メモリーズオフ・REVERSE
ゲバチエル

登場人物

稲穂信:
本編の主人公 三年の時間をへて、智也達を改めて見守ろうと決心する。

三上智也:
信の親友。想いは彩花との再会を果たし、少しづつ自分を取り戻しつつある

今坂唯笑:
智也と彩花との幼馴染。彩花との再会で過去の傷は癒えつつある。

桧月彩花:
智也との元彼女。三年の時をへて帰ってきた。

伊吹みなも:
彩花の従姉妹にあたる。体が弱く入退院をくりかえす。信とは院内で何度か顔を合わせた仲

双海詩音:
父の仕事の都合で日本に帰ってきた帰国子女。信達と出会い少しづつ心を開く

音羽かおる:
合宿先で出会う少女。明朗快活で、さっぱりしている。

第三章・出会い


あらたなる出会い

八月十一日

遊園地イベントも無事終わって、二回目の打ち合わせの日がきていた。
「・・・・・誰か意見ないの!?」 
信は皆にそうたずねている。
喫茶店・・・までは決まったものの、衣装は店の飾り、メニューなどが決まっていなかった。
「こればっかりは難しいですね・・・」
詩音はほおに手を置き難しそうな表情を見せる。
「こんな時は一回りラックスしようよ」
唯笑はそう提案をする。だがこの言葉に信は激しく反応していた。
「リラックス・・・これだ!!!スランプ解消にはリラックスが一番だ!!!」
信は何かを思いついたのか、嬉しそうに声を発していた。
「稲穂さん名案でも?」
みなもは嬉しそうな信に興味心身に尋ねた。
「それはね!夏休みだしみんなで一泊二日の旅行・・・は大げさだけど合宿なんてどうかな〜なんて」
信は、智也が女性陣三人と最後にいい思いしていたことの未練が晴れていなかった。
「オマエあの時のことまだ?というかそいつはまずいだろ?」
智也の言うことはもっともであった。まずは金銭的余裕が高校生ではあまりないこと。
とくに仕送り生活をしているともやにとっては心苦しかった。
それと男女の寝泊り。この問題を親が許すかどうか。そして場所の確保であった。
この三つの条件がクリアできないのなら、合宿は断念するしかなかったのだ。
メンバーは再び行き詰まって思考を走らせていた。
沈黙を破ったのは彩花であった。
「みなもちゃん?おじいちゃんの家とかは大丈夫かな?あの家なら結構広いし、海も近いし。
 私や唯笑ちゃんも行ったことあるし顔も覚えてもらってるしね」
彩花はみなもの祖父の家が広いことを思い出し提案をしてみる。
「大丈夫だと思いますよ。友達がくればおじいちゃんたちも喜びますし」
しかし、善意的に取り組んでくれるみなもに詩音はたずねた。
「でも・・・私達とは学年も違いますし、ここまでしてくれていいのでしょうか・・・?
 文化祭だって自分の学年の手伝いがあります。これ以上巻き込んでしまうのは正直気が引けますね・・・」
詩音は自分の思うことを述べていた。学年が違うみなもをここまで引っ張るのは悪いと思っていたからだ。
「高校一年の文化祭は、美術の授業の作品展示ぐらいで出し物やらせてくれないよ。
 だからどうせだったら、早いうちから楽しいことは帯剣してもらったほうがいいだろ?」
信は詩音とみなもの二人の顔を交互に見ながらそう言った。
「せっかくの行事なんですから、遠慮はいりませんよしおんさん。」
みなもが詩音にそういうと、詩音もなったくした表情を見せていた。
「わ〜い。みなもちゃんちだ〜わ〜い」
早くも唯笑は期待をふくらませている。
「じゃあ・・・どこへ行こうか!?」
信は自分が提案者だけあり張り切って物事を進めた。
このままでは、日付が決まらず膨らみ続ける一方なのを見越してか、みなもが口を開いた。
「じゃ、じゃあ予定はの20日と21日の二日でいいですか!?検査とか色々でその日がいいんですけど」
その予定日に偶然予定があるものは一人もいなく、すんなりと決まった。
「じゃあ、何かあったら俺が連絡するからさ!」
そういって喫茶店の話とは裏腹に、合宿計画は流れるように進行していた。
喫茶店は何も進まないままに合宿だけは・・・・。
そして円滑に進んだ合宿の予定が進み一同はみなも祖父宅へ来訪していた。
澄空から電車で三十分、澄空の最果ての場所に祖父の家はあった。
みなもの祖父の家は、予想していたよりもかなり広く、年季が感じられた。
昔は大人数がくらしてたのだろうが、今は老夫婦二人だけとなって広さもよりいっそう感じられた。
みながはりきっているせいか、午前十時にはすでに到着していた。
「それじゃあ近くに山がありますので、登山と行きましょう!」
みなもがそう言うと、まじかに見える澄空山を指差していた。
澄空を代表するこの山は、頂上がいい景色で有名だった。もしかしたらだから澄空という名前が出来たのかもしれないが。
標高2300メートルで、日本でも結構有名なほうの山であった。
「あんな山ぐらい朝飯前だな」
と智也は体力には自信があるんだ!と胸をはって見せていた。
「そんなこと言って、へばらないでよね?」
彩花がいつまでも余裕面をしている智也へ釘をさす。
「さぁ〜澄空山へレッツゴォー!!」
信は、いつも以上に張り切ってみんなを先導していた。
ふもとへたどり着いた一同は、みな驚きを隠せなかった。
「・・・これ登れるのか!?木ばっかじゃねえか」
智也は山登り自体経験が薄いのでそう嘆いている。
「三上さん・・・山と言うのは自然が豊富なところですから、これが当たり前ですよ」
