----- レジェンド・メイカーズ!! -----
第3章『真実・仲間・試練』その2
作:メンチカツ



 昔々、遙か昔。
 そう、宇宙の始まりとされるビッグバンよりも遙か昔。
 そこには、闇の神王と光の神王だけが存在していた。
 闇の神王は『ガルディウス』、光の神王は『リディアム』と言う名だった。
 二人の神王はとても仲が良く、長い長い時間を二人で過ごしていた。
 あるとき、二人の神王は互いの信頼の証として、大地を創る事にした。
 その作業は途方も無いもので、二人の神王はそれぞれ多数の神を創り出し、作業の効率性を図った。
 神々はどうせ創るならと細部までこだわり、結果、まさに桃源郷とも言うべき美しい大地になった。
 そしてこの美しい大地に、闇と光を内包した『人間』を創り出した。
 この美しい大地で、神々と人間たちは争いも無く幸せに暮らしていた。
 人間たちの要望で神々は、さらに『火』、『水』、『風』を創りだし、それらと大地に魂を宿らせた。
 精霊の誕生である。(この初めて創り出された精霊が最初の精霊神である)
 大地は火、風、水によって彩られ、さらに美しくなり、幸せに包まれていた。
 だが。
 終わりは突然訪れた。
 いや、訪れるべくして訪れたのかもしれない。
 二人の神王は長く生きる事の悲しさを知ったがために人間に寿命をつけた。
 神々と精霊、人間達は長い時を幸せに暮らしていたが、ある日一人の人間が寿命を迎えた。
 次第に感覚を失っていった人間は、こう呟いた。
「……何も見えない……真っ暗だ……闇が……」
 その人間はそのまま息絶えた。
 だが、その言葉を聞いた光の神王リディアムは、闇の神王ガルディウスを疑った。
「ガルディウス!貴様、何をした!!」
 もちろん闇の神王は見に覚えが無い為、反論した。
「まて、リディアム!我は何もしてはいない!!」
 だが、ひとたび生まれた疑いは簡単には晴れない。ましてや長きに渡り信頼し、それを裏切られたと思ったのだ。
 二人の神王にそれぞれ創り出され、従っていた神々と精霊達、そして人間達は戸惑ったが、神々はそれぞれの神王に従い、精霊達と人間達は信じるほうに従い、ばらばらになった。
 光の神王が闇の神王に手を出したのをきっかけに戦いは始まった。……いや、戦いと呼ぶのは間違いかもしれない。なぜなら、闇の神王は決して手を出さなかったからだ。
「何故だ……なぜ、分かってくれぬ……何故我らが争わねばならぬのだ……。我にはお前達を滅ぼすことなどできぬ!」 
 同等の力を持つ光の神王の攻撃をいつまでも防げるわけもなく、闇の神王は力尽き、滅んだ。
 闇の神王が何故反撃しなかったのかを考え、悩み、光の神王は後悔した。だが、いくら悔やんでも遅い。闇の神王ガルディウスはすでに滅んでしまったのだ。
 光の神王は闇の神王が反撃しなかった理由を見つけたとき……心を壊してしまった。そして、正しい判断を失った光の神王は闇を滅ぼすことにした。
 だが、新しい闇の神王が誕生したあともガルディウスの遺志を継ぎ、闇の神王たちが反撃することは無かった。
 闇の神王は長い戦いのうちに何度も滅び、新しい神王がその遺志を継ぎ、戦いを繰り返した。
 そして4代目の闇の神王が誕生し、しばらくたったころ。
「なぜだ……なぜ我ら闇に属するものは無意味に滅ぼされる!」
 何度も入れ替わり、今まで抵抗もせず滅ぼされてきた闇に属するもの達。ここへきて、ついに怒りが爆発した。
「我は認めぬ!!我が大切な仲間達を、これ以上無意味に滅ぼされる様を黙ってみてなどいられん!全てを滅ぼしてやる!!」
 こうして、闇の神王の元闇に属するもの達の反撃が始まり、光の一方的な虐殺は光と闇の戦いへと変わった。
 闇の神王たちの怒りは凄まじく、これまでに開いた勢力の差を消すほどだった。
 戦いはさらに永きに渡って続き、光は命を護るために、闇は光を滅ぼすために戦うようになった。
 そして9代目の闇の神王と、7代目の光の神王の戦いのときのことだ。これまでの戦いより過酷で熾烈を極め、闇の神王と少数の光の神々だけが残った。
 両者は命までも力とし、ぶつかりあった。
 ビッグバンである。
 定説ではその爆発は凄まじく、光と闇が空間を埋め尽くしたとされているが……その際に生み出されたものが複数あった。
 まず光と闇。爆発により大小さまざまな力を持った物が散り散りになった。
 火、風、水、地は爆発に巻き込まれ、同じように散り散りになった。
 さらに、それらの融合したもの。光と闇が融合したものは力と意志が強く、大抵はその後生まれる生物の『心』となった。四精霊は光と融合したならば創造の、闇と融合したならば破壊の性質を持った。
 そして……『悪意』。もともとは闇の神王と光の神王の負の感情だけだったが……爆発の際に融合し、さらに火、水、風、地の四精霊の力を取り込み、爆発のエネルギーを大量に吸収し、一部を散り散りにした。また、悪意は闇の神王が抱いていた滅びの性質までも吸収し、悪意に取り付かれた存在を狂わせるものとなった。
 『イビル』はこのとき生まれた。『イグゼクト』、『ビルティウス』、『ルシャナ』と呼ばれる、自我を持った最も強い力を持った3体の悪意の化身。イビルとは、その3体の悪意の化身の頭文字から取ったものだ。(本来は『イビルの子』と呼ばれる)
 散り散りになった大地は大小さまざまな大きさの惑星などになり、『宇宙』が生まれた。
 それからしばらくして『地球』が生まれ、精霊達はこの地に身を潜め、闇の神王と光の神王も復活し、力を取り戻していった。
 さらにしばらくすると生物が生まれ、生物の進化の末に『人間』が誕生し、人間は『魔法』の使い方を学んだ。
 そして、やがて滅びる地球の代わりの居住地として新しい地球を創る際に生じた莫大なエネルギーに反応し、3体の悪意の化身の1体、ルシャナが地球を滅ぼした。
 『無明の滅び』である。
 ルシャナは新しい地球も破壊しようとしたが……光の神王が転生した人間、勇者『ウドフィー』と聖女『フェリス・レットアート』、そして力を取り戻した闇の神王、四大精霊神によって阻まれ、封印された。
 時の王は魔王が滅びたと思い、余計な心配を防ぐために徹底した緘口令を敷き、全ての情報を隠蔽した。
 それから約3千年の歳月を費やし、世界の情報を改竄(かいざん)、操作し、魔法の誕生の時代さえも変えてしまったのだ。
 3千年という永い月日に人々は次第にかつての戦いを忘れていった。
 だが、平和に慣れた人間や精霊達の心には隙が生まれ、漂っていた悪意のかけら――イビルの子がその隙を突いて融合していった。
 また、心に隙の生まれた生物の精神は非常に不安定で、それが悪意に染まったとき、心のバランスは崩壊して暴走した魔力にその姿までも支配されてしまった。
 『異形』の誕生である。
 この時から新しい戦いは始まった……。

