THE・MEMORIES・OFF・FIGHTERS2001(MOF)
作:メンチカツ
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最終話 『澄空の空は今日も蒼く・・・・・・』
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「そうはいかなくてよ!」
謎の声に全員の視線が集まる。
そこには、白髪を紫色の長いリボンでポニーテール風に束ねた女性がいた。その手には、血の様に赤い刀身のレイピアを持っている。
そしてもう一人、女性型のロボットが佇んでいる。
それをみたダイアナが叫ぶ。
「フォクシー、キャンディーまで!?」
「またせたな」
そう言いながら歩いてくるのは、レイピアを持った女性だった。
「大丈夫だったか?」
「フォクシー、首尾の方は?」
「問題無い。全て終わった」
どうやら、白髪の女性がフォクシーというらしい。
ということは、あのロボットがキャンディーか?
「クーラ・・・大丈夫?」
「キャンディー・・・・・大丈夫よ」
キャンディーの登場にクーラの顔が少し緩む。
しかし、二人の声を聞いた感じでは、先ほどの声ではない様だ。
それに気付いた俺たちは、もう一つの入り口の方を見る。
そこにいたはずの何者かは残像を残してゼロに駆け寄っていった!
「裏面八拾伍活・零技の礎!!」
突如現れた影は、手に纏わせた光をゼロに叩きこむ。
その人物を見て、俺は叫んだ。
「神楽さん!?神楽さんなのか!?」
そう、途中でチームを外れたはずの神楽ちづるがそこにはいた。
「待たせたわね。でも、私だけじゃ無いわよ?」
「え?」
その声にもう一度俺が振り向こうとした時、真吾が声を振り絞った。
「・・・・く、・・・草薙さん・・・・?」
「よぉ、真吾。酷い格好だな」
そう、あの草薙流古武術継承者、草薙京がいた。
中分けの髪でキリッとした顔立ち。
黒地のシャツに白抜きの十字架のデザイン、そして白いジャケットを羽織っている。
そして、チェーンのアクセサリーをつけたジーパン。
それだけならオシャレなかっこいい男という感想で終わるだろう。
だが、その全身から溢れそうな威圧感。
そして、数々の修羅場を潜り抜けて来た証であろうその射抜くかのような鋭い視線が近寄りがたい印象を与えている。
そして、草薙の横にはもう一人の男がいた。
血の様に赤い長い前髪を垂らし、膝辺りまである長いYシャツのような物に黒い腰辺りまでのジャケットを着込んでいる。
そして革でしつらえたズボン。
こちらもそれだけなら、バンド風のかっこいい男という感想で終わるだろう。
しかし、草薙とは対称に全てを憎むような冷たい視線、そしてその全身から発せられる殺気が誰も寄せ付けない空間を作り出している。
この男は一体・・・・
そう思っていると、ゼロが不敵に笑って言った。
「ふっ、八神。まさか貴様まで来るとはな」
「・・・・・・・誰だ?貴様は」
八神は吐きつけるように言い放つ。
まさか、あの男が八神庵(やがみいおり)?
草薙京のライバルといわれる・・・・
「私はゼロ。ネスツの者だ」
「・・・・貴様が?・・・・くっくっくっくっく、ふはははは、はぁーーっはっはっはっはっはっはぁ!!」
ゼロの名を聞いたとたん、突然笑い出す八神。
どうしたのかと思っていると、突然真顔になり、言い放つ。
「ならば死ねぇ!」
そして走り出す八神。
それに対し、攻撃をしようとするゼロ。
しかし、
「!?」
攻撃が出来ない。
そしてそこへ八神がそのまま攻撃をいれる!
「うおおおおおおあああああぁぁぁぁぁ!!」
左手をゼロの腹に叩きこみ、くの字になるゼロの顔を右手で地面に叩きつける。
そして、
「死ねぇ!」
バグォォン!!
ゼロの顔を抑えつけたまま右手に生み出された蒼い炎が爆発する。
「・・・・っく!」
起き上がり、膝をつくゼロに神楽が言う。
「甘いわね。先ほどの私の攻撃で技を封印されたのをお忘れになって?」
そう言い、髪を払いながら微笑む神楽。
・・・・・強い。
さすがに三種の神器といわれるだけの事はある。
鏡を司る、「護る者」神楽ちづる。
勾玉を司る、「払う者」八神庵。
剣を司る、「封ずる者」草薙京。
この三人がいればこのゼロにも勝てるだろう。
しかもゼロはすでに技を封印されている。
このチャンスを逃す手は無い!!
