内容紹介:My Merry Mayの公式サイトで配布された、ユーザーアペンド『夢のかたち』に削除修正(?)をかけたものです。各種指定文は原稿のまま残してあります。アペンド製作の雰囲気を、少しでも感じ取って頂ければ幸いです。

警告:この物語には、ゲーム本編のネタバレが含まれています。最低でも、レゥ、もとみ、たえ、みさお、リースの5人(つまり、ひとえ以外)のエンディングを全部見てから読んでください。なお本作品は、本編の分岐シナリオとして構成された、リースと恭介の物語です。




夢のかたち
作:ふうらいまつ



//背景はゲームセンター(昼)
//曲名『Yellow』

……まずい。
……非常にまずい。

リース「恭介さん、また勝ちました」

オレはリースと一緒に、ゲームセンターに来ていた。
何故そんなことになったかというと――

//回想モード、背景は自室
恭平「レゥとリース、どちらをお前のもとに置くのか決めてもらう。いいな、恭介?」
//回想終わり

そんなアニキの勝手な提案で、しばらくの間、オレはリースと一緒に過ごすことになった。
オレの答えは最初から決まっているというのに……

客A「おい、あの女の子、相当強いぞ」
客B「っていうかカワイイよな」

集まったギャラリーたちが騒ぎだした。
リースの勝ち星は、既に30を超えている……というか、一度も負けていない。
覚えが早いにしても、限度があるだろう。

恭介「リース」
リース「はい」
恭介「いっせーの、せ……で逃げるぞ」
リース「わかりました」

人の波をかき分けながら、店の外へと飛び出す。


//背景:商店街-------------------------------------------------------

恭介「ふう……ここまで来れば大丈夫だろう」
リース「ありがとうございます」
恭介「なに、気にしないでよ」

そして、自分がリースの手を握りしめているのに気づいた。

恭介「あ……」
リース「どうかしましたか?」

リースがそれを離す気配はない。
なんとなく気恥ずかしくなって、こちらから手を離す。

リース「繋いだままでも、別に構いませんよ?」
恭介「い……いや、このほうが動きやすいから」

柔らかくて暖かいリースの手は、つないでいて気持ちが良かった。
でも相手はレプリスだ。それではいけない気がする。

恭介「そうだ、次はどこに行きたい?」
リース「どこでも」

予想した通りの答え。
リースは、いつだって笑顔でそう答えてくれる。
でも結局のところ、それはプログラムされた反応でしかない。
決められた言葉に決められた対応をする機械人形のような存在。

リース「どうかしましたか?」
恭介「いや……なんでもないよ」

少し心配そうな顔をして、リースはオレを見つめた。

リース「どこかで休みますか? そこにファミリーレストランがありますけど」
恭介「あ……ああ」
リース「それでは、行きましょう」


//背景:ファミレス---------------------------------------------------

ファミレスの店内は、いつもどおり、それなりの人で賑わっていた。
二人分のメニューを注文してから、あらためてリースの姿を眺める。

//背景:黒。恭介が考察中
リースは、おいしそうに丼を食べていた。
……あまりに自然な態度。
オレからの問いかけに対して、リースの取った行動は予想外だった。
……なぜ、マグロづけ丼?
リースがレプリスだって知っているオレでさえ、こいつは本当は天然少女なだけなんじゃないかと疑わせる。
逆に返せば――それだけリースの反応は自然だってことだ。

仮に……もし仮にだ。リースがレプリスであることと、その反応が決められたものであることを気にしなければ?
彼女と人間とは、どういう違いがあるんだろう。
レプリスの虚構が、一生貫き通されるのなら、それは虚構ではなくなるのかもしれない。
//恭介の考察終了
//背景:ファミレスに戻す

リース「さっきから悩んでいるようなお顔をしてますけど、本当に大丈夫ですか? 私で良ければ相談にのりますよ」

相変わらず完璧すぎる対応。

恭介「いや、大丈夫だから……ありがとう」
リース「何かありましたら、遠慮なく仰ってくださいね」

リースの笑顔を見ると何故か安心する。
彼女には、何か人を包み込むような魅力があるのかもしれない。
でもそれは、決められたアルゴリズムによる産物だ。
レゥのように、自分の意思で行動している訳ではない。

恭介「……やっぱり、ひとつだけ訊いてもいい?」
リース「はい、なんでしょう」
恭介「リースには、何かやりたいこととかは無いの?」
リース「私の希望をお聞きになるのですか? 恭介さんの行きたいところなら、どこへでもご一緒しますよ?」
恭介「いや、そうではなくて、今の生活に不満はないのかっていう意味」
リース「恭平様も、恭介さんも、私にとって理想的なマスターです。寮のみなさんも大変親切な方ばかりで、私はとても幸せです」

リースは本当に幸せそうに微笑む。当然といえば当然の反応なのだろう。
でも、もう少し食い下がってみる。

恭介「例えばレゥのように、わがままを言ってみたいとかは?」
リース「いいえ、ありません。そのようなことは、私のアルゴリズムには組み込まれておりません」
恭介「でもレゥは、やりたい放題やっているけど?」
リース「それはレゥを起動したときの、バグによる影響でしょう」

