『想い馳せし日々』 |
作:メンチカツ |
少女が公園の入り口に立っている。 黄色いリボンを髪に結んだ幼い少女。 何時からそこにいるのだろうか? 何時そこに現れたのだろうか? 誰にもそれはわからない。 ただ、その少女は無表情なまま一人の男を見ていた……。 「……ふぅ」 智也は、仕事に来て行くスーツ姿のまま公園のベンチに背をもたれさせたまま溜息をついた。 ベンチの上の部分を肘掛代わりに両腕を乗せ、空を仰ぎ見る。 「みんなはどうしてるかなぁ」 あれから数年がたち、智也は社会人になっていた。 空はまばゆく太陽が照りつけ、地上をやさしく暖かく包み込んでいる。 智也は夜勤で、仕事前に一服しに来たのだった。 そして、今ではほとんど会う事もなくなった旧友たちのことを思い浮かべていた。 信はドイツに行くって言ってたけど、本当に行ったのか? みなもちゃんは病気の療養のためにアメリカへと渡った。元気でいるのかな? 詩音は紅茶好きだったからてっきりそれ関係になると思ってたけど……いまじゃ外交官かぁ。すごいよなぁ。 かおるはとりあえず日本全国を気ままに旅してくるって言ってたし……今はどのへんかな? 小夜美さん……大学卒業して、何するのかと思ってたら……澄空学園で購買の人気アイドルに落ち着いちゃってるし。 唯笑は……あいつとは何時までも一緒だと思ってたけど、あの明るさと優しさのおかげで保母さんになって、沖縄にいっちまったし。 いつでも会えそうなのは小夜美さんくらいか。 とりとめのない事を思い浮かべ、不意に傍らにおいておいた缶コーヒーを手に取る。 「……ング、ング、ング……ふぅ」 空になった缶コーヒーを両手で握り、両肘をひざの上に乗せてうつむく。 智也はしばらくそのままでいたが、顔に笑みを浮かべると、勢いよく立ち上がった。 「……俺も頑張らなきゃな!」 公園に配置されていたゴミ箱に空の缶を投げ捨てる。 軽い呻きをあげながら伸びをし、まぶしい空を見上げて全ての想いを吹っ切る。 「さぁて、いくかぁ!」 かつてすごした幸せな日々。 その日々を彩る大切な親友たち。 それらは思い出となり、何時までも心の中に生き続ける。 そう、たとえ社会人になろうとも、たとえ会うことが難しくとも、彼らは何時までも一緒にいるのだ。 そしてその関係も少しも変わることはない。 長いときを経て再会しようとも、きっと昔話に花を咲かせ、楽しく語り合うのだろう。 そんな小さな幸せに想いを馳せ、いつか来るであろうその日を心待ちにしながら智也は歩き出した。 智也の行く先は会社かもしれない。 だが、それは紛れもなく、未来へと向かう道であった。 智也の心にはもう悲しみに彩られた過去はない。 智也の心の彩花は、いつも優しい微笑を浮かべているから……。 少女は男の歩いてゆく後姿を見つめていた。 その姿が見えなくなった後もしばらくそのままでいたが、不意に満面の笑みを浮かべて大きな声で叫んだ。 「永遠はあるよ!ここにあるよ!!」 少女は、明るい笑い声を響かせながら笑顔のまま走り去っていった。 その声は公園に木霊するほどだったにもかかわらず、誰も聞いたものはいなかった。 それどころか、その少女を見たものすらいなかった。 ただ、誰のものかわからない黄色いリボンがそこに落ちていた。 |
あとがき 少女の正体わかった人!Σ( ̄□ ̄;)!? ええ、もちろんONEのあやつですな。 うーん、何が言いたかったかわかるかなぁ? まぁ、何かを感じ、感動していただけたら幸いです。 >>次回予告<< |
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