----- レジェンド・メイカーズ!! -----
第2章『世界の真実、集う運命』その4
作:メンチカツ



「ほら、もうあそこまでBランクが来てるわよ?」
 フェレットの言葉に示された方向を向くと、1体の異形がこちらへと向かっていた。
 その異形は足が異様に長く、間接が二つあった。外見的にはカブトムシのようで、全身を硬い甲殻で覆われている。顔から生えた一本の角は、貫けないものなど無いかのように鋭く尖っていた。
「……でも様子が変ね」
 普通、異形はその本能のままに行動する。主に破壊や殺戮に走るケースが多い。
 だが、こちらへと歩いてくる異形はその凶暴な姿に反して、破壊も何もせずにただよろよろと歩いてくるだけだ。
「なんにせよ倒せそうならさっさとやっちまおうぜ」
「そうね。……梁滋、久しぶりにあれ、やる?」
「あれって……あれか?」
 何も行動を起こさない異形をさっさと倒すことを提案する梁滋。それに対し、私は梁滋に久しぶりにあれで倒すことを進める。
「あれってなんです?」
 コスモスが聞いてくる。
「まぁ、見てな。……派手にいくぜ!明!」
「OK!」
 そして私たちは、それを実行に移した。
 梁滋が再び剣を抜き、私は魔法の構えをする。
「んじゃスピードアップの魔法を……」
「それなら私に任せて」
 私の言葉を遮って声をかけてきたのはフェレットだった。
「付与魔法なら私に任せて」
 そういい、フェレットが呪を唱える。
「時を運びし優しき風よ・彼の者にその加護を与えよ!『ウィア』!」
 梁滋の体を風が取り巻き、やがて消える。風が消えた後、梁滋の体は薄い緑色で発光していた。
「……おお、こりゃすげぇ。付与魔法に関しちゃ明よりも上かもな」
「……私は攻撃魔法が得意なの!」
 言い訳などしながら異形へと体を向ける。
 そして……梁滋が叫んだ。
「我が剣術は風の如く!『速撃連斬』!」
 梁滋の体が消える。風の加護により、目にも留まらぬスピードで攻撃を仕掛けたのだ。攻撃は一度では終わらず、異形の周りを走りながら何度も切りつける。
 異形の甲殻は思いのほか硬く、梁滋の斬撃は甲殻を切り裂いているに過ぎない。
 しかし……梁滋のあまりにも速い動きにより、風が渦を巻き、それはやがて竜巻となった。
 そして……
「我が魔術は烈火の如く!『ボム・フレア』!」
 私の手から魔術によって生み出された火球が放たれる。火球は竜巻に当たって弾け、竜巻は炎を取り込んでファイヤーストームとなる。
 抵抗しきれなくなった異形はその身を焼かれながらファイヤーストームに吹き上げられ、天高く吹き飛ばされる。
「静謐なるは林の如く!『轟拳大芯山』!」
 梁滋は剣を鞘に収め、魔力によって破壊力を増幅されたその拳を大地へと叩きつける。
 すると、異形の真下……つまりファイヤーストームの中心の大地が裂け、盛り上がり、一本の巨大な土の錐を生み出す。その姿はまるで、土で出来た一本の大樹のようだった。
 大地の変化によって流れを乱されたファイヤーストームは消え去り、頂上まで吹き上げられた異形が降下を始める。
「冷厳たるは山の如し!『ガーネット・クラッシュ』!」
 続いて私の手から放たれたのは紫がかった赤い光だった。
 それは梁滋の技で生み出された土の錐に当たると拡散し、辺り一帯をその光で包み込む。
 すると、光で覆われた範囲内に超重力が発生し、異形は物凄いスピードで落ちてくる。
 光で覆われた範囲の大地は魔力で強化されたために超重力で崩れたりすることは無い。
 微動だにすることも許されずに異形は高速で落下し……その身を裂きながら土の錐の根元まで深々と串刺しになった。
 これが梁滋と私の二人合体技、『風林火山』だ。
「よっしゃぁ!やったな!明!」
 私たちから離れた場所で、こちらへと走りながら梁滋が叫ぶ。
 その時だった。
「危ない!梁滋さん!」
 コスモスが叫んだ直後、梁滋の体が真横に吹っ飛んだ。
 梁滋は民家の壁にぶつかり、地へと落ちる。
 ここから見ただけでは確かなことはわからないが、たいした怪我は無いようだ。
 梁滋の体はまだ薄い緑色の光を纏っている。
 風の加護が衝撃を吸収していなければ、数本の骨が砕けていただろう。
 それも、梁滋の鍛え抜かれた体でこそ。普通の人間ならば体中の骨が粉々になって死んでいただろう。
「……ぐっ……く、くそ!」
 そこには、いつの間にか一体の異形がいた。
 残りの一体だろう。
 その腕は触手のようにしなり、蠢いている。足は大きく太く、やたらと筋肉質で硬そうなイメージがある。
 首から上は無い。その代わりとでもいうように、胸に大きなひとつの眼があった。
 足と手以外の部分はなにか透明なスライム状のもので覆われている。おそらく身を護るためだろう。
