中学生日記 

第1話

俺はすっげえ興奮してるんだ。
何故って?だってもうすぐ夏休みだからな。
おもいっきりエンジョイするぞ!
おっと自己紹介がまだだったな。
俺の名前は島崎雄一(しまざきゆういち)だ。

「じゃあ、怪我や病気には十分注意して有意義な夏休みを過ごしてください。」
校長の話が終わった。
校長先生ってのはなんであんなに長々と話すかねぇ?
聞きながら寝そうになったぜ。
「ぐわー俺の成績悪!」
「私のも悪ーい!」
終業式の定番と言えば成績表だよな。
俺の成績は体育だけが5だった。
あとは言いたくない。
終礼が終わると俺はすぐに部室に向かった。
俺はサッカー部に所属している。
3年生は今年で引退だ。
ちなみに俺は1年生。
「こら、島崎!サボってないで部室の掃除しろ!今日はおまえが当番だろうが!」
「は〜い!」
1年生は週に一回、順番に部室の掃除をする。
これが1年生に与えられた宿命なのだ。
先輩も1年生のときはこうやって掃除してたんだろうな。
「先輩!掃除終わりました!」
俺は箒を掃除用具入れロッカーにしまいながら言った。
「やるなー。かなりきれいになったな。」
「お、本当だ。おまえ一人でやったのか?」
別の先輩がやってきた。
ちなみに3年生は5人しかいない。
「はい!」
「やるじゃん。その調子で練習も頑張ってくれよ。俺達はこの夏で引退なんだから。」
「はい!」
俺はちょっと嬉しくなった。
掃除をしただけでここまで誉められるとは・・・。
今まではこんなこと無かったぞ。
やっぱり引退を意識してるのかな・・・。
そんなことを考えながらスパイクを履いているとキャプテンがやってきた。
「みんな合宿の日程決まったぞ。8月1日から8月7日まで。丁度一週間だ。」
「わかりました!」
後輩はいっせいにそう答えた。
もちろん俺も答えた。
俺は今年、初めて合宿に行く。
俺はかなり楽しみだった。
「さあ、練習始めるぞ。」
キャプテンの威勢のいい声が聞こえた。
「はい!」

「ただいまー。」
家に帰ってきたのは6時半だった。
「今日も疲れたー。」
俺はそう言いながら机に鞄を置いた。
合宿か・・・。楽しみだぜ。

待ちに待った合宿の日。
俺はいつもよりも少し早めに起きて準備をした。
「よっし。行ってきまーす。」
俺は外へ出た。
暑い陽が俺を照りつける。
ちょっと日に当たるだけで汗が出そうだ。
俺は集合場所のバス停まで行った。
そこにはすでに何人か来ていた。
「おお、島崎。お前結構早いな。」
俺の友達でライバルの大城大和(おおきやまと)が声を掛けてきた。
「大城も早いじゃないか。」
俺はそう言いながら重い鞄を置いた。
「島崎。いいこと教えてやろうか?」
大城はニヤニヤしながら俺に近づいた。
「何?教えてくれ。」
「実はな・・・泊まる場所が水泳部と同じらしいんだ。」
「何!」
俺は飲みかけていたお茶でむせてしまった。
何と・・・泊まる場所が水泳部と一緒とは・・・。
大城は地図を取り出した。
そういえば俺達が行く場所の地図もらってたんだったな。
大城は地図のある地点を指差しながらこう言った。
「ほら。ここにプールがあるだろ。水泳部はここを使うんだよ。」
「本当だ。」
「だから泊まる場所が水泳部と一緒なんだな。」
俺は納得した。
しばらくすると先輩もやってきた。
キャプテンが威勢のいい声で
「いいか。これは遊びじゃないぞ。こんどの大会で勝つために行くんだ。解ってるな?」
「はい!」
「よっしゃ。じゃあ行くぞ。」
ちょうどバスが来た。
俺たちはバスに乗り込むと1時間ほど話をした。

ついに着いた。
サッカー部&水泳部の合宿地。
よーし。俺はやるぞ。
まずは荷物を置きに旅館へ向かった。
すでに顧問の先生は着いていたらしい。
先生は俺達の顔を見るとこっちへ来いという仕草を見せた。
「お前らの部屋は5つもらってる。今からどこに誰が行くか決めるからな。」
こういう決め事はサッカー部は速い。
とにかく速いのだ。
わずか1分で決まってしまった。
サッカー部は3年生が5人、2年生が7人、1年生が8人いる部だ。
全員で丁度20人。
つまり1部屋4人って訳だ。
分け方はこう決まった。
まず1年生を半分に分ける(これは適当に分けた)
2年生はジャンケンで負けた3人3年生グループに入る。
そこでまた適当に半分に分ける。
大胆すぎる・・・俺はそう思った。
ちなみに俺達の部屋の向かい側の部屋は水泳部が使ってる(男子だけ)
女子が全く別の部屋なのが惜しいところだ。
「さあ、練習行くぞ」
キャプテンが言った。
キャプテンは今年で引退だからな・・・やっぱり張りきってるな。

