まぶしいほどに白い、傘。

白い傘が、ゆらゆらと進む。

俺の頬をとめどなく流れ落ちる、暖かい雨粒。

そこには、微笑む少女が・・・

少女の髪が、白い傘が・・・揺れる。

白い翼が俺の視界から消滅する。

微笑む貴女は・・・まだ、ヒトだった・・・

巡り往く未来を、ヒトの運命を知ること、それすなわち・・・

凍れる彫像は、見向きもされないし、見られようともしない。

少女は運命の導きに従う。白い傘が指し示すままに・・・

運命の歯車が・・・廻る。

それ、すなわち・・・絶望。


まぶしいほどに白い傘を持っていた少女。
柑橘系の香りを身に纏っていた少女。
少女を覆っていた白いベール。
風に流され、舞い上がる白いベール。
吹き流された白いベールが今そこに・・・
俺は、ベールに手を伸ばす。
一縷の望みに全てを託す。
このベールさえ、掴めれば・・・
全ては元通りに、全てはなかったことに!!!
でも、運命は、気まぐれで・・残酷で・・・
俺の手に触れる直前、ベールは翼に姿を変える。
翼ははるかな高みへと羽ばたいてゆく。
大地に降り立った翼は待っていた。
新たなる主の訪れを・・・
彼は見つけるだろう。
白い、まぶしいほどに、まっ白な傘を。
柑橘系の、香りのしない、まっ白な傘を。
絶望への、道標を・・・
そして、彼は眠りにつくのだろう。
覚めない悪夢を見るために・・・



よどんだ時が流れ始める直前、
俺は聞いた。
悪夢の幕開けを告げる、絶望の絶叫を・・・
「うああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



Memories Off Nightmare
第三章「交錯する想い、そして・・・」
 Produced By コスモス





「智也は、死にました」

きっぱりと言い切った俺の声が、虚ろに購買部に響く。
誰もが黙したまま佇んでいる。
狂おしいほどの沈黙、俺はこの沈黙を知っている。
何のことはない、智也の通夜で、葬儀で、いやというほど味わったばかりだからだ。
だが、これなら問題はない、この程度なら耐えられる。
俺も、唯笑ちゃんも。
なぜなら、俺も唯笑ちゃんも知っているからだ。
『狂おしいほどの沈黙』など取るに足らない沈黙だということを。
いっそ狂ってしまいたい、しかし、狂ってしまうことすら許されない。
悲しみを、怒りを、憎しみを、恐怖をも通り越し、ただひたすらに、現実という名の狂った悪夢から一秒でも早く目覚めるのを祈るしかない。
そんな『沈黙』を知っているから。
だから、これなら耐え切れる、そして、立ち直れるはずだ、唯笑ちゃんなら・・・・


そして、その五秒後だろうか?十分後だろうか?短いような、長いような時間がすぎた後、沈黙が再び破られた。
唯笑ちゃんによって・・・
「・・・無理だよ・・・唯笑には・・・唯笑には・・・」
わずかにうつむき肩を震わせながら、かすかな声を漏らしている。
「もう、無理だよ・・もう、智ちゃんも、彩ちゃんも・・・いないのに・・・もう、もう、笑ってられないよ〜〜〜!智ちゃ〜ん!!」
最後は大声で叫んでその場を走り出す。
俺は黙ってその背中が小さくなっていくのを見送る。
『唯笑には無理だよ、笑ってられないよ』か・・・
これで・・この選択で・・・
俺は間違っていないよな? 智也?
パァ〜〜〜ン!!
突然の小気味の良い音と共に、俺の視界が激しくぶれる。
・・・な、なんだ?
突然のことにわけがわからず視線を眼前に向ける。
すると、そこには肩を怒らせ目を吊り上げた音羽さんがいた。
どうやら音羽さんに思いっきり頬をはたかれたようだ。
「なんてことを言うのよ、稲穂君!!いったい何考えてんの!?」
言うだけ言うと、音羽さんも走り去ってゆく。
おそらく唯笑ちゃんの後を追ったのだろう、唯笑ちゃんの走り去った方に消えてゆく。
やっと痛みを感じ始めた左頬をさすりながら唯笑ちゃんの立っていた場所に目をやる。
ごくわずかだが、購買部のコンクリートの床にしみができていた。
唯笑ちゃんの涙、なんだろうな・・・
ごめんな・・唯笑ちゃん。・・・
そして、もの言いたげな小夜美さんに見送られながら、俺はその場を後にした。




智ちゃん、智ちゃん。
唯笑、笑ってられないよ。
笑えないの。
智ちゃんに言われたのに。
唯笑、智ちゃんと約束したのに。
あの時の約束、破っちゃったよ。
ねえ、智ちゃん、唯笑のこと叱ってよ、いつもみたいに『何してやがる、唯笑』って言ってよ。
ねえ、智ちゃん、どうして、どうして何も言ってくれないの?
お願い、唯笑になにか言ってよ、顔を見せてよ、ねえ、智ちゃん!!

