないだろう。威厳らしさはほとんど見えない。 「お父様」 「聞いたぞ、大地の瞳を盗んだ盗賊をかばったそうだな」 「はい……」 「おまえがそんな行動に出るとはな…… おまえは確かにやさしい、だがそれだけでは王女は務まらぬぞ」 「はい」 でも、あのときに出会ったときの彼は綺麗な目をしていたわ……それに、うまく言えないけど何かを感じさせるような…… 「どうした? ミルカ」 「いえ……」 「少し休んでおけ、後で玉座に来なさい。グロッグが何か話があるようだ」 玉座の間の真下にある休憩室。ここは位置的な関係もあり四将軍などの特別な人間しか使えないのだ。ジェノバとマルス以外人はおらずここで少し遅い昼食を取っていた。 「しかし、ミルカ王女にもこまったもんだな……」 マルスがパンをかじりながらぼやいた。 「たしかに、まさか盗賊をかばうとはね」 「ま、たまにはあってもいいかもな。あの王女があんなにはっきり言うことなんてなかったからな。すこしは自覚が出てきたのかもな」 「だといいんだけど……」 ジェノバは胸元からペンダントを取り出した。 「それは確か母親の形見だったな……」 「ああ、弟がよくほしがっていたからね、おかしいよな女物なのに」 ジェノバはペンダントを手で遊びながら薄く笑った。 「そういえばグロッグが王に話があるって言ってたな……」 玉座の間は今、シーバ王、ミルカ王女、グロッグ、そして周りに衛兵が集まっていた。部屋の端にはシュバルツやメラの姿も見える。 「王よ、魔道砲が完成しましたぞ。大地の瞳による調整も終わりました」 「そうか! くくくく、これでほかの国を攻め落とすには時間の問題だな」 魔道砲はもともとほかの大陸に攻め込むために作られた。そして、とある伝説を覆すために…… 「しかし、それには邪魔者がいます」 「ほう……それは一体誰だ」 「あなたです! 王よ。あなたが邪魔なのです」 「なんだと! どういう意味だ」 「舞台は整いました、脇役は早々に退場してもらいたいのですが……」 「き、きさま! 衛兵! こいつを捕らえろ」シーバ王が一喝するが衛兵が動く気配はなかった。「ど、どういうことだ……」 「わたしが何の意味のないまま、衛兵をここにいさせると思いましたか? もはやこの城にいるほとんどの者はわたしに忠誠を誓っているのですよ」 「ば、ばかな……」 「何も落胆する必要はありません。あなたには役に立ってもらいますよ、大地の瞳、深海の瞳、天空の瞳、三つの瞳の力を使い完成された魔道砲の実験にな!」 グロッグの口が不気味に歪み、右手を上げた。 「や、やめ――」 ギュン、ゴォォォォォォォォォォ シーバ王のセリフが言い終わらないうちに天井を突き抜けてきた光(魔道砲から発射された魔力)に飲み込まれ消えうせた。 「くくくくく、ハハハハハハハハハ、さすがだ、大地の瞳の制御によって一人分の範囲に集中できるとはな」 そして、魔道砲の魔力は床を突き抜け、ジェノバやマルスのいる休憩室にまで届いた。 「な、なんなの」 「これは……魔道砲……!」 「玉座の間に一体何が……」 出力は最低だったために魔道砲は城を突き抜けただけで済んだ。 「あ、ああ……」 父の死を目の当たりにしたミルカ王女は立ちすくんでいた。父の目的に驚く間もなく、この地上から永遠に消えた。 「グロッグ将軍、王女はどういたしましょう?」 「捕らえておけ、王女にはわたしの目的には不可欠だからな」 「はっ!」 衛兵が王女の腕をつかんだ刹那! 入り口から二つの影が飛んだ。そして、 ギャン 「う、うわぁぁぁぁぁ。う、腕が」 腕を切り落とされ、もだえている衛兵を無視し、グロッグを睨みつけ。 「四将軍の一人。疾風のジェノバ!」 「おなじく、無槍のマルス!」 