初めては…
 薫





そっと指が触れた瞬間、僕は…

ちょっとふざけただけだった。
なのに、胸が、震えた。
愛しいという感情
それがあふれ出し、止められなくなりそうで怖かった。
ゆっくりと彼女の身体に腕をまわす。
胸の膨らみ
やわらかな身体
小さくて、壊れそうなぐらい儚い
その身体を包み込むように抱きしめる。
温かな初美の体温を感じた。
そして、触れた胸が痛くて
この幸せがいつまで続くのだろう。
そう思うと、泣きたくなるほど哀しかった。
………
……

初美…
顔にかかったやわらかな髪をそっとかきわける。
お風呂で初美の身体を見てから、あの時みた彼女の身体が目の前にちらついて
最近は、初美の顔をまともに見ることが出来なくなっていた。
その初美の顔をそっと見つめる。
こんなにも愛しいのに。
その何もかもが。
なのに…
知らない男と口づけてた初美
その唇に…、触れた…
狂おしいほどの嫉妬
一瞬、初美を見つめる目が包帯のとこで止まる。
僕の嫉妬が、傷つけた手
僕は、もう一度視線を初美の顔に移す。
その一点、初美の唇から目が離せなくなっていた。

「ごめんね、初美」

僕は、邪魔な髪をかき上げ、そっと目を伏せた。
初めてキスを…、初美に…、あげたい…

「葉月ちゃん…」

突然の初美の声が、僕を夢から覚ます。



「何をやっている」

目を開けるとリリスのどアップがそこにはあった。
葉月は、思わず冷たい目で見つめる。

「それわぁ〜、もちろん、口づけですぅ」

リリスは、そんな葉月の冷たい視線をものともせず、葉月に気に入られようとかわいく説明する。

「やめろ」

「えぇ〜、リリス、葉月とキスしたいぃ〜」

葉月は、一刀のもとに切り捨てるが、それでもリリスは彼女に甘えたように強請る。

「おっ、リリスの姉さん、大胆やなぁ〜」

「……」

「……」

そこに、突然のお邪魔虫ケンちゃんがのんきな声で現れる。
しかし、明らかにその場をツンドラ並みに凍らせる。
リリスも無言で、

ツン

「あっち、行ってなさい、黄色ぷよぷよ。連鎖で消すわよ」

ケンちゃんを思いっきり弾いた。

「とりあえず、邪魔者は消えた…って、葉月ぃ〜」

とめげもせず、葉月に向き直ると、起き上がってスタスタと去って行く葉月を追いかける。

「もしかしてぇ〜、ファーストキスはおでこちゃんにあげたいとか」

「っ…」

いきなり確信をつくリリスに、葉月の顔がいきなり真っ赤になる。
それを見たリリスは

「えぇ〜、図星ぃ?ダメダメぇ〜、葉月のファーストキスは、リリスちゃんがもらうのぉ〜」

と思いっきり抗議の声をあげた。

「そ、そんなのは、僕の勝手だ」

葉月は、思いっきり照れ隠しで意地を張る。
そして、歩く速度を上げた。

「葉月ぃ〜」

葉月は、まずフィーストキスだけは、絶対守らないとっと固く心に誓った。

(だって、女の子には初めては大事なんだ)

大事な初めてのキスは、初美と…

― fin ―




感想BBS



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送