『過ぎし日の願い』 |
作:メンチカツ |
荷物がきた。
何の前触れも無く。
とにかくでけぇ荷物が。
これを寮の俺の部屋に運ぶまでの経緯には寮母である現役ぴちぴち女子大生なたえさんや、悪友である亮とのいろいろと面倒くさいやり取りがあったりするのだが、これ以上このSSに登場しないやつらのことをうだうだ言っててもしょうがないので無視しておくことにする。
「おい、どういうこった!?そりゃぁ!!」
「そうよ!私たちにも人権ってものが……」
「えぇい!俺の知ったこっちゃねぇ!!」
脇役は脇役らしく寮の前でも掃いてな。
俺は寮の玄関から二人を追い出し、箒を2本放り投げた。
ふ、今日の俺ってばとことんダークだぜ。……明日から寮の食堂で飯は食えないな。
そして俺は、俺の背と同じくらいあるこの大きな荷物の梱包を解いた。
「……ふぅ、梱包解くだけでこんなに疲れるとは」
決して広くは無い俺の部屋の床には、緩衝材や荷物の箱の素材であった木材の破片で埋まっていた。
とりあえずごみを全て纏め上げる。
同梱されていたいろんなものを押入れに突っ込み、床に座り込む。
「……ふぅ、疲れたなぁ」
チラッとあらわになった荷物を見てみる。
「……いかんいかん、ごみは棄てなきゃな」
とりあえず現実逃避のために先ほどのごみを棄てに行く。
そして部屋を開けると……
「……まだあるのか……」
もちろんそれは俺が部屋を出るときと変わらぬ姿でそこにあった。
親父から送られてきた荷物。
カプセル型の水槽のような装置で、中には人の形をした何かが入っていた。
そう。
これが親父の研究しているもの。
名を『ラプラス』……そう!かつて「澄空のラプラス」として恐れられたあのエプロンの似合うあの方が……って俺は何を言ってるんだろう?
親父の研究の成果であり、対象であるこの人工生命体。
名を『レプリス』という。
だが、女人禁制のこの男子寮にこんなものを送りつけて、一体どうしろというのか?
「そう!中に入っていたのは、裸の女性だったのだ!」
……いかんいかん、心の中の声を口に出してしまった。
いまの一言で薄い壁の向こう側の部屋でずっこける音がしたが、無視しておこう。人生山あり谷ありだ。ちょっと違うか。
「……とにかくずっとこうしてても埒が明かない。……といっても、何もすることもないんだよなぁ」
外に遊びに行くにも、運悪く雨が降り出してしまった。
雨雲は厚く、遠くのほうで雷も鳴り出した。
ふと、装置の中で胎児のように丸まっている女性の顔を見つめてみる。
「……笑ったら可愛いんだろうなぁ」
そう思ったらもう止まらなかった。
押入れに突っ込んだ取扱説明書を引っ張り出し、最初のページをめくり、目を皿のようにして慎重に読み始める。
……自慢じゃないが、俺はこういう類のものは読んだことが無い。ビデオなんかもいろいろいじって覚えていく。
だが、これに限っては一切の失敗は許されなかった。
なんといっても生命体なのだ。失敗は許されない。
「えーと、まずはPC開いて……DVD−ROM?んなもんあったか?」
またまた押入れに上半身を突っ込んで捜してみる。
なかなか見つからない。
「……ええい!面倒くせぇ!」
ガサガサガサァ!