ここでの練習は、学校の運動場でやるよりもずっとやりやすかった。
まず芝生がある。
これだけで違う。
しかも広い、とにかく広い。
学校とは桁違いの広さだ。
俺達は思う存分このサッカーコートで練習をした。
たった一日練習しただけなのに俺は力が付いたような気がした。

練習の後の風呂っていうのはなんでこんなにスッキリするのだろう・・・。
見も心もサッパリしたあと晩飯を食べた。
みんなすごい勢いで食べる、食べる、食べる!
恐ろしい・・・。
ちなみに俺も食いまくった。
ご飯は4杯もお代わりした。

自分の部屋に戻ると明日の準備をした。
しばらくするとキャプテンが部屋にやってきた。
「おい、お前らちょっと来い。」
キャプテンは静かな声でそう言った。
キャプテンについていくとすでにみんな集まっていた。」
「一体何するんですか?」
俺はキャプテンに聞いてみた。
「馬鹿かお前は。夏の風物詩ともいえるものだ。」
キャプテンは小さな声でそう言った。
風物詩といえば・・・花火?すいか?
キャプテンは呆れた顔をしながら言った。
「お前、頭の回転悪いな。肝試しだよ、き・も・だ・め・し!」
なるほど。
夏の風物詩と言えなくは無いな。
はっきり言って俺は肝試しは好きじゃない。
別に怖いとかじゃくてさ・・・そのいろいろあるじゃん・・・何ていうか・・・ようするに好きじゃないの!
俺は仕方なく先輩たちの後を追った。
俺達後輩はというと俺以外はみんな楽しそうに話し合っている。
「聞いた話だけど・・・どうやら水泳部と合同でやるらしいぞ。」
「しかも2人一組らしいぜ。で、相手はくじで決めるんだってさ。」
「じゃあ女子と当たる可能性もあるのか?」
「ああ。」
俺はそんな会話を何気なく聞いていた。
しかし、「女子と当たる可能性もある」というところだけは真剣に聞いていた。
ちょっと嬉しい。
そして悲しい。
何故悲しいかって?
格好悪いところ見られたくないだろう。
そんな話をしているうちに肝試しスポットに着いた。
「これからくじで相手を決めるぞ。」
キャプテンが言った。
みんなやる気だな。
「くじは3年から順番に引いていくからな。」
「は〜い。」
ちなみに水泳部も20人なのだ。
男子10人、女子10人。
そんなことはどうでもいい。
俺の番が回ってきた。
俺は箱の中に手を入れて適当に取り出した。
紙には「20」と書いてあった。
全員くじを引き終わった。
みんなは同時に自分の番号を見せあった。
「おーい12番何処だ?」
「5番こっち」
みんな声を掛け合う。
「おーい20番何処だ?」
俺は声を掛けてみた。
「私だけど・・・。」
後ろから急に声を掛けられて俺は一瞬飛び跳ねた。
「え?お前が20番?」
「うん。」
なんと俺の相手は同じクラスの広川夏澄(ひろかわかすみ)だった。
この子はクラスの注目の的になるほど可愛い子だ。
俺は心の中で「ヤッター」と叫んだ。
「お前も女の子とか?」
大城が声を掛けてきた。
「お前もって事は大城も女の子とか?」
「その通り。しかも俺1番だぜ。肝試しはくじの番号順にスタートするんだってさ。」
「じゃあ俺達最後じゃねぇか。」
俺はちょっと嫌な気分になった。
一番最後にスタートするとは・・・。

肝試しが始まった。
1番、2番、3番と何事も無かったかのように進んでいった。
いつの間にか19番が終わっていた。
「おい島崎、びびるなよ。」
大城が俺に言った。
「ふっ。びびってなんかねーよ。」
俺はそう答えたが実はちょっとびびっていた。
「島崎君何してんの?先行くよ。」
広川が俺を呼ぶ。
「あ、悪い悪い。」
俺達はスタートした。