知識のない智也へ、詩音がさぞ当たり前のように知識を広げていた。
「そうだよ。智ちゃん。山って言うのはこういうものなんだよ」
景色に驚くもの。登山道に驚くもの、それぞれ考えは違えど澄空山のすごさを思い知っていた。
「ってと。登りますか!ゆっくり行こうぜ、ゆっくり」
信のゆっくり、という言葉に安心したのか一同は登山道を歩き始めていた。
だが木々は深く生い茂って入るものの、みちはなだらかであった。
「これなら結構楽ですね!」
みなもが、予想以上に歩きやすい山とすごい景色に喜びを隠しきれずにいた。
「みなもちゃん。山って言うのはね、最後が大変なんだよ。急な斜面ばっかりで大変なんだ。
 だから、油断しないようにね?」
信はみなもに忠告をしていた。信は旅行などが好きなので山なども結構登ったことがあった。
「稲穂さんってずいぶんと山について詳しいんですね」
詩音は、自分の知らない領域を知っている信を素直にすごいと感じていた。
「あ、それほどでもないって。ただ何度か登っただけだし」
信は女性にほめられて、なんて言っていいのか判らなくなっていた。
「きゃあ!!」
そう言うと前のほうから悲鳴が聞こえていた。
「ヘ・・・ヘビ!智也どうにかしてよ!!」
そういって彩花は智也の腕をしっかりと握り締めていた。
「と・・・智ちゃん早く追い払ってよ!!」
唯笑も負けじと智也の腕にしがみついていた。
「ば・・・ばか!そんなにくっつくなお前ら!
 だいたいへビってのはじっとしてれば消えるだろうが。いちいち声上げるなこんなことで」
智也は、気恥ずかしさを隠しきれずに、理屈っぽさを述べていた。
その光景を見て、信たちは思わず笑いが吹き出していた。
「馬鹿。笑うな!!」
登山道の中で暖かい笑いが響いていた・・・・。
信は智也の周りの環境を羨ましく思いながらも、この光景を嬉しく思った。
つい一ヶ月前までは考えられなかったのだから。
そんなアクシデントもあったものの、無事樹海(?)を抜けて、景色の晴れたところへ出ていた。
「うわぁーー綺麗」
彩花は澄んだ空に広がる自然に素直に感動を覚えていた。
「日本のこんな近場にこんな綺麗なところがあるんですね・・・」
詩音も同じように感動をしている。詩音は日本人が嫌いでも日本はもともと好きであったのでもあるからだ。
「おい、そろそろ休憩にしようぜ。せっかくいい景色なんだし」
智也もどうやらいい気分であるようだった。そしてその提案は誰もが賛同していた。
綺麗な場所での休息は、心も休まるからである。
山の少し先には海も見えていて、水平線がまぶしく輝いていた。
誰もがその景色に息を飲んでいる。みなはこんな景色がいつまでも続けば・・と思っていた。
絶景の中で、感傷に浸るもの・悩むもの・考えるもの・・・みんなそれぞれ何かを考えていた。
そうした状況でしばらく沈黙が続くと、みんなは立ち上がり再び歩みを進めていた。
しかし、そうした状況で信は今日の登山そのものに疑問を抱いていた。
(こんなんだったら・・・海のほうが良かったかな・・・・?)
自分の不安を隠せ切れないままにそう思ってしまっていた。
何度もすぐそばで歩くみなもに心配されていたが、信は胸の内をはかずにしまいこんでいた。
「ねえ信君大丈夫?」
みなもの様子から信が変なことに不審を抱き彩花はそう聞いていた。
「大丈夫。大丈夫。ほら・・・もうすぐ頂上だし」
勤めて明るくふるまう信にこれいじょう探りを入れる気になれなかった・・・。
「おーーい早くみんなきてーーー」
いつのまに頂上に上った唯笑が大きな声をあげる。
他のメンバーも負けじと頂上を目指していた。
「うわぁーーーーー」
一同思わず声をあげてしまっていた。
先ほどの景色とは比較にならない絶景。冷たい空気、そよぐ風。
信は心地よい気分に胸の内も奥にしまいこんでいた・・・・。
「頂上は広いんだ昼食を取ろうぜ」
食い物に目が無い智也(?)はそう言っていた。
昼食の最中では笑いがとびかっていた。
だが信はところどころ陰るみんなの表情を見ていた。
・・・そんな表情を見ていると信は三年前にさかのぼっていた。
白いかさ。はしってきた少年。サイレンの音。
もう終わっていいはずの光景が目の前に浮かんでいた。
「これは・・・俺の記憶??」
不思議と光景を苦に思わなかった。むしろ見ていたいと望んでいた。
走ってきた少年はやがて成長して信とともに笑いを共有していた。
三年の間にあった、あまりにも大きすぎた運命の数々。信は今それを確かめていた。
時折みせる、暗い表情。それは何を意味した表情だったのか。
信と共に共有する本当の笑顔。
信は答えを見出していた。本当の笑顔を見るために自分は生きる。そうでなきゃ自分は幸せになれない。
人の幸せのために・・・だから信は自分がこういう性格なんだな、と納得していた。
「!!シン!信!!」
智也の声が響いていた。ふっと目をあけると自分が今まで何をしてたかわかった。
「突然寝てしまうものですから、ビックリしてしまいました」
詩音は信が寝ていた、と事実を率直に伝えた。
「みなさんお昼食べ終わったんでそろそろ帰ろうかと思ったんです」
日が傾き始めて、だんだん空の青は薄いものとなっていた。
「ぁあ、ごめん。じゃあ行こうか」
信が目覚めると一向は下山を開始した。
彼らの背中を押すようにそよ風はふいていた。

