メモリーズオフ・REVERSE
ゲバチエル

登場人物

稲穂信:
本編の主人公 唯笑への想いで悩み答えを出せずにいる

三上智也:
信の親友。過去を乗り越えて再び彩花と付き合う事になる。

今坂唯笑:
智也と彩花との幼馴染。彩花と本音をぶつけあい、二人を祝福している

桧月彩花:
三年の時を経て復活する。智也と付き合うことになった一方で悩む信を心配している

伊吹みなも:
彩花の従姉妹にあたる。未だ智也に思いを寄せてはいる。

双海詩音:
父の都合で日本に帰ってきた。今ではすっかり心を開き打ち解け始めている。

音羽かおる:
合宿で出会った少女。密かに信に好意を寄せ始めている。

霧島小夜美:
おばちゃんがたおれたため、臨時で購買で働く。澄空卒で、信たちのことをなにかと面倒を見てくれる

飛世巴:
信達の同級生。智也・彩花・唯笑とは中学時代からの友達。彩花が戻ってきた事をいまだ知らないでいる

白河ほたる
巴の親友で浜咲学園の二年生。巴と同じく智也達とは中学時代からの友達である。現在ピアノを練習中。

「告白編」
第五章 苦悩

信は朝早く学校に行っていた。どうにも家にいると落ち着かなかったからだ。
早く智也の結果を知りたいというのが強かったからだ。
昨日智也に話をしたあとは、確認も何もしていない。したいのはやまやまだが、信はわきまえているつもりだった。
「しかし・・・朝早くの学校ってのも静かでいいもんだなぁ」
一人しかいない教室はやけに広く感じられた。同時に何故か自分が寂しく見えていた。
「あ、稲穂さん。おはようございます」
ふとすると詩音が教室に入ってきていた。一瞬ドキッとした信だったがそれが何なのか自分も判ってなかった。
「おはよ!いつも、こんな朝早くに学校来てるの?」
「朝の静かな学校は読書にはなかなかぴったりですからね。そういう稲穂さんは?」
信はややあって智也の事を話した。俺に任せろと言ったからには詩音にも聞いてほしかったからだ。
「いやぁ、ほら。智也の事、なんとかするって言ったじゃん?そんでさ、昨日あいつと話してさ。
 でー智也のやつは気持ちをぶつけに行ったんだ。」
「そうですか・・・。それで三上さんより早く学校に来たというわけですね」
ここまで話しただけで、詩音は信の行動を理解したようだった。
信は、さすがの見込みが早いなぁと思いながら、詩音としゃべりながら智也を待った。
「おはよ!何はなしてんのかなっ?」
かおるは珍しい組み合わせで喋ってるのを見て内容が気になって仕方なかった
「三上さんの事でお話してる所です」
詩音がいいながら目でかおるを会話に誘っていた。
「三上クンの?ああー彩花さんとか唯笑ちゃん絡みでしょ?」
「まぁね。」
信は女ってこうも判るもんなのかなと関心しながら、話を続けていた。
だがそうこう話しているうちに出席確認まであと五分と迫っていた。
「遅いですね・・・」
詩音が時計を見ながらそう言った。
「三上クンが遅れるなら判るけど、彩花さんまでいないなんて以外ね」
言ってる事はもっともだった。智也はしょっちゅう唯笑とともに遅れてくる。
8割以上が智也のせいで、だ。そんな話を聞いてるかおるは智也が遅れることは当たり前のように思っていた。
「はぁはぁ・・・もうっ!智也!智也が全然起きないから遅れる所だったじゃない!」
ふと彩花の声が響いていた。三人は心配して損したな、とほっと安心をしていた。
「知らん!俺はもっと寝ていたいんだ!睡眠こそ宝だ!俺を寝かせない彩花が悪い」
「智ちゃん寝すぎなの!遅刻しちゃだめじゃない」
こんな三人のやりとりに三人は笑っていた。
「ありゃ、大丈夫そうだな?」
信がやれやれといった表情で二人に問い掛けた
詩音とかおるも、同じような表情を見せていた。
と、間もなくチャイムが鳴り響き、それぞれの席についたのだった。
「三上さんらしくもどって良かったです」
詩音が隣の信に笑いながらそう言った。
「ああ、そうだね。またうるさくなりそうだけど」
二人はくすっと笑って智也のほうを見た。そこには昨日までとは考えられない楽しそうな顔が見えた。
信は、この幸せを絶対に壊してはならないなと心に誓っていた。
そしてそれこそが罪滅ぼしなんだと自己暗示して・・・・。
「稲穂さん!稲穂さん!」
ふと詩音に現実へ引き戻される。そこで信は自分が考えにふけっていたことに気づく。
「ああごめん。考え事してた」
詩音は心配そうにこっちを見たが、内容などは特に聞いてこなかった。
内心聞かれなくてよかったなと思いながら、授業の鐘が鳴り響いていた。
だが信は智也の事を考えるばかりで授業などまるで身が入らなかった。