泣きながら走る。
走りながら考えるのは智ちゃんのことばかり。
心の中で智ちゃんに何度も何度も呼びかける。
返事が帰ってこないのは分っていた。
だって、智ちゃんは彩ちゃんの所に逝ってしまったのだから。
智ちゃん、彩ちゃん、逢いたいよ・・・
私が、逢いに行ったら、二人ともきっとすっごい怒るんだろうな。
でも、きっと、最後には許してくれるんだろうな、そして、きっとこう言ってくれるんだろうなぁ。
『唯笑ちゃん、これからは三人ずっと一緒だよ』
『そうだ、俺達はもう二度と離れ離れなんかにはならない、ずっと、ずっと三人一緒だぞ』
智ちゃん、彩ちゃん、怒ってもいいよ、だから、唯笑もそっちに逝ってもいいかな?

「今坂さ〜〜〜〜ん!待って、ちょっと待ってよ〜〜〜」
突然後ろから声が追いかけてくる。音羽さんだ。
きっと、唯笑が泣き出したものだから心配して追いかけてきたんだろうな。
音羽さんも、信君も、クラスのみんなも唯笑のことを心配してくれてる。
だけど、それがかえってつらかった。
信君みたいに、智ちゃんなんか最初からいなかったみたいに、今日が先週と何も変わっていないように接してほしかった。
そうすれば、智ちゃんのことを思い出さずにすむから。
でも、駄目だった。
皆の心配そうな顔で、智ちゃんの席の花で、そして、なにより、唯笑が、智ちゃんに呼びかけられないことで、智ちゃんがいないことが嫌でもわかってしまう。
だから、
こないでほしかった。
智也、なんて言われたくなかった。
これ以上、智ちゃんのことをあれこれ言われたくはなかった。
関係ない人に・・・
そして、思わず言ってしまった。
「来ないでよ〜〜!!
音羽さんに、音羽さんなんかに、唯笑達の何がわかるって言うの!!!」
今はほうっておいてほしかった。
だから、その場から逃げ出した。




「!!!!!」
言われてその場に凍りつく。
ついさっき考えたことが、かつての自分のセリフが、頭の中でリフレインする。
『智也に・・・智也に何が分るって言うのよ!!』
『私がどんな気持ちで今日まで過ごしてきたのかも知らないで・・・・』
『大体、智也にはこんな経験ないからっ・・・・』
私には、凍りつくことしかできなかった。
何も言えなかった、それ以上追いかけることもできなかった。
自分の無力さが身に染みる。
ごめんね、智也・・・
何も、何も、してあげられなかったよ・・・
親友、失格かな?




キーンコーンカーンコーン・・・
一日の授業の終了を知らせる合図と共に、教室の中にざわめきが広がっていく。
さて、と・・・
俺は唯笑ちゃんの席に向かう。
主のいない無機質な机から、例のプリントや教科書を取り出し、唯笑ちゃんのかばんに詰め込む。
唯笑ちゃんはあの後教室に戻っては来なかった。
当然と言えば、当然だが、音羽さんの説得は功を奏さなかったらしい。
むしろ、音羽さんの方が思わぬ反撃にあったらしく、昼休み以降元気がない。
今でも、『私が届ける』などと言ってくるかと思って言い訳を考えていたのだが、全くのノーリアクションで肩透かしを食らったような気分だ。
ま〜、ただでさえこの後のことを考えると頭が痛くなってくるのだから、楽をできるのならそれに越したことはないのだが・・・
俺は、二人分のかばんを持って立ち上がると、唯笑ちゃんの家へと向かった。