それぞれ名乗りをあげた。 「グロッグどういうつもり! それにシーバ王はどこに?」 「シーバ王はご退場願いましたよ。おまえ達はわたしの配下に加わるつもりはないか?」 「王にでもなったつもりか!」 マルスが血のりのついた槍を振り払った。 「そうですね、今はまだわたしは王ですね……今のところはね。 どうやら、あなた達も王同様、ご退場してもらわなければならないようですな。もっとも、王女を傷つけるわけにはいけませんので魔道砲は止めておきますがね。 衛兵よ、王女を捕らえ四将軍の二人を殺せ」 グロッグの言葉を合図に衛兵たちが、ジェノバとマルスに斬りかかってくる。 「おろかな!」 ザン ジェノバの声とともに周りの衛兵は血を吹きながら倒れた。剣筋はおろか、その動きすらも見えなかった。 フッッッン マルスもまた、衛兵達に突っ込んだかと思うとバラバラと衛兵たちが倒れる。無槍とはもともと、槍がないと思えるほどの変幻自在の速さでからきている。ジェノバの剣ほど早くないにしろ人外のスピードを持っている。そして剣で槍に立ち向かうには三倍以上の技量がいると言われている。 「どうする?」 二人は声をはもらせ衛兵たちをにらむ。衛兵たちがこの二人にしり込みしていると四将軍最強とうたわれたシュバルツが立ちはだかった。 「なっ!」 「なぜだ! シュバルツ。おまえがなぜ……」 シュバルツは何も答えない。 「ジェノバ、おまえはミルカ王女を連れて逃げろ」 マルスはジェノバに近づき言った。 「だ、だけど……」 「シーラ! 早くいけ!」 マルスはジェノバに向かってそう言い放った。 「!」 「おまえは何のために四将軍になった! 弟に会うために自分の名前を捨てまで、おまえは生きろ! 王女を守り、弟に会うまで!」 「マルス……分かった。死なないでよ!」 「俺もこれでも四将軍だ。そう簡単にはくたばらねえよ」 ジェノバは王女の手を引きながら立ちはだかる衛兵を切り倒し玉座の間を出た。 「ほかの者に伝えろ、ジェノバを殺し王女を捕らえろとな」 グロッグは残りの衛兵に命令した。グロッグの命令は城中に広がった。グロッグの反乱を知っていた者はジェノバを探し、知らなかった者はただ混乱するしかなかった。 律儀にも王の忠誠を守ろうとした者はみな切り殺された。 そして、地下牢の見張りをしていた者は反乱が起こることを知っている者はいなかった。 そして、ライツは…… 「始まったか……」 髪の毛の中に隠していた針金を使い、牢屋から出ようとしていた。 マルスとシュバルツの四将軍同士の戦いが今始まろうとしていた。 「シュバルツ、おまえはなぜグロッグに従った……」 「……自分の為だ……」 「自分の……? おまえが昔話していた夢のことか……」 「そうだ……」 「馬鹿な……こんなことがおまえの望んでいたことなのか?」 「いや、俺はただグロッグに従うのみ。そうしなければならない……」 「そうか、なら話は終わりだ……いくぞ!」 先手はマルスだった。槍を少ししならせ……そして突っ込む。槍がいくつにもなってシュバルツへ向かう。それをかわすために横へ飛んだシュバルツを追撃するために、着地の瞬間を狙って体を折り足払いはかける。しかし、地面に着地した瞬間シュバルツは足首だけで飛びそれを交わす。そして体を回転させシュバルツはけりを繰り出すが、マルスは腕でガードする。 「……」 そして、シュバルツは長剣を抜いた。 ジェノバは剣で衛兵たちを薙ぎながら、ミルカ王女をかばいながら逃げていた。ジェノバにとって衛兵など雑魚に等しかったが、体力がどこまで持つかが問題であった。 「ぐっ、ジェノバめ。あきらめの悪いやつだ」 部隊長の男が歯がゆそうに言い放つ。 「あなた達程度に私の剣を見切れると思って?」 