ときめきメモリアル2 現実への瞑想 作:木村征人 |
「はあ、はあ、はあ……」
どうしてこんな事になってしまったの? そんな考えはすでに無駄だった。すべてはどこかで狂ってしまった後なのだから…… 「どうしたの? 元気ないけど……」
「あ……う、うん……」 八重花桜梨の問いにもあいまいに答える。 「やっぱり……陽ノ下さんが心配なのね……」 「ああ、大切な幼なじみだからね……」 最近頻発する行方不明事件。もともと隣町で起こっていたのだが、最近ではこちらでも起きていた。 ひびきの高校の学生だけでもすでに七人が行方不明になっていた。 「今日一緒に帰らない?」 「ああ……そうだな」 帰宅途中、事件のせいか人影は全くなかった。 「何でこんな事件が起こってるのかな…… たぶん誘拐事件だと思うけど……」 「さあ……どうだろうね」 「………………」 沈黙があたりをつつむ。 「なあ、八重さん?」 「なに?」 「子供って残酷だよね、無視や生き物を平気で殺せるんだから……」 「そ、そうね」 花桜梨は奇妙な悪寒を感じながらも答えた。 「でも、そういうのは大人になるとなくなるもんだけどね」 「うん、そうだね」 「でも……中にはさ。イレギュラーと言うものが存在するんだよ」 「え………?」 「光と離れ離れになった後、さみしくてね憂さ晴らしに虫を殺したことがあったんだ。その頃は気付かなかったよ、僕が人と違うなんてね。だって、僕が虫を殺してても誰も何にもいわなかったしね……。 虫を殺しているだけならまだいい、でもそれだけで止まらないこともあるんだよ。 そういうのは大人になればなるほど止まらないんだよ」 「…………!」 『チキチキチキ』と安っぽい音を鳴らしながらカッターの刃が姿を現す。 「ほむら会長は結構楽しませてくれたよ。思ったより抵抗してね……でも、光はあっけなかったなぁ。泣いてばかりでね。仕方ないか昔から泣き虫だったからね」 やれやれといった感じで肩をすくめる。 いつもと同じように花桜梨に話し掛けていた。だが、それは逆に恐怖をかきたてるものでしかなかった。 「それじゃあ、すべてあなたが……」 「隣町の事件は関係ないよ。ただ僕と同類の人がいるんだなぁって…… さてと、八重さん君はどんな反応見せてくれるかな?」 口元が醜く歪み、残虐な笑みを見せる。花桜梨はその表情に驚いたいつも無邪気な笑みはここまで醜く見せることも出来るのかと……もしかしたら、本当はいつもと変わらない笑みなのだが、花桜梨の恐怖がそう見せたのかもしれない。 「ひっ!」 花桜梨は逃げ出した。あてもなくただ逃げ出した。 遠くへ出来るだけ遠くへ逃げるために……それだけしか考えられなかった。 一体何なの、何が起こったの? わたしが何をしたっていうの? その問いに答える者はいない。 「はあはあはあ、こほ……かは……けほ……」 走り疲れ立ち止まり。うまく呼吸が出来ずせき込む。そして…… ガヅ そんな音共に花桜梨は気を失った。 花桜梨は殴られたと理解したのは気を失う寸前だった。 「う、うん……」
花桜梨は暗闇の中ベッドの上で目を覚ました。 「夢……だったの?」 頭が少し重く感じていた。思ったよりも長く寝ていたようだ。 次第に目が慣れてくる…… 「え……」 部屋は冷たいコンクリートで覆われていた。側に鉄製のどうがあるだけだった。間違いなく花桜梨の知っているような場所ではなかった。 そして、続いて鉄さびのような臭い。 「なによこれ……ヒッ! ひ、陽ノ下さん……」 そばに陽ノ下光の顔が合った。正しくは顔だけだった。顔は涙を流しながら恐怖の顔で歪んでいた。 周りには知らない顔や知っている顔の人だった者たちが無惨な姿でさらされていた。 ばらばらになった人形……そんなことを連想させる。 「開けて! 誰でもいいから開けて! お願い!」 鉄製のドアをたたきながら助けを求めるがそんな都合がいいことなどあるはずもなかった。 叩き疲れたのかそのままへたり込み、 「クッ、アハハハハ。ハハハハハハハハハハハハハ」 花桜梨は気付いたのだ。次は自分の番だと、笑いながら涙を流して。 なんでこんな事になってしまったんだろう。あの時なの? 自分が逃げ出してひびきの高校に来た、あの時から始まっていたの? 今更そんなことを考えていても何にもならなかった。 悪夢はまだ続く…… ・ ・ ・ ・ ・ ・ |
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