K’や真吾は、すでにフォクシー達によって運び出されている。
・・・・そうだ、ゼロはこの三人に任せておけば大丈夫だろう。
それよりも、彩花を取り戻さないと!!
そう思い、クーラの姿を探す。
しかし、すでにクーラ達四人の姿は無かった。
(・・・・ちくしょう・・・・彩花・・・・)
唯笑と信が俺の傍で心配そうにしている。
「智ちゃん・・・・」
「智也・・・・」
この二人まで心配させることは無い。
「ああ、大丈夫だよ。まだ終わりって訳じゃないしな」
「智ちゃん・・・・・うん、そうだよね!」
「よっし!それでこそ智也だ!」
いったいなにがそれでこそなのかは分からないが、二人の気持ちは嬉しかった。
「クックック・・・・・いまさら来てももう遅いのだよ」
ゼロの声に俺達も気を引き締める。
見てみれば、ゼロと草薙達が相対している。
「どういうことだ?」
草薙がゼロに問う。
「もうすでにゼロ・キャノンのエネルギーは充分に溜まったという事だ」
「なんですって!?」
ゼロの答えには俺達も驚いた。
まさか、すでにゼロ・キャノンが発射出来る状態だったとは・・・・
しかし、
「フン・・・・・くだらんな」
八神が言い放つ。
「ほう?どうやって止めるつもりだ?」
ゼロが嘲るように言う。
「その前に貴様を殺す!・・・・・それだけだ」
八神は、まるでそれが当たり前とでもいうように応える。
しかし、そのセリフさえもゼロは笑い飛ばした。
「クックック・・・・このボタンを押せば、ゼロ・キャノンにエネルギーが転送され、発射される。すでに照準は合わせてある。この状況でどうやって止めるつもりだ?八神。私をこのボタンを押す前に殺す事が出来るとでも言うのか?」
そう言い、懐から出したスイッチのボタンに手をかけるゼロ。
一体どうすれば良いんだ?俺達にまだ出来る事はあるのか?
そう思っていると、
「貴様は何か勘違いしているのか?俺にとって、世界などどうでもいい事だ。貴様を殺し、京を殺す!ただそれだけだ」
八神のセリフに俺は戦慄を覚えた。
きっと、八神という男は草薙京を殺す為に生きているのだろう。
その執念深さに、ただただ恐怖した。
しかし、今は目の前に死が迫っている。
「うあああああああ!!」
俺は意を決し、ゼロに突っ込んでいった。
この状況で、俺が動くとは誰も思っていないだろう。
俺が動く事で、あの三人の誰かがなんとかしてくれる!
そう思っての事だった。
予想通り、ゼロがこちらに振り向き、攻撃の構えをとる。
そこへ、三人が走る!
「!?」
俺に気を取られたゼロは、三人に対応できないでいた。
そして!
「遊びは終わりだぁ!」
八神の八稚女が繰り出される。
八神の鋭い指が、ゼロを引き裂くように何度も攻撃を続ける。
「泣け!喚け!そしてぇ!」
そしてゼロの首筋を掴み、
「死ねぇ!」
ドォゥン!
爆発!
ゼロの体が宙に浮く。
「裏面百活・天神の理!」
神楽の対空攻撃により、更に高く上げられるゼロ。
そして落下地点には・・・・・
「うおおおおおおおおおお!!!」
草薙京がいた。
草薙の体に、炎が纏わりつき、陽炎を立ち上らせている。
「食らいやがれえぇぇぇ!!!」
草薙が右手に灯した火を腕ごと振り下ろす。
火は巨大な炎となり、ゼロに襲いかかる。
裏百八式・大蛇薙。草薙京の超必殺技だ。
ゴバァァァォオン!!
「ぐああああぁぁぁぁぁ・・・・」
ゼロの体が炎に撒かれる。
これが三種の神器の連携プレーか!
凄い、凄すぎる!!
「さぁ、もう後が無いぜ?」
草薙が不敵に笑う。
「・・・・っく!」
ゼロが唸る。
そしてゼロはスイッチに手を伸ばした。
「このボタンを押せば全てがゼロ・キャノンに転送される!さらばだ!新世界の光を浴びて散るがいい!!」
カチッ
『!?』
とうとうボタンを押されてしまった!?
ここまでか!
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・?
何も起こらない?
どうしたんだ?
「クッ!誤作動だと?何が起きている!?」
ゼロの叫びに目を開けたその時、
ドゴォォォォォォォォォォン!!
「ぐあああああぁぁぁぁぁぁ!!」
ジェネレーターが爆発した。
その爆発にゼロが吹き飛ばされる。
そして、一条の光が射しこむ。
「クッ・・・・・・!」
ゼロが手を伸ばす。
誤動作により発射されたゼロ・キャノンの光にゼロの体が呑みこまれる。
・・・・・・・そして、ゼロは死んだ。
 
