『ホワイトデー〜愛には愛のお返しを〜』
作:メンチカツ





3月14日。
世界中の男どもが苦しむ日である。
この場合、ほとんどにおいて例外は無い。
よっぽどの金持ちでも無い限りは、誰もが苦しむ日なのだ。
毎回複数のチョコをもらっているモテオ君はそれと同じ量のお返しをしなくてはなら
無いし、もらえなかった哀れな奴等もお返しをする相手がいないということから自分
をごまかすしか無いのだ。
現に俺の目の前で信が
「俺はもらってないから金かかんないもんね〜」
などと虚しい言い訳をしている。
ホワイトデー。
もらった相手が本命だった場合、それなりに良い物をお返ししたくなる。
そう、チョコをくれた相手が好きなほど・・・・・・

「と〜も〜ちゃ〜〜〜ん!!!」
唯笑が俺の傍に駆けよってくる。
「なんだ?ゆ・・・・・ぇおわ!?」
タックルの様に駆け寄る勢いをそのまま俺にぶつけてくる。
ドガラガシャーーーン!!
俺はそのままふっとばされ、机を2個ほど倒してしまう。
「いってぇぇぇ・・・・・・唯笑!いきなりなにするんだ!?」
「ご、ごめんねぇ・・・・」
痛え。痛すぎる。マジで痛え。
見て見ると左腕の肘が青くなっている。
「まったく・・・・・何をそんなに急いでたんだ?」
「うーんとぉ・・・・・別に急いでないよ?」
急いでもいないのにタックルかましたのかお前は。
「・・・・・まぁいいや、後で唯笑の家に行くから」

今日は3月14日。
ホワイトデー。
智ちゃんからのお返しがあるはず。
別に唯笑はお返しが欲しいんじゃ無いんだよぉ?
智ちゃんがぁ、唯笑を好きでいてくれるなら・・・・・・
でも・・・・・・
「後で唯笑の家に行くから」
はっきりそういわれちゃうと・・・・・ちょっと寂しい。
智ちゃん・・・・なんの用があるんだろ?
唯笑よりも大事な事なの?
智ちゃん・・・・・・唯笑・・・寂しいよぉ・・・
・・・・・えぇい!智ちゃんの後ついて行っちゃおう!
智ちゃんが悪いんだからね!!

「さて、そろそろ行くかぁ・・・・ふわあぁぁ・・・」
そう呟いてから背を伸ばし、学校の校門を出る俺。
そのまま歩いていく。
やがて駅が近づいてくる。
カラン・・・・・
缶を蹴飛ばす音がした。
何気なく振り返る。
「うわっとぉ!!」
誰か転んだのだろうか?
まぁいい。さっさといこう。
俺はそのまま駅で切符を買った。

智ちゃんが歩き出した。
探偵唯笑ちゃんの出番だぁ!
「ふっふっふぅ・・・・尾行を開始しまぁす!」
探偵心得その一!
尾行する時は物影で!
相手に見付かっちゃったらだめなんだよねぇ〜♪
って行ってる間に智ちゃんが駅に!!
「ぁっ・・・」
カン!!
やばいよやばいよぉ!
どどどどこかに隠れなきゃ!!
唯笑の必殺技!!
(智ちゃんこっち見てるよぉ〜)
ばれちゃったかなぁ?
唯笑は今なんと!背景の一般キャラになりすましているのだぁ!
うぅ・・・動けないのは辛いよぉ・・・・・・
なかにはゲーム中に寝ちゃうユーザーだっているのに。
良くみんな何時間も同じ体勢でいられるよぉ・・・・・
あ!智ちゃんが動き出した!
・・・・よかったぁ・・・バレてないみたい。
切符買ってる・・・・・智ちゃん・・・・唯笑をほっといてどこに行くの?