お昼になって購買へパンを買いに行く所、詩音に呼び止められていた。
「稲穂さん。今から昼食ですか?」
信は急に呼ばれてちょっとビックリした。考え事して回りが見えていないのだ。
「まぁそんなとこ。双海さんも?」
そう聞き返すも、詩音は真剣な目で信を見ていた。
「良かったら一緒に屋上で食べませんか?上でかおるさんも待ってますし」
だが、信は今は独りでいたかった。考える時間が欲しかったのだ
「いや。今日は一人で考えたい事があるから・・・」
「それじゃあ三上さんと同じです・・・。私、稲穂さんが授業中もずっと悩んでいるようでしたので
 何か力になれないかなと思ったんです。それとも、私やかおるさんじゃ駄目ですか?」
予想外の事を言われ信は断る事が出来なくなっていた。
「いや、そんな事ないって。判った・・・話すよ」
信は詩音の真っ直ぐな目に負けていた。彼女の瞳に優しさを感じたのだ。信はそれを否定する事は出来なかった。
「あ、稲穂クン連れてきたね!」
かおるは待ってましたと言わんばかりの声でそう言った
三人は座って各自昼食を取り出すと、かおるが話を切り出した。
「で。どうしたのよ?休み時間中まで何か考えてるでしょ?元気がとりえの稲穂クンでしょ?」
信はなかなか言葉を切り出せなかった。どこから話したら言いか判らなかったからだ
「三上さんと同じように人を避けてちゃ何も見えて来ませんよ。それは稲穂さん自信がよく判ってることじゃないですか」
まさにその通りだな・・・と思いながらも出だしの言葉が口に出来なかった。
「おおかた、三上クンの事でしょ?なんとなく判るよ。自分はこれでいいのかってね」
核心をつかれて一瞬かおるを見ていた。
「やっぱりね。顔に書いてあるよ」
「彩花さんの事、まだ気に病んでるんですか・・・?
詩音がそういうと信はゆっくりと顔をあげた。そして明るく語り始めた
「そんなところ。あいつの笑顔見てたら、その笑顔を三年間も奪ってたのは俺だって・・・。
 本当は唯笑ちゃんも彩花さんもあんな気持ちにならなくてすんだんじゃないかって」
「それは違います」
詩音はキッパリと信に言った。
「稲穂さん、彩花さんは稲穂さんの事恨んでたりしてませんよ。逆にいつも三上さんの事助けてくれてて
 感謝してるぐらいですよ?それなのに稲穂さんがそう思ってちゃ駄目ですよ」
信はそれでも自分が許せないのだ。三人の時間を三年間も消えていた事・・・自分のせいにしなくちゃいられない。
「そうやって自分のせいにしないの。過去はやり直せないでしょ?ほらたまに稲穂クン自分で言ってる事よ」
「そういやそんな事言ってるっけな。・・・だからなんとしてでも今の幸せを壊しちゃだめだって。
 智也と彩花さん・・・それに唯笑ちゃんに対する本当の罪滅ぼしなんじゃないかって思うんだ。
 あの日事故現場を目の当たりにした人間として・・・。何も出来なかったつみとして」
信はそれでもなお、罪をかぶろうとしている。それは二人にはすぐ判ってしまっていた。
「駄目ですよ。稲穂さんがいたから今の三上さんや今坂さんや彩花さんがいるんです。」
「それに、幸せは自分で得るものでしょ?稲穂クンは見守ったりたまに背中押してあげるくらいで充分よ」
二人の目は真剣そのものだった。その瞳に信は説得されつつあった。
「・・・お節介なのかもな。てか智也に言ったこと自分が出来てないなんて情けないよ」
「あはは。でも人間なんてそんなもんでしょ?もっと稲穂クンらしく!」
かおるは信の肩に手をおき、元気付けていた。
「もしあれが罪だとしても、稲穂さんがもう背負う必要はありませんよ。もう見守るだけで純分です。
 三上さんや彩花さんもそれを望んでいるはずです」
詩音はそっと信の手を握ると、ゆっくりとはなしていった。
「あーーなんか馬鹿みたいだな。二人に話してスッキリしちゃったよ」
信はアハハと笑いながらそう言った。かおるや詩音も笑っていた。
「もう。稲穂クン。次からはちゃんと相談しなさいよ?私達友達じゃない?」
信は女性にそんな事言われたのが初めてだったため少し照れていた。
「もっちろん!」
信は大きくかおるの言葉を受け入れた。だが横で詩音は違う反応を見せていた。
「友達・・・」
「どうしたの?詩音」
あきらかに不自然な反応にかおるは心配を隠しきれずにいた。
だが信はそれが何かなんとなくだが判っていた。
「いえ・・・この日本で友達が出来るなんて思ってなかったものですから・・・・。そう言われて私」
詩音はそう言って涙を見せていた。
「大丈夫だって。智也とかもみんな双海さんのこと友達だと思ってるからさ」