押入れに突っ込んだものを、再び床にぶちまける。
その中に、大して大事そうにも思えない粗末な紙に包まれた一枚のDVD−ROMがあった。
「これをセットして……あとは表示される指示に従って入力していけば良いのか」
意外と簡単で助かった。
PCが読み込んでる間に、またまたぶちまけたものを押入れに突っ込む。
『読み込みを完了しました』
どうやら読み込みが終わったらしい。
とりあえず「次へ」をクリックしてみる。
『貴方のお好みに合わせて各項目を決定してください』
「ん?……へぇ〜、すごいなぁ。髪の長さや身長だけじゃなく、性格まで決めれるのか」
そう、項目には、身体的特徴だけでなく性格などの内面的特徴の項目もあった。
「……ということは!!」
そう、そうなのである。
これは、あるいみというか全てにおいて自分の好みに合わせることが出来るのだ。
つまり……
「あの日あの時あのゲームで味わったあの思い!いまこそ晴らす時!!」
もはや俺がやるべきことはただひとつ。入念にチェックしながら、慎重に慎重に各項目を決定していく。
「髪は腰辺りまで……色はライトブラウンなのかな?……無表情で……性格は冷静沈着……知力はマックス!」
これで全ての項目は入力した。後は送信するだけだ。
「よぉし、決定……と」
データの送信の状況を示すインジケータがゆっくり、ゆっくりとあがっていく。
1秒1秒が何分にも何十分にも感じられる中、ひとつの不安がむくむくと首をもたげていた。
その不安の正体は……
ゴロゴロゴロゴロォ……
「……近づいてきてるな」
そう、雷だ。もし雷のせいでショートでもしようものなら……
だが、俺はこの状況の中、逆に嬉しくもあった。
これもまた、夢にまで見たシチュエーションだったからだ。
インジケータもほぼ埋まり、雷もそのときを狙っているかのように近づいてきている。
「……どうする?どっちでいく?」
雷はすぐそこまで来ている。インジケータもいっぱいいっぱいだ。迷っている暇は無い。
「ロードス島戦記の黒の導師バグナードもいいが、今回はスレイヤーズの白のハルシフォムでいこう!」
俺は迷いを棄て、高らかに叫んだ。
「蘇れセリオよ!!」
ゴロゴロゴロゴロゴロピシャーーーーーーン!!
雷が寮の近くに落ち、大音量を響き渡らせる。
部屋の電源が落ち、辺りが暗くなる。
雷の逆光がくらくなった室内と俺の姿を浮かび上がらせる中、俺は高らかな笑い声を上げ続けた。
やがて電気が戻り、室内を照らし出す。
そのとき、PCに『初期設定不良です。直ちにプログラムを終了して下さい。終了しない場合、プログラムが正常に作動しない場合があります』と、表示されていたことに俺は気付いていなかった。
プシューーーーーー……
軽い音と共に装置の中の液体が水蒸気となって空中に吐き出されていく。
やがて全ての液体が水蒸気へと変わり、部屋を白く染める。
そんな中、装置の正面のガラスが音も無く左右に開き、中の人影が動き始めた。
緩慢な動作で立ち上がったそれは、踏みしめるように一歩一歩こちらへと歩き出す。
そして……
コツン
水蒸気の中で人影が慌てふためく。
「はわわわわわわ!」
「こ、この台詞は……まさかぁ!?」
ポムッ!
躓いたまま俺の胸に飛び込んできたそれは、俺の予想を確かなものにした。
緑色で、ショートカットの髪、小さめの頭。そしてこのドジっぷり。
そう、これはまごう事無き……
「マルチかぁ!?」
マルチだった。
「……く!あの落雷のせいか!」
あの時きっと異常が起きてプログラムが書き換えられてしまったのだろう。
だが……
「ま、これはこれでいいか♪」
ま、出来ればセリオのほうがよかったが、マルチでも問題は無い。
「ご、ごめんなさいですぅ!浩之さん」
「あははははは、いいっていいって」
マルチはドジだけど、純粋で優しくて可愛い女の子だ。
俺はマルチの笑顔を見ながら、これから始まる楽しい生活に想いを馳せていた……
……数日後、マルチのドジによりみんなにマルチの存在がバレてしまった。
「浩之さーーーーーーん!」
「マルチーーーーーー!」
そして、マルチは去っていった……。
「……結局、最後まで浩之だったな。俺は恭介なのに」
|
あとがき
いやぁ、くだらないSSですいません。
さすがに1時間のプレイですしね。
でも思いついたので書いてみました。
ちなみに恭介はこんな奴ではありません。
もっとまともな人間なので、ご安心ください。
ちなみに、スレイヤーズのあのシーンの言葉は、
「蘇れルビアよ」
というものでっす。
っていうかさぁ、みなさんもセリオかマルチがほしいなぁとか思ったんじゃないですか?
ねぇ!そうだといってよ!(TーT)
……すいません、しばらくはオリジナルSSに専念しますから許してください。
ではでは!
(ちなみに製作時間2時間!?( ̄□ ̄;)!? )
(改良時間10分!)
|
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||