本当の想いっていうのはね

ものすごーく作りにくくて、ものすごーく壊れやすいものなんだ

しかも、それに気付かなかったりする事もあるし

隠そうと思えば、意外と簡単に隠せちゃうんだよ


――これは、ある一人の少女が私に言った言葉である。
もし、これが本当だとしたら、「想い」というのはなんと理不尽で脆く、儚いものなのだろうか。
だが、少女は最後にこう言った。


だからこそ、本当の想いっていうのは……

大切、なんだろうね


――『忘れられない言葉』
そう形容するに最も相応しい言葉であろう。
私の今までの人生の中で。


幼い頃の恋というのは――特に心からの本当の「想い」というのは
まさしく彼女の言うとおり理不尽で脆い。
恋した時は本当に、その相手のこと以外は考えられなくなるほど愛しいのに
その想いは意外なほどにすぐ褪める。
そのきっかけは、本当に些細なことだったり時間の経過だったり……
だからこそ、私は美しいと思う。
そんな、理不尽な『本当の想い』を。
今まで無数に生まれ、そして潰えてきた『ありふれた本当の想い』を。


この物語は、そんな『本当の想い』を見つけた少年と少女の物語――

ナツコイ-first love-
freebird presents

序章 My friend

 オレには大切な友達がいる。
 たくさん、いる。
 『親友』と呼べるような奴もいる。
 女友達だって結構いる。

「ああ!ちょっと待ってよ、隆二!!」

 コイツもそんな、友達の一人だ。
 学校へと続く坂道。
 その坂道の下からオレに向かって手を振って走ってくる少女。

「よお、おはよ」
「うん……おはよ……」

 息を切らしながら挨拶を交わす彼女。

「ふう……よかった……追いついて……」

 心から安堵した様子でそう呟く彼女。

「息切れするくらいなら無理すんなよ……」
「ううん……。どの道走らなきゃ遅刻してたし」
「ん……そうだな……じゃあこっからも走るか」
「あ、ちょ……ちょっと待って……よ……!ここからなら絶対大丈夫だから……って、ああ〜〜……」

 彼女の声が遥か後方へと流れていく。
 さすがに可哀想かな?
 そう思ったオレは振り返る。
 坂の下からさらに息を切らしながら走ってくる彼女。

「もお……酷いよ……」

 泣きそうな顔でそう訴える彼女。オレはそんな彼女に対して意地悪い笑みを返してやった。



 中学校生活最後の夏――
 物語が、幕を開ける……



--to be continued to chapter.1--



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