ふう・・・・
俺は重いため息をついた。
いや、これからしなければならないことを考えるとつかざるを得なかったのだ。
本当に上手くいくのだろうか?自分で唯笑ちゃんに残ったわずかな余裕を握りつぶしておきながらこんなことを考えるのも何だが、考えずにはいられなかった。
そして、うんざりした気持ちで見上げる。
唯笑ちゃんの家を。
はあ〜、俺は再度重いため息をつく。
もちろん、いつまでもこんなところで立ち尽しているわけにはいかないのは分っている。
ここで、きっちりやるべきことをやらなければ、冗談抜きで昼間の一言が致命傷になりかねない。
なにより、女の子の家の前で、立ちつくしている今の状況がすでに十分以上継続している。
これ以上ここでうろついていれば、唯笑ちゃんをどうこうする前に、警察に通報されかねない。
実際、すこし離れた場所で立ち話をしているおばちゃんグループが、ちらちらこちらを盗み見ている。
ここはもう覚悟を決めるしかないだろう。
俺は目を閉じ大きく深呼吸をする。そして自分に言い聞かせる。
落ち着け、稲穂信、お前ならできるんだ。

そして俺は意を決すると、インターホンを押した。
ピーンポー−ン・・・
もう、後に引くことはできない、頼むぜ、智也。
・・・・・
・・・
・・
「はい、どちら様でしょうか?」
インターホンから中年女性の声がしてくる。
おそらく唯笑ちゃんのお母さんだろう。
「俺、あ、いや、私、唯笑ちゃんのクラスメートで稲穂といいます。
唯笑ちゃんが今日早退されたものですから、忘れ物を届けに来ました。
それと・・・智也君のことで、唯笑ちゃんに話したいことがあります」
「・・・・・分りました」
そして、扉は開かれた。


ス〜〜〜〜〜、ハ〜〜〜〜〜〜〜〜。
扉の前で改めて深呼吸。
唯笑ちゃんの部屋の前。
唯笑ちゃんのお母さんに大体の事情を説明し、そして俺はここにいる。
この壁一枚向こうで唯笑ちゃんは、苦しんで、悲しんで、悩んで、恐怖して、そして、絶望しているはずだ、智也のいない世界に・・・
でも、それじゃ駄目なんだ。
唯笑ちゃんのためにも。
智也のためにも。
だから、
俺が・・・

コンコン
軽くノックする。
ノックの音が響く。
・・・・・
しばしの沈黙、そして返答。
「何?お母さん・・・」
それに答える。
「いや、俺なんだけどさ。
ちょっと唯笑ちゃんに話しがあるんだ。
入って、いいかな?」
「信君?」
・・・・・
再び沈黙、そして返答。
「いいよ・・・」
寂しげな、悲しげな、はかなげな、今にも消えてしまいそうな弱々しげな声。
「それじゃ」
カチャッ
ドアを開いて中に入る、目に映ったのはベッドにうつ伏せになり、顔だけをこちらに向ける制服姿の唯笑ちゃんだった。
その顔はやつれ、その姿は小さく、その部屋は薄暗かった。
閉じられたカーテン、閉められた窓、よどんだ空気、それら全てが部屋の主の今を雄弁に物語っていた。
「唯笑ちゃん、これ忘れて行っただろ?あと、プリントとかも入ってるから」
・・・・・
・・・
・・
長い、沈黙。
家の前を通る通行人の話し声、車のエンジン音、それらの音だけが時折聞こえ、ここが現実の世界であることを認識させる。
重苦しく、痛々しい、沈黙。
俺は唯笑ちゃんを見る。
唯笑ちゃんの目は、確かに俺に向いている。
しかし、唯笑ちゃんに俺は見えているのだろうか?
室内に光源はない、窓のカーテンも閉められているので外部からの光源もない、唯一の光源は俺の開いた入り口のみである。
つまり理論上、俺の顔は逆光で唯笑ちゃんからは輪郭しか分らないはずだ。
それでも唯笑ちゃんは俺に目を向ける。
そして、自分の目に俺の姿を映し出している。
俺を通して、智也のことを思い出しているのだろうか?
それとも、それすら、もうできないのだろうか?
虚ろな意思を持たぬ瞳でしかないのだろうか・・・?
いずれにしろ、俺にできること、しなければならないことはただ一つ。
ならば、俺が迷う理由は何もない。


