中学生日記 

第2話

俺は窓を開けた。
太陽の光が眩しい。
風が気持ちいい。
俺は学校へ行く準備をして家を出た。

教室に入るとすでに何人か来ていた。
俺は自分の机に鞄を置くと友達と話をしたりした。
広川も来た。
広川は俺の顔を見るとおはようと声を掛けてきた。
「今日も暑いね。」
「本当だな。いいよな水泳部は。こっちはかなりきついぞ。」
そんな話をしているといつの間にかチャイムが鳴っていた。
俺はすぐに着席した。
担任が来て朝礼が始まった。

朝礼が終わると俺は1時間目の授業の準備をした。
先生が来るとさっそく授業が始まった。
俺はずっと外を見ていた。
あれ、訪問者だ。
忘れ物でも届に来たのかな?
お、飛行機雲だ。
かなり長いな。
「こら島崎、よそ見するな。」
「すいませ〜ん。」
俺は適当に返事をしたあとまた外をみた。
俺のクラスは1年1組で北館にある。
ふと南館を見てみるとさっきの訪問者が2年1組の教室前にいた。
あれ?教室内に入ったぞ。
生徒が教室から出てくるぞ。
あれ、逃げてるのか?
まさか?
「先生!2年1組が大変です!」
「何?」
先生は2年1組の教室の方を見た。
「一体どうなってるんだ?」
先生は首を傾げる。
間違いない。
あの男は訪問者じゃなくて犯罪者だ。
ちかごろ学校に無理矢理入り込んで生徒を襲うという事件が多発している。
げ!あの男、こっちに来たぞ。
ガラッ
男はいきなり教室のドアを開けた。
右手には血のついた包丁・・・。
「お前ら・・・殺してやる!」
男はそう言いながら先生を刺した。
先生はそのまま倒れた。
教室内が大パニックになった。
みんなは一目散に教室を飛び出した。
男は逃げ遅れた生徒を狙っている。
「やめろー!」
俺はおもいっきり叫んだ。
男はこっちに向き直った。
「お前・・・死ね。」
男はいきなり俺に飛び掛ってきた。
俺は何とかそれを避けた。
俺は椅子を持ち上げて男に投げつけた。
男はそれを避けて再びこっちに向かってきた。
俺は掃除用具入れロッカーから箒を取り出し男の腹を突いた。
男は苦しそうに腹を押さえている。
また飛び掛ってきた。
俺はそれを避けて本棚の近くの机に置いてあった花瓶を男に投げつけた。
花瓶は見事に男の頭に命中し男は倒れた。
血は出ていない。
どうやら気絶したようだ。
俺は男のナイフを奪うとできるだけ男から離れた場所にそれを置いた。
以前もこんな事があったなと俺は思った。
逃げ切れなかった生徒、数人が俺の動作をじっと見ている。
俺はすぐに先生の傷をチェックした。
急所は外れている。
これならまだ間に合う。
俺は残っていた生徒の1人に職員室に言って救急車と警察を呼んでくるように言った。
俺は先生を担いで保健室に向かった。
しばらくすると救急車と警察が来た。
救急車は先生と生徒数人を運んでいってくれた。
警察は犯人を逮捕した。
事件は解決したかのように思われた。
だが決して解決はしていなかったのである。
手錠を掛けられていた男がいきなり起き上がり胸ポケットから銃を取り出し俺を人質に捕ったのである。
一瞬の出来事だったので俺は反応できなかった。
「くっそ。放せ!」
俺は懸命に逃れようとしたが男の力が勝っていた。
「大人しくその子を放すんだ。」
警官が叫ぶ。
だが男はそれに動じずゆっくりと
「こいつを助けたいなら今すぐ車と金、用意しな」
と言った。
抵抗すれば殺される。
こういう時はどうすればいい?
大人しくしておくのが一番いいのだろうか?
俺は必死に頭を回転させたがいい案が思い浮かばなかった。
男はゆっくり移動しながら保健室に入った。

