『GUILTY KIDS-1-』
作:ちまたみうみ 



 雨が降っていた。
 それはごうごうと降りしきっているが、かつての酸性雨のような不快さは既にない。科学がブラックテックとして封印されたため、法力がその代わりを担っているからだ。
 しかしそれとて、身を打つ凍えるような寒さを無視できる訳はない。そんな雨の中を一人歩いている、みすぼらしい麻のマントで身を包んだ17、8くらいの少女の姿は明らかに違和感を放っていた。
 ここイギリスのとある街は、既にスラムと化し、ただでさえ人通りは少ない。少女はそれを知っていて、ここにいるのだろうか。
 と、その少女の前に、いきなり茶髪の毛をした同い年くらいの少年が現れた。
 その少年は少し訝しげな瞳で少女を見つめたが、端正に整ったその顔を見ると、途端に笑顔になった。
「ねえ君、こんなところ歩いてると風邪ひくよ?」
「…………」
 軽い口調で話し掛けてきた少年に少女はわずかに嫌悪感を覚えたが、それを口には出さずにただじっと睨んだ。 
 それに少し怯んだのか、苦笑いを浮かべながら少し少年は後ずさる。が、すぐ気を取り直してもう一度話し掛けた。
「俺は信ってんだ。君は……って、あ、ちょっと待って!」
 そう言って自分をアピールしようとした信だったが、少女はそれを無視するかのように横を通り過ぎていった。しかしなおも信は食い下がり、肩に手をかけて名前を尋ねた。
 すると意外にも呆気なく観念したのか、少女は大きく嘆息してから呟いた。
「……つぐみよ」
 それは雨音で消されるかどうかという声量だったが、信はしっかりと聞き取って記憶に刻み込んだ。
「つぐみちゃんか……いい名前だなあ」
「気がすんだわね」
「だー! だからちょっと待って!」
 再び去ろうとするつぐみを、もう一度ホールドする信。その形相はいたって真面目だが、つぐみにしてみれば鬱陶しいだけだ。
「そんなんじゃ体に悪いって。どう? お茶でも飲んで温まらない?」
 結局、かなりしつこいナンパだった。その意図に気づいたつぐみは、諦めた様子で肩を落とした。
 それを見て一気に畳みかけようとした信だったが、次の瞬間、彼の周囲の温度が急上昇した。
「うざってえ」
「え……」
 刹那、違和感に気づいた信の目の前で火柱が上がる。
「うわっ!?」
 反射的に、横の地面へと身を投げ出した信はその攻撃を避けたが、さらに次の光景に驚いた。
 火柱の中からつぐみがゆっくりと姿を現す。燃え尽きたマントの下には、直線的で分厚い不恰好なフォルムの剣が握られていた。
 その時彼は悟った。やばい、ナンパ失敗だ、と。
 こうなった以上は闘いは避けられない。どうやらつぐみの正体は好戦的な賞金稼ぎらしく、戦う準備は万端となっている。
 信は仕方なく自分の服の下から得物である、鎖で繋がれた二本の鎌を取り出した。
「ガンフレイムゥッ!!」
 それを見て、つぐみは手に持っていた剣を地面へと突き刺す。途端に地面が割れ、その裂け目から溶岩が吹き出した。
 これを喰らってはひとたまりもないが、下がったところで拡散するマグマはかわせない。自らそのマグマへと走っていき、法力を乗せた左手の鎌で思いきり切り裂いた。
 流れを両断されたマグマは信の体を避けるように飛んでいき、視界にはつぐみの体が映った。
「鎌閃撃!」
 すぐさま信は右手の鎌の先端に法力を込め、思い切り投げつけた。
 つぐみは思いの他遠い間合いから攻撃してきた武器に対してわずかに驚くが、それを前に跳躍して避ける。
「曲鎖撃ぃ!」
「え!?」
 だがわずかに読みが甘かったらしく、直線的に進んでいた鎌はいきなり軌道を変え、つぐみの背中へと突き刺さる。どうやら、これが鎖鎌の真髄らしい。
 しかし、激しい痛みを無視してつぐみはそのまま信を攻撃できる間合いへ飛び込み、思い切りなぎ払った。
 それを紙一重で避けた信だったが、鎌がつぐみの体に突き刺さったままのために手元が狂い、わずかに逡巡する。
「ファフニール!」 
