中学生日記 

第6話

「みんな!すぐに岩場に隠れるんだ!」
卯月さんの声が聞こえた。
俺は言われた通り岩場に逃げ込んだ。
どうやら全員無事らしい。
「くっそ!これじゃ何もできない。」
「どんどん近づいてくるぞ!」
「このままじゃやられちまう!」
みんなの叫びが聞こえた。
確かにこのままではやられてしまう。
「皆、念力を僕に開放してくれないか?」
卯月さんが袖を捲くりながら言った。
皆、何をする気だと口々に訊いていた。
「カウンターを使うつもりだ。カウンターが成功すれば俺にかかった力2倍の力を放出することになるからな。」
「でも危険だ!」
「止めた方がいい!」
などなど、ほとんどの人が反対していた。
もちろん俺も反対だった。
すると卯月さんは自分の右腕にはまっている腕輪に手を掛けた。
え?
どうして卯月さんほどの上級者がアシストリングをはめてるんだ?
俺は周りを見てみた。
皆の顔は青ざめていた。
やめてくれと顔に書いてある。
そして卯月さんは腕輪を外した。
卯月さんは血のような赤い光に包まれた。
そして光は天に昇っていった。
俺は卯月さんの顔を見た。
まず目付きが違う!
さっきよりも怖い!
それに顔付きもちょっと変わってる。
何なんだよあれは!?
あの腕輪は何なんだ?
しかもオーラのようなものまで感じられる。
すべてが違ってる。
これは、もしかして・・・別人?
「てめぇらごちゃごちゃ言ってねーでさっさとやれー!!」
卯月?さんが激怒した。
性格まで変わってる!
それと同時に皆は一斉に集中し始めた。
俺も集中した。
どんどん力が増幅されていく。
「よーしもういけるだろう。俺が合図したら全員解放しろ!」
皆は身構えをした。
1秒・・・2秒・・・3秒・・・4秒・・・。
まだ5秒も経っていないのにあっという間に時間が過ぎたような気がした。
ゴクッ。
俺はおもわず唾を飲み込んでしまった。
あまりの緊張に銃声が聞こえなくなっていた。
俺の五感の機能は全て停止していた。
そして・・・
「こい!!」
この声だけはキャッチできた。
そして俺は目の前にいる卯月?さんに念力を開放した。
「はああああああっ!!」
卯月?さんは全神経を集中していたようだ。
皆が解放した念力はあっと言う間に弾き返されていた。
カウンターされた念力は研究員達の方へ向かっていた。
突然、竜巻が現れた!
研究員達は次々と飲み込まれていく。
廃校へ逃げ去ろうとした者も飲み込まれていた。
わずか数秒の出来事だった。
目の前にあるのは壊れたマシンガンだけだった。
卯月?さんはゆっくりと腕輪をはめた。
気が付くともとの優しい卯月さんに戻っていた。
俺はすぐに卯月さんに訊いてみた。
もちろん腕輪のことだ。
「そうか雄一君は知らないのか。じゃあ教えてあげるよ。この腕輪はコントロールリングといって上級者が自分の念力を抑えるためにはめる腕輪なんだ。」
俺は思わずえっ?と言ってしまった。
「何故、念力を抑えないといけないんですか?それって自分が損じゃないですか。」
卯月さんはふふふと笑った。
「必ずしもそうとは限らないんだ。たとえば僕がこの腕輪を外した状態で君の横を走るとどうなると思う?」
全く解らなかった。
「全然解りません。」
俺は素直に答えた。
「じゃあやってみよう。僕が今から言うのを頭の中で懸命に想像して。」

想像モードに突入

卯月さんはまた腕輪を外した。
なんか怖くなってきた。
「雄一、いくぞ!」
卯月さんは俺の横を猛スピードで走った。
すると俺は大砲で飛ばされた弾丸のように吹っ飛んだ。
俺はすぐに念力を増幅して自分自身に解放した。
俺の作戦は見事に成功した。
さっきまで卯月さんから離れていた俺は逆に卯月さんに近づいていった。
そして・・・。
「ドンッ!」
卯月さんと正面衝突した。
俺は頭を抑えながら立ち上がった。
卯月さんも何とか立ち上がれたようだ。
「これで抑えないといけない理由が解ったかい?」
卯月さんは笑っていた。
「はい。」