……落雷による起動事故のことか。

リース「レゥの感情アルゴリズムについては、現在、恭平様が調査中です」

……その言い方には少し抵抗がある。

恭介「確かにそうかもしれないけど……あまり、アルゴリズムとか言わないでくれないか。オレはレゥのことを普通の人間として扱ってるんだ」
リース「申し訳ございません」

本当に申し訳なさそうに、リースがうなだれる。
レゥとリースについて考えているうちに、少し神経質になりすぎたかもしれない。

恭介「……いや、いいんだ。オレが悪かった」

……でも、レゥは他のレプリスとは違う。
自分の意思で行動している。そう信じたい。



//背景:自室(夜)-----------------------------------------------------------
//恭平とリースが並んでいる状態

恭平「おかえり……どうだった?」
恭介「どうって……なにがよ」
恭平「楽しかったか?」
恭介「そりゃあね」
リース「私も楽しかったです」
恭平「どうした……浮かない顔して」
恭介「別に……」
リース「私が恭介さんに、失礼なことを言ってしまって……」
恭介「違う違う! リースは悪くない。そんなんじゃなくて、ちょっと考え事を」
リース「そういえば、今日一日、ずっと何かを考えていたみたいですけど」
恭平「デートに身が入らないくらいに大事なことなのか?」
恭介「デートデートって……掃除してくれたお礼に少し遊んだだけじゃないか」
リース「申し訳ございません」
恭介「いや……だからリースは悪くないって、楽しかったのは事実だし」
恭平「ふむ……まあ若い頃は悩め、それは財産になるからな」
恭介「また年寄り臭いことを」
恭平「さて、オレは風呂にでも入るかな、リース、用意」
リース「はい」

リースは、かいがいしくアニキの世話をし始めた。
さっきまでオレにべったりだったけれど、マスターであるアニキの前に出れば、所詮はこうなってしまうのだろう。

恭平「どうかしたか?」
恭介「別に……」


今ここにいないレゥのことが、無性に気になった。

恭介「レゥはどうしてるの?」
恭平「今日はずっと検査だったからな。自分の部屋で休んでるんだろう」
恭介「それで……レゥの体のことは、何か分かったの?」

//恭平:真剣な顔
アニキの表情が、突然、真剣なものに変わる。

恭平「恭介……レゥのことが心配か?」
恭介「当たり前だろう! レゥはオレの、大事な家族なんだから」

アニキが正面からオレの目を見据える。
心の内を探られているようだ。

//恭平:笑顔
恭平「……安心しろ。レゥ自身にバグはない」
恭介「……それって、どういうこと?」

あの夜、オレがレゥを起動するときに、落雷でバグが発生した。
レゥが普通のレプリスと違っているのは、そのバグが原因のはずだ。

恭平「お前は以前、メールにこう書いていたな。『まるで赤ん坊のようだ。何をしたらいいかわからない。助けてくれ』と」

そうだ――あのときオレは、何をしても泣きやまないレゥを前にして、パニックに陥ったんだ。

恭平「つまり、こういうことだ」
恭平「落雷による事故により、レゥの立ち上げ作業が失敗した。そのため、レプリスが本来備えるべき知識や制御系が、レゥにインストールされなかった」
恭平「結果として、レゥは赤子のような状態で、世に出てきてしまった」
……それって、どこも悪くないということじゃないのか?
恭介「それだけ?」
恭平「ああ、それだけだ」
恭介「それならこの先、レゥの体に異常が起こる心配は、ないんだね?」
恭平「そういう訳でもない」
恭介「えっ?」
恭平「レプリスが活動する上で必要なものが、レゥには欠けている。そういった意味では、極めて異常な状態だとも言える」

……やっぱりレゥは、レプリスとして不完全だということなのだろうか。

恭平「恭介……もしおまえがレゥを選ぶつもりなら、レゥを大切にした方がいいぞ」
恭介「……なんだよ? どういう意味?」
恭平「そのままの意味だ」
恭介「答えになってない」

それ以上、アニキは言うつもりがないようだった。

//背景:寮の廊下(夜)-------------------------------------------------------

アニキの言葉を気にするわけじゃないけど、寝る前に少し、レゥの様子をのぞいてもいいだろう。

//ノックの音
扉をノックすると、部屋から出てきたのは、たえさんではなくリースだった。

恭介「リース。レゥに用があるんだけど、レゥは居るかな?」
リース「それが、レゥは体の調子が悪いようです。今も床についていますが、起こしてきましょうか?」
恭介「いや、それならいいよ……また朝にでも寄るから」

オレに軽く会釈をして、リースが部屋の扉を閉めた。
……そういえば、最近体が痛いってレゥが言ってたような。
あの時はすぐに治って平気そうな顔をしてたから、大丈夫だと思ったのに……
アニキの言っていたことと、なにか関係があるのだろうか。
……あまり考えても仕方がない。明日、レゥに会えばわかるだろう。


//----------------------------夢・第1夜-------------------------------------
//ノベル形式。全画面に文章表示
//背景は黒。曲名『Clear』

――何も無い
――目を凝らしても、何も見えない
――温度も色も
――明るいのか、暗いのかさえも分からない
――果てしなく遠くまで見渡せるのに、果てが見えない
――そんな不確かな領域