長い長い沈黙の後、俺は、智也は、口を開く。
「唯笑、泣いてたら駄目だろう、お前は、いつだって、ただ、笑ってなくちゃいけないんだから」
一言一言を噛み締めるように言う。
・・・・・
「と、智ちゃん?」
一瞬の間を置いて唯笑ちゃんが声を発する。
戸惑いの色を浮かべて・・・
「って、智也に言われただろう?唯笑ちゃん?」
「え?」
呆けたように俺をみる唯笑ちゃん。
「智也は、最後に、あの時に、唯笑ちゃんにそう言ったんだろ?」
・・・・・
「どうして知ってるの?」
「知ってたわけじゃないさ、智也ならそういうと思ったんだよ」
「どうして?」
どうして、わかったの?か・・・
だが、俺はそれには答えない。
「唯笑ちゃん、唯笑ちゃんは覚えているかい?
智也が桧月さんの死から立ち直ったときのことを、
智也が言葉を取り戻して現実の世界に戻ってきたときのことを」
「どうして・・彩ちゃんのことを・・・」
それにも答えず話しを進める。
「あの時、唯笑ちゃんは智也に言ったよな?」
「??」



・・・
・・・・・
「早かったな、智也」
「ああ、今日はスタートダッシュが良かったからな。
みろ、戦利品はばっちりだ」
アンパンと、カレーパンを高く掲げてみせる智也。
「たまにはウニパンでも食ってみたらどうだ?」
「食うか!!そんなもん!!!」
その日、俺は智也と屋上で昼飯を食っていた。
会話こそいつもとなんら変わらないが俺は緊張していた。
なぜなら、その日が判決の日だから、
その日が11月17日の翌日だから、つまり、その日が俺が智也に全てを告白した日の翌日だったからだ。
結果的には全てが上手くいっていた。
その日の唯笑ちゃんと智也を見れば、二人の間のわだかまりが影すら残さず消えうせたことは、自信を持って断言できた。
そして、それは智也が、桧月さんの呪縛から解かれ、過去と現実を受け入れ前に向かって進み始めたことを、また、唯笑ちゃんの積年の想いが通じたことを意味していた。
つまり、俺の償いは完了したのだ。
しかし。
俺が『償いのため』という思惑を持って智也に近づいた、という事実が償いが終わったからといって消えるわけではない。
そしてなにより、この償いとは、俺が俺の罪の意識から逃れるために俺が勝手に設定した使命にすぎないのだ。
俺が自分を許せたとしても、桧月さんを見殺しにしにされた智也が、俺を許せるかどうかは全くの別問題なのだから・・・
そんなわけで、俺は緊張していた。
そして、飯も食い終わり後は雑談するばかりという時になって、普段は見せない真剣な表情で声を掛けてくる智也。
「なあ、信」
来たか・・・
「信には、全てを告白してもらった。
心配させたし迷惑も掛けた。
だから、今度は俺が全てを話すよ、俺のこと、彩花のこと、そして唯笑のこと・・・」
予想に反して、智也の顔は実に穏やかで、優しげな表情をしていた。
「ちょっと待て!俺は智也に意図的に近づいたんだぞ?
それに桧月さんだって俺が子供じゃなければ、怯えて立ちすくんでなんかいなければ、死なずに済んだかもしれないんだぞ?
そんなことはわかってるんだろう?
なのに、なんでそんな顔ができるんだよ!智也は!!」
俺は思わず声を荒げてしまう。
だが、智也は全く動じなかった。
そして、あくまで静かに穏やかに答えてくる。
「信、もう自分を責めるのはやめようぜ、確かに彩花が死んだのは悲しいことだ。
だが、死者は生き返らないんだ。
仮に、彩花が死んだのが信のせいだとしても、お前の俺への接近が許しがたいことだとしても、彩花はもうどうしたって生き返りはしないし、俺とお前は親友になってしまっている。
今更、お前との付き合いを止めるなんてできるわけないだろ?
そもそも、お前が俺に近づいたのだって俺を想えばこそだし、それがなかったとしても俺とお前は遅かれ早かれ親友になってたよ。
違うか?」
「・・・・・」
答えられずに沈黙していると、それにかまわず智也が先を続ける。
「だいたいさ、動かなかったから彩花が死んだのがお前のせい、なんて言い出したら、彩花に傘を持ってくるように頼んだ俺の立場はどうなるんだ?」
「え?」
智也の思いがけない言葉に思わず言葉を失ってしまった。
「そうだ、あの時彩花を呼び出したのは俺だ。
だから、俺も思ったさ、俺があの時呼ばなけりゃ、ってな。
だけどな、そのことで現実をみなければ、周りを、唯笑を、もっと傷つけるだけ、彩花をもっと悲しませるだけだって気づいたのさ。
そのことを気づかせてくれたのはお前と唯笑だぞ?
そのお前が俺と同じ呪縛に捕らわれちまったらまた俺が彩花に怒られちまう。
だから、さ。
お前ももう解放されていいんだぞ。
お前、言ったよな?俺に償いをしなければならないって。
だったらもうお前の償いは終わったんだ。
お前のおかげで、俺と唯笑は結ばれた、立ち直ることができた。
だからお前に感謝することはあっても、お前を恨むことは絶対にない!!
俺も!唯笑も!そして彩花も!!だから、お前も前を向け!!!」
「智也・・・」
俺と、智也の間を穏やかな風が吹き抜ける。
柑橘系の香りのする風が・・・
『そうだよ、おかげでやっと3人の心がまた一緒になれたんだから、ね、智也』
「!!!!!」
「彩花・・・」
確かに聞こえた、優しげな女の子の声が、俺の耳にも・・・
はじめまして、桧月さん。
そして、さようなら、俺も、前を向くことにするよ。
ありがとう、桧月さん・・・
・・・これからも、智也と唯笑ちゃんをよろしくね・・・
最後の言葉は智也には聞こえなかったようだ。
それとも、俺の幻聴だったのだろうか?
後には柑橘系の香りだけが残っていた・・・