「ありがとうございます」
信は詩音のこんな様子をどういうわけか見ているのが辛かった。
「あ、そうそう。二人ともさ、友達なのに稲穂・・・はねえだろ?もっとほら。信って呼んじゃってよ」
何の抵抗も無しに提案する信。正直苗字はどうも距離が遠い気がしたのだ。
「何つまらない事意地はってんだか。でもいっか。信君ってのも悪くないね。でも唯笑ちゃんとかぶるなぁ」
「信・・・さん・・でいいんですか?」
その言葉にもちろんとばかりの笑顔で答えていた
「だってさぁ、苗字じゃなんか他人っぽいじゃん?ただのクラスメイトみたいな。」
そう言うと詩音も納得したように信を見ていた
「それもそうですね。フフフ」
だがいまだ唯笑とかぶることで呼び名を考えているものがいた。
「唯笑ちゃんとかぶるからぁ・・・このさい信!」
「音羽さん・・・いきなり呼び捨て!?なんか恥ずかしいって」
そう言いながらもまんざらでもない様子で信は笑っていた
「って自分は名前で呼んでって言ったくせに、音羽さんは無いでしょ!音羽さんは!信も名前でよぶっ!」
「か、かおるさん?」
「さんって私らしくないでしょ!ちゃんも駄目。・・良いわよ?かおる・・・で」
信は一瞬抵抗があった。今まで生きてきた中で女の子を呼び捨て・・しかも名前で・・・は1度も無いからだ。
「まいったなぁ・・・双海さん、なんとかしてくれよ・・・」
気恥ずかしさを隠せずに隣の詩音に助け舟を求めていた。
「あら、私も苗字のままなんですね?」
「え!?あ・・・いや、詩音さん!」
からかわれてるなと思いながらも信はさらに焦っていた。
「フフフ。信さん別にいいじゃありませんか。」
「もぅ!判ったよ!かおる!」
そう言ってみるもやっぱり恥ずかしい。まぁそのうち慣れるだろうと思っていた。
そんなたわいもない事を話しているうちに、昼休みは終わっていた。
そして授業も終わり、放課後が訪れていた。
「ねえ信?」
帰る仕度をしてると慣れない呼び名で呼ぶかおるの姿があった。
「なんだよ?」
正直名前で言われるのにはちょっと抵抗があったが、気にせず話をつづけた。
「三上クンの事。今日も一人で帰ろうとしないか見てかないの?」
「ああ。そうだな。どれ、智也は・・・」
見ると智也も帰りの仕度をしてるところだった。隣の彩花と話しながら。
そして智也は一人教室の出口まで歩いていっていた。
「ちょっと信。あなた俺に任せとけっていったじゃないの」
まさか・・・と思ったのも矢先の事だった
「彩花!置いてくぞ!」
「もぅ!そんなに急がなくてもいいじゃない智也!」
なんだ、と二人は顔を見合わせていた。
「あ、待ってよ!唯笑を忘れないでよ!」
遅れて唯笑が二人の後を続いた。幼馴染3人は今までの時間を感じさせないぐらい楽しそうだった。
「どうやら智也のやつ、立ち直ったみたいだな?よーっし。じゃ俺は実行委員に出なくちゃ」
かおるは一瞬何のことか戸惑ったがすぐに判った。信が委員なんて事を言うのでビックリしたのだ
「そっかそっか実行委員だっけね、信。じゃあまた明日会いましょ」
「おうじゃあな!音羽・・・いやかおる!」
かおるは一瞬変な顔をしたが訂正した事ですぐ戻っていた。
「よろしい。じゃあね〜」
信はどうしてかおるがこんなにも名前で呼ぶ事をこだわったのかよく判らなかった。
わざわざ自分にまで言わせることは無いだろう・・・と。
実行委員会に集まるとすぐに文化祭の話が行なわれていた。
各クラス、予算や時間など細かい打ち合わせに入っている。
信はというと、早くも固まってしまったのであまりする事が無かった。
話をすすめるうちに信はすることもないので早く帰れる事になった。
(ちょっと図書室でも行ってみるか)
なんとなくそんな気がして信は図書室へと足を運んでいた。
「あ、信・・さん」
慣れない言い方で詩音に呼びかけられた。どうやら詩音も下の名前で呼ぶのに慣れない様子だった。
「詩音さん。図書委員の仕事、大変?」
信はひと気のない中で働く詩音にそう質問した。
しかし詩音は当たり前のようにこう返した。
「もともと読書や本が好きですし、大変というよりも好きな仕事ができてこんなにいいことはないですね」
好きな仕事ができるという詩音に信は正直羨ましいなと感じていた。
自分はそんな好きな事とか夢とかを特に持っていなかったからだ。
「好きな仕事か・・・オレなんて特にそういうのなんもないからさ、羨ましいよ・・・」
ふと信の鼻に覚えのある匂いを感じていた。
(これは・・・あの時の・・・・?)
その匂い・・・あれは五年前にもさかのぼることだった。
信は静かに自分の記憶の中へと入っていっていた。

