『今日も明日もいつまでも』後編
                             作:まる



「・・・小夜美さん、ありがとう。
俺、今分かったよ、小夜美さんのことは好きなんじゃないって」
「え・・・・・?」


小夜美はそれを聞いて、笑った表情のまま固まった。
突然好きな人に「好きじゃない」といわれたのだ。その反応は当然の事だろう。

そして、じょじょに小夜美の表情が悲しみへと変わっていく。
「な、何で!?あたし、智也くんに何か嫌われるようなことした!?
だったらごめん、謝るよ!!だから、だから・・・・」
嫌いになんてならないで・・・そう言おうと思ったのだが、その言葉を智也が遮った。
だが、遮られていなくてもその先はどうせ言えなかった。
小夜美は・・・・泣いていたのだ。
「ち、違うよ小夜美さん!!そういうことじゃない!!
俺が言いたかったのは「好き」じゃなくて「愛してる」んだってことを言いたかったんだよ!!」

智也は一気に言い終えたあと、自分がすごい事を言ったことに気づき、とても恥ずかしくなった。
そして小夜美は、それを聞いて更に泣き始めた。
まるで子供のように大声を上げて。
嬉しくて・・・恥ずかしくて・・・自分が本当に智也のことを好きなんだ・・・
いや、愛してるんだと分かって・・・・その想いが小夜美の瞳からとめどなく涙を流れさせた。
そんな小夜美を、智也は優しく抱きしめて、髪をなで続けた。
泣き止むまでずっと・・・・・。

「・・・・あたしの方が子供だね・・・・・・」
「え?」
小夜美が泣きやんで少しした頃、突然そんな事を言った。
小夜美はだいぶ落ち着いてきてはいるが、智也はまだ放っておけなかった。
だから、智也はまだ小夜美を抱きしめている。
「だって・・・あたし、智也くんがいないと何もできそうにないよ・・・・・情けないね・・・」
わずかに自嘲気味に小夜美が言う。それを聞いて智也は、小夜美を抱く力を強める。

「・・・・・・それでいいんじゃないか?」
「どうして・・・?」
小夜美が智也の顔を上目使いに見ながら言う。
「俺も小夜美さんがいないと駄目そうだから・・・・。
ちょうどいいじゃん、二人がいつまでも一緒にいれば問題ないよ」
小夜美の耳元で智也が言い聞かせるように囁く。
そして智也はようやく小夜美を抱きしめるのをやめた。
そして、小夜美が智也から一歩離れて、智也の顔を覗き込む。
「・・・・いいの?」
智也は一度目を閉じて、再びゆっくりと目を開けると、
「もちろん」
と、最高の笑顔でそう言った。
「へへへ・・・・ありがと、智也君♪」
小夜美もとびっきりの笑顔でそう言うと、いつものようなやり取りを始めた。
「智也君があたしのことを必要としてるんだったら、あたしも一緒にいてあげるしかないか♪」
智也はそれを聞いて笑顔で文句を言う。
「何だよそれ・・・・「あたし、智也君がいないと何もできそうにないよ・・・」
とか言ってたのはどこの誰だよ・・・」
「あれ?誰だろうね〜?あたしだって言うなら証拠があるのかな?智也君」
そういわれて、智也はポケットに手を入れてポケットサイズのカセットレコーダーを取り出す。
音楽の時間に使ったものだ。もちろん小夜美のそのセリフが録音されているわけではないが。
「さーて、これをどうしようかな〜、放送室に行って全校放送するのもいいし・・・
あっ!うちの目覚ましに録音して毎日それで起きるってのも・・・」
智也が小夜美をだまそうとそんな事を言う。
「や、やめてよ、智也君・・・・あたしが悪かったから。お弁当あげるから許して・・・・。ね?」
あっさりだまされる小夜美。そんな小夜美を見て智也は笑う。
「分かった、これは俺の家のCDラジカセに常にセットしておくことにしよう。さっ、弁当食べよっかな」
智也はそう言うと、弁当の包みを取ってふたを開け、さっそく食べ始める。
「ちょ、ちょっと智也く〜〜〜ん!!」

・・・・・今日も昼休みが終わり、二人は少し名残惜しそうに別れる。
しかし今日も、放課後に伝票整理を手伝うという名目で、再び二人の時間が始まるのだ。
そう、今日も。
明日も。
いつまでもいつまでも。
きっと二人は一緒にいるのだろう。

・・・・・・・これからも変わらず、ずっと変わらずに・・・・・・・・
変わることない幸せが、二人の間にあらんことを・・・・・・・・・



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