----- レジェンド・メイカーズ!! ----- |
第3章『真実・仲間・試練』その5 |
作:メンチカツ |
二体の兎の異形を倒した私達は、洞窟の奥へと進んでいた。 天井が高い。人3人分はあると思う。横幅も5,6人が余裕で横に並んで歩けるほどの広さがある。 壁面は融けたように滑らかで、とても人が作ったとは思えない。 だが…… 「不思議ね」 「えぇ……この洞窟、ずっと真っ直ぐ伸びてますね」 「わき道の一つもないし……どうやって作られたのかしら?」 私達が漏らしたその問いに、フェレットが答えた。 「この洞窟は、私が勇者ウドフィーたちと共に戦った……あの3人のイビルの一人、ルシャナとの戦いで出来たのよ」 『えぇ!?』 ということは……三千年も前から存在していたことになる。 しかしこんな大きな洞窟が出来るっていうのはどんな攻撃だったんだろう? 「闇の力を得ていい気になったりはしてないだろうけど……」 「……なによ?」 悪意はないようだけど、ちょっとムカつく言い方ではある。 「ごめんなさい……でも力の差を少しでも知るために教えておくわ」 「別に謝る必要は無いけど……なんなの?」 「この洞窟はね……ルシャナの攻撃で作られたのよ」 ……驚かせてくれる。一体どんな凄いことかとひやひやしたけど。地球を数時間で滅ぼすような奴だ。このくらい出来ても驚くことはないだろう。 だけどフェレットの次の言葉に、今度こそ私達は驚くことになった。 「……それも、軽い手の一振りで起きた、ただの魔力波……私達で言えば魔法にもならないような力でよ」 「そんな……」 「本当ですか!?」 コスモスもそのあまりに大きすぎる力の差を想像してか、思わず叫んでいた。 だが無理もないだろう。私達は呪文を唱えて精神を集中し、力を借りたり増幅させることで普通の人間でも巨大な威力を誇る魔法を使うことが出来る。確かに呪文なしで魔力を放つことは出来るけど……コスモスのように何らかの訓練や修行でもしない限りは、呪文なしの魔力など空気を振動させるに過ぎない。よくても立たせた本を倒せる程度だろう。 歴史に残る偉大な魔法使いが魔力波で大岩を砕いたと言うが、それでもその程度だ。桁が違う。 「やっぱり言わなければよかったかしら……」 「いえ……確かにショックはあるけど、ルシャナの力を少しでも知れたし。気にしなくていいわ」 「そうですよ。『敵を知れば百戦危うからず』っていいますしね」 ……聞いたことない。 「コスモス、なにそれ?」 「知りませんか?旧地球に住んでたころの……ん?」 コスモスが話を中断する。 いきなりあたりの様子が変わった。 あるところを境に、人の手が加えられた形跡があるのだ。しかもそこは大きなホールのようになっているようだけど……向こう半分は暗闇でよく見えない。 「……やばいですよ、明さん。かなり複数の気配が……」 「……ええ、話に気を取られて気付くのが遅れたわね」 私達はすでに相手のテリトリーへと入ってしまったのだ。 これじゃぁ受身の作戦しか出来ない。 まさに絶体絶命!どうする私!?……なんていってる場合じゃない! 「しょうがないわね、まず大技一つ決めてあとは各個撃破っていうのはどう?」 「……ふぅ、それしかないですか」 「まぁ、しかたないわね」 作戦とも呼べない作戦だったが、私達は洞窟の事も考えながら大技の準備をする。 私とフェレットは呪文を、コスモスは刀を。 そして……敵の姿が現れた。その数……50以上。50以上もの様々な動物の異形がそこにはいた。 その異形たちを従えるかのように、一つの影が先頭に立っている。 「ようこそ、我が支配する世界へ。久々の客人ですねぇ」 なにか儀式めいた黒い神官のような衣服、その上から赤と金の刺繍が施された豪奢なマントを羽織っている。 見た目は20代後半だけど……まさかそのままではないと思う。そして何より目立つのが……禍々しいほどに赫いその髪の毛だ。 怒髪天を衝くというが、まさにその描写がぴたりと当てはまるような雰囲気だ。 「私は火の下級精霊のイビル。名を『ブレアム』と申します。あなた方が亡くなられるまでの短い時間ですが、お見知りおきを」 やたら丁寧に挨拶をしている。何のつもりかは知らないけど、こっちにとっては願っても無いチャンス! 私はコスモスとフェレットに目配せをし、全員準備が終わっていることを確認。 「ふむ、最近の若者は謙虚なものが多いのですな。昔は服などを派手にして目立ちたがる……」 先手必勝!今がチャンス!! 「……−灼熱の狂舞−『フェルボル・バイロテアル』!!」 