「クーラ、クーラ!」
ダイアナとフォクシーがクーラを探しまわっている。
『私はここにいるよ』
「クーラ!どこにいるの!?」
『これ・・・・壊さないと・・・』
「え!?」
 
クーラは、衛星軌道上のゼロ・キャノンの上にいた。
『クーラ!何をする気!?』
「これ、まだ動いてる・・・・壊さなきゃ」
『クーラ!無理しなくていい!戻ってきなさい!!』
ダイアナが叫ぶ。
「だって、こんなのがあったら、危ないもん!」
『クーラ!!』
「フリーズ・エクスキュージョン!!」
『クーーーーラーーーーーーー!!!!!』
ズドガゴォォォオオオオン!!
 
ゼロ・キャノンは爆発した。
夜空をゼロ・キャノンの破片が落ちていく。
その景色はまるで、流星郡のように美しかった。
そしてその中を、世界を救った一人の少女が落ちていった・・・・・・・
 
 
「・・・・う・・・うぅ・・・・」
「気がついた?智ちゃん」
「・・・・・唯笑?」
気が付くと、唯笑が傍にいた。
辺りを見回すと、みんないた。
・・・・・いや、草薙京と、八神庵の姿は無かった。
「あれ?草薙さんと八神さんは?」
「うん、唯笑が気がついたときにはもういなかったよぉ」
そこに神楽が近づいて来る。
「あの二人ならもう行ったわ」
「えぇ!?」
神楽の答えに驚いたのは真吾だった。
「そ、そんなぁ!やっと会えたのにぃ!草薙さぁん!待って下さいよぉ〜!!」
そういいながら真吾は走り去って行った。
「俺達ももういくぜ」
そう言ったのはK’だった。
「その体で大丈夫なの?」
「長居するつもりは無い。まだネスツも滅んでないしな」
「そう。またいつか会いましょう」
「フン、・・・・・次は敵かも知れないぜ」
神楽と短い会話をした後、K’とマキシマは去って行った。
残ったのは、神楽と俺達だけだった。
「こんな事に巻込んでしまって、本当にごめんなさい」
「いえ、こんな大会があったなんて知らなかったし、楽しかったですよ」
「そう言ってもらえると、気が楽になるわ」
「・・・・・それに、彩花のことも色々分かりましたし・・・・」
そこで沈黙が降りる。
ふと空を見上げると、たくさんの流星に埋め尽くされていた。
その中に、ひときわ大きく輝く流星があった。
(彩花・・・・・・・・・)
俺が空を見つめていると、
「そろそろ帰りましょうか。あなた達をお送りするわ」
神楽が話しかけてきた。
「あ、はい。お願いします」
そして俺達は澄空へと戻った。
 
わざわざ神楽は、俺達の家まで送り届けてくれた。
「それでは、またいつか会いましょう」
そう言い残し、神楽も去って行った。
 
「なぁ、唯笑」
「なぁにぃ?」
俺達は今学校の屋上にいる。
「凄かったなぁ・・・・・・」
「ほえ?」
「KOFだよ」
「・・・・・・うん、すごかったねぇ〜」
「・・・・いつか・・・」
「え?」
「・・・・いいや、なんでもない」
「なになになになになにぃ〜〜?きになるよぉ〜」
「なんでもないって、教室戻ろうぜ!」
「まってよぉ〜!智ちゃんってばぁ〜!」
・・・・いつか、いつかまたKOFに出て見たい。
出れなくとも、また彼等に会いたい。
あの、全てを賭けて戦っていた、最高に輝いていた彼等に。
またいつか、会いたい・・・・・俺は本気でそう思っていた。
「お〜〜い!智也〜〜〜!」
俺が立ち上がった所で、信が駆け込んで来る。
「どうしたんだ?信」
「どうしたもこうしたもねぇよ!聞いてビックリだぜ!?」
一体どうしたんだろう?
「なになになにぃ〜?唯笑も気になるよぉ〜」
「よぉ〜く聞けよ!」
「だからなんだよ、もったいぶんなってば」
まったく、
「実はなぁ・・・・」
信はいつもこうだ。
「なんと・・・・・・」
いつもこうやってもったいぶって、
「今日・・・・・・・」
俺達を楽しませてくれる。
「転校生が来るんだ!」
そう、転校生が・・・・・ってえぇ!?
「マジかぁ!?」
「ああ、マジもマジ、大マジだ!」
・・・・・・また転校生が来るのか?
「早く戻ろうぜ!結構可愛いらしいしな」
「わかったわかった・・・・そんなに急ぐなよ・・・・」
俺達は教室へと走って戻った。
 