想像終了

その腕輪をはめる意味が解りましたよ。
「あれ?君がはめてるのもコントロールリングなんじゃないか?」
卯月さんは俺がはめている腕輪を見ながら言った。
そう言われてみれば・・・。
確かに違う。
そりゃそうだな
俺は本物の雄一だからな。
「皆!集まってくれ。作戦会議するぞ!」
卯月さんの声が聞こえた。
俺は腕輪を見つめながら声が聞こえた方に向かった。
校門を少し見てみた。
誰かがいる!
あれは・・・。
「雄一ー!」
聞き覚えのある声が聞こえた。
校門にいた影が走ってきた。
だんだん影は大きくなってくる。
そして・・・顔が見えた。
「真理!」
そこには真理が立っていた。
「雄一の馬鹿!なんで家出するのよ!」
真理はそうとう怒っているようだった。
「なあ真理。あの後ろの人は?」
真理はニコニコ笑いながら俺に説明してくれた。

「家族が見つかってよかったな!」
真理はまだニコニコしていた。
「あなたが雄一さんですよね?真理がお世話になったそうで。」
真理のお姉さんは深々と頭を下げた。
すっごい礼儀正しい人だなと思った。
それに比べて真理は・・・。
「とにかく、何で家出したのか説明してよね!」
真理の怒りは収まっていなかった。
俺は色々と説明していった。

真理の頭はパンク寸前だった。
お姉さんの方はすぐに理解してくれた。
「要するに、雄一は正義のために戦ってるんだね?」
真理は頭を抱えながら言った。
うーん・・・。
正義のためかどうかは解らないけどな。
俺は真理とお姉さんと一緒に作戦会議に向かった。

「こんな所で作戦会議しても大丈夫なんですか?」
俺は卯月さんに訊いてみた。
はっきり言って、敵の目の前で作戦会議をするのはどうかと思う。
「・・・」
卯月さんは無言だ。
どうやら真剣に作戦を練っているらしい。
「そろそろあいつが帰ってくるはずだ。」
卯月さんはポツリと呟いた。
それとほぼ同時に誰かの声が聞こえてきた。
「卯月さ〜ん!ただいま!」
声がしたほうを振り返るとそこにはあの時の男の子がいた。
卯月さんは助手の男の子と何かを話している。
「よし!裏口が見つかったらしい。今すぐ行きましょう!」
皆は卯月さんの指示に従って裏口へと向かった。

「これからコードネームを決めます!といっても下の名前で呼ぶだけですけどね。みんな一列に並んでください。」
皆、一列に並んだ。
こんな所で決めて大丈夫なのか?
10分ぐらい経った。
全員のコードネームが決まった。
ちなみに俺は『ユウイチ』だ(そのまま)
卯月さんは『ウヅキ』らしい。
何故かウヅキさんだけ苗字だった。
「ユウイチさん。宜しくお願いします。」
声を掛けられた方を見るとそこにはあの男の子が立っていた。
「あ、自己紹介がまだでしたね。僕の名前は飛来駿(ひらいしゅん)です。コードネームは『シュン』です。
シュンは丁寧に挨拶をした。
「俺は島崎雄一。コードネームは『ユウイチ』だ。こちらこそ宜しく。」
俺はシュンと握手をした。
その時、卯月さんと同じような現象が起こった。
もの凄い力を感じたのだ。
でも退くほどでは無かった。
「びっくりしましたか?」
シュンは全てお見通しだよといった感じの顔をしていた。
「ああ、少しね。」
俺はシュンから離れた。
今のうちに22人全員の顔を覚えておきたかったからだ。
俺は固まって会議をしている22人の顔を順番に眺めていった。
ほとんどが男だった。
だが4人ほど女もいる。
ある女だけ顔にかなり傷を負っている人がいた。
目にはガーゼで頬には大きな傷が2つもある。
身長は俺と同じぐらいだ。
マリとアイコさんは2人で話しをしていた。
どうやら部外者(22人の超能力者以外)は俺とマリとアイコさんだけらしい。
少なすぎる・・・。
募集していたのに来たのは俺だけなのか。
やっぱりそれほど恐ろしいんだろうな。
そして俺はふとマリを見た。
ちょっと待て!
「おいマリ!おまえもしかして参加するきじゃないだろうな?」
俺はとても不安になってきた。
「するよ。」
マリの平然とした一言。
・・・
・・・
・・・
「何だとーーー!」
俺はマリに絶対参加するなと言った。
だが・・・
「やるったらやるの!」
これの一点張り。
マリの頑固さは一体誰に似たんだ?
俺は仕方なく諦めることにした。
そのかわりどうなっても知らないぞ!