「ふあああぁぁぁ・・・・・」
眠いなぁ・・・つーか眠い。眠いぞ。
ガタンガタタン・・・ガタンガタタン・・・ガタン・・・
電車がついた。
プシュー・・・・・
『澄空駅〜澄空駅〜』
結構空いてるな。座れそうだ。
ドアが閉まる。
『駆け込み乗車は危険ですので、おやめください』
そんなアナウンスとともに俺の横に慌てて座る奴がいた。
・・・・・・・あやしい。
妖しすぎる。
澄空学園の制服に、ハンテイング帽とサングラス。
しかも女性だ。
いったいなんなんだこいつは?

到着した電車に、唯笑は慌てて乗った。
ここで見失う訳には行かない。
しかし、慌てすぎて、智也の横に座ってしまっていた。
(どうしよぉ!!唯笑ちゃんぴんち!)
唯笑はなるべく顔を伏せるようにしてじっとしていた。
しかも智也は・・・・・気にはなっているようだが、唯笑とは気付いていない様だ。
そのまま電車は二人と多数の客を乗せて動きだした。
『まもなく藍空駅に到着します』
智也が立ち上がる。
『藍空駅〜藍空駅〜』
プシュー・・・・・
智也は降りて行った。
続いて唯笑も立ち上がり、電車を下りる。
改札を出た智也は、そのまま歩いていく。
唯笑は少しいぶかしんだ。
(智ちゃん・・・・・家じゃないほうに歩いてる・・・・・・)
唯笑の気持ちがしぼんでいく。
唯笑は引き続き尾行を続行した。
唯笑ちゃんの探偵心得その2
あきらめないこと!
だそうである。
やがて智也がひとつの建物にはいっていく。
唯笑の顔がハッとなる。
「ここって・・・・・どうして・・・・」
ここには唯笑も何度か来たことがあった。
そう、ここは・・・・・・・

俺は、ある場所で立ち止まる。
目の前にある物を見つめる。
そこにはこう書いてあった。
『桧月家之墓』
彩花の墓だ。
俺はそこで手を合わせる。
そして、今日一日ずっと考えていたことを強く強く想った。
(よし・・・・こんなもんかな)
「これからは・・・・また来るよ。彩花」
そして俺は、墓を後にした。
外に出ると、唯笑の後ろ姿があった。
「唯笑!」
俺が唯笑を呼ぶと、その肩がビクッ!っと震えた。
そしてゆっくりとこちらを向く。
その瞳には、涙が浮かんでいた。
「どうしたんだ?唯笑」
俺は唯笑の下に駆け寄った。
「唯笑・・・・いったいどうしたんだよ」
「智ちゃん・・・・・・唯笑・・・・・」
「・・・・彩花のことか?」
「唯笑、自分のことしか考えて無かったんだよ・・・・」
「・・・・・・え?」
「唯笑、自分のことしか考えて無かったんだよぉ!智ちゃんはちゃんと彩ちゃんのぶ
んも覚えてたのに、唯笑は智ちゃんのことしか考えて無かったんだよぉ!」
唯笑が泣きじゃくりながらその全てを吐き出すかのように叫ぶ。
「ゆ、唯笑?ホワイトデーは男が女の子に渡す日だぞ?」
「そんなの関係無いよォ!彩ちゃんはあっちに行っても唯笑や他のみんなのことも覚
えててくれたんだよ!?そう、手紙に書いてあったじゃない・・・・・なのに、なの
に唯笑は・・・智ちゃんのことで頭が一杯で・・・・・」
「・・・・・・唯笑・・・」
「こんなんじゃぁ彩ちゃんの幼馴染失格だよねぇ?智ちゃんの傍にいられないよォ・
・・・」
「唯笑」
「・・・・・え?」
「唯笑は彩花のこと嫌いか?」
「そ、そんなことないよぉ!唯笑、彩ちゃんのこと好きだよぉ!?」
「じゃぁ・・・・そんな悲しい事言うなよ・・・・・」
「・・・・・・でも・・・」
「彩花も俺も・・・・唯笑のそんな沈んだ顔なんて見たくないよ・・・・・」
「・・・・でも!!っあ・・・・」
なおも反論しようとする唯笑の口を俺は自分の口で塞いだ。
そのまま時間が過ぎていく。
やがてどちらともなく唇を離す。
「・・・・・智・・・ちゃん・・・・・」
「唯笑・・・・いこうぜ」
「・・・・・うん!」
そして俺達は、彩花の墓前へと向かった・・・・・・





