盗っと勇者 ザ・シーフブレイバー -- 第十三話 エピローグ 盗賊勇者 -- 作:木村征人 |
勇者の活躍はあったもののかなりの被害であった。となりの国からの侵略も恐れられていたが、そこもかなり被害がひどく攻められることはなかった。 破壊された南西の塔はそのまま放置され近くに小さいながらも新しい塔が建てられた。 そして王都の城も何とか修復された。バルザとルシードはほかのものにギルドを任せ、四将軍に復帰、残り二人が決まるのはもう少し後になるだろう。 ギルドもこの二人が目を光らせている為、下手なことは出来ないだろう。 ミルカも王女に戻ることができ、フィアもこの国の王女となった。フィアはシーバの名を持つことを嫌がり、そのままフィア=ハザードとしている。バルザのことを未だに父と呼んでいる。 当分は牢屋に閉じ込められていた女王が全権を握るがそのうちどちらかに女王の席を譲るだろう。バルザもルシードもそのことについては手伝ってくれるらしい。 そして、少しずつだが着実に落ち着きと平和を取り戻しつつあった。 そして…… 夜の闇に影が走った。 「逃げたぞ! こっちだ!」 「逃がすな! 追えぇ! 捕らえろ!」 「何の騒ぎだ?」 二人の男が暗闇から姿をあらわした。 「こ、これは、バルザ将軍に、ルシード将軍。 賊が入り込んだ模様です」 衛兵がやたら緊張しながら告げた。 「賊? フッ、ガハハハハハハハハハハハ」 バルザはいきなり笑い出した。 この御時世に城に忍び込むような物好きは一人しかいない。 「どうやらあいつはよくよく忍び込むのが好きらしいな」 ルシードもその賊の正体に気付く。 「あの馬鹿が、選ぶのに一年もかかりやがって……思ったよりも優柔不断だったとはな。 ルシード、おまえはどちらにかける?」 「そうだな……おれは……」 「あの……一体どういうことなんですか?」 衛兵は訳がわからないという表情を浮かべた。 「ほっといてやれ、あいつは褒美をもらいに来ただけだ。 あいつはこの国をいや世界を救った勇者なんだからな」 「はぁ……」 衛兵はさらに混乱した。 「よお、久しぶりだな」 盗賊は窓から顔を覗かせ陽気な声で話しかけた。 「いま少し厄介なことに首を突っ込んじまってな。おまえの力が必要なんだ」 盗賊は手をすっと出した。 「そんな心配そうな顔をすんなって……」 王女が手をそっと乗せる。 「大丈夫だよ! なんたって俺は勇者の称号さえかすめ取った盗賊の勇者………… 盗っと勇者なんだからな!」 |
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