メモリーズオフ・REVERSE
ゲバチエル

登場人物

稲穂信:
本編の主人公 智也と唯笑、そして彩花の関係を知り智也達を結ばせようとする

三上智也:
ある雨の日に彩花を無くしてしまう。その反動で現実逃避的な思考になってしまっている

今坂唯笑:
智也と幼馴染。智也に好意を寄せてはいるが、彩花の事がひっかかり行動できずにいる

桧月彩花:
不幸な事故でこの世を去ってしまった。いつ生き返るともしれない状態のままにある。

第一章・心の雨

心と現実の雨

「おい智也。高校2年生になったからには少しは寝るの控えろよ」
「何を言うんだ。睡眠こそ人間に大切な物だ。睡眠こそ全てだぞ?なのに起きてろと」
他愛のない会話が高2になった当日も始まっていた。
「授業中に寝るのは間違ってるぞ。お前の場合毎時間熟睡してるからな」
(そういえば智也は夢で何を見てるんだろう。)
「成長期では睡眠時間が足りないのだ!夢も見られる!悪い時もあるがな」
(悪い事もある・・ってもしかして)
「俺の場合昔を思い出す夢がほとんどだぞ・・夢が楽しそうでいいなあ智也は」
(これは触れてはいけないところだったのか)
「俺も昔ばかり思い出すんだよな。小さい頃みんなと遊んだ思い出が」
(幼馴染との日々・・・あの少女は出てくるのかな)
「ふう〜ん。中学とかは」
馬鹿。中学は彼は大切な物を無くしてるのに何を聞いてるんだ稲穂信!
「中学時代は楽しかったぞ。本当に」
信は聞いたこと、そして智也の返事でひどく後悔した。
中学を楽しいと言ってくれた事に。
過去にあんなにつらい目にあっているはずなのに。
「うらやましいな智也は俺なんかくら〜いくら〜い過去ばっかだぞ。聞かせてやろうか?」
信は智也みたいなセリフをいいつつ相づちを打った。
「遠慮しとく。それじゃあ俺は一足先に帰る」
(やっぱ気に触っちまったのか?他のからかいはいいけどあの事故はまずいもんな)
「おう。じゃあ馬の糞踏まないように帰れよ智也」
いつものような会話が終わったのだった。
しかし信は智也に余計な事を聞いた後悔の念でいっぱいだった。
翌日、信の気持ちを表すように大雨が降った。
「雨かぁ・・・」
信はこう嘆いていた。恐らく唯笑もだとは思うが―。
雨が降ってるとあの事故が鮮明に蘇ってしまう。
だからどうしても晴れない気持ちになってしまうのだった。
昨日の事も雨で上書きされたかのような智也が隣にいる。
いつもなら授業を寝てるはずなのに、雨だけは起きていた。
きっと、過去の思い出寝るのが不可能なんだと信は考えていた。
ぼーっとする智也に信は気さくに声をかけた
「帰ろうぜ。と・も・や」
「ああそうだな」
だが雨の日は共に帰っても会話が成り立たなかった。
お互いに、あの事故が意識の中を渦巻いているから。
だからお互いにその内容に触れるのを恐れて
雨の日だけはあんまり喋ろうとしないのだった。
二人は沈黙のまま別れてしまう。
(心に傘はいつ差せるんだろう)
信は雨のたびにそう思った。
時期は梅雨にさしかかっていた。
二人の心を暗くさせる雨が降り続ける最悪の時期。
この時期は智也が学校を休む事が多かった。
気分がかなり悪くなり、学校に行けないという連絡がほとんどだった。
信は原因を知っていた。正しく言えば知ったつもりだった。
雨の日に事故を思い出す。
その雨がつづけば、暗い過去に心が押しつぶされるから。
そう考えていたのだった。
「雨はいつあがるんだ」
天気に言ったのではなく信は心にそう言っていた。
梅雨でも智也を明るくいさせるためにも、早く唯笑と智也をくっつけないと・・・
罪滅ぼしをしなくては。信はそう考えていた。
梅雨・・・1週間も雨が降り続いた7日目の夜。
信はいつもの夢とは違い、闇・信が出てきたのだった。

「君は罪についてしっかり理解できたみたいだな。
 それで罪滅ぼしを考えているんだよね。でも君も唯笑の事が好きだから
 本当は智也とくっつけさせたくないと思ってるだろ」
闇は信の真意を見透かすように言った。
「違う。確かに唯笑ちゃんのことは好きだけど、それ以前にあいつらとは友人なんだ。
 智也とは親友なのだぞ!友が友を思うのは当たり前じゃないか。
 それに俺は智也から大切な物を奪っているんだ。だから俺がまた取る事は出来ない!」
闇は笑い出した。
「そうか。そう思ってるんだ〜。それじゃあ君の行動を最後まで見届けるよ。
 じゃあ忘れないためにも、あの光景を何度でも」
そう言って事故がまたも再生されると共に闇・信は消えた。
「いい加減にしてくれ」
自分の部屋豪雨の音。
結局はいつも事故を見せられる・・・自分の罪を悔やんでいる。
梅雨にはいって、信の心は罪の意識で満タンだった。
そう。梅雨は罪悪感と隣り合わせに生活しているようだな・・と信は思った。
それでも雨は降り続いた。罪悪感が増していく日常。
信は授業をいつも以上に真剣に聞くことが出来なくなっていた・・・
どれだけ雨が降り注いでいたかもだんだん判らなくなってきた。
ただ、雨を見ると脳裏にあの事件が蘇るばかりで―。
雨への苛立ちと罪悪感で日付の間隔とかが消えてきたころに梅雨は去っていた。
信はこの梅雨でも周りに対しての付き合い振る舞いは変えたつもりはなかった。
誰も心の影に気づいて欲しくないために。余計に明るく・・・。

