はじめに このSSは、私をはじめ有志で作成中のゲーム(というよりは、デジタルノベルになりそうですが)のプレストーリーとなっています。 ヒロが失恋する夜、そのとき幼馴染の朱美は何を考え、何を想ったのでしょうか? 本編を楽しんでもらう前に、まずはストーリーの前提を知ってもらうために、このSSを書くことにしました。 それでは、是非お楽しみください。 |
失恋の夜、少女は… |
Sergeant |
僕は、あの人がそんな人だなんて思ってもいなかった。 うわさに聞いていたのだけど、本当だったなんて……。 「誰とでも寝る娘だ」と皆言ってたのだけど、本当だったなんて……。 しかも、僕はその現場を一部始終見せ付けられた。 見たとたん、背筋が凍った。 最近、学校の図書館で読んだ小説のワンシーンさながらだった。そう、それは村上龍の「限りなく透明に近いブルー」の常軌を逸した麻薬とセックスの宴のごとく……。 もう、僕は何も信じられない……。 周りには女性が多い環境にある僕であったとしても、あのような暴力的な行為を見せ付けられたのでは、もうどうしていればいいのかわからない。 もう、女性が信じられない。 シンジラレナイ……。 ドウシタライイノカワカラナイ……。 オンナノヒトスベテガ、コノヨウニ……。 モロクモリセイヲウシナウナンテ……。 「お母さん、手伝おうか?」 いつもは手伝いはまったくしない私だったが、今日ばかりはそうは行かない。姉は部活が長引くかもしれないということで遅くなる、と校門での別れ際に話したとおりになった。そうなると、さすがに私も夕ご飯の支度をしなければならなくなる。 私−篠原朱美−は、どこにでもいる普通の高校生。 普通とちょっと違うところは、幼なじみの男の子がいることかな? 家庭は父と母、姉、そして私の4人で構成されている。父さんと姉さんは高校の教師で、私が通っている高校で働いている。一家4人のうち3人が同じところにいるなんて、ちょっと不思議というか、なんと言うか…。 父さんと姉さんとも、運動部の顧問兼コーチをしているため、時々夜遅く帰ることがある。そうなると、姉に手伝わせている家事を私が手伝うことになることが多い。 「ん、いいわよ。それにしてもアンタが手伝うなんて珍しいね。何かあったの?」 「ううん、何にも」 母さんの問いかけにさらり、と流す。そうして、私は母さんの言いつけに従って、鍋を出すことにした。今夜の夕食は、二人が今度の試験でがんばっていることを見越してスタミナが出る料理ということでウナ重を作ることになった。 そういえば、時期的にも今月は土用の丑の日がある。そう考えると、今が旬かもと思って母が安易に考えたのだが……、気のせいかもしれない。とはいえ、思い出したように母が私のほうを向く。 「あらやだ、サラダの野菜買い忘れてたわ。朱美、悪いけど買って来てくれる?」 「うん、いいよ」 返事をして、買い物籠とメモを受け取る。そして、私は大急ぎで玄関のところにある自転車をかっ飛ばしていつも買い物をする店に向かう。 私の母が良く行く店は、ここから自転車で数分ほどのところにある。そこには生鮮食料品が数多くそろっている。 夕暮れ時のためか、お客さんのほとんどが仕事帰りで夕ご飯の準備に追われる学生さんはもとより、お母さんの年代の人たちや、果てはカップルの姿もあった。カップルはカップルで、仲良くお買い物して、それから一緒に夕ご飯を食べた後、あとは夜のお楽しみに突入するのかと思うと、ちょっと私の胸がドキドキしてしまう。 私は子供の頃から、男の子との付き合いが少なかった。 幼い頃から私にはヒロがいるから、ほかの男の子とあまり話すのが億劫になっているのかもしれない。幼い頃からそばにいる男の子しか知らないためか、私は「それでいいや」と思い込んでいるかもしれないし…。 一通り買い物を終えて、私はレジに向かう。 「1800円になります。丁度お預かりいたします。ありがとうございました」 レジの人からレシートを渡され、買ったものを袋に詰め替える。 買い物をしていたとき、私は店ですれ違ったカップルの表情を思い出していた。 