今日は、家族でお出かけ。 パパとママと私でお出かけ。 訪れたのは、海。 私は逃げていく波を追いかけた。 突然戻ってくる波。 そして、私は戯れる。 時間を忘れて戯れる。 楽しい時間はすぐ終わる。 ザザ〜〜〜〜ッ。 ザザザ〜〜〜〜〜〜〜ッ。 寄せては返す。 波。 夕闇の迫る浜。 私はパパとママに手をつながれて歩く。 ねぇ、パパ? なんだい? 今日は楽しかったね♪ ああ、そうだな。 ねぇ、ママ? な〜に? また、ここに来ようね♪ ええ、また来ましょうね。 かおる、お城に塔を作るの忘れちゃったの。 だから、今度は塔を作るの♪ そうね、お城が残っていたら、塔を作りましょうね。 大丈夫♪ かおる、お城に壁と堀も作ったも〜ん。 そう、なら大丈夫ね。 うん♪ 私の作る、砂の城。 波にのまれる、砂の城。 なんで 作っているんだろう? どうせ 波にのまれてしまうのに。 私の前から 消えて無くなってしまうのに・・・・ |
Memories Off Nightmare 第四章「鯨舞し、大空」 |
Produced By コスモス |
「んん〜〜〜〜〜っ、はぁ〜〜」 駅の改札を抜けた後、一つ大きく伸びをし、ため息をついて空を見上げる。 澄み渡る青い大海原の中を白い鯨たちが、流れてゆく。 季節が季節なら、動いているのか止まっているのか分らないような彼らだが、今の彼らの動きは実にすばやい。 彼らが向かう先とは逆方向に、風に逆らいながら学校に続く坂道をゆっくりと歩いてゆく。 何人かの自転車通学の生徒達が、通り抜けざま私に挨拶をくれる。 この向かい風の中、顔を真っ赤にさせながらの彼らの挨拶にはなかなか迫力がある。 正直、どうせ5分後には教室で顔をあわせるのだから、その時にすれば良いのに、と思わないでもないが、挨拶を当たり前のようにしてもらえる今の状況には感謝している。 今から半年ほど前、初めてこの道を歩いた時には、自分の過去に対する未練とみしらぬ場所に対する不安で、胸がいっぱいだったのを今でも鮮明に覚えている。 未練は、今は亡きクラスメートが解決してくれた。 不安は、今も健在なクラスメート達が払拭してくれた。 私はいいクラスメートに恵まれたのだと思う。 だからこそ、私は彼らの役に立ちたい、のではあるが・・・ 「お・・よ・・〜〜!」 現実は、白い鯨達の泳ぐ大海原ほど優しくはない。 いや、この移ろいやすい大海原こそが、気まぐれな現実を映す鏡なのかもしれない。 大空は、時に全てを包み込むように優しく、時に幻想的なまでに美しく、時に何者をもひれ伏せさせるかのように力強く、時に二度と元に戻ることはないように儚く、そして、時に全てを悪夢のどん底へ叩き落としていくかのように残酷だ。 感傷に沈んだ思考を自分の現実に引き戻す。 昨日の昼休みの出来事を思い返す。思い返すだけで気が重くなる。 「はぁ〜〜〜〜〜」 と再び大きなため息をつきながら、どうしようもないことを、どうしようかと考える。 昨日稲穂君をはたいた右手をみる。 そして、今坂さんとのやり取りを思い出す。 本当にいったいどうしたらいいんだろう? これまでの稲穂君の行動から考えれば、多分あのセリフもわざとなんだろう。 それは、わかる。わかるけれども、その理由がわからない。 あの時は思わず力いっぱいひっぱたいてしまったが、あれから稲穂君とは口をきいていない。 たぶん、なぜかはわからないが正しかったのは稲穂君なのだろう。 悔しいが、今坂さんのことも、智也のことも、稲穂君は私よりもずっと良くわかっている。 実際、私が、智也達とすごした時間は、わずか半年にも満たない。 その上、その間の智也にとっての最大の出来事は今坂さんと付き合い始めたことで、今坂さんにとっての最大の出来事は智也と付き合い始めたことだろう。 つまり、二人にとって、私のことなど二の次でしかないのだ。 それで、二人のことを知り尽くすことなどできるわけもない。 「・・は・・う、・・と・・さ・・」 だから、今坂さんのことを想うならば、稲穂君の指示を仰ぐぐらいがちょうど良いのだろう。 少なくとも、私達二人が険悪ムードでは、元気づけるどころではないことだけは間違いない。 それに、もう、私一人ではどうしようもない、というのが正直なところだ。 あの『私のセリフ』の前には私はあまりに無力すぎる。 私は稲穂君ほど強い人間ではないのだ。 「お・・・わ・・・ん!!」 不幸中の幸いと言うべきか、今坂さんはまた今日から欠席するだろう。 その間になんとしても、稲穂君と和解すること。 これが、今の私にできる唯一のことだろう。 持てる力の全てを使って張り倒した相手に許してもらおうと言うのだ、これも簡単なことではないのだろうが、今坂さんをどうこうしようと言うのに比べれば、所詮相手は稲穂君、何とかなるはず、というより、何とかしなくてはならないのだ。 気持ちも新たに私は冬の北風を真正面から浴びつつ、大空に向かって心の中で叫ぶ。 「待っていなさい!稲穂信!!」 「だからもういるんですけど、隣に・・・」 どうやら無意識の内に声が出ていたのだろうか。 稲穂君が困ったように返事を返してくる。 ・・・・・って、え? 「キャッ!!! し、し、し、信君!?な、な、なんで、聞いてるの?ど、どこからここに?」 「ちょ、ちょっと、落ち着いてよ、音羽さん。日本語もキャラも微妙におかしいって」 「え?え?そ、そうだね。うん、ちょっと待ってね」 す〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ、は〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ。 一つ大きく深呼吸、冬の凍てつく冷たい空気を胸いっぱいに吸い込む。 そして、真っ白な息を吸い込んだ分だけ肺から搾り出す。 やっと落ち着きを取り戻すと隣には口の端をピクピクさせて笑いをこらえる稲穂君がいた。 落ち着くと同時に今度は恥ずかしさがこみ上げてくる。 な、何か言わなきゃ!! 「え、え〜〜と・・・」 「ワハハハハハハハハハハハ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!! 音羽さんにもああいう所あるんだね〜〜〜〜♪かわいかったよ〜〜〜〜♪」 「ちょ、ちょっと、からかわないでよ!!そ、それより・・・!!」 「はいはい、わかってるって♪『何でここに? いつから聞いてるの?』だろ? 登校途中に音羽さんを見かけたから声を掛けたんだけどさ、音羽さん自分の世界に入ってて全然俺に気づいてくれないじゃない? それで、突然『待っていなさい!稲穂信!!』だもんな〜〜〜 もう笑うしかないって〜〜〜 プッ、ワハハハハハハハハハハハ〜〜〜〜〜〜」 そこまで話すと堪えきれなくなったのか腹を押えて再び笑い出す。 く〜〜〜〜、腹立つ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!! 「も、もう!!笑ってないで、続きもちゃんと答えてよ!それで?どこから聞いてたのよ〜」 必死に私が聞くと、必死に笑いをこらえながら稲穂君が答えてくる。 「ハハッ、ハッ、ククク、え、え〜〜と、そうだな〜〜 『現実は、白い鯨達の泳ぐ大海原ほど優しくはない』の辺りだったかな? いや〜〜、音羽さんって、実は詩人だったんだね〜〜 俺、また惚れ直しちゃったよ♪」 「う、うるさいわね〜〜、い、いいでしょ!? 私だってたまにはセンチな気分になる時だってあるんだから!! あ〜〜!!それ以前に稲穂君、あなたなんで私の心理描写まで読んでるのよ!!」 「ハハッ、そんな細かいこと気にしちゃだめだよ音羽さん。 ま、強いて言うなら俺って霊感があるらしいんだよ♪前にも天使さんの声聞いたことあるしね♪それか、偉大なる創造神様のお導きかな♪」 「なんなのよ!!そのお導きってのは!! そんな理由が通用するわけないでしょ〜〜〜〜〜」 「ま〜、ま〜〜、細かいことはさておいて、さ。 さっき音羽さん、俺のこと信君って呼んでくれたよね? いや〜〜、音羽さんの愛を感じれて良かったよ♪これからも信君で呼んでくんない?」 「呼ぶわけないでしょ!!!」 「う〜〜〜ん、それは残念・・・ あ〜〜〜、昨日の平手。痛かったな〜〜〜 左頬がまだ痛いよ〜〜〜♪」 「ちょっと〜〜、そういうのはずるいんじゃないの?」 「う〜〜ん、確かにちょっと、ずるかったかな?じゃ、代わりに今日の昼飯音羽さんのおごりね♪」 「しょうがないな〜〜〜って!! そんなんでいいの!?」 思わず私は聞き返してしまう。 「ああ、今日はいっぱい笑わせてもらったしね♪ それとも、俺への愛に目覚めてくれるかな?」 寝言をほざき始めたのでとりあえず黙らせる。 「了解。昼食、小夜美さんに選んでもらうね♪」 「それだけは、止めてくれ!!!」 稲穂君が、私のナイスな提案に喜びの声をあげるのを聞き流しながら、私は難題があっさり片付いてしまったことに胸をなでおろし、心中でつぶやく。 ・・・ありがとう、信君♪ 「後生だから〜〜、勘弁して〜〜〜〜〜」 冷たく厳しい冬の風が、何故だか心地よく感じられる。 空を見上げる。私の頭上を泳いでいた鯨達はずいぶん遠くまで泳いで行ってしまった。 さあ、私も泳ぎださなきゃ!! 今坂さん、私一人じゃ駄目だったけど、私もこの前よりは強くなった。 隣には心強い相棒もいる。だから、私は逃げない。 だから、あなたも逃げずに戦って!! |
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>>五章へ |
---あとがき---- こんにちは、コスモスです。 今回はほとんど旧作に手を加えていませんのでここも簡単に済ませたいと思います。 まず、本章をもってこのナイトメアのリニューアルを終了いたします。 次回から、ついに未開拓ゾーンに突入できるというわけです。 まだまだ、先は長いわけですが、最後まで見捨てずに見守ってやってください。 それでは、第5章のあとがきで、またお会いしましょう!!(^o^/~~~~~
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