もう一つのmemories  off
〜始まりの朝〜
作:ニンニン



そこは暗闇だった。
少しの光も差さない黒い世界。
そこに一人の青年が立っていた。
「ここは?」
彼は暗闇の中を歩き続けた。
どの位歩き続けただろう、突然彼の前に一人の少年が現れた。
暗くて顔は見えないが輪郭だけはハッキリしていた。
「やぁ、また来たんだね。」
その少年の声は暗く沈んだものだった。
「君も懲りないね、何度もここに来たりして。」
「何を言っているのだ。大体お前は何者なんだ。」
「君こそ何を言っている。僕が誰かは君が一番知っているはずだよ。」
確かに彼はその少年の事を知っていたが、彼はその事を認めたくなかった。
突然辺りに光が差し、少年の顔がハッキリと見えるようになった。
しかし、その姿は影のように暗かった。
「僕は君だよ、もう一人の君さ。ただし、少々昔の、あのときの君自身だけどね。」
「―――っ。」
「昔、君が何をしたのかもう一度見せてあげるよ。そして、自分の罪の重さもね。」
―パチン―
少年が指を鳴らすと辺りの景色が一変した。
それは雨の中一人の少女が白い傘を差しながら、どこか嬉しそうに走っていくところだった。
「やめろ・・・。」
彼は呟いた。彼は知っている、この景色も。
そしてこの後に起こる悲劇も・・・。
彼は目をそらそうとしたが動けなかった。声すら出なかった。
次の瞬間。
―キキーッ、バン!!
けたたましいブレーキ音の後に何かが車にぶつかる音がした。
そこには先ほどの白い傘を差した少女が横たわっていた。
―助けなくては!―
彼は頭の中ではそう思ったが、体のほうは動いてはくれなかった。
そうしているうちに少女の周りには赤い染みが広がっていった。
「くっ!お前一体に何がしたいんだ!!」
彼は少年に怒鳴りかけた。
「何がしたいだって?フフッ、それは僕に行ったのかい、
それとも君自身に問い掛けたのかな?」
「・・・。」
彼はその問いに答えることができなかった。
「どちらでもいいさ。さぁ続きがあるんだ、もちろん見てもらうよ。
これは君が犯した罪なんだからね。」
そう言うと彼は再び少女の方へと見つめる事になった。
ちょうど先ほどの少女のところに一人の少年が走り寄っているシーンだった。
「――――!!!」
少年は力の限り叫んでいた。
思わず彼は目を閉じ耳をふさごうとしたが、
「目を背けずに見てくれよ。これからが一番良い所なんだから。」
少年は無理矢理に彼を少女達のほうへと向けさせた。
「やめろ、見たくない・・・。」
少年は彼のつぶやきを無視した。
「ゴメンね・・・ね。傘・・届け・・・・られなく・・・て」
「そんなコトはどうでもいい。もうしゃべるな!」
「あ・・れ。何で・・・かな。眠たく・・・なって・・・・き・・ちゃっ・・・た。」
「ダメだ!!眠らないでくれお願いだ!!」
「ご・・めん・・・・少し・・・寝・・・か・・・せて」
少女のまぶたはだんだんと下がっていった。
「おや・・・・・すみ。」
そう言うと少女は動かなくなってしまった。
「――――!!!!!」
少年は叫んだ、力の限り、声の限り。
次の瞬間
「―――くっ!」
少年はこちらを睨みつけた。
ほんの一瞬、それは言われなければ気付かないほど短い時間だった。
いつの間にか救急車が来て、彼女達を乗せていった。
後には白い傘だけが残されていた。
「どうだい、感動の場面だろ。恋人との永遠の別れ、泣ける話じゃないか。」
「ふざけるな!貴様ー!!」
彼は少年に掴みかかった。
「ふざけるな?それはこちらのセリフだよ。君はあの少女を見捨てたんだ。
あの時すぐに助けを呼ぶなり、蘇生法をすれば彼女は助かる可能性があったんだ。
それなのに君・・・いや僕というべきか、何もしなかったんだ。
それを分かった上でふざけるなといっているのかい?」
彼は何も言い返せなかった。
「フフッ、分かってくれたようだね。君にはもうしばらくここに居てもらうよ。」
そう言い残すと少年は消えていった。
「もう一度君の罪の重さを分かってもらうよ。」
どこからともなく少年の声が聞こえてきた。
それと同時に先ほどの事故がもう一度彼の前に現れた。
そして何度も何度も繰り返された。
「やめろ!やめてくれーーー!!」
―ピピピッ ピピピッ―
ふと時計のアラームが鳴り彼は目を覚ました。
「くそっ、またあの夢か。」
そう、彼はとあるに日にこの夢を見てしまう。
「やっぱり外は雨・・・か。」
彼は雨の日は必ず夢を見る。あの絶望的な夢を。
「起きるか・・・。」
彼の−稲穂 信の雨の日はこうして一日が始まる。





〜あとがき〜
初のSSでしかも連載ものです。
ホントはもっと短くしたかったのに・・・。
似たようなSSを見たコトあるなという人もいるかも知れません。
オリジナルのはずです・・・一応。
もし、似たようなSSがありましたら教えて下さい。
それと基本的に本編に添って進行するのでネタバレにはご注意を・・・。



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