あれは五年前のある日だった。
信はその日ぼーっとした様子で街を歩いていた。
海沿いの国道にさしかかったところだった。
ぼんやり歩いていた信は車が通るのもよそに道路を渡ろうとしていた。
だがそのエンジン音が大きくなってきたころ、信は気づくのだった。
その時死を覚悟していた。だが目の前から飛び出す女性の姿が見えて・・・
キキーーーーー
目をあけると一人の女性が立っていた。このとき自分は助かったんだとそう理解した。
「君?大丈夫だった?怪我とかしてない?」
「は、はい」
と丁度その時逃げるように車は走り去って行った。
「よかった。もう、ボケ―っとあるいてちゃダメよ?いつこんなことになるか判らないんだから」
「・・・はい!」
「それじゃ私、もういくね」
「あ、助けてくれて・・・ありがとうございました!」
「ふふ。どういたしまして!じゃあね!ばいばい!」
去って行く女性の髪からは独特のシャンプーの香りがしていた。
信はその匂いをいいにおいだなと想いながら見えなくなるまでその背中を目で追っていた。

「信さん。どうしちゃったんですか?」
詩音の声に信は現実へと呼び戻されていた。
「ん・・・あぁ、ちょっと昔をね・・・」
「昔・・・ですか?」
「ああ。俺中学生の時、車にひかれそうになってさ、その時女の人が助けてくれたんだ」
(あれ、俺なんでこんなこと詩音さんに話してるんだろう)
「そんな事があったんですか・・・」
「それで、名前も聞けなかったけどその人のシャンプーの香りよく覚えてて・・・
 それが詩音さんのとそっくりだったんだよ」
「わたし・・・の?」
詩音は少し驚いた様子を見せていた。
「それで不意に昔のこと思い出しちゃってさ」
「そうだったんですか。でも私じゃありませんよ?
このシャンプーを使ってる人なら他にもいるでしょうし・・・彩花さんもそうですし」
信は優しく笑うと、こう答えた。
「判ってる。でも俺の憧れの人なんだ・・・。その人にちゃんとお礼もしてないからさ・・・」
「ふふ。信さんは優しいんですね」
詩音の意外な言葉に信は言葉が出なかった。
「だってそうでしょう?ちゃんとお礼をしようって今でも想ってるなんて立派じゃないですか」
「アハハ。そうかもね・・・。あれから五年か・・・」
そう言って詩音のほうを見る・・・がそこにはかつての女性の姿が重なって見えていた。
(なんだよ・・・この気持ちは・・・)
「五年もそうやって思えるなんて・・・素敵ですね。私なんてそんな事・・・」
「いや、俺より詩音さんのが全然立派だよ。ほら、俺っていつもバカだしさ」
「フフフ。それが信さんのいいところじゃありませんか?そろそろ図書室の仕事も片付いたので帰りましょう」
「あ、そうだね。ごめん、こんな話しちゃって」
信は詩音のほうを見るのが気恥ずかしくて、目をそらして言った。
「いえ。信さんの話が聞けてよかったです」
二人は荷物をまとめるとゆっくりと足を進めていた。
信は自分の中にある気持ちに戸惑いを隠せなかった。
「それじゃあ私こっちなので」
気づけばもうそんなところまで歩いていた。
「あ、ああ、じゃあな!」
「それではごきげんよう」
別れを済ませると信も一人家へと帰っていた。
その夜・・・信はずっと考えていた。
「詩音さんは詩音さんだよな・・・。どうしちゃったんだろうな俺・・・。」
しかし自分自身に問い掛けても答えは出るはずもなく大きくため息をついた。
「大体俺・・・唯笑ちゃんの事が好きで・・・」
信は唯笑のことが好きだった。しかし智也の大切な物を奪った気持ちから
せめてもの償いとして二人を結ばせようとしたのだった。
しかし事態は思わぬ方向に進み、過去を乗り越え再び彩花と智也が付き合い始めたのだった。
そう、今現在唯笑に付き合ってる人はいない。
しかしそこまで考えてその考えを振り切っていた。
「あの3人の中に踏み込むなんて事・・・俺にはできない・・・か」
未だあの雨の日の事をひきずっている信には、想いを繋ぐ事が不安でしょうがなかった。
そして、詩音の髪の香り・・・あの時の女性にだぶらせてる自分に気づいていた。
「ほんと・・・世の中うまくいかねえな・・・」
そして信は深い眠りへと着いていた・・・。

