もう一つのmemories  off
〜やまない雨〜
作:ニンニン



雨の日は憂鬱になる者が多い。  
稲穂 信もその一人だった。
「ハァー、雨・・・か。」
「何たそがれてやがる。」
「智也」
突然後ろから声をかけられた。
そこに立っていたのは信の親友の三上 智也だった。
そして智也はあの事故亡くなった少女の恋人でもあった。
「とっとと帰ろうぜ。それとも何か用事でもあるのか。」
「いや、ないな。帰るか。」
二人は親友同士であった。周りからも認められるほどの。
しかし、信はあの事故について智也に一言も語ってはいなかった。
自分があの少女を助けなかった事を、見捨ててしまった事を。
信は恐れていた。今の関係を壊してしまうのが・・・。
信は智也を親友と思っている。それは智也も同じだろう。
智也に対する裏切り、このことがより一層信の恐怖を駆り立てる。
「おーい、信。人の話しを聞いてるのか。」
突然かけられた言葉により、信は我に返った。
「ん、ああ。悪い。聞いてなかった。」
「ったく、だから最近唯笑の奴が毎朝うるさいんだよ。」
「仕方ないだろう。澄空高校公認の夫婦なんだからな。」
「違う!何度言わせれば気が済むんだ。」
「分かってるよ。お前と唯笑ちゃんは幼馴染だろ。」
「”ただの”幼馴染だ。」
「”今のところは”の間違いじゃないのか。」
「くどいぞ信。あいつは俺にとって空気みたいなもんだ。」
「そうかそれほどまでに大切なのか。」
「?」
「当たり前のように存在し、いなくなってしまったら生きていけなくなってしまうという意味だろ。」
「違う。特に意識しない存在ってことだ。」
いつものやり取りをしているうちに澄空駅に着いた。
智也は電車通学だが信は違うため、大抵はここで別れる。
「じゃあな信、また明日な。」
「ああ、それじゃあな。」
智也と別れた後信は誰にも聞こえないほどの声で呟いた。
「智也・・・。どうやったら俺はお前に許してもらえるかな。」
「あれっ、信クン。」
突然、背後から声をかけられた。
「うわっ!・・・って唯笑ちゃんか。」
「ゴメン、驚かすつもりはなかったんだけど。」
-今坂 唯笑-
彼女は智也とそしてあの少女の幼馴染だ。
そして信が想いを寄せている娘でもあったが、唯笑本人は智也の事を想っている。
「いや大丈夫だよ、それより唯笑ちゃんは何してるの。」
「唯笑はね文化祭の実行委員に選ばれちゃったんだ。
それでね準備の途中で必要なものを買いに来たんだ。」
「へ〜、偉いね唯笑ちゃん」
「へへ〜そんなことないよ。あっ、時間に遅れちゃうからもう行くね。」
そう言い残すと唯笑は学校の方に戻っていった。
「唯笑ちゃん・・・。」
信のこの想いが届かぬであろうことは信自身気づいていた。
だからこそ好きな娘のために何かしたかった。
そして思い浮かんだのが智也と唯笑を結ばせるというものだった。
唯笑が智也の事を想っているのは間違いないだろう。
そしておそらく智也のほうも。
こうする事が自分の罪の清算に、そしてあの少女へのせめてへの罪滅ぼしになる気がしていた。
しかし、この行為がいかなる結果をもたらすか信はまだ知らなかった。

数日後、信は智也の下駄箱に1通の手紙を入れた。
『雨はいつ上がる?』
智也の心の内を表した1文だけを書いて。
しかし、信は知っていた。
この文は自分にも言い聞かせているものと。
「せめて智也たちの雨だけでも上がってくれよ。」
信は心の底から願った。
この願いが叶うようにと。
このときの空は暗く沈んだものだった。
信の心を代弁するかのように・・・。




〜あとがき〜
前作の続きです。
まだ続きますが基本的にネタバレなのでご注意を。
全6話予定です。
しかし、本編に添っているおかげでオリジナルの要素が少ないな。
果たしてこれはSSと呼んで良いのでしょうか・・・?




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