永遠の一瞬
 薫







降り続く雨が、彼女を濡らしていた。
雨の中に佇む彼女に、わたしはすぐに動き出すことが出来なかった。
しかし、彼女の瞳がわたしを捉えた瞬間、身体は彼女に向かって走り出していた。
そして、濡れた彼女の身体をそっと抱きしめる。
「どうして…」
わたしは、戸惑いをそのまま言葉にして彼女に向ける。
だけど、彼女は答えない。
「どうして…、こんな…」
「……」
「こんな…雨の中…」
彼女から別れを言い出したはずなのに。

何故、今更、わたしに会いに来たの?

聞きたいことはたくさんあるのに、『どうして』という言葉しか出てこない。
「あなたが…好き…」
「今更…」
「そうよ…ね」
彼女は、寂しそうに視線を逸らせた。
冷たい雨が、彼女濡らす。
そして、わたしを濡らす。
「……」
「……」
彼女の瞳から、涙の雫がこぼれ落ちる。
その透明な雫が、空の涙と合わさり、彼女の頬を濡らす。
沈黙に耐えられなくなった彼女は、わたしから離れようと身体をかすかに動かせた。
それに逆らうように、わたしは抱きしめた腕に力を込める。
(行かないで…)
その想いが、素直になれない言葉の代わりにわたしの身体を動かす。
今、自分の腕の中にいる彼女の存在を確かめるように、彼女の身体をかき抱く。
そして、雨に濡れた彼女の長い髪に、わたしはそっと顔を埋めた。
触れた部分から伝わる彼女のぬくもりに眩暈がした。
多分、彼女も同じのはず…、そう信じたい…
その証拠に、彼女の腕がわたしの背中にまわる。

彼女のぬくもり わたしのぬくもり
彼女の想い わたしの想い

抱きしめた腕から、彼女に伝わって欲しい。
『君を愛している…』ということ
わたしの永遠の祈りを聞き届けるように、灰色の世界がわたしと彼女を閉じ込める。
この一瞬を永遠の思い出として、凍らせ、閉じ込め、誰にも触れさせないように。

わたしは、彼女を抱きしめたまま瞳をとじた。



あとがきというの名の言い訳
彼女とわたしに設定はありません(核爆)
百合嫌いだぁ〜という人は、わたしを僕にしてください。
とりあえず、それでノーマル仕様になります。多分…
こういう、設定のない話も時々書いてみたくなることがあって。
細々とした描写をいくつも入れて読者の想像力を親切丁寧に助ける文章は苦手なので、少しの情報を提供し後は読んでくれた人のイマジネーションに任せて物語を広げてもらう、読み手にも労力のいるある意味手抜き文章が好きなわたしです(自爆)
夜、雨音を聞いていて書きとめてみたこねたですが、気に入ってもらったら幸いです。



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