「はぁぁ・・・」
昼休みが来た頃に信は大きくため息をついていた。
昨夜からずっと考えばっかりで授業などまともに聞いていなかった。
「昨日にも増して元気がないですよ?信さん」
隣の詩音はいつもが元気いっぱいな信なだけに心配をしてくれているようだった。
「詩音さん・・・。」
「まったく。信クンがそんなんじゃクラス中暗くなるでしょ!?」
かおるも口ではこうだが信の事を心配していた。
「ああ、悪い。でもまだ自分自身でもよくわからないから、相談とかもできないんだ。ちょっと昼飯買ってくるよ」
信はその場を逃げるように教室を出ていた。
気づけば信は屋上へと出ていた。一人になれる場所でもあり気分転換にも最適だから無意識に足を運んだようだった。
「あ!稲穂さん。どうしたんですか?浮かない顔してますよ〜?」
そこにはお弁当を食べているみなもの姿があった。
「色々ね。なんだか世の中うまくいかねえなーってさ」
「フフフ。なんだか稲穂さんらしいですね」
「え?」
「稲穂さんそんなこといつもいいそうですから」
みなもにそう言われて信は少しだが肩の荷が下りたような気分になっていた。
「俺ってそんなん?まあいっか・・・。みなもちゃん・・・聞きたいことあるんだけど」
みなもは智也に好意を寄せていたはずだった。だからこそ、相手にいる今その気持ちを確かめたかった
「なんですか?」
「まだ・・・智也の事・・・そのー好きなの?」
突然の信の質問に、みなもは顔を赤くしてしまった。
「い、稲穂さん!あの・・・その・・・はい・・・」
「でも・・・桧月さんと付き合ってるんだよ・・・?」
みなもはそんな事、といわんばかりに口を開いていた。
「確かに彩花ちゃんと付き合ってますけど・・・無理矢理気持ちをおさえたりできませんよ。
 やっぱり好きなのは好きなんです」
「でもさ・・・辛くない?そういうのって。気持ち届かないんだよ?」
「確かに辛いですけど・・・好きになれるって事が幸せなんだって想うんです。難しくってよくわかんないんですけど」
「好きになれる事が・・・幸せ?」
「はい。それに、気持ちに嘘つくほうがよっぽど辛いですよ」
信はみなもの言葉に、自分が逃げてたな・・・と思わされていた。
「ごめんね、こんな事聞いちゃってさ」
「私は別に大丈夫ですよ。稲穂さんこそなにか悩み事ですか?」
「このまま好きでいていいのかなってちょっと考えてたんだ。でもみなもちゃんの話し聞いたらそれじゃだめだなって思ったんだ」
「私なんかで役に立ててよかったです」
と、不意に授業のチャイムが鳴り響いていた。
「あ、もういかなきゃ。ありがとうみなもちゃん!」
「エヘヘ。稲穂さんこそ頑張ってくださいね」
みなもに別れを告げると信は教室へと走っていた。1つの達成感を胸に。

一日の授業も終わり、実行委員である信は実行委員会に出席していたが、相変わらず信にはやることがあまりなかった。
というよりも、もう準備を済ませるだけの段階まで進んでしまっていたのだった。
各クラスの企画も大分固まってきたようで、信自身も文化祭が楽しみでしょうがなかった。
「ふぅ・・・よしと。帰るとするか」
「ちょっと稲穂クン!」
教室を出てしばらくしたころ、不意に声をかけられていた。
「ああ小夜美さんじゃないですか。どうしたんですか?」
「それがね、伝票整理とか終わらないのよ。誰かに頼もうと思ったんだけど」
「それくらいなら俺、手伝いますよ」
信は昼以降なんだかすっきりして気分が良かった。だからこれくらいは朝飯前・・・といった感じだ。
「本当?助かるっ!じゃあこっちで説明するから」
信は購買の中に通されて、山ほどある伝票を目撃する。
「小夜美さん・・・もしかしてこれ全部・・・」
「そ、これ一人じゃおわりっこなくてね・・・」
「二人でも終わらないっすよ!」
さっきの気持ちはどこへやら、手伝うんじゃなかったと信は感じた。
「つべこべいわないの!じゃ説明するわね」
小夜美の説明はすぐ終わった。というよりも仕事そのものはそんなに難しい物じゃなかったからだ。
「終わったらここのパン何個かもってっていいわよ」
「よっしゃあ!稲穂信、全身全霊をかけて頑張ります!」
山ほどある伝票も、半分が整理できたくらいで小夜美は信に声をかけた
「ねえ稲穂クン。あなた・・・好きな人とかいるでしょ?」
「小夜美さん!?どうしてそれを!」
思わず作業していた手を止めて小夜美を見た。
「やっぱりねー。顔に出てるの。お姉さんは誤魔化せないわ」
「俺・・・どんな顔してましたか?」
「そうね・・・どうしたらいいかなーとか不安な顔してたわよ」
信は言葉に詰まっていた。自分も知らないくらいそこまで考えていたからだ。
「悩みなら相談に乗るわよ?それともお姉さんじゃ頼りにならないかな?」
小夜美さんなら・・・どうにかしてくれるかも・・・そう思って信は思い切って打ち明けることにした。
「そうね・・・それは稲穂くん次第じゃない?」
「俺次第?」
「唯笑ちゃんへの気持ちでもやもやしてて、双海さんに憧れの人をだぶらせてる・・・そのままじゃ駄目だと思うな」
信もこのままじゃ駄目だというのは判っていただがどうにもできない自分がいた
「唯笑ちゃんへの気持ち、はっきりさせなきゃ。いつまでも過去に縛られたままじゃ前にいけないと思う」
「小夜美さん・・・」
「でも稲穂クンの気持ちも判るなあ。恋って辛い事ばっかだものね」
意外な人から意外な言葉が飛び、信はびっくりしていた。
「小夜美さんも・・?」
「私も色々あったわ。って今は私の話はいいの!稲穂クンの問題なんだから」
「あははは、そうでした」
小夜美は大きく息をはくとそのまま言葉を続けた
「とにかく、そんな悩まない事よ。悩むなら明るく悩む!判ったか少年?」
「一応は・・・・」
信は少し自信なさげにそう言った
「今日はありがとう。これくらい片付けばあとは一人でできるわ。そこにあるパンもってっていいわよ」
「ありがとうございます」
いろんな意味をこめて信は小夜美に礼を言った。
信は貰ったパンを食べながら家に帰っていた。これからをどうするかを考えながら・・・。

