夢物語


 この世の中は常に晄と闇が入り混じっている。晄は人類を癒し、闇は人類を滅す。そんな世の中で人類は普通に生きているのだ。いつ、何処で何が起こるか解らないこの地球の上で・・・。
海斗:「やべー。遅刻するー。」
俺の名は卯月海斗(うづきかいと)。中学3年だ。今日は5月20日。春真っ盛りだ。なんて言ってる場合じゃない。遅刻する。俺はすぐに制服に着替え急いで家を飛び出した。学校まで走っても20分はかかるのに今の時間は8時10分。丁度遅刻する。まずい。非常にまずい。俺は懸命に走った。腕時計が8時20分を指す。間に合わない。
信也:「やっべー。遅刻するー。」
後ろから声がして振り返ると俺と同じクラスの友達の大和泉信也(おおいずみしんや)が食パンをくわえて走ってくるのが見えた。
信也:「おっす、海斗。これはもう間に合わないな。」
海斗:「バカヤロー。今日はちゃんと遅刻せずに登校しないとあいつの雷が落ちるぞ。」
信也:「そうだった。俺達、今日遅刻したら1週間連続遅刻になっちまうもんな。」
海斗:「そうなったらどうなるか解るだろ?」
信也:「あの世逝きだな。」
海斗:「ああ。だから走れ!」
信也:「くっそー。」
俺達は全速力で走った。残り1分。校門に到着。このまま一気に教室だ。よし、間に合う。教室のドアに手を掛けてドアを開けた瞬間。
「キーンコーンカーンコーン。キーンコーンカーンコーン。」
海斗:「よっしゃー。ギリギリセーフだ。」
信也:「これで雷受けずにすむ。」
涼平:「相変わらずですね。」
大賀涼平(おおがりょうへい)がやれやれといった顔をして俺達を見た。
担任:「やっと遅刻せずに登校できたか。」
担任もあきれかえっているようだ。
 今日の授業はとにかくつまらなかった。みんなは一生懸命授業をしてるのに俺はぼーっとしていた。春だからかな・・・。
担任:「じゃあここを・・・卯月。お前答えろ」
海斗:「32.19」
担任:「正解だ。じゃあこれは?」
海斗:「60.37」
担任:「正解だ。ちゃんと話を聞いていたようだな。」
俺は担任の話など全く聞いていなかったのに何故か問題の答えを言えた。俺が変わり者って言われるのはそのせいかな?
「キーンコーンカーンコーン。キーンコーンカーンコーン。」
4時間目の授業が終わった。昼飯の時間。俺は持ってきた弁当の包みを広げた。
涼平:「海斗君は何であんなにぼーっとしてられるんですか?もうすぐ受験ですよ。」
海斗:「あーそっか。もうそういう時期なんだな。」
涼平:「海斗君はお気楽だなぁ。」
海斗:「悪かったな。」
俺は素早く飯を食った。今日の昼休みは大事な用があったからだ。
 海斗:「神藤、話って何だ?」
俺は、同じクラスの神藤綾香(しんどうあやか)っていう学年でも1位2位を争う可愛い子(学年比)に昼休みに校舎裏に来てくれと言われていたのだ。ちなみに今日の朝に。
海斗:「神藤、いるんだろ?」
しかしいくら呼んでも神藤の返事は無い。まだ来ていないのだろうか?すると
綾香:「遅くなってごめん。」
海斗:「いいよ、今来たばっかだし。それで話って何?」
綾香:「・・・あの・・・その・・・単刀直入に言うね。」
海斗:「・・・・・・。」
まさか・・・これは・・・告白か?神藤が俺に?ありえないぞ。一体何なんだ?早く言ってくれ。
綾香:「私と・・・付き合ってくれる?」
まじかよ・・・。これは・・・喜んでいいのか?いやここは冷静に。落ちつけ。落ちつくんだ海斗!