-後書き-----------------------------------------------
色とりどりの花が咲く幻想的な場所で、一人の少女が座っていた。
そこへもう一人の少女が走ってくる。
「彩花〜!」
彩花と呼ばれた少女が走って来る少女の方を振り向く。
「どうしたの?花梨ちゃん」
「彩花に贈り物が届いてるですの」
「贈り物?」
彩花は目をぱちくりさせていた。
まさかこっちにきてまで贈り物があるとは思わなかったのだ。
「そですの。送り主は・・・誰だと思うですか?」
「もしかして玉子ちゃん?」
「ちがいますの」
「じゃぁ和華さん?」
「ちがいますのぉ!」
「でも・・・・・こっちの世界の知り合いなんて、花梨ちゃんや葵ちゃん達を除いた
ら・・・・その二人くらいしかいないよ?」
ちなみに、天乃玉子と天乃和華は天界交通課の天使である。玉子は和華の部下であ
り、地上の魂が迷わないように誘導したりしている。
「もっと身近の人・・・・・じゃないですけど・・・・地上からですの」
「地上って・・・・・まさか!?」
「そですの!智也と唯笑からですの!」
「・・・・・花梨ちゃん・・・・・冗談は止めてよぉ」
彩花は軽く溜息を付きながら答えた。まるっきり信じていないようだ。
「本当ですの!強い想いは私達天使の力で形にする事ができるですの」
「形って・・・・・」
「花梨がクッキーにしましたの」
「・・・・・へっ?」
彩花が素っ頓狂な声を上げる。
「はいですの」
そういって花梨が差し出したのは、奇麗にラッピングされた包みだった。
「食べるですの。クッキーになった想いがそのまま食べた人の頭に入るですの」
そういわれた彩花は恐る恐る包みを開け、クッキーを食べた。
「・・・・・!!」
彩花の顔が驚きに変る。
「美味しい!!」
花梨がこけた。
「彩花・・・・・天然ですの?」
「あは、あはははは・・・・・・!!」
苦笑いしていた彩花の顔が急に驚いたものに変り、その瞳から涙が溢れ出す。
「・・・・智・・・也・・・・・・それに唯笑ちゃん・・・・」
智也と唯笑の想いが彩花の頭の中を駆け巡る。
『彩花・・・久しぶりだな。智也だ。
まだ俺の事覚えてるか?チョコ美味しかったよ。
俺の事ならもう大丈夫だから、心配しなくていいぜ。
・・・・・・・彩花・・・・・お前はそっちで幸せか?
俺達はいつまでも一緒だよな。約束したもんな。
じゃ・・・・また来るよ・・・・・・彩花の事は一生忘れないから
                 愛する幼馴染へ。 智也  』

『やっほ〜!唯笑ちゃんだよ〜!
ねぇねぇ彩ちゃん、唯笑ねぇ、いまとっても幸せなんだぁ!
智ちゃんと一緒だから!
・・・・・・彩ちゃん・・・・・・・唯笑はもう泣かないから・・・・
だから何も心配する事なんて無いからね。
彩ちゃんも幸せになってね・・・・・・笑顔でいてね!!
             大好きな彩ちゃんへ!唯笑より  』

彩花はその瞳から流れ続ける涙も拭かずにその想いに浸り続けていた。
その日地上では、雨が降りやまなかった。
そしてその雨は、いままでになく澄んでいたという・・・・・・

あなたは愛を知っていますか?
あなたは愛されていますか?
願わくば、これを読んでいる貴方に愛を伝える勇気が生まれますように・・・・・・




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