これは夢だと、自分の知識が告げる。
自分の置かれている状況から考えて、まず間違いない。

夢は生物が生きていく上で必要なもの。
古い記憶を整理したり、脳に休息を与えたりする。
でもそれは、普通一般の夢での話。
今の状況とは関係の無い知識なので、意識の片隅に追いやる。

もう一度、ゆっくりと辺りを見まわしてみる。
――やはり何もない。

今度はどんどん奥に進んでみる。
――何も変わらない。

不意に笑みがもれる。
『進む』というのは、少しおかしな表現だったかもしれない。
今まで自分が止まっていたのかどうかも、わからないのに。

不思議と不安は無い。
初めての体験だし、案外、楽しんでいるのかもしれない。

でも――

//改ページ。次の文を画面中央に表示。
――なぜ、こんな夢を見ているのだろう。
//文章の全画面表示を終了




//『夢のかたち』二日目 ////////////////////////////////////////////////////
//背景:自室(朝)

……最悪の寝覚めだ。
眠気で意識がはっきりしないし、心なしか、頭も痛い。
妙な夢をみたから、そのせいでよく眠れなかったのかもしれない。
今なら、たえさんが二日酔いで寝込む気持ちも、わかる気がする。

?「………………すぅ…………」
?「…………むにゃ……………」
恭介「ん?」
なにかが背中に当たっている。なんだろう、これは。

//レゥの寝顔アップのCG。目は瞑っている。(朝)
レゥ「………………おにい…ちゃん……」
恭介「どわっ!」
どうしてレゥがここにいるんだ?!
レゥ「…………ん…………むにゃ………」
即座に自分が危機的状況にあることを直感する。これは非常にまずい状況ではないだろうか。

//背景:自室。立ち絵なし
素早く部屋の中を見渡す。
どうやらアニキはまだ寝ているようだ。

//レゥの寝顔アップのCG。目は瞑っている。
恭介「……おい、レゥ、起きろ」
レゥのほっぺたをペシペシと叩く。とにかく起こすしかない。
レゥ「…………すぅ……すぅ……」
ぺしぺしぺしぺしぺしぺし。
レゥ「…………ん……ん〜……」
ぺしぺしぺしぺしぺしぺし。
レゥ「……ん……んんっ……ん〜……」
ぐりぐりぐりぐりぐりぐり。

//背景:自室(朝)
//レゥ登場。涙目
レゥ「いたい、いたいよ、おにいちゃん」
ぐりぐりぐりぐりぐりぐり。
レゥ「やめてよ、もうおきてるよう」
恭介「すまん、少し多かった」
レゥ「うー……」
恭介「……で、なぜおまえがオレの部屋で寝てるんだ?」
レゥ「それはね。きのうおにいちゃんが、きてくれたからだよ」
そういえば昨晩、レゥの様子を見に部屋まで行ったんだっけ。
レゥ「リースちゃんがおしえてくれたから、おにいちゃんのへやにきてみたの」
そして、そのまま寝たということか……
恭介「……それでレゥ、体の具合はもういいのか?」
レゥ「う〜ん……わかんない」
恭介「わかんないって……昨晩、寝込んでたんだろう?」
レゥ「ときどきいたいときがあるけど……いまはぜんぜんへいき」

平気なところをみせたいのか、レゥは手をぶんぶん振り回している。

レゥ「えい!」
//抱きつくレゥ
恭介「こら、はなせ!」
レゥ「おにいちゃんはわたしのこと、しんぱいしてくれてるんだよね」
恭介「……まあ、一応な」
レゥ「へへ〜」
レゥは心底嬉しそうに笑っている。こんな風に笑うレゥは久しぶりかもしれない。
……もう少しくらい、このままでもいいか。

?「……なあ、恭介」
//アニキ登場。
恭平「オレはこの状況を、オヤジにどう報告すればいい?」


//背景:教室(授業中)-------------------------------------------------------

教師「……この文は、動詞で始まる命令文でありますから」

レゥのことを考えていた。
考えてみたら、酷いことばかりしている。

教師「ここの『and』はですね」

レゥが苦しんでいるってのに、浮かれてリースと遊んだりして……
オレって救いようがないな

教師「ここ、今度のテストに出ますであります」

それと、気になることもある。
アニキはレゥについて、バグが原因で病気になることはないと言っていた。

教師「ちょっと、そこ! 聞いているでありますか?」

でも実際に、レゥは体の不調を訴えている。
アニキは、レゥが不完全だからそういうこともあると言っていたが……

教師「ムぅ〜!!」

たまりかねた英語教師が、席に近づいて来た。
そしてオレの肩に手をかけて、激しく揺すった。

教師「授業中にィ〜、なんなんでありますかァ〜!!」
恭介「うるさいな!!」

反射的に、その手を払いのけてしまった。
……あ。
我に返ると同時に、教室の異様な雰囲気を悟った。
クラスのみんなが、一斉にオレを見ている。
先生が、金魚のように口をぱくぱくと、閉じたり開いたりしている。
……なんなんだ? この展開は。

教師「あ、あ、あなたって人はァ〜!!」

先生が、オレを指差してうろたえている。
指先が、小刻みに震えていた。

教師「教員生活十八年……こんなのって、こんなのって……あんまりであります!」

泣きながら、教室を飛び出していってしまった。
当然授業も中断された。
喜ぶ生徒達。
………………
……早退するか?