海斗:「いいよ。」
綾香:「本当?やったぁ!じゃあ今日一緒に帰ろう。」
海斗:「え?ああ、いいよ。」
綾香:「じゃあ、校門で待ってるね。」
そう言って神藤は校舎へ戻っていった。
俺は心の中で思いっきり叫んだ。やったー!と。
信也:「聞いたぜー。」
涼平:「とんでもない情報を入手してしまいましたね。」
海斗:「てめぇーら!盗み聞きしたなぁ!」
信也:「人聞きの悪いことを!俺達はここを通りかかっただけだ。」
海斗:「ってそれを盗み聞きって言うんだ!」
涼平:「まあ、安心してください。誰かに言うってことはありませんから。」
海斗:「いや、お前は信用できるけど・・・信也!。お前は信用できねー。」
信也:「いやいや、大丈夫だって。あんなの口が裂けても言えねえよ。」
海斗:「だといいんだけどな。」
俺は心の中で泣いた。なぜこいつらに知られてしまったんだ。運ってやつかな。
海斗:「とにかく、絶対に言わないでくれよ。」
信也:「わかってるって。」
涼平:「安心してください。僕は海斗君に彼女ができてよかったと思ってますから。」
海斗:「お前は本当にいい奴だな。それに比べて信也は・・・。」
信也:「ほんとに言わねえから。安心してくれ。」
海斗:「安心できたらとっくに安心してるよ。」
俺達は教室に戻った。
 5時間目は体育の自習だった。先生が出張らしい。変わりの先生が来て
先生:「バスケットボールを各自でやっておきなさい。男女混合でも男女別々でもどっちでも構わない。とにかくすぐに始められるようにすぐ準備をしなさい。」
生徒:「はーい。」
話し合いは5分で終わった。結局、男女混合で行うことになった。グループは教室の班でいいだろうという意見でまとまった。
海斗:「班でやるのか。俺は3班だったな。ってことは信也と涼平と一緒だな。あと・・・あっ!神藤とも一緒だ。」
綾香:「がんばろうね。」
海斗:「あ、ああ。」
信也:「熱いね憎いねヒューヒュー。」
海斗:「お前・・・今すぐここで殺してやろうか?」
信也:「冗談だよ。冗談だってば。」
そんな俺達のやりとりを見て涼平はクスクス笑っていた。
まずは1班対2班。結果は2班の勝ちだった。次は1班対3班だ。
信也:「よっしゃー。やるぜー。」
信也は燃えている。笛が鳴った。俺にパスが回ってきた。
海斗:「スリーポイント・・・ダメだ。パス・・・だれも空いてない。こうなったら。」
俺は一気に突っ込んだ。1班にはバスケ部が3人もいるが俺はその3人を素早くかわした。レイアップシュート。決まった。
海斗:「よっしゃー。」
信也:「ナイスシュート、海斗。」
涼平:「さすが海斗君。やりますね。」
綾香:「海斗君すごーい。」
 それからいくらか時間が経過した。今は14対12でこちが勝っている。
海斗:「おい、むこう来たぞ。」
むこうはゴールに近い奴にロングパスをした。やばい。入れられる。俺はおもいっきり走った。何とかシュートを阻止することができた。またシュート。俺は高くジャンプしそれを阻止した。が、バスケ部の奴がボールを素早く奪い取りシュートを決められてしまった。これで同点だ。時間は残り30秒。その時、俺は不吉なものを見た。何と、いきなり電球が落ちてきたのである。綾香の頭上めがけて・・・。ガッシャーン。とてつもなく大きな音と叫び声が聞こえた。俺は襲い掛かって来る恐怖に目を閉じていた。あれ?