暗い道が森へと続く。
森の入り口に不気味と書いてありそうだ。
俺たちはキャプテンにもらった地図を見ながら進んでいった。
ほとんどの組が5分〜10分で終わっていた。
その事から考えるとどうやらそんなに長い道ではないらしい。
「ねぇ島崎君。」
広川が声を掛けてきた。
「何?」
俺は地図を見ながら答えた。
「今、前を黒い陰が横切ったんだけど・・・。」
俺は一瞬脅しかとおもった。
「ははは、そんなまさか・・・。」
といい終わったとき、見た!
黒い陰がスッと横切ったのだ。
しかもとてつもなく速いスピードで。
「あれって幽霊?」
広川はかなり脅えているようだった。
「大丈夫だよ。ただの錯覚さ。」
俺は平静を装ってそう答えた。
「うん。そうだね。」
広川は少し安心したようだった。
それからもずっと歩きつづけた。
「この調子だとあと2分ぐらいで着くぞ。」
俺は広川に言った。
広川はコクッと頷いた。
その時、また陰が横切った。
しかも今度はその陰がこっちに近づいてくるのだ。
陰はますます近づいてくる。
広川は完全に脅えている。
俺も立っているのがやっとだった。
陰が正体を現した。
陰はただの人だった。
いや今の説明は間違いだ。
ただの人では無かった。
その顔は今日ニュースで見た顔だった。
「まさか・・・銀行強盗犯?」
「小僧・・・。よく知ってるな。ニュースで見たのか?」
陰は暗い声でそう答えた。
広川は俺の後ろにピッタリくっついている。
「お前ら見たところ中学生だな。そうか合宿で来てるのか。丁度いい所で出くわしたぜ。」
まずい!
俺はとっさにそう判断した。
その時、強盗犯は俺をおもいっきり押した。
俺は3メートルぐらい吹っ飛んだ。
しまった!
なんと広川が人質にされてしまったのだ。
「島崎君、助けて!」
広川は俺に助けを求める。
だが俺には何も手が残っていなかった。
考えろ、考えるんだ。
俺はまず状況を確認した。
強盗犯はナイフを広川の首にあてている。
下手に手を出せば広川が死んでしまう。
こっちには武器が全く無い。
「おい、小僧。俺をお前らの合宿地まで案内しろ。早くしないとこの女の首が飛ぶぜ。」
「ぐっ・・・。」
俺は懸命に考えた。
絶対どこかに武器があるはずだ。
使えそうな武器が・・・。
俺は辺りを見回した。
見つけた!
誰かが捨てていった空き缶だ。
俺はサッカー部だ。
いける!
「解った。案内すればいいんだろ?でもその子には絶対に手を出すなよ!」
「えらそうな事言ってんじゃねぇ。お前、自分の立場解ってんのか?」
強盗犯がこっちに向かって歩き出した瞬間に俺は強盗犯の顔面目掛けておもいっきり空き缶を蹴った。
命中!
見事に当たった。
強盗犯は気絶したらしくそのまま倒れた。
俺はすぐに強盗犯のナイフを奪った。
何か名探偵コ○ンみたいだな。
「島崎君、ありがとう!」
広川は目に涙をいっぱい浮かべながら言った。
「無事でよかった。とにかくこいつを何とかしないと・・・。」
強盗犯は完全に気絶していた。
結局俺達で運ぶことにした。
スタート地点に戻るとみんなはびっくりした。
そりゃそうか。
何せ強盗犯を運んできたんだから。
顧問の先生はすぐに警察を呼んでくれた。
俺はみんなに一部始終を話した。
みんなはキャンプファイヤーで怖い話を聞くかのように聞いていた。
「まあ、二人とも無事でよかった。」
キャプテンが優しく言ってくれた。
この事件が原因で俺と広川は警察に呼ばれた。
これが取り調べって奴だな。
俺はみんなに話したのと同じように一部始終を話した。
警察の人が話してくれた話によるとあの強盗犯は捕まる直前に通りかかったトラックの荷台に飛び込み逃走したとのことだった。
そしてそのトラックの目的地があの合宿地だった。
「それにしても君はとても勇気がある子だ。普通なら犯人の言いなりにならざるをえないだろう。それを君は犯人を捕まえてしまうんだから・・・。」
「そんな、照れるなぁ。」
「でも次からはあんな無茶なことをしちゃダメだぞ。今回は運が良かっただけだ。下手したら君もあの子も死んでいたかもしれないんだよ。」
「はい、解りました。」
取調べが終わった。

それから合宿も終わり始業式の日が少しずつ近づいてきた。
宿題やらなきゃ・・・。

始業式当日。
俺は普通に学校に行った。
教室に入るといきなり俺を20人近くが囲んだ。
「一体何だよ?」
俺は潰されそうになった。
「すげぇな島崎。お前強盗犯を捕まえたんだって?」
「しかも人質を助けたらしいじゃないか。」
「おい、噂をすれば広川が来たぞ。」
俺と広川は散々ひどい目にあった。
しかしこういう熱気はすぐに冷めるものである。
1週間たつとみんなはあのことを話さなくなった。
俺はそれが嬉しかった。
1週間も囲まれてたら死んじまうからな。

とにかく俺達は災難を免れることができた。
でも、それはたった一回に過ぎない。
これからどんなことが起ころうとしているか俺達に解る訳が無かった。
続く



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