 そこを見逃すまいと、法力で炎を纏った拳をつぐみは信へと叩きつけた。
 唸る爆炎の叫びを耳にしながら吹っ飛んでいった信は、受身も取れず地面を転がる。
 信は石造りの廃屋に背中を打ちつけてやっと止まったが、そこに容赦なくつぐみが追い討ちをかけた。
「バンディット、ブリンガー!!」
 宙で弓のように引き絞られた腕が炎を作り出し、矢のように突き出される。
 やられる、と思った時、信の体は自然に動いていた。
「信ボンバー!」
 叫んだ名前はダサいが、突然信の足から炎が噴き出して、ジェットのようにソルへと突っ込む。その際高速回転をしながら放たれた鎌が、ソルの炎とぶつかった。
 次の瞬間爆風が巻き起こり、二人はお互い違う方向へと吹き飛ばされた。
 先に体勢を整えたのは信だった。もう小細工は通用しないと思い、一気にケリをつけようと一撃必殺の技を放った。
 鎌の鎖がその長さを超えて伸び、つぐみの体へと何重にも絡みつく。自由を奪われたつぐみはそれを引きちぎろうともがくが、効果はない。
「行くぜ……百重鎌焼ォォォォォ!!!!」
 鎌の先端が炎の塊となり、鎖地獄に封じられたつぐみへと突っ込んでいく。
 決まった、と信は確信し、口元に笑みを浮かべた。が、それはすぐに凍りついた。
「……ナパームデェェェスッ!!」
 天さえも揺るがすような咆哮とともに、つぐみ体からいくつもの炎の柱が噴き出した。それは信の鎖を一撃の下に破壊し、なおかつ信の攻撃をも弾き飛ばした。
「ドラゴンインストォォォォルゥ!!」
 そして続けざまにそう叫ぶと、今までとは段違いの速度で信へと接近した。
 一瞬にして懐へ飛び込まれた信はなす術もなく、さらにつぐみに攻撃を加えられる。
「ヴォルカニックヴァイパー!!」
 つぐみの腕から溢れた炎は竜となって天へと翔ける。それに巻き込まれた信は全身を焦がしながら意識を朦朧とさせ、竜が消えても動きを取り戻せないでいた。
「タイラン……」 
 そのままつぐみは空中で信の頭を鷲掴みにすると、地面へ叩きつけてバウンドさせる。
 自分は落下しながら手に持った剣に法力を全て集中させ、バウンドしてきた信と接触した瞬間、それを思い切り爆発させた。
「レイブ!!」
 巨大な炎の塊が信を直撃し、轟音と閃光で周囲は明るい闇となる。
 つぐみの視界に入る殆どの物体はその衝撃で吹き飛び、焼き尽くされた。
 しばらくして世界は落ち着き、雨の冷たい感覚も戻ってきた頃、信の倒れた姿がつぐみの目に映った。
 微妙に胸が上下しているため、どうやら生きてはいるらしい。考えられない生命力である。
「……私に勝てる訳ないじゃない」
 そう言って、つぐみは信の息の根を止めることもなく、再び歩き出した。
 その時の寂しげな表情には、勝利の喜びなどどこにもなかった。  


 続




 あとがき

 なんだかんだの思いつきで20分で仕上げたしょっぱい作品です。
 あまり深く突っ込まないように。
 とりあえずギルティギアイグゼクスのキャラクターにKIDのキャラクターを当てはめて動かすという、バカな真似な訳ですが、結構キャラ選びは慎重だったり。
 今回はever17よりつぐみ(ソル)、メモリーズオフ2ndから信(アクセル)を起用させて貰った訳ですが、このセレクトの理由をば。
 ソルというキャラは、まあ部分的な話ですがギア細胞を注入されて以来不死身の戦闘兵器となっているので、なんとなくつぐみっぽいかなあということで。
 アクセルについては、単純で軽薄っぽいけど実は結構考えてたり色々抱えてたりするってことで、信がしっくりくるかなあって訳です。
 他のキャラは、あまり決めていないので、決まり次第どんどん書いていきます。
 たぶん次はレゥ(ディズィー。ウンディーネには彩花、ネクロには涼権が妥当か)、イナケン(ジョニー)かなあ。
 抗議メールがきたらやめますが(汗
 であ、サラダヴァー。





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