私が解き放った魔法は、ミリアに教えてもらった炎の魔法だ。狙ったのはブレアムではなく、異形の群れ。少しでも敵が少ないほうがいい。この魔法は広範囲で威力も絶大だけど、呪文が長い。幸い無駄話をしてくれたおかげで長い呪文を唱えきることが出来た。 手のひらから生み出された複数の火球が異形の目の前でぶつかり合い、爆発!炎が踊るように荒れ狂う。六体の異形が巻き込まれて燃え上がり消滅、数体が軽度の火傷を負った。 「……−月の輝き−『ルナ・ルシル』!!」 続いて放たれたのはフェレットの魔法。 フェレットの目の前に生まれた月の様な輝かしい蒼金の光が複数の光を放ち、やはりブレアムではなく私が狙った反対側の異形の群れへと襲い掛かる。 清浄なる光は異形の群れに降り注ぎ、触れた部分を切り裂き、あるいは消滅させていく。三体の異形が完全消滅、二体が戦闘不能、十体ほどが裂傷を負った。 そして最後はコスモス! 「……葵流迅剣術・特殊技・閃の型奥義、『風魔裂焦斬』(ふうまれっしょうざん)!」 その台詞と共に低い前傾姿勢から目にも留まらぬ速さで刀を抜き放ち、横薙ぎに振り切る。 ただ一振り。 だが、刀から生み出された真空の刃は風を切り裂き、空を切り裂き、横へと伸びて行く。 そして巨大な一枚の見えざる刃となった真空波は異形たちを真っ二つに切り裂き、その切り口から炎が燃え上がる。 「いやぁ、お見事お見事。まさかこれほどのものとは。少し驚きましたよ」 そう、ブレアムは無傷だった。コスモスが狙わなかったわけではない。ブレアムが、『砕いた』のだ。真空の刃を。 両脇にいた手負いの異形数体と、無傷だった異形を数体倒したが……ブレアムと、その周囲にいた約二十五体の異形が残ってしまった。 「……あいつ、真空の刃を砕いたわよ?……しかも素手で」 「厄介な相手ね……火の精霊のイビルだから、ブレアムとはそれ以外の属性で戦うしかないわね」 「異形も半分は残ってるし……いくらHからBクラスといってもキツイですね……」 「……まって、後ろに気配が一つ……近づいてくるわ」 さっき私達が通ってきた道を、気配が近づいてくる。かなり離れているのか、気配の正体は読めない。 先にその正体を敵かそうじゃないかだけでも確かめたかったが…… 「ですが感心しませんねぇ。相手の話は……最後まで聞くものですよ!!」 言いながらブレアムは両手に火球を生み出し、血の色のような炎を吹き散らすそれを放った。 呪文の詠唱はない。元が精霊であるイビル……ブレアムには唱える必要がないのだ。 二つの火球は途中で一つになり、大きな禍々しい紅色の炎の塊となって迫ってくる。 「……くっ!」 何とか私は右へ横っ飛びにジャンプして避けた。 「おわ!」 「ふみぃ!」 コスモスとフェレットは反対側へ飛んで避ける。 炎の塊はホールの入り口あたりで爆発し、あたりを業火で埋め尽くす。直撃した地面は融けて小さな溶岩の池になっている。 「よくかわせましたねぇ、もっとも手加減はしてますがね。久々の客人だ、簡単に死なれては困りますのでね」 とことん嫌な奴ね。こいつ、殺すことを楽しんでる。 「私も動物の恐怖のエネルギーに少々辟易していたところです。存分に苦しんで我が糧となってくださいねぇ」 そうか、精霊でも悪意と同化したことで負の心もエネルギーになるんだったわね。 だけど、そう簡単にはいかないわよ! 「悪いけど、あんたと遊んでる暇はないのよ!」 「はっはっは、まぁそうおっしゃらないで下さい。……まずはこの者達がお相手しましょう!」 それまでただずーっと立っていた異形たちが一斉に咆哮を上げる。 「まさか一斉に襲ってくるとは……明さん、どうします?」 「どうするったって……やるっきゃないでしょ」 「お互い死なないように頑張りましょう」 私達は迎え撃とうと構える。 だが、後ろの気配もすでにすぐそこまで来ていた。 (どうする?前が先か後ろが先か……) しかし考える暇もなく異形が襲い掛かってくる。 その時だった。 「明師匠!伏せて!」 聞き覚えのある声が後ろから聞こえ、確認もせずに伏せた。 フェレットとコスモスも同様にその場に伏せる。 そしてその上を……気配が……いや、『彼』が飛んだ。 「轟け!破滅の咆哮!!『六道餐殺弾(りくどうさんさつだん)』!!」 言葉が終わると同時に轟く轟音。 「皆さん立ってください!」 耳をふさがなかったので聞き取りにくかったが、状況が状況だけにすぐ立ち上がる。 そして私達が見たのは、目の前の死屍累々たる異形。ざっと二十体はあるだろう。一体どんな攻撃をしたのだろうか? 「助かったわ、ありがとう。