つい最近までのじとじとな雨と変わってサンサンと降り注ぐ光。
身をそして心を刺すような熱さ・・・。夏が近づいてきた。
澄空高校の生徒は、雨の憂鬱から解放されて、血気盛んに活動している。
「天気予報聞いただろ!梅雨明け宣言だってよ〜智也」
梅雨が終わったと無性に喜ぶ信。
「?お前なに言ってるんだ?日本は四季があるからそれは当たり前と言うやつでだな・・」
智也がいつものような妙に理屈っぽい事を言い出す。
「だあぁー。もういい。智也なんて知らん」
信はいつもの理屈っぽさに愛想つかして席についてしまう。
それもそのはず授業が近かったのだから。
(これでいいんだ。梅雨が終わっていれば・・)
信は智也の事を案じながらもすでに計画を考え始めていた。
「唯笑と智也のラブラブ作戦」
信は授業中もお構い無しに作戦内容や日時などを計画していく。
隣の席には女子と言う存在がいなかったので安心して書くことが出来た。
そして午前の授業が全て終わると、そのノートは8ページにまでわたるほどに計画で埋められていた。
昼休みに入ると同時に、信は唯笑と智也に声をかけた。
「唯笑ちゃん。智也。ちょーっとだけ話があるんだ」
「すまん信!購買のパン買ってくるから待ってろ」
智也は教室から一目散に飛び出していった。
「ほへ?信くんどんな用事なの?」
唯笑に質問された智也は、不敵な笑いを浮かべながら喋りだした。
「夏休みさ〜俺たち3人で遊園地行かないか?新聞会社からチケット三枚貰ってさ。
 俺一人で3回行くのも馬鹿みたいだから、仲のいい面子でいこうかな〜なんて思ってたりするんだ」
信のセリフに唯笑はかなり喜んでいる。
「お。信くん太っ腹〜唯笑智ちゃんがいればどこにでも飛んでいくよ。えへへ」
(俺は?俺はどうなのだ〜)
信は内心少し悲しくなりながらも、丁度教室へ帰ってきた智也に一声かける。
「おい智也〜俺たち・・・唯笑ちゃんと俺とお前の3人で遊園地行かないか?
 チケットは俺が持ってるから、まタダってことになるけどさ」
智也は「無料」という部分に反応して返事をする。
「本当か!?タダなのか!?遊び放題じゃないか無論行くぞ。持つべきべきは友?ってか」
信は心の中でガッツポーズを作りながらも次の話題を始めた。
「それじゃ日時とかは・・・・・・・
 じゃあほらこれが予定表だ。」
「信にしては読める字だな。こういうことだけはうまいんだな。感心感心。」
恐らく智也は勉強もロクにしないのによくこんなことができるなと言いたいらしい。
「俺の字をなんだと思ってるんだ?
 まあいいや。じゃチケットは俺が持っているから細かい予定は今後決めよう」
こうして信の作戦の第一歩は成功に終わるのだった。
そして当日までに電話や学校などで打ち合わせが重ねられていた。
そして夏休みにさらりと突入していく。
予定日はこく一刻と迫っていった。
信は計画を失敗させないためにも念入りに計画を見直していた。
しかし前日に悪魔のような雨が降り注いだ。信を闇へ誘うように・・・。

「稲穂信君久し振りだね?調子はどうだい」
雨の日に決まって出てくる闇が姿をあらわす。あの事故を壁紙にしながら。
「調子も何も明日二人をうまく行かせる作戦を決行する所だ」
信は堂々と言い切った。
「本当に?そう思っているのか?君は作戦が失敗して三上君と今坂さんがくっつかないのを望んでいる。
 君が今坂さんをどう思っているかは知っているよ」
「確かにな。だが俺の気持ちは伝わらない事は判っているんだよ。
 だから、親友として罪滅ぼしとして、智也を救うんだ。雨に打たれた心に傘を差すんだ」
闇は突然口調を荒らげる・・・・
「救うだって?今更偽善だよ。君は人を一人見殺しにしてるんだよ。ようするに「殺人」だ。
 そんな男が格好つけても無駄だろう?罪悪人は結局は偽善で止まるのさ。
 まあいいよ。君は偽善者だ。結局罪を理解してくれてないんだよ。
 ほら見てごらん。少女が空で弧を描いていた瞬間。赤い物がにじんでる瞬間!!」
目の前をいつも以上にドアップで光景が繰り広げられる。
メを背けたかった、しかし闇はそうはさせてくれなかった。
何度も何度も信の心をほじくりかえすように・・・
「偽善者が何をしたって二人は結ばれないんだよ。罪をじっくりと味わいなフフフ」
覚めたくても覚めない夢に信はうなされていた。
10回以上は光景を見せられただろうか・・・考えるまもなく信は現実に生還していた。
「っもう朝か。雨もあがって晴れたみたいだな。二人の関係を繋ぐ橋となるぞ!」
信はそう意気込んで身支度を始める。
信の行動の行き先さえも知らずに!!






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