信也:「早くパス回してくれ。でないと時間が・・・。」
海斗:「あれ?さっきのは?」
信也:「何言ってんだ?相手にシュート決められてお前がパスを出そうとしてるんだよ。だから早くパスくれ!」
海斗:「ああ、解った。」
俺はすばやく信也にパスした。そのとき、さっきの恐怖がよみがえった。俺はすぐに天井を見た。電球が・・・揺れている。
海斗:「神藤!危ない!」
神藤:「え?」
俺はとっさに神藤のほうへ走っていった。間に合わない。電球が揺れてる。落ちた!神藤まであと5メートル・・・。
「ガッシャーン!」
とてつもなく大きな音と叫び声が聞こえた。何とか神藤は無事だった。ガラス片でちょっと切ったぐらいだ。
海斗:「神藤、大丈夫か?」
綾香:「海斗君・・・。私は大丈夫。でも海斗君が・・・。」
電球は俺の足めがけて落下したようだ。ふくらはぎのあたりから大量に出血している。かなり痛む。
海斗:「痛え・・・。」
信也:「海斗。大丈夫か?」
涼平:「すぐに先生呼んできますから。」
俺の意識は少しずつ薄れていく。綾香の泣き声が聞こえる・・・。信也の声も・・・。俺は死ぬのか?
 気が付くと俺は病院にいた。神藤が俺を覗き込んでいた。
綾香:「海斗君、気が付いたね。よかった。」
信也:「全く、世話かけやがって。無茶苦茶心配したんだぞ。」
涼平:「でも無事でよかったですね。」
海斗:「・・・・・・。」
綾香:「海斗君、どうしたの?」
海斗:「いや、迷惑掛けて悪かったなって思ってさ。」
綾香:「迷惑掛けたのは私のほうだよ。ごめんね海斗君。」
海斗:「謝らなくていいよ。それよりもみんなに聞いてほしい事があるんだ。大事なことだからよく聞いてくれ。」
綾香&信也&涼平:「解った。」
海斗:「実は・・・綾香の頭上に電球が落ちるってことを俺、知ってたんだ。
綾香:「?」
信也:「どういう意味だよ?」
海斗:「見たんだよ。綾香の頭上に電球が落ちるところを・・・。」
涼平:「海斗君。もう少し解るように説明してください。」
海斗:「あの時、信也にパスを出す前に綾香の頭上に電球が落ちる瞬間を見たんだよ。実際にはありえないだろ?だけど・・・見えたものは見えたんだ。」
綾香:「それって・・・予知ってこと?」
海斗:「解らない。」
信也:「それですぐに反応できたって訳か。」
海斗:「ああ。電球が揺れてるのを見てすぐに危険だって思ったんだ。」
涼平:「そして海斗君の判断は正しかった・・・。」
みんなは信じられないという顔をしていた。一番信じられないのは俺だった。何故あんなことができたのかさっぱりわからなかった。
みんなは家に帰った。すると母さんと父さんが来た。
母:「海斗。よかったわね。大した怪我じゃなくて。」
父:「全く、お前は世話ばっかりかけやがって。」
海斗:「友達と同じ事言わないでくれよ。」
俺がそう言うと母と父はかすかに笑った。
母:「明日には退院できるそうよ。」
父:「今日はここに泊まるからな。」
海斗:「別に気、使ってくれなくてもいいよ。」
父:「何言ってんだ。お前が怪我するからこういう事になるんだ。」
海斗:「俺のせいかよ。」
といい終わったその時、俺は見た。信也が車に跳ねられるところを・・・。涼平の叫び声、綾香の顔が鮮明に映し出された。
海斗:「大変だ!すぐに、すぐに友達を呼んでくれ。さっき帰っていった奴らをすぐに呼び戻してくれ。」
父:「どうしたんだ?」
海斗:「いいから早く!」
俺の叫び声を聞いた父はすぐに友達を連れ戻しに行ってくれた。
母:「一体どうしたのよ?あんたほんとに大丈夫?」
海斗:「早くしないと・・・早くしないと信也が死んじまう。」
母:「海斗、熱でもあるんじゃないの?」
母さんは俺がおかしくなってしまったのだと思っていた。5分ぐらいすると父があいつらを連れて戻ってきた。
父:「連れてきてやったぞ。この子達だな?」
海斗:「父さん、ありがとう。二人とも少しだけ出ててくれないかな?」