その後、俺達は5限と6限をサボってお互いの全てを語り尽くした。
そして、その中で智也は語った。
あの時のことも・・・


「忘れて、ないだろ?忘れられるわけ、ないだろ?」
唯笑ちゃんが沈黙する、それにかまわず俺は続ける。
「唯笑ちゃん、君は言ったんだよ、智也に。
『智ちゃんの中でも、唯笑の中でも、彩ちゃんはずうっと生き続けてるんだよ!!』ってね。
だから、智也に代わって言ってあげるよ、智也の言葉を、さ」
そこで、一息息をつく。
唯笑ちゃんに俺の言葉が染み渡るのを待つ。
そして、大きく息を吸って再度口を開く。
「あの言葉はなんだったんだ――!!!」
俺の、智也の怒声が唯笑ちゃんの陰鬱な部屋に響き渡る。
「お前は俺に何を言った!?あの言葉はでたらめか!?違うだろ−!!でたらめなんかじゃないだろーー!!
だったらお前は何してやがる!!何をこんなところでいじけてやがる!!
おまえはいつだって、唯、笑ってなくちゃいけないんだろ−が!!
なのに、あのふざけた笑顔は何なんだ!!
作られたお芝居はいやだったんじゃないのかよ!?
俺達3人は、いつも一緒なんだ!
俺も彩花もそばにはいられなくなっちまったが、お前の心の中にはいるんだよ!!
いつだってな!
だから、だから!あんな偽りの笑顔はやめてくれよ!!!」
そこまで一息に言い切って言葉を切る。
「・・・・・智ちゃん・・・智ちゃん・・・と〜も〜ちゃ〜〜ん!!
ごめんね、ごめんね、唯笑、唯笑・・・」
そこまでいって泣き崩れる唯笑ちゃん。
おそらく、俺のことなどもう目に入ってもいないだろう。
ただ、ただ大声をあげて智也と桧月さんの名を連呼して泣いている。
・・・ふう。
俺は心の中で一つため息をつくとノートを開いてペンを走らせる。
そして、一枚の書置きを残して唯笑ちゃんの部屋を後にした・・・


『智也のことが、誰よりも誰よりも、この世界中の誰よりも大好きな今坂唯笑様へ、

泣けるだけ泣いてすっきりしたら、学校においで。
しっかりご飯を食べて、智也と桧月さんにがんばったね、と言ってもらえるようになったら、学校においで。
もう、智也は学校にはいないけど、
俺の心の中に、
音羽さんの心の中に、
みんなの心の中に、
そして、もちろん唯笑ちゃんの心の中にも、
智也はいつだっているんだよ。
だから、学校にきたら、いっぱい話そうね、智也のことを。
それで、また唯笑ちゃんの笑顔をみせてくれるかな?
そうすれば、きっと、智也も桧月さんも喜んでくれるから・・・

