『雪語り』
作:刃 仙人





ひとつまたひとつ落ちる雪を 銀の明かりの下 見上げてた
舞っては消えてゆく光の粒を 「行ったらあかん」と留めたが
忘れられない冷たさだけが 指に残った

仄暗い闇の中で誰知らずこぼした涙ひとつぶ
雪暗の空に浮かぶ三日月に 孤独とともに翳した
   幼い記憶を縁取った 鏡に映る蛍火の星
ずっと眺めてたはずなのに匙を投げたのはいつの頃か

冷たい雫を連ねた牡丹雪
昏く濁ったこの心を雪いでおくれ
重く垂れた雲が隠さないように


色落ちゆく縁の片隅で 迷い込んだ白猫が啼いた
唐突に転がった出会いは何を呼んでいるの
  震えを閉じ込めて 溜めた笑顔を解いてみた時に
  初雪を告げる雪意のような 優しく切ない予感がした

「鬼は外 福は内」 望まぬ運命と嘆いたが
彷徨う手がいつかの夢をかすめてた
夜空を包む墨色の陰と大地を染める薄明の雪
黒白の狭間で揺れていた想いが目醒めたのはあの日から

雪白に重ねた十五夜の月
今宵は私だけを照らさないでほしい
瞳の奥の絆を感じていたいから


失くすことに怯えて 離れゆく灯りを手繰り寄せていた
ぬくもりに抱かれて 溢れ出た淡い雫
夢幻と背を向けた祈りが形作っていく奇跡は
私が抱き続けていた 遠い日の憧れだったのかも


さざめく風が凪ぎ 流れる白雲の間から射す光が見えた
  鳴り響く鈴の音 久遠の刻に染み渡るかすかな呟き
雪解けの刹那に初めて知った 木洩れ陽のようなあたたかさ
朝陽にかすんでいく煌めきは ずっと二人の願いとともに

新しい季節は いつも 彩づく残雪のすぐそばに――






BGM: 十六夜月(inst) / Muzie(ミュージー)
or
雪花 / 雪花 -きら-
 







 感想BBS

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送