『空と僕』
作:メンチカツ




空を見上げていた。
一人土手に寝転んで、ただ眺め続けていた。空は青くて、質量を持っていて、ただひたすらに広かった。薄く伸びた雲は、自由とか僕たち人間の抱く印象を全く無視して、ただ流れていく。
空は厚みがあって、とてもこの向こうに宇宙があるなんて信じられなかった。
視界の片隅に映る欠けた月さえもこの手に掴めそうで、自分という存在の小ささを思い知った。
ふと気が付けば、僕の隣には犬の糞が寝そべっている。寝ころぶときは気が付かなかったが、もう少しで僕はこいつを押し潰してしまう所だった。
だけど、空にとってそんなことはどうでも良いことなのだろう。なにしろ、空に比べてあまりにも小さい存在である人間にとっても、どこで誰が犬の糞を踏もうと、知ったことではないのだから。
地上を這いつくばって生きる僕にとって、空はあまりにも広かった。広すぎた。
きっと空は知らないだろう。僕が空について考えていたことを。
きっと空は知らないだろう。僕という存在が確かにこの地上に生きていたということを。
空にとって、この地上に誰が生きていたかなんて、それこそどうでも良いことなのだろうから。


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