偶然か運命か

「ふぅーーーーーー今日は疲れたぜー」
信は登山を終えくつろいでいた。みな疲れたのは同じだったが、精神面ではむしろ元気を増していた。
老夫婦は、孫とその友達の楽しそうな表情を見てか、さっそく馳走を作っている。
夫婦を手伝うもの、涼むもの、はしゃぐもの・・・・なにはともあれ笑いがあふれていた。
夕食の時間までも、笑いが絶えず、老夫婦もさぞかし満足げである。
夕食も終わって片付け終わると、突然信が何かを取り出していた。
「ジャーーーーン!夏の夜と言えばやっぱしこれだ!みんなやろうぜ!!」
やけに盛り上がった信のペースに巻き込まれるようにみんな外へ出ていた。
海岸が広くていいということで
「花火なんて久しぶりだな〜」
彩花は久しぶり、と言った。信は一瞬ドキリとしたが、そのまま続けていた。
「ではーー稲穂信のカーニバルーー開園です!!」
そう言うと、持っていたネズミ花火数個、ロケット花火数本・・・
いわゆる「危険物」を複数持って着火していた。
「稲穂さん〜危ないです〜〜やめてください〜」
しかし止まることの知らない信はなおも乱射を続けていた。
「待て信。オマエばっかりいい思いをするんじゃない」
智也がロケット花火を持って信の隣をで発射していた。
周りのメンバーは二人の様子にあきれていることしか出来なかった。
「ふぅ・・ゴミはかたづけねえと」
智也がそう言ってゴミを拾いに行く。しかし・・・
「まだまだ終わる俺ではなぁ〜い!!」
拾ってる智也おかまいなしに信は連発していた。
そのうちの数発が智也の後ろのほうにすりぬけていた。
「キャ」
その数発の方向から、女性の悲鳴が聞こえていた。
だが信はマシンガンを手にしたようになおも続けていた。
「シーーーーーーーン!やめろ!!人がいるんだよ!!おまけに俺に恨みでもあるのかよ」
智也はそう言って、被害にあった女性を指差した。
ことの事態に気づいた信は、あわてて花火を手放した。