キーンコーンカーンコーン・・・・・・
「それじゃぁ、朝のホームルームの前にみんなに紹介する人がいる」
とうとう転校生の紹介か・・・・・まぁ、俺にはどうでもいい事だが。
「入ってきなさい」
「はい」
・・・・・・?
どこかで聞いた事のあるような声?
ガラッ
ドアが開く。
一人の少女が教室に入って来る。
『うおおおおぉぉぉぉぉ!!』
教室が騒がしくなる。
俺の視線が、まるでスローモーションの様に、ゆっくりとその少女の方に向けられる。
「それでは、自己紹介をどうぞ」
自然と、俺の表情が緩んでいく。
唯笑と信も同じようだ。
「クーラ・ダイアモンドといいます。皆さんよろしくね♪」
・・・・・・生きていたのか・・・・
しかし、俺にはもう彼女をどうにかして彩花を取り戻そうという気は無かった。
確かに、奴等の計画で彩花を失った。
その事は許す事など出来ない。
だが、クーラも一人の女の子として生きている。
その人格を無くしてまで彩花を取り戻す。それでは奴等と同じじゃないのか?
俺はそう思うようになっていた。
幸い、彩花が完全に消えたわけでは無い。
そう、クーラと彩花。二人と付き合っていけばいい。
新しい友達が増えたと思えばいいのだ。
・・・・・・これからの学校生活はますます楽しくなりそうだ!
涙にかすむ目を擦り、俺は静かに微笑んだ。
俺はふと、窓から見える空を見上げていた。
(・・・・・智也・・・・・また・・・逢えたね・・・・)
「!?・・・・彩花!?」
ふと、彩花の声が聞こえたような気がした。
その声は暖かく、とても優しく、俺の考えに喜んでいる様におもえて・・・・
しかし、見上げた空はいつもと同じだった。
澄空の空は、どこまでも蒼く澄み渡っていた。





後書き・・・・『クーラとキャンディ〜切れない絆〜』
 
広大な宇宙空間の衛星軌道上のゼロ・キャノンの上で、クーラは一人佇んでいた。
『クーラ!やめなさい!』
服に取りつけられた通信用無線から、ダイアナの声が聞こえる。
「いや!こんなのがあったら、みんながあぶないもん!」
『クーラ!!』
「フリーズ・エクスキュージョン!!」
『クーーーーーラーーーーーーー!!』
その手より生み出された絶対零度の凍風が、ゼロ・キャノンの内部に直接叩きつけられる。
そして・・・・・・
「・・・・・智也・・・・最後にまた逢えて・・・・嬉しかったよ・・・・」
ドゴゴォォォォオオオン!!
ゼロ・キャノンは爆発した。
 
広大な宇宙空間に広がる爆発の華。
ゼロ・キャノンの残骸が、さながら流星のように散っていく。
その中を、一人の少女が落ちていく。
「・・・・・このまま・・・・死んじゃうのかな・・・・」
一人呟くクーラ。
しかし。
「・・・・・え!?」
誰も居ないはずの宇宙空間の中、クーラの体を抱きしめる者がいた。
「キャンディ!?」
二人は、ひときわ大きな流星となって、落ちて行った。
 
「クーラ・・・・・」
ダイアナが沈んだ表情で立ち尽くしている。
その傍には、フォクシーの姿もあった。
『・・・・・ダイアナ』
「クーラ!?よかった・・・無事なのね!?」
ダイアナの顔が、喜びに変る。
『・・・・・・・・』
しかし、クーラは何も応えない。
「クーラ・・・どうした?」
フォクシーが変りにクーラに問う。
『・・・・・・トモダチってなに?』
「どうかしたの?」
クーラの沈んだ声に、ダイアナが問う。
『この子がトモダチだから守ってくれるって』
クーラの答えに、ダイアナは優しく応える。
「そう・・・・・・。友達とは、何にも代えられない大切な人のことだよ」
そして、もう一言、ダイアナは付け足した。
「抱きしめてあげなさい」
《くーら・・・・トモダ・・・・チ・・・・クーら・・・トモ・・・・・ダ・・・・チ・・・・》
クーラの腕の中、顔だけになってしまった、その顔すら半壊してしまったキャンディーが、壊れたカセットテープの様に繰り返し呟き続ける。
「うん・・・・・」
自分を、その身を捨てて守ってくれたキャンディーを、クーラはいとおしむ様に抱きしめる。
その顔は、涙に濡れていた・・・・・・
 
・・・・・・・・・・・・・END・・・・・・・



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