翌日。授業も難なく終わり放課後が来ていた・・・
「信さん、元気になったみたいですね」
詩音が隣の信の様子が変わった事にそうコメントした。
「ああ、なんか悩みなんかぶっとんじゃったみたい」
「まったくお前が悩みなんて世の中どうにかなってるぜ」
智也が信をからかうようにそう言う。
「智也〜!またそういうことをいう!」
すかさず彩花に怒られる智也。こんな様子を見ていると悩んでたのがあほらしくなってくる。
「智ちゃん〜彩ちゃん〜かえろーよー」
唯笑が二人を廊下のほうから呼んでいた。
「それじゃあね」
「じゃあな」
そのまま3人は教室からと出て行った。
「もう信!何処見てんの?」
「え?何処って・・・別に?」
信が平然とそう言うと詩音はやれやれといった感じにため息を吐く。
「信さんって判りやすいですね。」
「それってどういう・・・?」
何のことか判らないまま、二人を見る
「だってさっき唯笑ちゃんのほうばっか見てたじゃない」
かおるにそう言われて、初めて自分の行動に気づいていた。
「まったくです。信さんは今坂さんの事が・・・」
「それ以上言わないでくれよ!もう・・・」
「それで最近悩んでたってわけねー。さすが信クン!女の子の事だと違うわね〜」
そういいながらもかおるの表情はどこか寂しい感じがしていた。
「ったく。からかわないでくれよ。結構マジなんだから」
「それで〜?言わないの?」
「まだ・・・整理がついてないんだ。」
信がちょっと陰りをみせると詩音はそれを制すように言った
「幼馴染の間柄に割り込むのは良くないとかそう思ってるんですか?」
「・・・。唯笑ちゃんだって智也の事が―」
「ちょっとちょっと!なに最初から諦めてるのよ!」
「え?」
「え?じゃないわよ。伝えなきゃあの時ああすればなって後悔ばっかして終わるのよ?
 それに・・・前に進めない。自分の気持ちを止めてもいいことなんてないわよ!」
「かおる?」
「ううん。友達にそんな辛い思いして欲しくないだけ。だから信も自分に素直になってよ」
「かおるさんの言うとおりです。自分から行動しなくては変わりませんよ」
「そうだよな・・・このまんまじゃ新しい恋もできないもんな」
信のその言葉にかおるは僅かに反応していたがそれを見るものはいなかった
「二人ともサンキュ。最近誰かに相談しっぱなしだなぁ俺・・・今度は俺も・・・なんかできたらいいな」
「人の事よりも今は自分の問題を解決!それが先でしょ?」
「あはは。かおるは厳しいな」
「そうかしら?」
「そうだよ・・。じゃ、俺そろそろ実行委員でないと。じゃあな」
そう言って信は教室を出て行った。
「かおるさん・・・これでよかったんですか?」
「良かったと思う・・・。私が一番自分に素直じゃないわね」
かおるはそう言って信が去った後もその先を見続けていたのだった・・・。