「音羽かおるですよろしく」
先ほどの女性は、そう言ってみんなに自己紹介をした。
だが周りの目は信へと注いでいた。
(信くん謝りなよ。)
唯笑が小声でそう急かしていた。
みんなが信にささやく中で、かおるが智也に耳打ちした。
(ねぇ。さっきの男の子、こらしめてやらない?)
そう言ってかおるは作戦内容を手短に話した。
(いいなそれ。俺に任せておけ)
智也もあの乱射に苛立ちを覚えていたので、すんなりと納得していた。
「おい信。音羽さんがさっき向こうで財布落としちゃったって。
 もとはといえばオマエが脅かすからいけないんだぞ。責任とって取って来い」
弁解の余地のない信は、仕方がなく智也の指差す方向へ向かった・・・しかし
「私を怒らせた罪をうけなさい!!」
そういってかおるは、さっきの勢いを増す花火を信に向けて発射していた。
「俺が悪かったって。うわぁ!だからわるかったってっば?助けてクレーーー」
その光景を見て、彩花と唯笑と詩音とみなもは四人で密談をしていた
(音羽さんって怖いね。怒らせないようにしようね)
(そうですね・・・私達もきおつけないといけませんね)
「そこぉ!ヒソヒソしない!私の怒りはあの子だけ。っていってももう済んじゃったけど。」
そういってかおるは笑って見せた。四人にはそれがかえって恐ろしく思えていた・・・。
ロケット花火の驚異も終わり「平和で普通な」花火を楽しんでいた。
シュゥゥゥゥゥ・・・・
「この緑綺麗〜」
吹き上げる緑色の炎に唯笑は声をあげていた。
「ううん。赤のほうが綺麗だよ」
彩花は赤が気に入ったらしくて、何気に唯笑と張り合っている。
「オラァ!斬って斬って斬りまくるぜ!!」
信は火のついた花火を両手に持って、振り回している。
「ターゲット確認 発射開始!!」
智也もそろってロケット花火をセリフと共に打ち上げていた。
「もう。これだから男の子ってのは駄目ね」
かおるは信と智也が発している言動にやれやれと感じでため息をついていた。
そうしているうちに、花火も残りわずかとなった。
ジジジ・・・・ジジ・・・・
詩音が線香花火を見て少し涙を見せていた。
「どうしたんだ?なにか思い出したのか?」
「いえ・・・このはかない感じがなんとも綺麗で」
みんなは詩音らしいなぁ、と関心していた。特に男二人は。
「私も・・・線香花火は好きだよ。なんかこうー魅力的なんだよね」
線香花火を語っていると、その火は途中で落ちて消えそうだった。
「がんばれ」
思わず消えそうな火に応援をしていた。
その消えそうな火を見て信は何かを、自分でも判らない何かを考えていた。
「あ!」
線香花火は消えて落ちてしまう。
「人間も・・・同じなんだな。小さい火だから、長く灯ろうと頑張る。そうだろ?」
声のトーンを落として信は喋りだしていた。さっきまでの雰囲気と違っていたので回りは驚いていた。
かおるはそんな信の印象を改めていた
「めちゃくちゃやってるようでいいこと言うじゃない?稲穂君」
「俺はそんなにめちゃくじゃ・・・・・!!」
信がめちゃくちゃという部分に文句をつけると途中で我こそはとばかりに口を挟んだ
「そうそう信くんいっつもよだれたらしててね〜」
「稲穂さんはいっつもめちゃくちゃやっていますよ〜」
「そうそうだから信君がこんなこというなんて意外よね〜」
「普段の稲穂さんからは考えられません・・・・」
「この世で最強の馬鹿、稲穂信!!!」
だれもが信がめちゃくちゃであることを強調していた。
「あーー俺はどうせめちゃくちゃだけどな!これは一つ言っておく!人間は必ず二面性があると!」
しかし信の言葉も空しく他のメンバーたちは信の話題で談笑していた。
「お前らなぁ〜畜生〜〜〜〜智也ばっかりずるい!!」
信はそういって残っていたいわゆる危険な花火を着火していた。
ヒューーーーン シュババババ
「やっぱり信君はああいうキャラだね」
彩花は信の様子に思わずそう言っていた。こうして花火大会は終わったのだった。