//背景:川原(昼)-----------------------------------------------------------

……早退した。
恭介「…………………」
恭介「……しまった!!」

不覚にも、早退した後のことを何も考えてなかったことに気づく。
先生のお説教から逃げたのはいい。でも、いま寮にはアニキが居るのだ。
帰ったら、小言を言われるに決まっている。

恭介「……帰れる訳ないじゃないか」

ため息まじりに、川原を散策する。
たまには、こうしてゆっくりするのも、良いかもしれない。
恭介「……うーん、いい天気だ」
恭介「こんな贅沢なことをしているのは、世界でオレだけだろうな」
リース「恭介さん?」
恭介「うごっ、リース!?」
リース「こんなところで、どうかなさいましたか? お散歩ですか?」
恭介「……いや、学校が早く終わってね。少しぶらぶらしていたところなんだ」
//リース笑顔
リース「そうですか」
………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………
……駄目だ。絶対にバレてる。
レプリスの思考なんて読める筈がないけれども、なんとなくそんな気がする。
否、今の自分には断言できる。

恭介「……リース。頼むから、アニキには……」
//リース普通の表情
リース「駄目です」
恭介「そこをなんとか」
リース「恭介さんに何か異常があれば報告するよう、恭平様から仰せつかっております」
恭介「お願いだから」
リース「…………」


//背景:食堂(昼、無人)----------------------------------------------------

恭平「恭介……オレは兄として情けないぞ」

無情にも、アニキに報告されてしまった。
やっぱりレプリスは嫌いだ。

恭平「一体、オレは親父に、何と報告すればいいんだ?」

ここは耐える……

恭平「もう少し人間として、知性を磨くということをだな……」

じっと耐える……

恭平「この品位を疑いたくなるような、教科書のラクガキはなんだ?」

アニキが金髪美女のラクガキ(Ver.2)を指差す。亮のやつ、覚えていろ……

恭平「それに加え、朝からレゥと抱き合う、乱れきった生活態度……」

あれは見事な不意打ちだった。レゥ侵入対策を練らねばなるまい……

恭平「まったくおまえという奴は……」

アニキがため息をつく。

恭平「本当なら、このまま学校へ送り返してやりたいところだが……」

それだけは勘弁して欲しい。
授業を中断させて、自主早退した上、リースに連れられて再登校なんてした日には――オレは津久見高校における伝説の人になってしまうだろう。

恭平「仕方がないな……リース、恭介の勉強をみてやってくれ」
リース「かしこまりました」
恭介「えっ!? ちょっと待っ……」
恭平「くれぐれも厳しくな」
//リース笑顔
リース「承知しました」
恭介「ええーっ!?」


//背景:自室(昼)-----------------------------------------------------------
コチ、コチ、コチ、コチ……
時計の音が鳴り響く。
コチ、コチ、コチ、コチ……
この部屋にきてから、どのくらい経ったのだろう。
コチ、コチ、コチ、コチ……
全く手が進まない。
コチ、コチ、コチ、コチ……
息が詰まりそうだ。

恭介「……なあ、リース。少し休憩にしよう」
リース「もう一息ですので、頑張ってください。次の問題は……」
恭介「……マスター権限で、休憩を命令する」
リース「それはできません。恭平様のご指示ですので」

……駄目だ。普通に頼んで通じる相手じゃなかった。

恭介「でも少し休憩した方が、もっと頑張れると思うんだ」

リース「……では、お飲み物を用意します。それで、よろしいですか?」
恭介「うん。お願い」

//リースの立ち絵消去
やっと解放された……
今日学んだことは、美女と一緒なら何をしても楽しいという論理が、いかに嘘だったかということだ。
いくらカワイイ女の子と一緒でも、苦痛なものは苦痛なのだ。

台所に向かうリースの後姿を眺める。

彼女は命令に忠実すぎる。きっとそれが完全なレプリスであるということなのだろう。
いや……命令違反にならない範囲では、こちらの要望もきいてくれているか。
それだけリースが高性能で、柔軟な思考を持っているということだ。

レゥはどうだろう。レゥはオレの命令などきかない。
アニキの言っていた、レプリス本来の機能が欠けているというのは、そういうことなのかもしれない。
あの起動事故がなければ、おそらくレゥもリースのようになっていたのだろう。

でも、逆に言えばそれは……
……リースからレプリスの制限を外せば、レゥのようになるということではないのか?
この少女がレゥのように怒ったり笑ったりするところを、少し見てみたいとも思う。

//リースが戻る
リース「恭介さん、どうかなさいましたか?」

お茶をいれたリースが戻ってくる。
お茶請けに、マグロパイまで添えて……
そんなものオレの部屋には無かった筈だから、リースが予め用意しておいたのだろう。

恭介「……少し考え事をね。リースは命令に逆らったりすることはないの?」
リース「はい。マスターの命令に従うよう、定められていますから」
恭介「どんなに無茶な命令でも?」
リース「例外として、違法行為に関する制限などはありますが、そういった特殊な例でなければ」
恭介「でも危険な命令もあるだろう?」
リース「能力上、実行困難とされる命令に関しては、設定されたセキュリティーレベルに従うようになっています」
恭介「オレがそれを変更すれば、自分の命に関わるような命令でも、実行しちゃうってこと?」
リース「変更には、製造者権限が必要です」
恭介「……は?」
リース「マスター権限ではなく、製造者権限が必要です。恭介さんには変更できません」