みんなは再び裏口の前に集まった。
「今から5人5組のグループを作ります。」
卯月さんは静かに言った。
「今は22人プラス3人で25人いる。ちょうど5人で割り切れる数だ。」
卯月さんは行ったり来たりしながら説明を続けた。
「とにかくこの紙に書いてあるとおりに別れてくれ。」
卯月さんは目の前に小さな紙を出した。
皆は紙に書いてある通りに別れた。
「俺は・・・4班だな。」
他のメンバーも見てみた。
「えーと俺、シュン、あっ!あいつか!マリ、アイコさん、ナツミ、以上だな。ほとんど知ってる人ばかりだ。」
俺はその4人が集まっている場所に集まった。
男2人、女3人のグループ。
男が少ないのがちょっと寂しい。
「これからよろしく。」
俺は挨拶をした。
一応俺がリーダーってことになってるみたいだしな(紙にそう書いてある)
みんなもよろしくと挨拶してくれた。
俺はナツミという人を見た。
さっきの傷の人だ!
かなり痛そうな傷だなと俺は思った。
ナツミは握手をするとすぐにその場を離れた。
この人の力はあまり感じられなかったがコントロールリングがはまっているのを見て勝手な解釈は止めようと思った。
「まず1班から潜入する。10分おきに2班、3班と入っていく。合流地点は地図に書いてあるから。じゃあ潜入開始!」
卯月さんの声と共に1班は暗い建物の中へと消えていった。
毒薬散布作戦中止運動が立った今スタートした。