「スイカうめぇ〜」
花火が終わって全員それぞれひと息ついていた。老夫婦は帰ってくるなりスイカをご馳走してくれた、
「ごめんね〜わたしまでスイカもらっちゃってさ」
かおるは申し訳なさそうにみなもへ軽く礼をした
「いいんですよ〜もうかおるさんは友達ですし。」
「そうだよ音羽さん。気にしなくていいってば」
持ち前の明るさもあってかかおるはすぐにみなと溶け込んでいた。数年前からそこにいたように
「でもね〜私、この夏でこことお別れなのよね。転校しちゃうの」
「え!みなもちゃんのおじいちゃんの家の近くだからまた会えると思ったのに・・・」
唯笑は明るかったのが一挙に沈んで見えていた。別れはもう二度とごめん・・・信にはそう見えた
「うん・・澄空に引っ越すんだ・・・もしかしたらこれで最期かもね・・・」
だがこの瞬間唯笑の瞳は輝いて見えていた
「澄空!?それ私達と一緒のところだよ〜〜会えるよ〜高校は何処?」
唯笑だけでなくそれはみなの質問でもあった
「澄空一緒なんだ?澄空学園だけど高校はさすがに・・・」
かおるが運命的だと言おうとするよりも早く唯笑は割り込んでいた
「その高校唯笑と同じだよ!!!!!やったクラスいっしょだといいね」
かおるは驚きを隠せなかった。
「え!?え!?本当!?良かった〜転校って初めてだからさ、仲イイ友達できるか不安だったのよ。
 でも悩み解決ね!よかった〜」
「クラスが一緒だといいですね」
詩音は日本人を忌み嫌うというのも治ってかおると普通に接していた。
「そうだな。俺たちと一緒のクラスだといいな」
「私は一年ですけど・・・・そのときはよろしくおねがいします!」
彼らはこうして高校の話に花を咲かせていった。だが・・・
「なあ信俺たちなんかかやの外じゃないか?」
智也が話しに入れない同士で会話を振っていた
「んーーーまぁいいんじゃん?女の子同士の会話ってのも」
「そうだな・・・ちょっと前までこんなことありえなかったからな」
そう言って智也は彩花のほうをちらっと目で指した。
「・・・だな。まぁあとはお前次第だ。頑張れよ智也」
「・・・おれ次第?」
智也は信の台詞に戸惑いながら質問した
「唯笑ちゃん桧月さん・・・・お前二人を見捨てるようなことはするなってことだ」
「両方選べって言うのか!?」
智也は結論が出てない自分自身に問う様にそう言った
「結論は焦るなよ?両方に納得の行くように・・・な」
「ねぇお二人さん!悪いけど〜私そろそろ帰らなきゃ!!」
かおるの声に信と智也ははっとしてそちらへ向き直った。
「あぁ・・・ワリィ、ろくに話せなくて」
智也は信と喋り続けていたことに謝罪をした。しばらくあえないというのに酷い仕打ちだったなと。
「男は男で、女は女で積もる話があるからそれぐらい気にしないって!じゃあまた高校で会おうね!」
かおるはそう言って満面の笑みを浮かべてこちらへ手を振っていた。
「またな!!」
みんながそう言って見送り終わると、信達の行動も早かった。
「音羽さんと一緒だといいね!もちろん彩ちゃんも詩音ちゃんも」
「そうだね・・てーかもうこんな時間だよそろそろ寝ようか?」
信が時計を指すと時間はもう22時であった。
「うん・・それじゃねよっか。男子はそっちだからね!」
彩花は覗くなと言わんばかりに智也ににらみを効かせていた。
「んな事したら殺されるっての・・・」
智也は一人嘆いていた。
「なに?何か言った?と〜も〜や〜?」
彩花の様子に智也以外の面子も意外な一面に恐怖(?)していた。
「それじゃあオヤスミ!」
明かりの消える中、暗闇で何を思い出し何を考えるか・・・それは本人もわからない。

