『今日も明日もいつまでも』前編
                             作:まる


「うおぉぉぉぉ〜〜〜〜!!どいてくれぇ〜〜〜!!」
雄たけびと共に、今日も廊下を一陣の風が走りぬける。
三上智也、その人である。
今日も修羅のごとき形相で購買に向けて走る途中、廊下ですれ違う生徒たちを次々に跳ね飛ばす。
「いてっ!!」「くそっ!!」「何しやがる!!」などなど、
いろんな声が聞こえるが、その中に女生徒の声はない。
女生徒のみを見事に避けながら走っているのだ。
三上智也、恐るべし・・・・

・・・さて、購買に到着した智也は、人ごみを掻き分けて、いとしのハニーの姿を探す。
「どこだ!?俺のハニーは!!」
智也は必死にその姿を探し求めるが、いっこうに見つからない。
・・・と、そのとき、智也の耳に最悪に残酷な言葉が聞こえてきたのだった・・・・
「はーい!!それじゃあこれで最後!!売り切れよ〜〜〜」
小夜美のその声を聞いた生徒たちは、ぶつぶつとつぶやきながらそれぞれの教室へと戻っていく。
・・・・たった一人を除いて。
その情けない男は床に手をついて、俺はなんてついてないんだろうオーラを放出しまくっていた。
情けない・・・情けなさすぎるぞ、智也。
・・・・・・しかし、そんなやつだからこそ、今智也の元に歩み寄ってくる、
20歳なのに暗算能力小学生以下のきれいなお姉さん、霧島小夜美その人は智也と愛しあっているのだろう。

「・・・・ん?何だこのにおいは・・・・唐揚げか?」
智也は微かににおってくる唐揚げのにおいを敏感にキャッチした。
ただ、それがどこからにおうのかまでは分からなかったが。
・・・・気づくと、智也の目の前で小夜美がしゃがみこんで、顔を覗き込んでいた。
「・・・ちょっと〜、情けないよ、そこの購買依存症少年♪」
「・・・小夜美さんには分からないよ、マイハニーが売り切れだった俺の今の絶望感なんて」
智也が情けない姿で、情けない声を出してそんな情けない事を言う。
と、小夜美がそれを聞いて微かにふふっと笑った。
智也は全くその事に気づかなかったが。
「・・・そんな智也くんのために、はい、これ♪」
智也はそれを受け取り、しげしげと眺める。
四角い箱が綺麗な布で包まれている。
「いつもより2時間も早くおきて作ったんだからね?この小夜美さんに感謝しなさいよ♪」
智也はその言葉を聞いてこれがなんなのかようやく気づいた。
・・・・もしかしてこの唐揚げの匂いは・・・この箱からにおってきているのか?
だとすればこれは・・・
「・・・弁当?」
「当たり前じゃない・・・。こんなところでさいほう箱か何かを渡す人がいる?」
小夜美がそう言うと、智也は少し恥ずかしそうに頭を書いた。
「・・・・俺、びっくりばこかと思った」
それを聞いた小夜美は必要以上に怒った顔をする。
・・・まあ、内心はその状況を楽しんでいるのだが。
「ちょっと智也くん、それ、ひどいんじゃないかなぁ?
あたし、智也君のためだけに2時間を費やしたんだからね?」
・・・・・俺のためだけに・・・か。
智也はそれを聞いて少し嬉しくなった。
自分のためだけに小夜美は頑張ってくれたのだ。
・・・『愛する人のためだけに』・・・自分の好きな歌のそんな歌詞を思い出して、智也は妙に照れくさくなった。
「ふふっ・・・まだまだ子供だね、智也君♪」
そんな智也を見て小夜美はそう呟いた。
智也を照れさせようとする作戦だったのだ。
だが・・・
「・・・小夜美さん、ありがとう。俺、今分かったよ、小夜美さんのことは好きなんじゃないって」
「え・・・・・?」
       


                  ・・・・続いちゃいます。



 感想BBS

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送