なんだそれは……初耳だぞ。
それに製造者って、アニキ達じゃないか。
結局のところ、アニキやオヤジの定めた範囲内でしか、リースは動かないってことだ。

恭介「マスターといっても、何でもできる訳じゃないんだな」
リース「日常での運用なら、恭介さんの権限で、何も問題ありませんよ」
恭介「じゃあ、『オレの命令に従うな』なんて命令を出したら?」
リース「指示された内容に誤りがあります」

……それはそうか。これは想像以上に手ごわい。
レプリスを命令に従わせないような方法は、何かないのか?
うーん、うーん……
うーん、うーん、うーん……

リース「恭介さん、なにか難しい問題でもあるのですか?」
恭介「……いや、リースとレゥがあまりにも違うからさ。リースも『命令、命令』と言わずに、もう少し自然にできないものかと」
リース「できますよ」
恭介「……は?」
リース「現在と違う性格で行動しろということでしたら、それは可能です。もちろん、レゥのように振る舞うこともできます」

……なんだ、意外と簡単じゃないか。つまり、もっと自然な性格に変更すればいい。
そう。今、この瞬間から、リースは生まれ変わるんだ。


//リース改善計画(本編の「レゥ改善計画」と同じ字幕を希望)-------------------------

リース「恭介さん、性格設定を変更しますか?」
恭介「ああ、試しにやってみて」
リース「どのように変更しましょう?」

設定か……そこまで考えてなかった。
単純に考えて、ここはレゥのように……
……いや待て。顔が同じで性格まで同じというのは、少しまずい。
リースが真似をするなら……
…………………………
恭介「……………………ひとえ」
恭介「ひとえをモデルにしよう。年齢も近いし、丁度いいだろう」
リース「ひとえ様をモデルにするのですね。わかりました」
………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………
…………………………………
恭介「……ねえ、もう変わった?」
リース「ええ。設定変更は終わったわ」
……げ、すごい違和感。話し方まで、完全に変えるのか。
リース「データ不足で再現できない部分もあるけど、まあ問題ないでしょ」
リース「それじゃあ早速、続きを始めましょうか」
恭介「……続きって、何の?」
リース「決まってるじゃない。勉強よ、勉強。そのためにここにいるんでしょう?」
恭介「……あー、なんとなく、そんなことができる状況ではない気がするんですけれども」
リース「なに言ってるのよ。私は恭介を甘やかさないようにって、恭平兄様から厳重に言われてるの」
……すでに『さん』付けもなくなってるし。
リース「ボーっとしてないで、早く用意しなさいよ」
ここは従うしかなさそうだ。
リース「そうね……まずはこの問題を解いてみて」
そう言って、リースは問題集のページをビシッと指差す。
最初からこういう性格だと割り切ってしまえばそれでいいのかもしれないが、以前のリースを知っている者にとっては拷問に等しい。
リース「……なあに? まさかこんな問題もわからないの? はぁ〜」
リースがわざとらしくため息をついた。なにも、そんなところまで真似しなくても良いだろうに……
リース「もう、仕方ないわね。この問題は……」

//ブラックアウト

リース「へっへ〜ん」
リース「どう? この天才無敵の美少女、才色兼備、運動神経抜群、みんなのヒロインであるリースちゃんにかかれば、解けない問題なんてないのよ」
そうさらりと言ってのけ、得意げに胸を張る。
違う……彼女はもうリースではない……
恭介「リースはレプリスなんだから、解けて当然だろう」
リース「…………恭介」
リース「負け惜しみはみっともないわよ」
…………マジか? マジなのか?
恭介「リース……もういい。元の性格に戻ってくれ。なんだかムカついてきた」
このまま、こんなリースと一緒に過ごすのは耐えられない。
リースはなまじ高い能力を持っているだけに、『ひとえ様モード』に入るとツッコミようがない。

リース「……設定を変更前に戻しました」
//リース:申し訳なさそうな表情
リース「すみません、恭介さん。ご期待にそえなくて……」
恭介「いや、リースは悪くない。ただ、組み合わせが致命的にまずかった」
ひとえの性格をモデルに選んだのは失敗だった。
よく考えたら、ひとえが二人になるということは、オレの天敵が増えるということだ。
自分の首をしめてどうする、オレ。
リース「あの、恭介さん。私の至らない点も修正しないといけないのですが……そろそろ課題を再開していただかないと、お時間のほうが……」
リースが困ったような顔でこちらを見ている。やはりアニキの命令が優先されるのだろう。
どうせオレの行動は全部アニキに報告されるはずだし……観念するしかないか。


//背景:食堂(夜)-----------------------------------------------------------

今日は、まったく酷い目に遭った。リースは妥協というものを知らない。
しかも、いつにも増して気合が入っていたように感じるのは、オレの気のせいだろうか。

亮「どうしたんだ、恭介。満身創痍みたいな顔をして」
恭介「……ちょっと、疲れたんだよ」
こいつにだけは言えない。
リースに家庭教師をして貰っていただなんて、口が裂けても言えない。