・月夜の下で
「ふうーーーーーーー楽しかったな!」
信が人のほとんどいない電車内で大声をあげる。
「でも私・・・なにか忘れてると思うんですけど?」
みなもがそう言うとみな口々に声をあげた。
「文化祭のこと話し合っていませんね・・・・」
詩音がさらっとそう言った。逆に中身に触れづらくするために
「リフレッシュできて音羽さんに会えて言うことなし!!だな!」
企画者の信がこの調子なので駄目だ・・・と誰もが思っていた。
だがそれも三日後に完璧に決めると言う根拠の無いことで一応は収拾がついていた
そして三日後の彼らはまた顔をあわせていた。
「喫茶店の名前から決めちゃうぜ〜」
信は名前が決めればスンナリ行くだろうと思ってそう提案していた。
「ネコネコワールド!!」
「海上保安庁本部基地」
智也と唯笑はあいも変わらずだが、即却下を喰らう。
全面否定もあってかこれ以降しばらく二人は黙ってしまった。
「サマーメモリ―ってどうでしょうか・・・?夏休みの想い出を飲んでて思い出す・・・
 エヘヘなんか変ですか・・・?」
みなものやや弱気な提案だったが、否定の意見は無かった。
「喫茶店で思い出・・・なんかとてもよろしいんじゃないでしょうか?」
詩音がそう言うと信は大声をあげて宣言していた。
「喫茶店の名前はサマーメモリーだ!決定!」
信の一言で煮詰まってたものがやっと一つ終わり、拍手が起こっていた。
「じゃあレイアウト・・・・」
なぜかあれほど煮詰まっていたアイデアも合宿のおかげなのか
一日で計画は完全に出来上がってしまっていた。
「じゃあ各自夏休みまで任務を果たすこと!健闘を祈る!てね」
「オッケー!」
こうして喫茶店計画は軌道にうまく乗ったのであった。
8月31日誰もが嫌な夏休み最終日。日も照り輝く13時。その校舎内に二人はいた。
「にしてもあれだよな。なんで俺たちが掃除頼まれんの?」
「シラネーヨ。どうせついでだろ。言い出したのは信だろここに来るって」
担任についでだから汚れた教室掃除しろと言われ掃除用具を両手に愚痴っていた。
「まぁ・・・仕方ない。掃除しよう・・・」
掃除と言ってもほこりをとりのぞき床のゴミを掃いて捨てただけである。
「しかし暑いな。窓もっと開けて!全開でオッケー」
信がそういうと智也は半開きの窓を完全開放にした。
「じゃあイスと机、教室のサイズの採寸にかかろうぜ」
智也は早く帰りたい一心でそう急かしていた。
「椅子とか机もほかの教室から探そうぜ。これじゃみすぼらしい・・・・」
信のいうことももっともだったので智也は職員室へ走っていた・・・。
「うーーんどうもサイズが合う机が無いな。学校ってのは」
二時間ほどたち、空き教室のサイズなど学校をくまなく測ったが、納得のいくテーブルは出なかった。
「椅子はあれでいいだろう。」
信はそういってファーストフード店でよく見かけるような丸い椅子を指差した。
「よく学校にこんなものがあったな。」
「理科室とか音楽室とかに置いてあったぞ。まぁ椅子はこれだとして」
そう言って信は机を指差していた。智也に考えをゆだねているようであった。
「・・カウンターと、そのへんにテーブル・・てのは?」
智也の意外な発言に、信は賛同していた。やはり二人できてよかったなと思っていた。
智也と二人で配置と会話を挟みながら構図を組み立てていった。
一刻ほど過ぎたあたりで夏の影響を多大に受けていた。
「くそぉーー暑い。暑すぎる。職員室行こうぜ信」
「お、おっけー・・・。クーラーあるし麦茶かなんかもらおうか・・・」
二人は冷たさを求め職員室へ歩き出した。
「あれ?音羽さん?」