男が俺を人質に捕ってから20分近く経った。
「おいこら!さっさと車と金、用意しろ!」
男は叫ぶ。
俺はこめかみに銃を当てられたままだった。
「解った、今すぐ用意する。」
刑事がそう言うと警官に指示を出していた。
俺は・・・どうすればいい?
もし男が車で逃走を図るとしたら間違いなく俺を連れて行くだろう。
そうなればますます厄介なことになる。
こうなったら・・・賭けだな。
俺は男の腹に蹴りを一発入れた。
男はよろめいた。
今だ!
俺は薬品棚からピンセットを5本ぐらい取り出して男に投げつけた。
男は右手でそれを払いのけた。
まずい!
男は俺に発砲した。
銃弾は俺の顔をかすめた。
血が滴り落ちる。
また発砲した。
今度は何とか当たらなかった。
調子に乗りやがって。
あいつは狂ってる。
人を殺すことが面白くてしかたがないんだ。
そんな思考回路を俺が叩き直してやる!
俺は男に突進していった。
男は再び銃を構え、発砲した。
銃弾は俺の腹に当たった。
俺は倒れそうになりながらも相手の顔面に蹴りを一発入れた。
男は吹っ飛びガラスに直撃した。
ガラスは割れて男の頭からは血が滴り落ちた。
俺はそんな様子を見届けながら倒れた。
視界が渦を巻いている。
頭がクラクラする。
やっぱり、警察の人が言ったように無茶しちゃいけなかったんだ。
俺は少し後悔した。
だんだん意識が遠くなっていく。
叫び声が小さくなっていく。
このまま死んじまうのかな?

「まだ死ぬな。」
頭の中で声がした。
「誰だ!」
俺は叫んだ。
暗闇の中から老人が現れた。
「雄一。お前はまだ死んではいけない。」
「まさか・・・じいちゃんか?」
俺は我が目を疑った。
死んだはずのじいちゃんが今、目の前にいるのだ。
じいちゃんは心筋梗塞で3年前に他界した。
俺はずっと泣いてたっけな。
俺はよくじいちゃん遊んでもらったからな。
そんなじいちゃんが今、俺に話し掛けている。
「雄一・・・。そこに座りなさい。」
俺は言われた通り、座った。
「お前はまだ死んではいけない。お前は死ぬにはまだ早すぎる。」
じいちゃんは胸ポケットから何かを取り出した。
「これを持っていきなさい。」
「これ何?」
「これはわしの倉庫にある鞄の鍵じゃ。家に帰ったらすぐに鞄を探すんじゃ。」
「解った。」
「わしはずっとお前を見守っておるぞ。」
そう言うとじいちゃんは杖を俺の額に当て何かを呟いた。
俺を蒼白い光が包む。
じいちゃんはずっと俺を見ていた。
じいちゃんは何かを叫んだ。
すると暗闇が消え、少しずつ光が戻ってきた。
さっきの渦が逆に巻いている。
だんだん見えてきた。
ここは・・・保健室!
俺は起き上がった。
傷は掠り傷程度になっていた。
刑事がすぐに俺のところにやってきた。
「君、大丈夫か?痛むところは無いか?」
「全然。それよりもあいつを早く・・・。」
刑事はすぐに男の方へ行き警官に連れていかせた。
そして俺も・・・。

取り調べってかなり面倒くさい。
俺はありのままを全て話した。
でもじいちゃんの事は伏せておいた。
もうすっかり日が暮れていた。
母さんは外で待っているらしい。
やっと取調べが終わった。
この部屋に入ってから2時間近く経っていた。
俺は部屋から出た。
母さんは近くにある椅子に座っていた。
「帰ろうか。」
母さんは言った。
俺は少し頷いた。
外は結構寒かった。
母さんは何も言わなかった。
俺はそれが嬉しかった。
家に着いた。
俺はすぐに倉庫に向かった。
「どこにあるんだ?じいちゃんの鞄・・・。」
倉庫は暗くて汚くて鞄を探せる状態ではなかった。
何とか見つけたじいちゃんの鞄の埃を払うと俺の部屋まで持っていった。
制服のポケットにあの鍵が入っている。
俺は鍵を取り出すと鞄にはめてみた。
鞄は勝手に開いた。
中には黒い箱がと紙切れが入っていた。
俺は紙切れを取って見た。
雄一へ
これをお前にやる。
必ず役に立つはずだ。
「これってこの黒い箱のことかな?」
俺はそう言いながら黒い箱を取り出した。
箱を開けると中には綺麗な腕輪が入っていた。
俺は何となくはめてみた。
「俺の腕じゃブカブカだな。」
俺は腕を上下させるとかなり移動する腕輪を見ながらそう言った。
しばらくすると腕輪が急に光だし腕に食いつくようにきつくなった。
「いてて、いてー。」
俺はちょっともがいた。
しばらくすると痛みが治まった。
「何だよこの腕輪。」
俺はしばらく腕輪を見つめていた。
「お前が雄一だな?」
俺は顎が外れそうになった。
いきなり腕輪が喋ったのだ。
「・・・そうだけど・・・何で喋れるんだ?」
俺は腕輪に訊いてみた。
「やっと見つけ出してくれたか。ずっと待ってたんだぜ。」
腕輪はひたすら喋る。
俺はそんな様子を黙って見ていた。
「とにかく俺を見つけてくれてサンキュー。」
腕輪は陽気に言う。
俺は疲れきってしまった。