文化祭が一週間を切った日曜日、信は気晴らしに外を散歩していた。
「ふぅ、もう文化祭まであとちょっとか。色々あったけど成功するといいなぁ・・・ん」
ふと公園に目をやるとそこには彩花の姿があった。
「あれ?桧月さん?こんな所でどうしたの」
「信くん。ちょっと気分転換かな?信くんは?」
「俺も・・・気分転換かな。最近悩んでばっかりだったから」
やっぱりといった感じで彩花は信のほうを見た。
「ごめんね・・・。智也の背中押してくれたの信くんでしょ?なのにお礼とかそういうのいってあげらんなくて」
「え?智也の馬鹿があんまりうじうじしてたのが嫌だっただけだ!」
「信くん相変わらずね。でもここ最近悩んでばっかだったから心配してたんだぁ」
そういえば彩花とは最近あまり喋ってなかったと信は思っていた。
「唯笑ちゃんの事でしょ?」
不意に核心をつかれて、信は動揺していた。
「もーそんなに動揺しなくていいじゃない。私智也は唯笑ちゃんがらみのことなら大体わかっちゃうんだ」
知られていた事に対して少し気まずく思い信は言葉を見つけられずにいた。
「信くん、遠慮してない?」
「え!?」
「幼馴染の関係に入る事なんかできないーとかそう思ってない!?」
図星をつかれ、おもわず硬直してしまった。
「もぅ。智也と唯笑ちゃんをくっつけようとして今度は自分が逃げてるの?
 その時点でもう私達の中に踏み込んでるって思うんだけどな」
「それは・・・あはは」
「唯笑ちゃんといい信くんといい、ほんっと素直じゃないなぁ」
思いがけないところで唯笑の名がでたので信は思わず聞き返していた。
彩花の口から、ゆっくりと唯笑の事が語られていた。
中学時代彩花が智也とつきあってたころ、執拗なまでに二人にしようとしていたという。
とにかく二人を一緒にいさせようとしていた。だが裏で時たま悲しい顔をしてたという。
「唯笑ちゃんが・・・」
「そんな事されるとかえってこっちが困るよぉ。それに自分に辛いもん」
彩花の少し寂しそうな表情に信は言葉を失っていた。
「だから!信くんも唯笑ちゃんは智也の事が好きで・・・とか幼馴染だから入る余地ないとか思わないの」
「ははは。なんか桧月さんにこんな話したら怒られるかと思ってた」
「土足で入ってこないで!って?もぉそんなこというわけないじゃない」
いつしか二人は明るい表情を取り戻し、笑っていた。
「なんか腹減ったな。桧月さんも一緒に食べにいかない?」
「え?そうね・・・丁度お腹も空いたし・・・」
「よーし!それじゃあ・・・バーガーワックにいこう!」
二人は他愛もない会話を繰り広げながら、バーガーワックっへ向かっていた。
休日ということもあって店内はそこそこな盛況をみせていた。
注文を済ませると二人は席に着き、食べながら会話を始めていた。
と、不意に隣の席から声をかけられる。
「あーちゃん・・・?」
「ととちゃん!」
二人は言葉も言えずにただお互いを見つめていた。
「どうして・・・?どうしてここにいるの?」
「ちょっと。どうしたの?」
信は彼女にそう尋ねていた。だがそれはなんとなく察しは着いていたのだが・・・
彼女・・・飛世巴は信達と同じ澄空学園の二年生である。そのため信も彼女とは友達であった。
「あーちゃんはね・・・」
巴は中学時代、彩花と同じクラスだったことを述べた。
そしてあの事故で彩花がいなくなってしまったことも・・・。
確かに普通に考えたなら、ここにいるのはおかしいだろう。巴の質問ももっともだった。
「ととちゃん・・・あのね実は・・・」
彩花は今まであったことを簡略に説明していた。
「ほんとに!?それじゃほんとに・・・あーちゃんなんだね!?」
「うん。私もいまこうしているのが不思議なくらい」
再会できるはずのない友人と再会したのが嬉しいのか巴は無邪気に笑っていた。
「なんだ。飛世さん、桧月さんと知り合いだったのか」
「そーゆーこと。もーライシンも飛世さんなんて呼ぶのいい加減やめてよね」
思わず聞きなれない単語を聞いて、信は耳を疑った
「ライシン!?それって俺の事か?」
「もー他に誰がいるっているのよ。あだ名よあだ名。稲穂の稲でライ、シンは名前の信よ」
ちょっと変わっているなとは思ったが、別に否定する理由もないのでそのあだ名で呼ばれる事を断る理由はなかった。
後にこのあだ名を、ハンドルネームとして使う事になるのだが・・・。
「ふふふ。ととちゃん、相変わらずあだ名大魔神は健在なのね」
「そうよ!ほわちゃんにもらったこの称号にかけてあだ名をつけないわけにはいかないのよ!」
「そういえば、ほたるちゃんは元気?」
「今はピアノが忙しいみたいだけど・・・元気だよ!ここで待ち合わせしてるんだけど」
三年の時間を埋めるように話す二人。そんな光景を見て信は思わず顔がほころんでいた。
「あれ?ととは桧月さんと同じ学校ってことは・・・智也は唯笑ちゃんとも一緒だったの?」
チョットなれないあだなを使い、信は巴に尋ねていた。
「そうだよ。あの時はすごいショックだったよ。トミーなんてしばらく学校来れなかったんだから・・・ってこんな話ししちゃだめよね」
「大丈夫だよ、ととちゃん。そのことはもう平気だから」
彩花のその言葉に信は強いな・・・と感じていた。
「はおっととちゃん」