信が職員室内部でそれらしいヒトカゲを目撃したのでふと呼んでみた。
「あら稲穂君に三上君じゃない!十日ぶりね!」
「ん・・・お前ら知り合いなのか?」
自分たちの担任の伊東が疑問を大量に抱いた顔でこちらを見ている。
「まあそんなところですねハハハ」
信は敬語が苦手なので適当に流していた。
「で音羽さんはクラス決まったのか?」
目の前に伊東がいるので一緒な可能性も高いと考えて智也は聞いてみた。
「ああ三上。うちのクラスは学年五クラスの中の五クラス目だから人数少ないんだよ他より10人ほど。
 だから転入生が三人入ってくることになってるぞ。あこれ企業秘密な?」
「三人?誰だ・・?」
信はその三人が誰だが素直に知りたくなって伊東に尋ねていた。
「名前いっても判らないだろうが。まったく。とにかく明日のお楽しみだ。
 ほれ。掃除とかで疲れたろ。麦茶だ麦茶。音羽の分もな」
伊東はなかなか生徒思いで結構いい先生で、信達にも気を効かせてくれている。
「ありがとうーございますー!」
三人は麦茶を飲み干すと伊東は逆に質問をしてきた。
「稲穂。そういやぁ喫茶店だっけか?いけそうか?」
伊東は普段の信が信なので不安げに聞いていた。取り巻きに智也もいるから余計だろう。
「ああ大丈夫ですよ心配しないでください」
「そうか。じゃあ期待してるぞ頑張れよ」
そう言うと三人は職員室から出ていた。
「ねぇ。文化祭喫茶店やるんでしょ?同じクラスなんだしさ、レイアウトとか見せてよ」
かおるはこういう行事は積極的らしく、早くも手伝ってくれていた。
こうしてかおるを交えて、椅子と机の論議が始まっていた・・・。
「テーブルクロスとかは?」
信の難解なノートをなんとか読んだかおるは書いてなかったことに触れていた。
「えーー白でいいんじゃん?」
面倒くさそうに信は言い切っていた
「駄目よ!秋と夏の中間だから激しくなく寂しくなくって色がいいわ。白じゃむしぼらしいわね・・・。
 そうね、薄いオレンジ色のチェックでどうかしら?いえテーブル別に色変えるのもいいかも・・・」
「あとレイアウトも、いいとおもうけど少しいじっていいかしら?」
「別にいいぞ?」
智也は良くなるのなら異論はなしとばかりにかおるにゆだねた。
かおるを交えて1時間、喫茶店の構図などは完全に出来上がっていた。
「ふぅーーなんとかしっかりサマになったわね?」
「これもみんなのおかげだよ」
企画者の信はまんざらでもなさそうなおれいを言っていた。
「まだよ。終わるまでお礼なんて言ってる余裕は無いわよ」
「もう六時か・・・・じゃあそろそろ帰ろうぜ?」
智也がほのかに紅くそまる空を見てそういった
「そうね。じゃあかえろっか」
かおるがそう言うと、三人は後片付けをはじめていた。
「にしても助かった。音羽さんいなかったら俺たちは何も出来なかった」
「そう?でも三上君のセンスも悪くないと思うな〜。まお互い様かな?」
「でも音羽さんいなかったらなんかゴツイ喫茶店になってたかも(笑)」
「稲穂君の場合趣味丸出しかもねw」
「こいつの趣味って言ったらなんだっけか?」
信の趣味を知って智也はわざとそう言った
「趣味なんてどうでもいいだろ!とにかくカギ返すぞ」
信は趣味にまずいものがあるらしく必死に隠していた。
「ふーーーーん?深く聞かないことにしてあげるわ。今度三上君に聞くから」
「トホホ・・・・」
信は女性にだけはマイナス面を見せたくなかったのでため息をついていた。
特にかおるにはすでに一度見せてしまっていたので余計であった。
「ありがとうございました!」
そういって三人は職員室を後にしていた。
