日々時が過ぎゆくままに
父とともに、世界を巡る。
懐かしき故郷を離れて・・・
故郷
そんな風に思う日が来るなんて
以前の私には考えられなかった。
あの場所で過ごした、わずか数ヶ月の出来事が
こんなにも大きなものとなっていることに
今更のように驚く。
懐かしい風や土の匂い、
お世話になった人達、
友達は覚えているのだろうか。
元気で過ごしているのだろうか。
変わらぬ彼らに、また会えるのだろうか・・・
私は忘れていない。
懐かしい記憶。
図書館の空気。
喫茶店の紅茶の香り。
色鮮やかに染まる公園。
冬の気配を感じる商店街・・・
そして
あの人との想い出。
あの日
私は何も言わず、
あの人のもとを去った。
それは、父のため。
母を失った父には、私が側にいなければならない。
父を独りにするわけにはいかないから。
だから、あの人の所に留まることはできない。
あの時はそう思った。
・・・でも、本当は
自分の気持ちに素直になれなかったから。
あと一歩の勇気が出せなかったから。
それを認めることができたのは
もう一度世界を旅してみて、
自分の心の小ささに、改めて気づいたから
なのかもしれない。
そして、だからこそ
向き合うことができた。
本当の想いに。
あの人を好きだという気持ち。
今もしっかりと
私の中に息づいている。
いつかまた、あの街を訪れようと思う。
その時はまだ分からないけれど
今度こそ、この気持ちを伝えるために。
だから、今は
心の中にしまっておく。
やがてくる、再会の日まで。
遠く故郷を離れて。
心の傷が癒え、
彼らと歩む日が来るまで
懐かしき故郷を思う・・・
私の中に残る声、ぬくもり、思い出。
みんなあなたを恋しがっている。
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