あと少しで通路に出れる。そうすれば逃げ切れるはずだ。 ジェノバがそう考えていると、突然右肩に激痛がはしった。 「ぐっ!」 ジェノバは背中から右肩にクリスタルが刺さっていた。クリスタルには糸がついており、その糸を覆面をした男が持っていた。 「ま、まさかあなたまで……」 クリスタルがまるで意思を持っているかのようにジェノバの肩から外れ、宙に浮いたまま再びジェノバを狙う。 クリスタルを防ぐために剣を払うが利き腕である右腕が肩の痛みによって力が入らず剣の速さが半減する。何とか体を揺らし避ける。 「もういいぞ、おまえはこれ以上手を出すな」 部隊長が覆面の男を征した。そして覆面の男は音もなく消えた。 ガキィン マルスの槍と、シュバルツの剣が交差する。 『ブシュ』と音を出しながらマルスのひたいから血が吹き出る。 くっ、剣の衝撃だけでひたいを切ったか…… 「おおおぉぉぉぉぉ!」 マルスが吼えながら槍を回転させながらシュバルツに向かう。 マルスの弧を描く攻撃に対して、シュバルツは直線的な攻撃を繰り出す。周りにいる衛兵たちは誰一人として加勢しなかった。いや、出来なかった。下手に近づけば二人の攻撃に巻き込まれたちまち切り刻まれるだろう。 「シュバルツ、おまえの負けだ。俺の槍はおまえの剣と違い魔道具なんだよ。しかもただの魔道具じゃねぇ、代々俺の家系で受け継げられてきたこの大陸でも最高の魔力を持つ槍なんでな。確かにおまえは俺より強い、だがおまえは遊びが過ぎた。俺の槍で剣の強度が無くなっているのに気づかなかったようだな」 マルスの言うとおり、シュバルツの剣はわずかにヒビが入っている。そして、そこに衝撃を加えれば、 ガギィン シュバルツの剣はくだけ散った。 「さらばだ、シュバルツ。わが親友よ!」 マルスの槍がシュバルツを襲う。その刹那、 ビュン 「馬鹿な!」 マルスの槍が真っ二つに折れた。いや、斬られた。 シュバルツは大剣を持っていた。シュバルツは背中に大剣を持っていたがマントのせいで隠れて見えなかったのだ。 「この槍を簡単に切る剣がこの世に……まさか!」 「そのとおりだ、だがまだ半分だがな」 シュバルツがマルスに向けて大剣を振り下ろす。だが、マルスは右へ回り込むが避けきれず左腕が断ち切られる。 「シュバルツ、ただでは死なん!」 マルスは槍の刃先を残ったほうでシュバルツに突き刺そうとする。 もしいつか誰かがこいつと戦うときに有利になるために、少しでも手傷を残せれば…… だが、その考えは無駄に起こった。マルスの右手首が吹っ飛ぶ。。 「ガッ! そ、そんな……」 メラが風の魔法によって切り落としたのだ。 「暗闇を裂く赤き光よ、わが前に立ちふさがる愚か者に赤き龍の衣を包め! 龍炎舞」 マルスの周りにらせん状の炎が紡がれる。そして、 グォォォォォォォォォォォ 炎がマルスを包む。まるで龍に飲み込まれるかのように…… シ、シーラ、もっと違った形で出会いたかった。そうすればもっとおまえと……、なんとか逃げのびて……くれ…… ガチャリ 「よし、開いた。しかし、何が起こっているんだ?」 ライツはここ連れてこられたとき、衛兵たちの落ち着きのなさが奇妙に感じられた。大地の瞳を盗んだやつが捕まったせいかと思っていたがそうではなかった。衛兵たちはやたらと不安な顔をしているように見えた。もちろん、確証があった訳はなかったが…… ここに連れられてきたときの道順は大体覚えている。ライツの持ち物はすぐ側にあった。それを取りもどし上への階段を上った。 「こんな所はさっさとおさらばするか」 「そこのおまえ……」 しまった、見つかったか! 「わるいな、衛兵がいなかったもんで……」 両手を上げながら振り返る。 