亮「まったく、いいご身分だよな。学校を早退して、かわゆ〜いリースちゃんとお勉強か」

……なぜ知っている。

亮「あーあ、オレも学校サボろうかなー」
恭介「なにを言ってるんだ、リースは鬼だぞ」
亮「でも少しくらい、おいしい展開の一つや二つ、あっただろう?」
……………………………………………………
……………………………………………………
恭介「……ないさ」
亮「なんだ、いまの間は……」
恭介「なんでもないって。疲れてるんだから、あっち行け、しっ、しっ」
亮「へいへい」

しかし、亮にまで伝わっているとは……もしかして、阿見寮全体に広まってるんじゃないのか?
さっきから周囲に殺気を感じるし……

亮「そうそう。言い忘れていたが、先生から伝言だ。『明日の朝、職員室へ来るように』だとさ」
恭介「うっ……」
しまった。明日のことを、すっかり忘れていた……もしかして、結構ヤヴァい状況になっているのではないだろうか。
亮「まあ、がんばれ。親友として、骨くらいは拾ってやる」
恭介「薄情者め」
亮「なにを言ってるんだ。自業自得だろう」
……むう。言い返せないのが無性に悔しい。


//背景:自室(夜)----------------------------------------------------
憂鬱だ……明日は学校に行って、朝一番でお説教か。
永遠に明日が来なければいいのにと思う。
……………………
……寝るか。


//---------------夢・第2夜------------------------------------------
//ノベル形式。全画面に文章表示
//背景は黒。

――何も感じない
――何も聞こえない
――ただ空間だけが存在する世界

「昨日と同じ夢……」

――漂う自分の意識
――沈んでいるのか、浮かんでいるのかさえも分からない
――どこかに向かっているのか、ただ流されているだけなのか

夢は自分の望みを映し出すという。

あの時、こうすれば良かったという後悔の念。
この先、こんなことがしたいという願望。
自分はこう在りたいという憧れ。

焦り、不安、喜び、悲しみ、
とりとめのない想いを映し出す鏡。

この世界のどこかにも、そんな想いのかけらが眠っているのだろうか。

意識を集中して、周囲に広げていく。
認識できる範囲が、徐々に広くなる。

―――――――――――

――やはり、何もみつからない。

何も無いということは、自分は何も望んでいないということ。
//改ページ。次の文を画面中央に表示。
――何も無い夢に、何の意味があるというのだろう。
//文章の全画面表示を終了




//『夢のかたち』三日目 //////////////////////////////////////////////////////
//背景:朝、阿見寮の前
すがすがしい朝だ。
それとは対照的に、オレの気分は暗雲としているけれども……
リース「恭介さん、おはようございます。今日はお早いのですね」
オレの姿をみつけたリースが、ほうきを片手に挨拶してくる。
恭介「ああ、ちょっとした用事があるんだ。できることなら、すっぽかしたい用事だけど……」
//リース:残念そうな表情
リース「そうですか……」
//リース:明るい表情
リース「頑張ってくださいね」
そう言って、リースが応援するようなしぐさをする。

//背景の明るさを落として
昨日、リースはオレの前で別の人格を演じてみせた。
そう、文字通り『演じる』だ。
結局のところ、いまリースがみせている感情表現も、定められたアルゴリズムによってそのように『演じて』いるに過ぎないのだろう。
設定ひとつで自分の性格を変更できてしまうあたり、一種の多重人格のようなものかもしれない。
ただ、多重人格者と決定的に違うのは……元になっている本来の人格すら存在しないということか……
//明るさを元に戻す

リース「……あの、お時間の方はよろしいのですか?」
リースが心配そうに声をかけてくる。
恭介「……いや、少し考え事をしてたんだ。大丈夫。行ってくるよ」
リース「いってらっしゃいませ」

//背景:学校の廊下------------------------------------------------------------
恭介「…………ふぅ……」
お説教は意外と早く終わった。
担任が少し話をしただけで、残りは放課後に持ち越しらしい。
普段おとなしい生徒が騒ぎを起こしたということで、あまり刺激しないよう、様子をみているのかもしれない。

//背景:教室。休憩時間
ひとえ「恭介……あんた大馬鹿でしょ」
恭介「おはよう。どうしたんだ、ひとえ」
//ひとえ、指立てるポーズ
ひとえ「あんたねえ……何事もなかったような顔して、どういう神経してるんだか」
恭介「ふむ……やっぱり本場は、指使いが違うな」
ひとえ「なに訳のわからないことを言ってるのよ。昨日、あんたが早退したあと、大変だったんだからね」
恭介「はいはい。大変なのは、よーく分かってるから……ほら、授業が始まるぞ」
ひとえ「…………はぁ」

//背景:教室。授業中
//背景の明るさを落として。恭介が考察中。

始業ベルが鳴る。
先生の声が遠くのほうで聞こえる。
内容が頭に入ってこない。

――レゥとリース
まったく同じでありながら、まったく異なるレプリス。
……いや、それも違うのかもしれない。
リースはレゥとまったく同じように振る舞うことができると言っていた。

リースはあまりにも完璧すぎる。人工的な気がして、あまり馴染めない。
でもそれは、最初にオレがレプリスに望んだ姿をそのまま投影しているだけだ。
そしてリースは、それすらも自在に変えることが出来るという。

もし仮に――
仮にリースがレゥと同じ姿でオレの前に現れていたとしたら――
オレはレゥを選んだのだろうか? リースも受け入れたのだろうか?