「俺はお前を助けるために作られた。」
腕輪が自分自身の説明に入った。
俺は真剣に聞くことにした。
「お前のじいちゃんはすごい人なんだ。俺を作れるぐらいだからな。」
「え?お前ってじいちゃんに作られたのか?」
「ああ、そうだ。」
その後も腕輪は延々と喋りつづけた。
その内容を少しみんなにお話しよう。
この腕輪の名前は『ミュート』(以後腕輪はミュート)といってじいちゃんが俺を助けるために作ったらしい。
俺のじいちゃんは闇の世界(闇市みたいなもの)ではかなりの有名人だったようだ。
じいちゃんは武器を作っては闇の連中に売っていたそうだ。
そんなある日、じいちゃん間違って不良品を売ってしまう。
ぶち切れた闇の連中はじいちゃんを殺そうとした。
しかしじいちゃんは闇の連中を返り討ちにした。
じいちゃんには不思議な力があった。
でもじいちゃんは老いていたため最終的には殺された。
闇の連中はじいちゃんを殺した後、孫がいることに気付きその孫を狙っているらしいのだ。
その孫が・・・俺。
じいちゃんは俺が闇の連中に対抗できるようにミュートを作ったのだ。
「お前の説明はだいたい解ったよ。」
俺はミュートに言った。
「そうかそうか。」
ミュートは少し安心したように言った。
「でも今までそんな奴らに会ったことないぞ。」
俺は過去を思い出しながら言った。
するとミュートは少し間を置いてからこう言った。
「お前は気付いていないだけだ。合宿の時、お前は強盗犯に出会っただろう。あいつは闇の世界の人間だ。」
ミュートは説明を続けた。
「今日の男もそうだ。あいつらはお前を狙っているということを勘付かせないためにわざと銀行強盗をしたりした。」
「そうだったのか。」
俺は納得した。
やっぱり俺は狙われているのか。
「じゃあどうすればいいんだ?」
俺はミュートに訊いてみた。
ミュートは何を訊いているんだかという口調でこう答えた。
「襲われたら、俺を使う。それだけだ。」
「使い方・・・ちゃんと教えろ。」
俺は少し怒って言った。
「使い方はいたってシンプル。ただ俺を呼ぶだけ。解ったな?」
「ああ、解ったよ。」
俺は渋々答えた。

「明日は学校が休みなんだ。」
俺はミュートに話し掛けた。
「知ってるよ。調査のためだろ。」
ミュートは答えた。
「何で知ってるんだ?」
俺はミュートに訊いてみた。
「お前とは意識が繋がってるからな。」
ミュートは眠そうに言った。
「俺ちょっと寝るわ。お休み!」
そういうとミュートは寝た。
「気楽な奴。」
俺は自分の部屋を見回した。
鞄や箱が散らばっている。
俺は鞄を片付けようとした。
すると、突然鞄が俺を吸い込み始めたのだ。
「なんだ?」
俺は抵抗したがそのまま吸い込まれてしまった。

俺は書斎のような部屋にいた。
本が結構ある。
目の前に椅子に座ったじいちゃんがいた。
「元気か?雄一。」
じいちゃんは新聞を見ながら俺に訊いた。
「元気なことには元気だよ。この腕輪が微妙だけど・・・。」
俺はミュートを指差しながら言った。
「いずれそれの大切さがわかるさ。」
じいちゃんは笑いながら言った。
「鞄を開けてわしの顔を頭に浮かべたらこの中に入ることができる。」
じいちゃんは新聞紙をたたんでいた。
「来たかったらいつでも来なさい。」
「うん。また今度来るよ。」
俺は出口へと向かった。
ものすごい光を浴びながら俺は部屋へと戻っていった。

「もう8時か。」
俺は時計を見ながら言った。
「雄一。ご飯できたよ。」
母さんの声が聞こえる。
俺はリビングへと降りていった。

もうすぐ冬が来る。
今年の冬は最低最悪の冬になるぞ。
雄一、わしはお前を信じておるぞ。
今年の冬を頑張って乗り切ってくれ。
そして桜の花で深紅に染まる春にしてくれ。
血で深紅に染まる春だけはごめんじゃ。
続く



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