そこには髪は返り血で汚れ、肩から血を流しあちこち傷を負っていたジェノバと肩を貸しているミルカ王女がいた。 二人は隠し通路で敵をまいたが追いつかれるのは時間の問題だった。 「あ、あなたは!」 ミルカ王女が驚きの声をあげる。 「ン? あん時の侍女か!」 「侍女だと? この方はこの国の王女、ミルカ王女だぞ」 ジェノバがあきれながら言う。 「王女……この人がか?」 ライツは驚きの声をあげた。ライツは天然のんびりおとぼけ女という印象しかなかったのだから仕方がなかった。しかも、あながち外れてはいない。 「ミルカ王女、あなたがかばった盗賊とはこいつですか?」 「え、ええ」 「かばった?」 「そのとおりだ、おまえはミルカ王女に助けられた、だったら恩返しするのが筋だろう……」 「恩返し?」 「そうだ、ミルカ王女を連れて逃げろ!」 「なっ!」 「えっ?」 ライツとミルカ王女は驚きの声を上げた。 「今度は王女を誘拐しろというのか?」 「この国はもう駄目だ、そんなことにはならないはずだ」 「だけど、おまえは? そんな傷だらけで……」 「私なら、クッ、平気だ」 「お、おい大丈夫か?」 ライツは苦しそうなジェノバに近づき傷口に薬を塗る。 「おまえ……」 「あんまり薬はもってないんだ、これで我慢してくれ」 ジェノバはライツに包帯を巻いてもらいながら見つめていた。 「似ている……」 「え?」 「いや、何でもない。おまえ名前はなんという?」 「ライツだ」 「ライツ……」ジェノバにとってあまりにも馴染み深い名前だった。「…………おまえはどこに住んでいる?」 「なんでそんなことを……」 「たのむ、教えてくれ」 「まあ、いいけど。南西の塔から少し離れたところだけど」 「昔は?」 「え?」 「小さい頃はどこに住んでいた?」 ジェノバがライツにいきなりつかみかかってきたので驚いた。 「じ、実は俺は記憶がないんだ」 「そ、そうか……」 「でも、両親と姉がいたことは覚えている。それとこの短剣は俺が持っていたらしいんだ」 ライツは例の魔道具の糸が入っている短剣を見せた。 「その短剣は!」 ジェノバは今度こそ確信が持てた。 「だけど、どうしてそんなことを聞くんだ?」 「ライツとやら、盗賊がただで人助けするわけにはいかないだろう。これを持っていけ」 ジェノバは自分のペンダントをライツに手渡した。 「それは……」 ミルカ王女は声をあげた。そのペンダントを知っていた。それがどれだけ大切なのかも…… 「さあ、もう行け……」 「おまえはどうするんだ?」 「足手まといはここに残るさ」 「だけど……」 「いいから早く行け!」 「………………わかった……」 ライツはミルカ王女の手を引いて城門へと向かった。 ジョノバはその背中を見送った後、 「ふっ、まさか盗賊になっているとはね……しかし、王女の先見の明には驚いたな……」 もし、ライツがあの場で殺されていたらミルカ王女は逃げることは不可能だろう。そして、ライツはこれからこの国になくてはならない存在となる。 「わたしは神など信じていなかったが、今は神に感謝したい。最後に望みをかなえてくれた……伝説の女神にな…… ちゃんと逃げ延びてくれることを祈ってるよ」 そして部隊長と衛兵たちがジェノバの前に現れた。 「ジェノバ、とうとう追い詰めたぞ」 「おい王女がいないぞ、どこに行った?」 「おい、ジェノバ! 王女はどこだ?」 「ジェノバ? いいえ違うわ、私はシーラよ」 ジェノバは今シーラになった。 「何をわけのわからんことをかかれー!」 ライツとミルカ王女は城を出て城門の前まできたが、二人の衛兵と鉢合わせになった。 「ちっ!」 ライツは短剣を構えたが、 「王女こちらです」 「は?」 「え?」 衛兵の意外な言葉に二人は声をあげた。 