母:「解ったわ。」
父:「しゃあねえな。」
海斗:「ありがとう。みんな入ってきてくれ。」
俺はそう言うと体を起こした。まだ少し足が痛む。
信也:「全く、お前は何がしたいんだ?」
海斗:「お前のためだけに呼んだんだぞ。」
信也:「どういうことだよ?」
海斗:「お前が車に跳ねられて死ぬところを見た。」
信也:「何だと!」
綾香:「また・・・予知したんだね。」
海斗:「ああ。」
信也:「何か変な気分だぜ。俺は全然、自分に危険が迫ってることを知らないのにそれを病院にいるお前に知られるんだからな。」
海斗:「俺もおかしくなりそうだ。鮮明にその場所が映し出されて音まで聞こえてくるんだからな。」
涼平:「それにしても何故、海斗君にそんな力が・・・。」
信也:「不思議だな。」
綾香:「これって天性に持って生まれた才能なのかな?」
海斗:「解らない。けど、あの時が初めてなのは間違いない。」
俺はみんなに二度目の別れを告げると母さんと父さんを呼んだ。
母:「海斗はもう寝なさい。そうとう疲れてるはずよ。」
父:「そうだ。寝ろ。」
海斗:「ああ、そうするよ。」
そうして俺は深い眠りへと落ちていった。帰っていった3人がスーパーマーケットの爆発に巻き込まれる夢を見ながら・・・。



 俺は目を覚ました。そういえば入院してたんだっけ?母さんと父さんはテレビを見ていた。
母:「こわいわね、スーパーが爆発したんですって。」
父:「ここから結構近いところらしいな。」
まさか、夢に見たのと同じじゃないか。俺はすぐにテレビを見た。
アナウンサー:「この爆発の原因は現在調査中です。」
テレビから声が聞こえてくる。俺はテレビより新聞だと思い父さんの近くに置いてあった朝刊を取った。
海斗:「軽傷が12名、重傷が6名、死亡が3名・・・。まさかこの3名って・・・。」
父:「かわいそうになぁ。まだ中学生だったらしいぞ。」
海斗:「身元は死体が所持していた生徒手帳で判明・・・。」
母:「海斗が通ってる学校の生徒だそうよ。」
海斗:「大和泉信也、神藤綾香、大賀涼平・・・。」
俺は我が目を疑った。そんなはずない。もう一回読んでみよう。だが・・・いくら読んでもその事実は変わらなかった。
父:「この3人・・・お前の友達だな?」
海斗:「ああ。」
俺は力なく答えた。俺は自分自身を憎んだ。俺の見舞いに来たせいでこんなことになったんだ。
海斗:「ちくしょう。みんな俺のせいだ。」
俺は新聞を見つめていた。
海斗:「こんなのありかよ。」
俺は地球を恨んだ。この世を恨んだ。すべてを恨んだ。
海斗:「ちくしょー!」
病院で大声を出してはいけないというのは解っていたがつい出してしまった。急に力が抜けた。俺はまた寝てしまった。
 気が付くと俺は自分の部屋にいた。時計の針は7時丁度を指している。俺はリビングへ行ってみた。
母:「あら、海斗。今日は早いのね。」
海斗:「ああ。」
母:「いま、ご飯作るから待ってね。」
海斗:「解った。・・・すげえ変な夢見たよ。」
母:「へぇー。どんな夢見たの?」
母さんは料理をしながら俺の話しに耳を傾けた。
海斗:「とにかく変な夢。」
俺は話を切り上げた。話したくなかった。怖かったから・・・。恐ろしかったから・・・。
 今日は朝早く学校へ行った。教室へ着くといつも明るいみんなが今日はとても暗かった。
海斗:「どうしたんだよ?お前いつもは明るいのに・・・。」
俺は黒板の近くに立っていたお調子者の早見瞬(はやみしゅん)に声を掛けた。
瞬:「卯月、お前ニュース見てないのか?」
海斗:「ああ、今日の朝はみてない。」
瞬:「死んだんだよ。大和泉と大賀と神藤がさ・・・。」
海斗:「何?」
瞬:「スーパーの爆発に巻き込まれてな。」
 俺は三人の机の上に置いてある花を見た。
海斗:「夢じゃ・・・無かったんだ。」
END



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