 その筋肉質の足で大地を踏みしめながら、梁滋へと近づいていく。
 梁滋も剣を抜き構えるが、態勢が整っていない。あまりにも不利だ。
「させるかぁ!!」
 声を上げて突っ込んでいったのは、コスモスだった。
 日本刀のような片刃の刀を鞘から抜き放ち、異形に向かって走る。
 まずい。めちゃくちゃまずい。
 私の感だけど、あの異形はBランクではない。
 Sランク、またはランク外だと思う。
 これも定説でしかないが、異形はランクによって基本能力が違うとされている。
 例えば、最低ランクのHからEまではただ力のみによる攻撃しかせず、その破壊力によってランクが決まる。
 DからAまでは物理攻撃だけでなく魔法も使用し、その異形の魔力の高さによってランクが決まる。
 異形はAランクまでは本能の赴くままに行動するので、魔法を使う場合その異形の操る魔法の中で一番破壊力のあるものを使う。だからこの場合は、異形の操る魔法によってランクが決まる。
 問題なのはSランク以上の異形だ。
 Sランク以上の異形には、知能があるのだ。
 ある説によれば、怒りや憎しみ、激しい悲しみなどで変化するのがAランクまでとするなら、Sランク以上は進んで異形になる人種……つまりマッドサイエンティストなどが異形化したもの。ゆえに自我が崩壊することなく知能を持ったまま異形になるというのだ。
 私の感が当たっているならば、コスモスの何の作戦も無い攻撃など簡単に避けられてしまう。
 梁滋から聞いた話とは違うが、そんなことを言っている場合じゃない。
「……しょうがない、一か八か!」
 私はとある賭けに出た。
 そして呪を唱え始める。
「全てを焼き尽くす紅蓮の業火よ!槍となりて全てを貫け!」
 コスモスが手に持った刀で斬撃を繰り出す。
 そして、私は呪文を発動させる。
「『ランス・オブ・フレア』!!」
 私が狙った場所は梁滋とコスモスの上。
 異形は私の狙ったとおりにコスモスの斬撃をジャンプでかわした。
 そこへ私の放った『ランス・オブ・フレア』が直撃する。
 異形は爆炎に呑まれながら吹っ飛んだ。
「梁滋!コスモス!早くこっちへ!」
 さっきの攻撃くらいであの異形を倒せたとは思えない。あくまで時間を稼ぐために放ったもの。
 梁滋とコスモスが立ち上がり、こちらへ向かおうとするが、この異形はスピードに長けているのかすぐに態勢を立て直して反撃してきた。
 その力強い足で地面を蹴り、そのまま錐揉み回転で突っ込んでくる。2本の触手のような手を絡ませ、まるでドリルのようだ。
 だが、その破壊力はドリルよりも性質が悪い。
「く!」
「うわっと!」
 なんとか二人とも避けるが、異形はそのまま壁に激突し、その余波で二人を吹き飛ばす。
 崩れた壁の瓦礫を払いのけながら異形が立ち上がる。
 梁滋が動かない。
 ここからでは私の攻撃魔法は使えない。二人を巻き込んでしまう。
 しかしその時。
「あんまり俺をなめるなよ!」
 コスモスが叫んで立ち上がる。
 手には刀が握られている。
 異形はコスモスを標的にしたのか、走って突っ込んでくる。
 対するコスモスは刀の柄を左手で持ち、刃を上に向け、峰に右手を添え、顔の横に構える。
 その態勢でコスモスが気合を込める。
 すると、刀が薄く輝きだした。
 異形はさして気にするでもなくその右腕を振り上げ、振り下ろす。
「!?」
 驚いたことに異形のその右腕が伸びたのだ。
 コスモスは横っ飛びにかわすが、異形は続けて左腕を振るう。それを刀で切り飛ばしたコスモスは、先ほどの態勢を構えなおしてから異形の懐へと飛び込む。
 異形の目が光り、コスモスへと向けて発射される。
 だが、コスモスはそれをしゃがんでかわし、刀を相手の股下に差し込み、叫んだ。
「『天昇烈火』!!」
 コスモスは刀を両腕で固定したまま思い切り上へと飛ぶ。
 薄い光を湛えた刀は異形の体を安々と切り裂き、そのまま真っ二つにして異形の上へと抜け出た。
 その薄い光の所為だろうか?刀が通った後を追うようにして炎が湧き上がり、異形を包み込む。
 ほんの数秒後、異形は灰となって消えた。
 梁滋の手当てをしたが、たいした怪我は無い。吹き飛ばされたときに頭をぶつけ、気絶していたらしい。
 コスモスも刀を鞘に収め、フェレットを抱いている。
 残るはあと一体。
 一番厄介な相手かもしれない。
「ミリア……生きててよね!」
 私はそう呟いて、仲間たちとミリアの元へと向かった……。


次回へ続く





あとがき
今回から大体2話分くらい書いて見ました。
どんなもんでしょうか?
こんくらいで良いでしょうかねぇ。長さは。
まぁ、次回も頑張るデス。



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