「どういうことだ?」 ミルカ王女に聞いたが首を横に振るだけだった。 「私達は決して王を裏切った者ばかりではないんです。家族や大切な者を守るために従うしかない者もいるんです」 衛兵たちは馬車のある場所へ案内した。馬車といっても荷馬車といったほうがよかった。 「さすがに王が使用している者を持ってくるにはいかないので……」 王達がパレードのときに乗っていた魔道具の馬車は城の中に収めている。さすがに逃げ出している者がそんなとこに行ったなどと言い訳が出来ない。 「ありがとう、それじゃあ」 ライツが手綱を持って行こうとすると、 「お願いがあります」 「なんだ?」 「殴ってください」 「は?」 「奪われたように見せたいので……」 「なるほどね」 『バキッ』っという音とともに二人の衛兵を殴りつけた。 そしてライツとミルカ王女は城門を突破し街の大通りを抜け外へ出た。 シーラはなんとか衛兵たちの行く手を阻んでいた。 「ふん、さすがに四将軍だな……なかなかしぶとい……」 「ハアハア、まだまだ……よ……このさきに……はいかせない」 シーラはすでに肩で息をしている。 「命が惜しければそこをどけ!」 「命なんて惜しくはないわ、ハアハアあなた達こそ命が惜しければあきらめたらどう?」 「ふん、ならば死ぬがいい」 部隊長が弓を構え矢を放った。こんな近距離でもいつものシーラなら切り落とせるが今の状態では…… 「くっ、ううううううう」 矢はシーラの胸に刺さり膝をついた。 そして衛兵たちの剣と槍がシーラの体を貫いた。 ライツ……後は頼んだわよ…… ライツは街道で馬車を走らせていた。 「あれ……何で俺は涙を流しているんだ」 その涙の意味はライツには分からなかった。 フィアは街道を歩いていた。ライツのマントを抱きしめ焦点の定まらない目で…… 「お父さんに言わなきゃ、ライツが……死んだって……」 (なにやってんだよ、こんなところで) (なんでつけてきたんだ?) (ワリカンだからな) ライツの顔が浮かんでは消えていく。 「ラ……イツ……」 「フィー、フィーーーーー!」 どこか遠くでフィアの呼ぶ声がする。 「誰? あたしを呼ぶのは……」 ライツが馬車を走らせていると、前方に見慣れた人影を見つけた。 「フィー、フィーーーーー!」 「誰? あたしを呼ぶのは……」 馬車はフィアの少し前方で止まり、 「フィー! 早く乗れ!」 「幻覚? 幻聴? それとも幽霊?」 「なに馬鹿なこと言ってる。早く乗れ」 軽く頭をはたくとようやくフィアは目の前にいるのが本物のライツだと分かった。 「どうして生きてるの? それにこの人、王女じゃない!」 「こんにちわぁ」 ミルカ王女はのんきにフィアに挨拶した。 「俺もよく知らないから後で王女に聞くつもりだ。それよりも今は出来るだけ王都を離れたい」 「一体、なにをしたの?」 「いいから早く乗れ!」 馬車を一昼夜走らせ、夜が開ける頃ミルカ王女に大まかな説明をしてもらった。 「ちっ、とんでもないことになったな」 「そんな……」 「で……王女はどうするんだ?」 「王女はもういいです、国をおわれましたから」 ミルカは少し悲しそうに言った。 「それじゃあ、ミルカ。おまえはどうするつもりだ?」 「わかりません、どうすればいいのか……」 「う〜ん、お父さんに相談してみようか?」 「頭領にか? そうだな……それが一番いいか―― ――この感じはまさか!」 ライツは背後であの光を感じた。 「みんな伏せろぉぉぉ!」 ライツが叫ぶ。 「え?」 「きゃ!」 光は三人のはるか頭上を通過し……南西の塔を貫いた。 |
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