つばめBADEND AFTER 作:木村征人 |
「あ、あああ」
ぼくの手の中の紙が風にさらわれて舞う。つばめの最後の言葉でつづられた手紙だ。 ピシリ ぼくの中で何かにヒビが入る。 「ぼくは……一体どうすれば良いんだ」 ピシリ またあの音がする。 ぼくが悪いのか……ぼくが。 大切な人も親友も、そして恋人すら失った。 ぼくは全てを失ってしまった。 ピシリ そうかこの音はぼくの心が壊れる音だ。 ピシリピシリピシリピシリピシリピシリピシリピシリピシリビシッ 「ふぅっ、今日の練習は終わり」
寿々奈鷹乃いつもの様に泳ぎの練習をしていた。 「あれ、伊波くん? 今日は夏季講習はないはずなのに」 頭をタオルで拭いているとき、健が校舎の方へ歩いていくのを見かけた。 ♪〜♪〜〜〜〜〜
「音楽室からピアノの音? ほたる……戻ってきてくれたのか?」 音楽室の扉を空けるとそこにはほたるがいた。 「ほたる…………」 「どうしたの? 健ちゃん」 「ほたる、戻ってきてくれたんだね」 「うん、だってほたるは健ちゃんのことが大好きなんだよ」 ぼくはほたるに近づいた、ゆっくりとゆっくりと存在を確かめるように………… 三メートル、二メートル、一メートル。 もう少しだ。もう少しでほたるに手が届く。 「………………………………え?」 ほたる……ぼくを恨んでいるのか? だから…… その時ほたるがぼくの背中をゆっくりと、そして強く押した。 「あ、ああ……な、なに? なんなの……これは」
伊波くんの様子がおかしかったからあの後すぐに着替えて探したけど見つからなかった。 「どうして……伊波くん……どうしてこんな事を……」 私の目の前には伊波くんがいた。一体何があったのか分からなかった。 いきなり上から降ってきた。そのまま伊波くんは動かない。首や手足があらぬ方向へと曲がっている。素人目に見てもそれは…… 「え?」 いつの間にか私の目の前にほたるさんが……白河ほたるさんがいた。 白河さんはうっすらと笑みを浮かべていた。 「白河さん……あなたが……あなたが伊波くんを? どうして……どうしてなの! あなたは伊波くんのことが好きなんでしょ?」 「………………………………………………」 「え? それってどういう……」 そのまま白河さんはとけ込むように消えてしまった。 私はただその場にただ取り残されていた。 結局、伊波くんは自殺として処理された。 でも私はあの光景が夢とも幻ではないことを確信している。 なぜならあの時白河さんの言葉が私の心を傷つけている。 おそらく私も伊波くんと同じ道を辿るのだろう…… |
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