夢のかたち
作:ふうらいまつ



//●それでも変わるべき を選んだ場合*******************************************


意を決して言い放つ。

恭介「リース……君は人として生きるべきだ」

わずかだが、リースの顔におびえの色が走る。

リース「……私の意識に触れたのなら、知っているはずです」
リース「私は人間とは違う。マスターのために生まれ、マスターのために尽くす。それがレプリスとしての私の在り方」
リース「マスターが喜んでくれることが、私にとって一番の幸せ」
リース「自分のやりたいこと、自分だけの願い……恭介さんの求めているものは、私の中には無いんです」
リース「恭介さんの望むような生き方は、私には出来ない!」

恭介「……違う!!」
恭介「確かにあの夢には、何も映っていなかった。でも、やりたいことが無いんじゃない」
恭介「リース。君は確かめたかったんだ。自分の中に、人間と同じ感情があるのかどうかを」
恭介「何も無い空間で、自分にないものを探し続ける夢――あの夢自体が、君の願いを投影したものじゃないのか?」
恭介「……リース。君は人として生きることに、憧れているんだ」
恭介「願いが無いんじゃない。自分も人間と同じように夢を見たい、人間のようにやりたいことを見つけて、人間のように生きていきたい」
恭介「それが君の願いじゃないのか?」

リースが視線をそらす。

リース「……そんなこと、私は……」
恭介「じゃあ、なぜ走って逃げたんだ!?」
恭介「人として生きることが、怖かったんじゃないのか!?」
リース「…………!」

静寂が辺りを覆い尽くす。
打ちつける雨音だけが、時間を刻んでいく。

永遠とも思える沈黙――

その沈黙の果てに、リースがつぶやいた。

リース「……私に、見つけられるでしょうか」
恭介「大丈夫……きっと出来るさ。出来なくてもオレがどうにかする」
そう言って、リースの腕をつかむ。
恭介「……それに急ぐ必要はないんだ。ゆっくりと一緒に見つけていけばいい」
リース「……恭介さん」

リースがゆっくりと、しかし、確実に足を踏み出す。
もう迷いは無い。
リースは今ここから、歩き始めるんだ。



//背景:白--------------------------------------------------------------------

――翌々日

//背景:空港。キャラの位置は、本編のたえBエンドとほぼ同じ
結局、リースはアニキと一緒に海外へ帰ることになった。
恭平「どうした恭介。なごり惜しいか?」
恭介「そんなのじゃないよ。何も教えてくれなかったのが不満なだけだ」
あの後オレは、オレの体に起こった現象についてアニキを問い詰めたけど、アニキはニヤニヤしているだけで何も教えてはくれなかった。
恭平「しかし、レゥとリースの両方を残してほしいと泣き付かれたときには、驚いたぞ。おまえがそんなに欲張りだったとはな」
たえ「やだ、恭介。そんなことしたの?」
恭介「してません!」

……正確には少しだけした。
日本に残るようリースを引き止めたのだが、本人に断られてしまったのだ。
リースいわく『これは私にとって、とても大切なことですから』だそうだ。

たえ「また寮に来ることがありましたら、うちの寮ではいつでも歓迎しますから」
恭平「ええ、ありがとうございます」
リース「恭平様、そろそろお時間です」
リースとアニキの関係は、まったく変わっていないようだ。
二人にとっては、この状態が一番自然なんだろう。
恭平「そうだな、じゃあ、またいつか来るよ」
恭介「ああ……元気でな。ほらレゥも」
レゥ「うん。またね」
恭平「お前達も元気でやるんだぞ」
リース「それでは失礼します」
アニキとリースは、大きなキャスター付きのカバンを転がして歩きはじめた。
その後ろ姿に、あらかじめ決めておいた質問を投げかける。
恭介「リース。向こうに帰ったらどうするんだ?」
リース「私ですか? そうですね……」
//リース:笑顔で(顔に手を沿えて笑っている絵)
リース「内緒です」

//エンディングA(BGM:ナツノ宇宙)



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