俺はバッグの中身を取り出した。
「こんな物はできれば使いたくないな。」
俺はショットガンを見ながら呟いた。
自分のベルトにホルダーを取り付けてハンドガンを挿入した。
ショットガンは肩から掛けることにした。
「きゃーーーー!!」
突然、女の叫び声が聞こえた。
聞いたことがある声・・・
マリ!!
俺は声が聞こえた方に走った。
角を曲がると脅されているマリが見えた。
マリは腕から血が出ていた。
下に目を落とすそこには血溜が出来ていた。
かなり出血しているようだ。
マリはぐったりとしている。
「てめぇ・・・マリに何しやがった!」
俺は脅している奴を見た。
黒いマントを着ている男はニヤニヤ笑いながらこう言った。
「みりゃ解るだろ?切ったのさ。」
男はケラケラ笑った。
「マリ!!」
アイコさんは何回もマリと叫んでいた。
だがマリの反応は全く無い。
でも生きていることは確かだ。
「卯月海斗を呼べ。さもないとこの娘を殺すぞ。」
男は落ちついた声で言った。
俺はすぐに無線でウヅキさんを呼んだ。
卯月さんは1班でもう中に入っているのだ。
だめだ・・・応答が無い。
やっぱりあの建物の中は電波が通じないんだ。
「おい、早くしろ!でないと殺すぞ!」
男がいらだち始めた。
まずい!
アイコさんはまだマリと叫び続けている。
「ユウイチ、そこを退いて。」
後ろから声を掛けられて俺は肩を引っ張られた。
そこにはナツミが立っていた。
「お前、何する気だよ?」
ナツミは何も答えない。
そして静かに腕輪を抜いた。
ナツミは海のような青い光に包まれた。
そして光は天に昇っていった。
そこには何も変わっていないナツミがいた。
変わった事と言えば腕輪がはまっていないことだけだ。
ナツミは男に掌をゆっくりと向けた。
男は爆音と共に急上昇した。
もう点になっている。
その点はだんだん大きくなってきて・・・
「ドスッ!!」
倒れたマリの近くに落ちてきた。
体はボロボロになっていて肋骨は全部と言っていいほど折れていた。
俺はナツミを見た。
もう腕輪をはめていた。
「ユウイチ、殺すことをためらっちゃだめよ。」
ナツミはそれだけ言うと裏口の方へと歩いて行った。
あいつ・・・ある意味かなり恐ろしいぞ。
「マリ!大丈夫か?」
俺はマリに呼びかけた。
だが反応は無い。
俺は家から持ってきた気付け薬を飲ませてみた。
もちろんじいちゃんのお手製だ。
すると・・・。
マリはゆっくりと起き上がった。
「やった!」
俺とアイコさんは同時に叫んだ。
皆も良かったと口々に言っていた。
「痛い!」
マリは傷口を押さえながら言った。
俺はマリの傷の治療を施した。
と言っても消毒して包帯を巻いただけだが・・・。

2班はもう出発していた。
3班は出発準備をしている。
俺はナツミにさっきの礼を言った。
「礼なんていらないよ。同じ班なんだから助けるのは当然でしょ?」
ま、そうだな。
俺は木陰で少し休むことにした。
アイコさんも隣に座った。
アイコさんの手はまだ震えていた。
それにしてもあのナツミって人。
俺とさほど歳、離れてないよな?
なーんか引っかかる。
俺は自分の所持武器を確認した。
ハンドガン×2丁
ショットガン×1丁
ナイフ×1本
これだけあれば大丈夫だ。
俺は時を待った。
14時10分。
俺は立ち上がった。
シュンとナツミとアイコさん、そしてマリを呼んだ。
マリは傷が心配だが思ったより酷くはない。
俺はやめておけと言ったがやはり本人は聞き入れなかった。
だから俺はアイコさんに任せることにした。
俺はみんなに無線機を渡した。
外から中は無理でも中同士なら出来るかもしれないしな。
それに方位磁石も渡した。
よし!行くぞ!
俺達4班は闇の中へと消えていった。

俺達はすぐに懐中電灯のスイッチを入れた。
本当に真っ暗で宇宙空間にいるようだった。
懐中電灯を照らすと病院のような感じの扉がいくつも見えた。
俺達はどんどん先へと進んだ。
「無線機のテストをしよう。」
俺は皆に言った。
さっそくテストを始めた。
俺の予感は見事に的中した。
中同士なら通じることが解った。
ということは・・・。
もしかすると『テレパシー』も使えるかもしれない。
俺はテレパシーの準備をした。
どんどん念力を増幅させて充分テレパシーが使えるほどにした。
そしてウヅキさんの顔を思い浮かべて解放した。
「ウヅキサン、キコエマスカ?」
返ってこない・・・。
俺はもう一度呼びかけた。
すると・・・。
「モシカシテユウイチクンカイ?」
やった!
テレパシーは見事に成功した。
「ウヅキサン、ヨクキイテクダサイ。」
俺は話を続けた。
「ドウヤラコノタテモノノナカドウシナラ、ムセンキモテレパシーモツカエルミタイデス。」
ウヅキさんはしばらく黙っていた。
そして、
「アリガトウ、ユウイチクン。オレタチハイマ、3カイのダイホールトイウトコロニイル。シュウゴウバショダ。イマスグソコニキテクレナイカ?」
俺はすぐに答えた。
「ワカリマシタ。スグニイキマス。」