いかにも、「今、私たち幸せです」というにこやかな笑顔を回りに振りまいていた。 それを見て、私はちょっとうらやましい気持ちになっていた。 私に彼氏がいたら、それはそれで楽しいかも。そう、私の隣にはいつも彼がいて、そして一緒に学校に通い、そしていつも一緒にお弁当を食べて、それに…。とはいえ、私には幼なじみのヒロがいる。ヒロと一緒に学校に通ってるし、一緒にご飯も食べてる。とはいえ、なぜか物足りなく感じてしまうのは気のせいだろうか? 何事もない表情で、私は店を出る。そしてまた自転車を走らせて自宅に向かおうとする。 帰り道は、河川敷を通ることにしている。ここから頬を伝う風が気持ち良く、気分転換にはもってこい。 そうして、いつものとおりを通っていると、そこには見覚えのある顔があった。 ヒロだった。 私は自転車を大慌てで止める。 「ヒロ、どうしたの?」 ヒロに問いかける。 「……」 ヒロは答えようとしない。私はこの場を去ろうかと思ったが、幼なじみが何も言わないのはおかしいと思い、ヒロが話しかけるまで待った。 (ヒロ……、様子がおかしい。いったいどうしたんだろう……) 5分……、6分……、10分……。 何分くらい待ったのだろうか。ヒロが重い口を開いた。 ヒロの顔は、いつもの活発なヒロではない。落ち込んでいて、とても暗い表情をしている。 「オレ……振られたんだ……」 ヒロの口は、すごく重かった。 ヒロの顔は、悲壮感が漂っていた。今にもこの世が終わりそうな、重い、重い表情……。 「振られた……の?」 私が問いかける。 「うん……」 力ない声でヒロが答える。 ヒロが振られたとは……。 確かに、最近ヒロは女の子に熱を上げていた。私が知る限り、ヒロが1年生のときのクラスメイトだった。その女の子とは片思いを続けていた、とは聞いていたが……。 「あの子……、結局うわさのとおりだったんだ……、まさか……、まさか……」 そういうと、ヒロは突然私の胸元で泣き出した。 「うわぁぁぁ……、うわぁぁぁ……」 ヒロの泣き声は、地面に響くほどの声だった。もう、それは悲痛で悲痛で……。 悲しみが私にも乗り移りそうな感じだった。今にも私も悲しくなりそうで……。 「ヒロ、泣いてばかりだとわからないよ……。何があったの……」 ヒロはまだ泣いていた。 この泣きようでは、悲惨な失恋をしたのではないか、そう思えてならない。 しかし、このまま泣き続けると、私までも悲しくなりそうな気がしてならない。 仕方なく、私はヒロを抱きしめた。そうしなければ、私も涙に濡れそうだったからだ。 「ヒロ……、元気出してよ。きっといいことがあるかもしれないよ……」 「うわぁぁぁ……、女なんて、女なんて……」 まだまだ、ヒロは胸の中で泣いていた。 ヒロはつらい失恋をした。 やはりうわさが真実だったら、心に残る傷は深いものになるだろう。 そして、その傷が癒えるまでは、長い、長い時間が必要だろう。 ヒロが悲しみに暮れる様を見て、自分の中に秘めたる想いが覚醒するかもしれない。 ヒロ……、つらいことがあったとしても、私がいるよ……。 今、あなたを救えるのは、そう……、私もいる。そして、杏子たちもいるし……。 だから、今は泣いてもいいよ……。 だから、今は……。 Fin |
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あとがき これがはじめて書いたSSとなるのですが、いかがでしたでしょうか。 26で同人作品デビューというのは、ちょっと私としても信じられないです。 本当なら、もっと若い頃から同人誌活動をするべきなのに……、何やってんだ? オレの周りだと、結婚してるやつもいるし……。 それと、勢いで執筆したため、相当未熟な部分があるかもしれません。 その場合は、がんがん突っ込んでもかまいませんので、よろしくです。 でわでわ、Sergeantでした。 |
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