……違う。
それでも、レゥは普通のレプリスとは違うはずだ。

――『なにも違わない!』

不意に、オレとレゥの前から去った少女の言葉を思い出す。

……重症だな。

//考察モード終了。明るさを元に戻す。


//背景:寮の前。夕方。----------------------------------------------------

たえ「聞いたわよ〜。恭介」

たえさんは異様に楽しそうだ。
寮に入ろうとしたところを、捕まえられた。

たえ「君、先生を木刀でメッタメッタに殴った上、オートバイで職員室を駆け抜けて、そのまま繁華街へ脱出したんだって?」

たった一日で、話がここまで大きくなったようだ。
噂は、極めて正常な広がり方をしている、しているのだが……

たえ「ワタシ、君を見直したわ!」
たえ「実はワタシもね、君くらいのときに先生にね〜……」

……ここは耐えておこう。
最近、相手してあげなかったから。

//ブラックアウト

たえ「……となった訳よ」

高校生時代の話が終わった。

たえ「しかし君が、ここまで大物だったとはね。やっぱり、ワタシの見立ては間違っていなかった!」

恭介「やりたくて、やったんじゃないです」

たえ「謙遜しなくてもいいって。ワタシは君の挑戦を応援するわ!!」

恭介「しなくて結構です」

たえ「でも恭介……」
たえ「……命だけは大事にね」

恭介「しみじみ、言わないでください!」



//背景:自室。夕方---------------------------------------------------------

部屋に戻ると、リースが掃除をしていた。アニキは留守のようだ。
こんな時間にリースが掃除をしているなんて珍しい。
いつもなら、オレが学校に行っている間に済ませてあるのに。

リース「恭介さん、おかえりなさいませ」
恭介「ああ、ただいま」
リース「少しお時間をよろしいですか?」
恭介「?」
リース「私の性格設定の件、いかがいたしましょう?」

……なるほど。リースは昨日のことを気にしているわけか。
レプリスにとっては、それだけマスターの意向に沿うということが重要なのだろう。
リース「恭介さんは、今の私にご不満なのですよね?」
不満……か。リースの非人間的なところに馴染めないのは事実だけど……。

//ここで選択肢(二択)
//●『設定を変更する』
//●『もういい』

//●設定を変更するを選んだ場合*********************************************
恭介「そうだな。昨日はひとえをモデルにして失敗したから、今度は……基本は今のままで、もう少し自然な感じにしてくれないか? 普通の女の子っぽく」
リース「普通というのは、どのような意味でしょう? もう少し具体的にお願いします」
恭介「そう、それ。その業務口調をやめてほしい。普通はそんな話し方をしない」
リース「以前、恭介さんは私を『親友として扱う』とおっしゃっていましたね。友達感覚でつきあえるような、親しみやすい性格にすれば良いのでしょうか?」
恭介「まあ、そういうことかな」
リース「わかりました。やってみます」

//数ヶ月後-----------------------------------------------------------------
//注:アニキとレゥは既に帰国している状況
//背景:黒

――数ヶ月後

//背景:自室(朝)----------------------------------------------------------------------
リース「恭介さん、朝ですよ。起きてください」
恭介「…………う……ん……あと3分だけ」
リース「駄目です。学校に遅れますよ」
恭介「……マスター命令で、そこをなんとか」
リース「駄目なものは駄目です。早く、朝ご飯を食べてください」
恭介「……リースのケチ」
リース「そんなこと言ってると、食事を片付けますよ」
恭介「……それは駄目だ」

あれからリースは変わった。
堅苦しい雰囲気が消えて明るくなったし、以前と比べて、ずっと表情豊かになったように思う。
オレもマスターやレプリスといった主従関係を意識せずに、気軽に接するようになった。

//背景:森の小道(夕方)
リース「恭介さん。買い物に行きませんか? 今晩は一緒に夕飯をつくる約束でしたよね?」
恭介「そんな約束したっけ?」
リース「私の記憶に間違いはありません。まさか忘れたんですか?」
恭介「……冗談だよ。行こうか」
リースの側から積極的に誘ってくることも多くなった。

//背景:商店街
リース「このペンダント、可愛いですよね?」
恭介「……今度、誕生日にでもプレゼントしようか」
リース「そんなことを言っても騙されませんよ。私の誕生日は無いじゃないですか」
恭介「じゃあ、二人で誕生日を決めよう」
//リース:驚いた表情
リース「………………」
リース「はい!」
ときには、プレゼントをねだったりもする。

友人としても、恋人としても、理想的な存在といえるだろう。
時折、周囲の視線が痛いが、それも些細なことだ。
誰にも邪魔されたりはしない。
オレ達の絆は永遠なのだから。

//エンディングC(BGM:lost colors)


//●『もういい』を選んだ場合***********************************************************
恭介「……いや、もういい。たぶんリースには無理だ」
//リース:悲しそうな表情
リース「そうですか……また何かご希望があれば、遠慮なくおっしゃってくださいね」

そう言ってリースは部屋を出ていった。
レプリスに対する嫌悪感は、リースに命令したところで、どうこう出来る問題ではない気がする。
たしかに、リースにリクエストすれば、オレの望む通りの人格になるだろう。
でもそれはアルゴリズムを入れ換えただけのことであって、なにも解決していないように思える。