どれぐらい時間が過ぎたのだろう?
俺は腕時計を見た。
丁度30分経過していた。
ウヅキさんとはまだ合流しない。
この建物、外から見た限りではそんなに大きく感じなかったけど中はかなり大きいんだな。
俺たちは進み続けた。
「おい!しっかりしろ!」
誰かの叫び声が右の方から聞こえた。
俺達はすぐに声がした方に向かった。
そこには5班の姿と大ホールがあった。
「こいつが・・・いくら呼んでも全然反応が無いんだ。」
若い男を懸命に揺さぶっている男は完全にパニック状態だった。
すると大ホールからウヅキさん達が現れた。
みんなはこの人の状態を見てみた。
「脈はない・・・。呼吸もしてない。体温は異常に冷たい。明らかに死んでいる。なのに・・・傷は全く無い。」
皆はどうなっているのかさっぱり解らなかった。

結局、いくら調べても原因が解らなかった。
皆は他の班が合流するまで此処で待機することにした。
アイコさんが独り言のように呟いていた。
「彼女・・・たぶん魂を吸い取られてるわ。」
と。
その言葉に皆は口々に質問してきた。
そしてアイコさんは説明してくれた。

人間には魂というものが存在します。
魂とは命のことです。
魂を吸い取られるということは命を絶たれるということ。
つまり魂が無くなると生きていくことができなくなるのです。
解りやすく例えると、ドライバーのいない車みたいなものです。
運転手がいないと車は動きませんよね。
それと同じです。
普通、魂を吸い取ることはできません。
でも、ある武器を使えば簡単に魂を吸うことが出来るのです。
その名前は『ソウルイーター』。
形は剣です。
それを相手に向かって一振りすれば魂はあっという間に吸い取られてしまいます。
私は・・・実物を見たことがあるのでよく知っています。
だから絶対に注意してください。

アイコさんの説明が終わった。
長い沈黙が流れた。
そして誰も研究員がその武器を構えて近づいていることに気付かなかった。
研究員は突然俺達の目の前に現れた。
そして剣を一振りした!
俺はそれを素早く避けた。
だが10人近くは倒れた。
俺はすぐに両手にハンドガンを構えた。
だが研究員は別の剣で俺のハンドガンを吹っ飛ばした。
くそ!
マリが飛んで行ったハンドガンの一つを取っている。
俺はもう一つを取りに行った。
俺とマリは同時に・・・
発砲!
研究員はそれをヒラリと避ける。
俺は逃げていく研究員を撃ち続けた。
だが一発も当たらなかった。
畜生!
まんまと逃げられちまった。
あともうちょっとだったのに!
「うわーーーーーーー!!」
研究員が逃げていったほうから叫び声がした。
俺達はすぐにそこへ向かった。
「うわ!」
「きゃぁぁぁぁ!!」
「なんだよこれ!」
皆は口々に叫んだ。
研究員は傷だらけになって倒れていた。
右腕が引き千切れている。
廊下は血の海になっている。
天井にも大量の血が付いていた。
ここら辺にトラップは全く無い。
じゃあ一体どうしてこうなったんだ?
「バタッ!」
誰かが倒れた。
「マリ!」
俺はすぐにマリの状態を確認した。
外傷は無い。
ショックによる気絶だろうか?
・・・いや違う!
俺はマリを抱き抱えた時すぐに解った。
マリの念力が異常に減っていたのだ。
念力を持つ者は念力が体から全て無くなると死んでしまう。
マリはその状態になりかけていた。
「ユウイチ君!そこを退いて!」
俺はすぐに退いた。
ウヅキさんはマリに向かって強力な念力を解放した。
マリは濃い緑色のカーテンのような光に包まれていた。
そして・・・。
光は自然消滅しマリが目を開けた。
「マリ!大丈夫か?」
マリはゆっくり起き上がり・・・
研究員の死体を見て卒倒した。
・・・。
しまった。
場所を変えて起こすべきだったな。
俺はマリを大ホールに連れていき、そこで寝かせることにした