唯笑ちゃんの次に智也のことが大好きな、稲穂信より』





>>四章へ





---あとがき----
こんにちは〜〜〜!!第三章「交錯する想い、そして・・・」完成しました〜〜!!
かおる「お疲れ様、コスモス♪肩揉んであげよっか?」
あ、ありがと〜、かおる〜〜〜いや〜〜、がんばった甲斐があったな〜〜〜 (^O^)
って、この展開は・・・(^^;
小夜美「こら〜〜〜!!!コスモス〜〜〜!!!」
二人『・・・はあ』
小夜美「くぅおらぁ!!私の出番がぜんっぜん増えてないじゃないの〜〜!!」
かおる、何か言ったかい?
かおる「ん〜〜ん、気のせいじゃない?きっと」
そっか、そうだよな。
小夜美「な〜〜に、無視してんのよ!!」
おや?これはこれは、脇役の小夜美さん、何かご用ですか?
かおる「あれ?今回セリフが一つもなかった小夜美さんじゃないですか♪」
グサアアアアア!!!!
小夜美「あ、あんたらね〜〜〜!!!(――X)」
どうどうどう、ほ〜〜ら、いい子だから落ち着こうね〜〜(^O^)
かおる「は〜〜い、おいしいパンだよ〜〜〜♪」
小夜美「わ〜〜〜い、パンだ〜〜〜♪って、これうちの商品じゃな〜い!!」
かおる「え?それって、ヒト用の食物だったの!!?」
かおる「そ、そんな・・・わ、私、信じられない・・・あんな凶悪なトッピングのパンを食べるくらいなら・・・」
かおる「私、狂牛病にかかった松坂牛の高級サーロインステーキを食べるわ・・・」
小夜美「それは・・・けなされてるのかしら・・・?(^^;)」
かおる、その信じられない君の気持ちはよ〜〜くわかる。
あんな食物と呼ぶのもおこがましい代物を、
こともあろうに前途ある若人達の学び舎で販売しようなんて正気の沙汰じゃないと突っ込みたくなる君の気持ちもよ〜〜くわかる。
あれをパンと称すること自体が、まさに誇大表現、
いや、物体名詐称の詐欺行為と呼ぶのが相応しいだろう、と絶叫したくなる君の(以下略)
当然あの物体は犬畜生どものエサにされるぐらいがお似合いだろう、という(更に以下略)
かおる「い、いや、さすがに、そこまではちょっと・・・(^^;)」
でもね、世界には信じられないような不思議な事象が七つあってね、それを、
『小夜美七不思議』って言うんだよ。
かおる「へ〜〜、そうなんだ〜〜!」(驚愕)
小夜美「待たんかい!!」
ちっ。
かおる「はいはい、落ち着いたところでそろそろ本題にいこっか」
仕方ない・・・じゃ、結論から言おう!!
静粛に! 判決を下す!!!
原告人、霧島小夜美!!汝の出番は・・・・・
小夜美(・・・ゴクッ)
出番は増えない、以上!!!
小夜美「ちょ、ちょっと、なんでこのビューリホー女子大生の小夜美さんが脇役のままなのよ!!」
だって・・・なぁ?
かおる「ねぇ?」
小夜美「二人で勝手に納得しないでよ〜〜〜!!」
小夜美「せめて納得のいく説明をしなさいよ」
ふぅ、小夜美は我侭だな・・・
(訪れる沈黙・・・そしていくばくかの時が流れ、作者は重い口を開いた・・・)
だって、使いにくいんだもんもんもん♪
小夜美「い、い・い・加・減、にしなさいよね〜〜〜♪」
かおる「こ、小夜美さん、笑顔のまま首締めないでよ〜〜コスモス死んじゃうよ!!」
小夜美「・・・・・・・・・・・・・」
かおる「え?何?よく聞こえないよ?」
小夜美「し・・・ま・・・・・ね・・」
かおる「え?だから、はっきり言ってよ!!」
小夜美「死んでしまえ!!というか、死ね、このアホ作者が〜〜〜〜!!!!(――X)」

ついにぶちぎれ本性を表した小夜美!!
作者は天寿をまっとうすることもできずにここで力尽きてしまうのか!?それとも・・・
次回、『ついに明かされる、小夜美七不思議の謎!!』お楽しみに!!(嘘♪)


注 このあとがきはフィクションであり、実在する人物、団体、ゲームキャラとは、一切関係ありません。いや、ホントに、マジで・・・たぶん(^^;


Produced by コスモス  deepautumn@hotmail.com



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