えーっと……」 そう、そこにいたのはあのへらへら屋で出会った男だったのだ。 「あ、オレの名前は『ティーマン』です。通称『暇人(かひと)』って呼ばれてるんでそう呼んで下さい。」 「そう、それじゃ暇人、あなたが何故ここに?」 「それは後でお話します。それより……異形が来ますよ!」 「そうね、あの紅い髪の奴には気をつけて。あいつは、イビル……えっと、闇の使いよ」 闇の使い=イビルってことは私達しか知らないはずよね。そう思って私はあえて闇の使いと伝えた。 「闇の使い……あれが……」 「そ。桁違いの力だから、慎重にね」 「分かりました」 「明、くるわよ!」 フェレットの檄が飛ぶ。あわてて私も呪文を唱える。 振り向く私に一体の異形……狐が襲い掛かってきた。大きく開けた口腔から光が迸り(ほとばしり)、それは一筋の光となって襲い掛かる! 「……く!」 万全の態勢ではなかったためにわずかに横腹をかすり、激痛が走る。 「こんにゃろ!よくも師匠を!唸れ、オレの愛銃『アルマ・カサドーラ』よ!」 激痛に呪文を中断してしまった私の目の前に暇人が颯爽と現れ、魔法銃を構えた。 狐の異形はその尻尾を逆立て、奇妙に震わせる。すると周囲に風が生まれ、狐の体を取り巻いた。 「何するつもりかは知らないけどこっちは付き合う義理は無いんだよ!」 暇人は言い捨てて魔法銃の引き金を引く! 「ルルルゥゥアアアアアア!!」 応じるように狐が叫び、取り巻いていた風が魔力の銃弾を切り裂いて襲い掛かる! 「うぉ!?」 とっさに後ろへ倒れこんでかわす暇人。今度は私がと立ち上がるが、呪文は間に合わない! しかたなく腰に吊ってあった短剣を抜き構えるが、正直自信はない。 「ルォオオオオオオオン!」 狐の咆哮が轟き、その姿が……消えた!? ふと上に何かを感じ、振り向かずにその場を左に飛びのく。 ゴガァ! 狐が上空から飛び込み、大地を砕く。そしてそのまま私のほうへ……突っ込んできた!? やばい! 「−火の壁−『フエゴ・パレ』!」 突如響いた声と共に私の目の前に火の壁が立ち上がり、止まれずに突っ込んだ狐が火の壁に巻き込まれて燃え上がった。 「ギャオオオオオオゥゥゥゥゥ……」 狐の異形は、そのまま動かなくなった。 「ありがとう、フェレット」 「お礼ならいいわ。それより傷は大丈夫?」 「なんとかね」 辺りを見回してみれば、すでに異形はいない。フェレットとコスモスが残っていた四体の異形を倒してしまっていた。 「一つ言っておくわ。明」 「……なに?」 「落ち込むのは後にしなさい。今は……あのイビルを倒すことだけを考えて」 「……分かったわ」 フェレットにはすっかり見抜かれていた。私の不注意でみんなに迷惑をかけたと気にしていることを。 だけどフェレットの言うとおり。一番厄介な相手がまだ残っている! (こいつは私が倒す!) 私は強く心に誓い、ブレアムを睨みつけた。 「くっくっく、なかなか面白い余興でしたな。……そろそろ私めがお相手いたしましょう」 続く |
あとがき
ついに登場した洞窟を支配するイビル、ブレアム。 突如駆けつけた暇人。 3人と1匹(?)によるブレアムとの戦いが今始まる! はたして明たちはブレアムに勝つことが出来るのか? フェリス・レットアートの封印はどうなった!? そして暇人がここにきた理由は!?!? 次回レジェンド・メイカーズ第3章その6をお楽しみに! 今回は呪文書いてなかったから、書き方変えちゃって混乱するかもですが、 まぁ、ちゃんと呪文も後々出ると思いますので。よろしく! そして新しい仲間の暇人の武器、アルマ・カサドーラ。 下にも言葉ごとの意味は書いてますが、自分的には『魂を狩る者』見たいな意味で使ってます。 『レジェ魔法語録(カッコ内は綴り)』 フェルボル=熱情・熱意・灼熱・炎熱(fer・vor) バイロテアル=踊り狂う・揺れ動く(bai・lo・te・ar) ルナ=月(lu・na) ルシル=輝く・光る・照る(lu・cir) フエゴ=火(fue・go) パレ=壁(pa・red) アルマ=魂・霊魂・精神(al・ma) カサドーラ=狩猟する・猟師・ハンター(ca・za・dor・do・ra) 今回登場した言葉の意味でした。 ちなみにイタリア語ね。 パレは正式にはパレ(ドゥ)って発音。 カサドーラはカサドルドラって発音です。 ……こんどいい感じな言葉選出したらそれようのフォルダ作っとこう。忘れてそのたび調べるのはイヤン♪ |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||