俺は倒れた皆を見た。
傷は全く無い。
なのに死んでいる。
俺は9の亡骸を見続けていた。
ウヅキさんは現在の生存者を確認していた。
ウヅキさん、俺、シュン、マリ、アイコさん、そしてナツミ。
4班は全員生きていた。
「こんな所で黙ってても仕方ないよ。先へ進みましょう。」
ナツミが俺に声をかけた。
解ってるけど・・・
皆のもとを離れたくない。
だけど・・・行くしかない。
俺は現在の状況を確認した。
1班・・・4人死亡 一人無事
2班・・・不明
3班・・・不明
4班・・・全員無事
5班・・・全員死亡
俺は2班と3班に連絡を取ってみることにした。
「2ハン。キコエマスカ?キコエタラオウトウシテクダサイ。」
「3ハン。キコエマスカ?キコエタラオウトウシテクダサイ。」
何も返ってこない。
いくら待っても、
返ってくるのは漆黒の闇と不気味な沈黙だけだった。
俺は皆が生きていることを信じたかった。
だが・・・それは無理だった。
2班・・・全員死亡
3班・・・全員死亡
合計・・・25人中19人死亡
悲しい現実。
俺はこの現実を否定したかった。
『嘘だ』と。
だが俺は現実と向き合った。
そうしなければ先へは進めない。
俺はマリを起こしにいった。
マリは既に意識を取り戻していた。
何事も無かったかのようにケロッとしている。
俺はそんなマリを見るとついため息を漏らしてしまった。
「ねぇ、早く行こうよ。」
マリが俺を呼ぶ。
よし・・・行くか!
ウヅキさん率いる6人は、

暗くて気の滅入りそうな闇へと足を進めた。


第1理科室に着いた。
皆は此処で所持品の整理をすることにした。
俺は小さいバッグに入れてきた食料を食べた。
もちろん皆にも分けた。
腹がある程度膨らんだところで俺は武器のチェックをした。
ハンドガンはさっき使って弾がほとんど無い。
それの補充をした。
ショットガンは怖くて使っていない。
ウヅキさんはコントロールリングを磨いていた。
マリとアイコさんは寄り添って黙っていた。
ナツミは・・・居ない!
何処だ!
俺はすぐにナツミを探した。
3分ぐらいが経った。
見つからない。
その時、結構近いところで念力が解放されるのを感じた。
俺達はすぐにそこへ向かった。
そこには血まみれの研究員と返り血を浴びたナツミがいた。
「おい!大丈夫か!」
俺はすぐにナツミの状態を確認した。
無傷・・・。
研究員の方は?
たった今、息を引き取ったようだ。
さんざん滅多切りにされている。
いくらなんでもちょっと・・・酷い。
「なあナツミ。どうしてこんな酷い殺し方したんだ?」
ナツミはふふふと笑う。
そして恐ろしい笑みを浮かべながら
「人を殺すのって結構楽しくない?」
と言った。

俺は・・・

この言葉を聞いて・・・

頭の中の何かが・・・

俺の理性を保つ何かが・・・

ブツリと切れた。

続く。

『マリの部屋』
スタジオにはある置手紙があった。

私はこれから雄一を助けに行ってきます。
だから今日の集録は無理です。
ごめんなさい。

スタジオにいた皆は一斉に
「何ーーーーーー!!」
と叫んだ。

皆は画面の方を向いた。
「読んでくれた皆さん!」
「真に申し訳ございません。」
「このコーナーの主役のマリさんがいないのでマリの部屋を放送することができません。」
「どうかお許し下さい。」
「今後、このようなことが無いよう精一杯努力していきますのでこれからも宜しくお願いしますm(__)m」

舞台裏

「すべてあいつ(マリ)が悪いーーーーーーーーーー!!」

マリの部屋は閉鎖されかけている。
どうする?マリ!
早く戻ってこないとこのコーナー終わっちまうぞ!
というわけで来週(?)もお楽しみに!






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