「あ、喫茶店面子で最終確認するから校門で待機だから」
信がいつのまにやら携帯で連絡していたらしい。
「オッケー」
三人は虫の音のここちよい外へと出ていた
「じゃあ明日から新学期だ!!音羽さん改めてよろしく!」
信は女性にたいしては異常にノリがいいのでハイテンションになっていた。
「音羽よろしくな。なにかと迷惑かけるかもしれないが」
信は智也のこの台詞にハッとした。虚言壁の三上智也はもういないんだ、と。
「ん?稲穂君どうしたの?」
しばし考え込んだそぶりを見せた信にかおるは疑問を抱いた
「あいや、夏も短かったなwってさ」
「それだけおまえ 馬鹿 騒ぎしてたからだろう?」
馬鹿騒ぎと言う言葉に反応してかおるは笑っていた。
「本当。夏休みって稲穂君のためにあるようなもんだよきっと」
「智也さ〜〜〜ん!!」
校門の前にいるとみなもと唯笑、彩花、詩音が走りよってきた。
「あ。みんな!久しぶり!」
かおるが再開を喜んで大きく手を振った。
「あ音羽さん。久しぶりだね〜〜」
唯笑が体全体でそれを表現していた。
「えっとテーブルクロスとか品書き作る紙とかはこれで全部よ」
彩花がそういってクロスと紙を別々に取り出して見せていた。
「うんサンキューオッケーだよ。そういや桧月さんと双海さんはクラスどうなったの?」
信は一足早く知りたい情報をたずねていた
「ああ、なんか2―5が少ないから私達2―5になったわ」
「ええ!?そうなの?じゃあ私も一緒だよ?」
かおるは彩花と詩音と一緒になれることを素直に喜んでいた。数年ぶりに遭う友人のように。
「稲穂さんたちはどちらのクラスなんでしょうか?」
詩音は逆に信達に質問していた。
「俺たちは2―5つまり全員一緒だ」
智也が淡々とクラスを教えていた。
「みなもちゃんは一年だけど、みんな2―5いるから気軽に遊びに着てね〜♪」
唯笑はなんとなく一人寂しそうなみなもにはげますように声をかけた。
「あ・・ハイ!そのときはよろしくお願いしますね!」
会話が一区切りついたのを見計らって信は高らかに宣言した
「みんな!円陣組んで!!」
信の熱意に満ちた声と表情に全員は何をするか肌で感じていた。
「明日から新学期だ!そして文化祭の喫茶店、どんどん大変になると思うけど、
 一緒に頑張ろう!!文化祭成功させるぞ!!」
「オーーーーーー!!!」
七人の気合の入った声は明るい月夜に吸い込まれていった。
月の光が七人を優しくやわらかくつつむように・・・。
運命の輪はまだまわり始めたばかりなのだから。
「じゃあまた明日!」
かおるがそう言うと、しっかり別れを済ませてからそれぞれの帰路についていた。
切ない思い出と、やわらかい思い。長い長い秋が、始まろうとしている・・・・。

「運命の絆編」終わり
四章へ続く・・・



〜三章〜あとがき
どうもゲバチエルです。第三章「運命の絆編」楽しんでもらえたでしょうか?
小説モチーフにしつつ彩花バージョンで再構築という感じです。
自分的にはここまでがプロローグ的存在だとおもっています。
彩花がいる、もう1つのメモリーズオフとして四章からはじまっていくので。
この作品はとても思い入れが強いですね。
メモオフキャラの中で一番信が好きなので主役としてたたせていますが、
原作の彼があまりにも馬鹿をやるようでいいひとでしたのでそれを書けているか・・・正直不安です。
彩花と唯笑、そして智也を交えた関係がいよいよはっきりしようとするところです。
もうひとつのメモリーズオフ、四章をお楽しみください



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