「…………」
 私は声も出なかった。私の横では、梁滋たちも呆然としていた。
 ただ、フェレットだけは驚いていなかった。
「これでかなりの情報が手に入りましたね」
 コスモスが呟いた。
「そうね、フェレットの封印を解くための洞窟の場所もわかったことだし、次の目的地は決まったわね」
 いつまでもボーっとしててもしょうがないし、そろそろ移動しようとしたその時。
「おう、明。俺達はここまでだ」
 梁滋が口を挟んできた。
「え?それってどういう意味?」
「異形や闇の使い……イビルだっけか?奴等が現れたから一緒に戦ったが……俺とミリアはこのBLUE・FORESTのソーサリー・ギルドと市の長だからな、ここを離れるわけにはいかねぇ」
 それもそうね。梁滋たちはある意味このBLUE・FORESTの責任者。しかも異形たちのおかげで混乱した町をまとめなくちゃいけないし……
「そっか、しばらくあえなくなるわけね」
「明ちゃん!寂しいわ!!」
 ミリアが抱きついてくる。
「ミリアさん!寂しいです!……ぐえ」
 コスモスがミリアに抱きつこうとして梁滋に首を掴まれてる。
「そだ、梁滋。車貸してもらえない?」
「車?お前の自慢の車はどうしたんだ?」
「SSシティーに置いて来たままなのよ。……国王のせいでね!」
 ちょっと最後のほうは憎しみを込めてみる。
「な、何があったかは知らねぇが、お前の車は呼べるんだろ?」
「……え?」
「前に俺の目の前で自慢げに呼んで見せたじゃねぇか」
 ……すっかり忘れてた。そういえばそんな機能もあったわね。乗り忘れることなんて無いから使わない機能なのよね。
「ところでミリア」
「なぁに?明ちゃん」
「そろそろ……離してくれない?」
 ちょっと苦しい。っていうか話し辛い。
「明ちゃん……またね」
「えぇ、何かあったらよろしくね」
「いつでも力になるぜ、頑張れよ!」
「俺も皆さんに会えてよかったです。またいつか会いましょう」
 こうして梁滋とミリアはここで別れた。後に残ったのは私とコスモスとフェレット。
 私はSSシティーに止めたままの車、インフィニティを呼び寄せた。
 そして……また旅が始まる……。


続く



あとがき

めちゃくちゃお久しぶりです!約3ヶ月の時を経て再開したレジェンドメイカーズ。
……まだ読んでくれたらうれしいなぁ♪
今回の話で明たちは真実を知った。
ビッグバン以前の世界。無明の滅び。3千年前の伝説。そして……イビルの正体。
この先、明たちを待ち受けるものは何か?
フェレットの封印は解かれるのか?
次回レジェンド・メイカーズ第3章その3をお楽しみに!



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