//背景:寮の廊下(夜)----------------------------------------------------------------
レゥ「おにいちゃ〜ん!」

食堂から帰る途中、オレの姿をみつけたレゥが駆け寄ってくる。

//レゥ登場。
レゥ「あのね、あのね」
恭介「レゥ、廊下を走ると転ぶぞ。一体、何だ?」
レゥ「へへ〜」
レゥ「わたしも〜」
レゥ「おにいちゃんに〜」
レゥ「べんきょうを、おしえるの!!」

//↓の怒り表現は出来れば、おでこの血管マークで ………………※ のように
………………………むかあ!!
こいつにだけは、言われたくない台詞だ。

//レゥをグリグリ攻撃。レゥ泣く表情
レゥ「いたい、いたいよぅ」
恭介「レゥ、勉強がどんなものかを知っているか?」
レゥ「いっしょに、ほんをよむんでしょ?」

……まあ、間違ってはいないが。

恭介「勉強というのはな……」
恭介「たまに役に立つこともあるが、同時に自分の命をも削る、諸刃の剣なんだ」
レゥ「よくわからないよう」
恭介「だから今日は勉強しない。わかったな」
レゥ「ぶう……」

//-------------------------夢・第3夜------------------------
//ノベル形式。全画面に文章表示
//背景は黒。

――意識と無意識の狭間
――暖かさも寒さもなく
――時間の流れさえも希薄な空間

完全な『無』とはこういうことを言うのだろうか。

何をするでもなく、周囲に身をまかせる。
自分は何をしに、ここへ来たのだったか。

探検? それとも休息?

どれも無意味なことだろう。
ここには何も無いのだから。

そのままどこまでも漂っていく。
時折、周囲に意識を向けるが、何もみつからない。

結果がわかっているのに、何度も同じことを繰り返す。
何かを期待しているのか。
無いことを確認しているのか。

いつまでも続く同じ夢。
自分は何故こんな夢を見ているのだろう。

//改ページ。次の文を画面中央に表示。
――夢など必要ないのに。
//文章の全画面表示を終了




//『夢のかたち』四日目//////////////////////////////////////////////////////////////////
//背景:寮の玄関ロビー(夕方)
リース「おかえりなさいませ、恭介さん」

学校から寮に戻ると、玄関口にいたリースがオレを出迎えた。

リース「恭平様がお部屋でお待ちです。大切な話があるので来るようにと」

アニキがオレに話? なんだろう?
同じ部屋に住んでるんだから、わざわざ呼び出さなくてもいいだろうに。

//背景:自室(夕方)-------------------------------------------------------------
部屋に戻ると、アニキが待ち構えていたように、こちらに視線を向けた。
リースがオレに続いて部屋に入ってくる。
アニキはひどく難しい顔をして、じっと何かを考え込んでいるようだ。
様子を覗いながら、アニキの前に座る。
それでもアニキは、オレを見据えたまま動こうとしない。

――重苦しい沈黙の末、アニキが口を開いた。

恭平「……恭介、リースに何をした?」

反論を許さない厳しい口調。

恭介「何をって、俺は別に何も……」
恭平「リースが不調を訴えている」
恭介「えっ?」
恭平「外傷はない。おそらく精神的なストレスだ」
恭平「……恭介。お前はリースを不安にさせるようなことを、何か言っただろう?」

リースが不調? ストレスの原因がオレ? 一体何のことかわからずに、思考が停止する。

恭平「リース」
リース「はい、恭平様」
恭平「マスター権限により、渡良瀬恭介から準マスターの権限を剥奪する」
リース「受理しました。只今をもって、私のマスターは恭平様ただ一人となります」
恭介「えっ!?」
恭平「リースは部屋に戻って、レゥの様子でも診ていろ。レゥはまだ本調子じゃないからな」
リース「承知しました」
恭介「アニキ、どういうことだよ?!」

リースがこちらに背を向けて、部屋を出ていく。

恭介「待て、リース!」

リースは振り向きもしない。

恭介「リース!」

そのまま何事もなかったかのように、リースは姿を消した。
……納得がいかない。
抗議するようにアニキを睨みつける。
それを受けてアニキが話し始めた。

恭平「恭介。レプリスというのはな。お前が想像している以上に、もろい生き物なんだ」
恭平「レゥとリースの体調不良の原因……それが何だか、おまえにはわかるか?」
恭平「レプリスは、人間とは比べものにならないほどの高い能力を持っている。でもその反面、精神的には未熟な存在だ」
恭平「生まれて間もない赤ん坊が、高い能力と大量の知識を与えられたら、どうなるか想像がつくだろう?」
恭平「レプリスの場合、精神的な負荷がそのまま身体の異常を引き起こす」
恭平「それを回避するため、通常レプリスには、起動と同時に『マスターのサポート』といった行動の指針が与えられる」
恭平「レプリスが不安になったり悩んだりしないよう、ひとまずの目的を与えるわけだ」
恭平「レプリスはそういったギリギリのバランスの上で、自己を保っている」
恭平「……恭介。リースが体調を崩すようなことをした心当たりが、あるんじゃないのか?」

//選択肢(二択)
//●ある
//●わからない




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