とそこに巴が待っていた白河ほたるが姿を表した
「はお!ほわちゃん。聞いてよほわちゃん。あーちゃんが帰ってきたの!」
「ほたるちゃん久し振り」
「あ、彩ちゃん!」
あまりもの懐かしさと嬉しさでほたるはいきおいよく彩花に抱き付いていった
「ほんと・・・三年ぶりだね。ほたる、友達が一人いなくなってすっごく寂しかったんだから」
「ふふ・・・ピアノはどう?」
「次のコンテストに向けて練習中だよ!そのときは彩ちゃんも聞きに来てね!」
話の展開に一人ついて行けない信だったが、巴がそれをフォローしてくれた。
「ほわちゃん〜彼が稲穂信よ。前に何度か話したでしょ?」
「ごめんなさい!なんか目の前で・・・」
「いいよ、気にしなくて。稲穂信です。よろしく!」
「白河ほたるですよろしくお願いします!信くんの事はととちゃんから聞いてるよ。えーっと・・・変で面白い奴だって」
「変で面白い!!?ちょっととと!何吹き込んだんだよ」
あらぬことを言われてないか心配になった信は巴に答えを求めていた。
「クラスに一人はいるムードメーカー的存在って事」
なんだそういうことか、と信は素直に納得してしまっていた。
4人はその場ですっかり和んでしまい、特に信とほたるは今日会ったとは思えない仲になっていた。
「なあ、たるたる」
不意にハンバーガーにかかっていたソースがたるたるソースに似てた事から、ほたるの事をそう呼んでしまっていた。
「たるたる?それってほたるのこと?」
「ああそうだ。ふつうにほたるちゃんより良いと思うんだ」
「あははは。信くんってととちゃんに負けてないね」
信はそれがどういう意味か判らなかったが、すぐにその答えをほたるが喋っていた。
「だって、たるたるなんてあだ名も考え付かないでしょ?」
「たしかに信くんのネ〜ムングセンスはすごいと思う」
4人は他愛もない会話を楽しんでいた。まるで三年の時間を埋めるように・・・尽きる事もなく・・・。
「あ、ほわちゃん!来週の澄空の文化祭でさ、お芝居やるんだけど・・・見に来れる?」
澄空の文化祭・・・その言葉に信も1つ思い出していた。
「うんっその日は大丈夫だよ。お姉ちゃんと一緒に来る予定」
「俺達も喫茶店やるんだけど、よかったらたるたるとととも来てみてよ」
「そうねーじゃあ私の芝居が終わったら一緒に行こうか、ほわちゃん」
「うんっ」
「私達は喫茶店があるからもしかしたら芝居見にいけないかもしれないよ」
彩花は少々残念そうに巴に言った。
「ううん喫茶店がんばってね!生で見てもらえないのは残念だけど、あとでビデオの見てね」
こうしていると悩みなんてふっとんでしまいそうだなーと信は思っていた。
いつまでもこうしていたいな・・・とも思えていた。
「ほわちゃん!そろそろ行かなきゃ」
「あ、ほんと!ごめんね彩ちゃん、信くん。これから映画見に行かなきゃいけないから」
「ううん。そんな謝らなくっていいって」
そう彩花が言うと巴とほたるは自分のトレーをもって、別れをすませていった。
「桧月さん、久し振りに友達と会えて良かったね」
「こんなところで会えるなんて思いもよならなかったから。それより信くん・・・」
突然話題が切り替わってなんのことだ、と信は不思議な顔をした
「信くんって本当に女の子に遠慮がちだね。ととちゃんのことも飛世さんだったし、私の事も桧月さんだし。」
「だってほら・・・なんか恥ずかしいじゃん」
「もー信くんは変なところで気を遣いすぎだよ!私の事も彩花でいいから」
「そんな気を遣いすぎかな・・・?判ったよ・・・彩花ちゃん」
よろしいといったかんじで彩花は信に対して笑顔をみせた
「それじゃ私達も帰ろう?」
「そうだね。彩花ちゃん今日はありがとう」
「どういたしましてっ。」
信と彩花には友達とは違う別の絆のようなものがあった。それはあの日の事故を乗り越えた証のようなものだった。
それを自分でも実感しながら信はとある場所へ向かっていた。
「お、いたいた」
と信はコオロギを捕まえ始めていた。文化祭で信はこれを遣ってなにかをするようだった。
「あーぼろっちいアパートだなあ」
ふと目をやるとそこには古びたアパートがあった。
後にこれが朝凪莊でこんなぼろっちいアパートに自分が暮らすとは思いも寄らなかっただろう。
「よーーっし、来週は文化祭だ!」
悩みもふっきれ、信は一人大声を出していた。
そして自分自身の思いへの決意も胸に抱きながら・・・・

第六章へ続く



あとがき
はお!久し振りのメモオフREVERSE!どうでしょう?
早くもSECONDのキャラクターを登場させてみました。原作よりも信は大分早くほたると出会う事になりますね。
小説版でほたるが唯笑達とクラスメイトと書かれていたので、それをここでも実現したらどうだろう。
そう思って試みてみたのですが・・・。自分自身これからのほたるやととの動きに楽しみです(笑)
次回ではSECONDの主人公イナケンも現れます。カキコオロギの魔の手に・・・・(笑)
なんだか信くんは、友達にとっても恵まれている気がします。ちょっと羨ましいな。
それではREVERSE六章でお会いしましょう。それではごきげんよう♪



感想BBS



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送