メモリーズオフ〜怖い話(?)〜
                             作:メンチカツ


ガタタン・・・・ガタタン・・・・

「ふぅ・・・・」
今日はとても疲れた。
「はぁ・・・・」
さっきからため息が聞える。俺の横で。
「ふぅ・・・・」
「だあああ!なんなんだ信!さっきからはぁだのふぅだの!」
「む?ああ、それはそれは格ゲーのお強い智也様には
21連敗を喫した俺の気持ちなんか分からないだろうよ!」
・・・・・そう。そうなのだ。
さきほどまで、西野達と一緒にゲーセンで遊んでいたのだ。
そして信は、例のごとく負け続け、今はその帰り道である。
「ふ、精進が足りないな」
「余計なお世話だ!・・・ったく、何で俺は勝てないんだぁ!」
「・・・・坊やだからさ」
「!・・・どっかで聞いたような台詞を・・・・」
信が何やらぶつくさ言っているが、俺には関係ない。
・・・・いや、窓の外に一瞬映ったあるモノに惹かれていて、
信の声なんて聞えていなかったのだ。
女性だった。
ショートヘアにウェーブが掛かったきりっとした顔立ちの女の子。

ゴスッ!

いきなり頭に走る痛み。
「・・・・信!いきなりなにしやがる!」
「さっきから呼んでんだろが」
「・・・・そうだったか?まぁいい。」
「なにボーッっとしてたんだ?・・・・女か?」
(ビクッ)
「ほほぉ、このスピードの中で一瞬にして女の子を見分けるとは」
「・・・・うるせぇ」
『澄空〜澄空〜』
車内にアナウンスが流れる。
「じゃぁな、智也。俺は用があるから」
「ああ。また明日な」

プシュゥ〜ガタン

それにしてもさっきの女性の事が気になる。
何処かで見たような記憶があるのだが・・・・
「あっれ〜?珍しいね。電車の中で会うなんて」
唐突に呼びかけられる。
その声に振り返り・・・・・
「!」
声にならなかった。さっきのショートヘアの女の子?
・・・・いや、違った。確かにショートヘアだが、見知った女の子だった。
「どしたの?」
「音羽さん?・・・・どうしたんだこんなとこで会うなんて?」
そこにいたのは、音羽さんだった。
「・・・・それ、さっき私が言った。もう、三上君聞いてなかったの?」
「ごめん、ちょっと他の事に気を取られてて・・・・」
うう、気まずい。女の子に見とれてたなんて知れたら、
明日から学校に行けなくなってしまう。
「ふぅ〜ん」
なにやら音羽さんがにやにやし始めた。
「あっ、急用を思い出した。ごめん、ここで降り・・・・」

プシュ〜バタンッ

言いかけた俺の目の前で扉が閉まる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言のまま、幾ばくかの時間が過ぎる。
何ともいやな空気だ。逃げようとしたのがバレバレじゃないか。
「・・・・三上君、今逃げようとしなかった?」
「そ、そんな事あるわけないじゃないかあ」
「お姉さんに告白しちゃいなさい。聞いてあげるから」

(何言ってるんだよ!そんなんじゃないって!)
・・・・そう言おうとした。でもなぜか、俺の口からは、
違う言葉が漏れていた。
「・・・・女の子を見てたんだ」
「女の子?ふぅ〜ん、へぇ〜え」
女の子と聞いたとたん、音羽さんが茶化してくる。
「ショートヘアで、ウェ〜ブが掛かってて」
「・・・・・・・・」
急に音羽さんが静かになった。
何か真剣な目でこっちを見つめている。
「・・・・そういえば、音羽さんに似てたなぁ」
俺がそういった瞬間、音羽さんの顔がはっきりと変わった。
ものすごいショックを受けたような顔をしている。
「音羽さん?」
「・・・・どこで見たの?」
「え?」
「何処で見たの!?」
急に鬼気迫る勢いで音羽さんが聞いてくる。
明らかにいつもの音羽さんじゃない。

プシュ〜ガタン
『藍ヶ丘〜藍ヶ丘〜』

電車がホームに着き、ドアが開く。
「とりあえず外に出よう、音羽さん」
「・・・・・・うん」
ホームを出て、俺達は公園に向かった。
少し遠いが、落ち着いて話が出来る場所に行きたかったからだ。
そして公園に入った時、急に音羽さんが立ち止まった。
「どうしたんだ?」
何も応えない。ただ前方の闇を見詰めるばかり。
・・・・いや、そこには女の子が立っていた。さっき俺が見た。
「ああ、あの子の事だよ。音羽さ・・・・」
「・・・・みかど」
・・・・みかど?だれだ?初めて聞く名前だ。
前方に佇む一人の女の子。見覚えはない。
音羽さんの態度からして、友達という訳でもなさそうだ。
「・・・・音羽さん?知ってんのか?あの子の事」
そういった瞬間だった。
ユラリと女の子の姿が歪み、こちらに近づいてくる。
「いや、来ないで!!」
音羽さんが激しく抵抗する。しかし、体が硬直して動かない。
「お願い!来ないで!ワタシに近寄らないで!!」
泣き叫びながら助けを乞う音羽さん。
無情にも歩み寄るみかどという女の子。
そして、みかどが目の前まで来た時・・・・俺達は気を失った。

パシ、パシ

誰かが俺のほっぺたを叩いている。
「ちょっとぉ、三上君?大丈夫?」
音羽さんの声だ。心配そうにしている。
(よし)
俺は、音羽さんの心配を取り除く為に、元気に起き上がる事にした。
「僕を叩いたね?それも二度も!オヤジにもぶたれた事無いのにぃ!!」
「・・・・・・・・」
シーーーン
寒い!寒すぎる!!
「ま、まぁ無事で何よりだわ。」
「・・・・あれ?俺は一体・・・あ!みかどは!?」
徐々に覚醒していく頭と共に、先ほどまでの記憶も蘇る。
「・・・・はぁ?なに寝ぼけてるの?」
「・・・・え?」
俺は耳を疑った。さっきまで泣き叫んでいたのは音羽さんじゃないか!
「そんな事よりぃ、早く帰ろ?」
「・・・・・・わかった」
釈然としないまま、俺は音羽さんに従う事にした。
そして、二人で、朝もやの中を歩いていった。

音羽さんの髪にウェーブが掛かって要る事に気付かずに・・・・・・。





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