―― 私、高町美由希は風芽丘学園の一年生。 まぁ俗に言う『お年頃』な年齢でして…… 剣の道に明け暮れる生活を送りながらもやはり……女の子な行為をしてみたいのです。 と言う前口上の後、私は思い切って切り出してみた。 「ねぇ……お料理してみても良いかな?」 |
料理のココロエ |
終焉の鮪 |
母曰く。 「ごめんね美由希……かーさんにはまだなのはを扶養する義務があるから……翠屋を廃墟にするわけにはいかないのよ……」 同居人曰く。 「わわわわ、美由希ちゃんはそんな事考えなくて良いのっ!!」 「せやせや、そこんとこはうちらにど〜んと任せとき!!」 昔馴染み曰く。 「う〜ん……美由希には剣術があるんだし……無理しなくて良いんじゃないかな?……あはははは……」 兄曰く。 「死人を出す気か」 ……という訳で。 今私は皆の留守を見計らって、料理の特訓をする事にしました。 とはいえ、流石に素人の私が一人でどうこう出来るものでは無いので…… きちんと講師の方と試食していただける方々をお呼びしました。 「こんにちは〜……っと、久しぶり美由希ちゃん」 「はい。耕介さんもお元気そうですね」 槙原耕介さん。 那美さんの住んでいる桜台の女子寮『さざなみ寮』の管理人にして洋食屋『サフラン』の息子さん。 何度かお料理をいただいた事があるのだが、これがまたかーさんに負けずとも劣らないってレベルのもので…… そんな耕介さんに教えを請えば私も少しは料理が上手になる……はず……。 「ちわ〜っ。おっじゃましま〜す♪」 「し、失礼しま〜す……」 続いて本日の味見役、忍さんと那美さんが入ってきた。実は勇吾さんも誘っていたのだが、 「あ、いや俺は良いよ……高町の奴を誘い出すからさ」と返されてしまった。 そして今本当に別所で恭ちゃんの相手をしていてくれているので……上手く料理が出来たら差し入れしてあげよっと♪ 「さて、それじゃ早速始めようか」 「あ、はい!」 こうして私の料理特訓が幕を開けたのだった。 「まずは簡単なものから……オムレツを作ってみるね」 と言うと耕介さんはボールに綺麗に卵を割り入れ、手早く生地を作り上げていく。 速い ――。 無論『神速の領域』を知る私にとって物理的に見れない、という訳では無い。 動きに一切の無駄や躊躇いが無いのだ。 次にやる事を予め考えた上で作業を行っているからだ。 その手さばきに感激している間にもう、オムレツは完成していた。 「どうぞ」 私と那美さんと忍さんに一皿ずつオムレツが差し出される。 バターの芳醇な薫りとケチャップの良い匂いが嗅覚を強烈に刺激する。 「いただきます……」 ナイフを入れた瞬間に、中から半熟状にとろけた卵がせり出てきた。 一口大に切り揃え口に運ぶ。 「……美味しい……」 思わず漏れた一言はそんな凡庸な、だけど一番正直な気持ちの込められたものだった。 「さすが耕介さん……良い味です♪」 「ノエルの調理データに組み込みたいなぁ……」 那美さんと忍さんもご満悦のようだ。 美味しい料理は人を幸せにするって言葉を、改めて知った気がした。 「さて、それじゃ美由希ちゃん。やってみようか」 「は、はい!!」 耕介さんに促され、私はボールの前に立つ。 えぇと……まずは、卵を綺麗に割らなきゃ…… 割らなきゃ…… 割らなきゃ…… 「……はっ!!」 ……ボールに打ちつけた卵は割れなかった。 「……あれ?」 決して力加減はしてないつもりだったのだが………… …………!! ようやく自分の失敗に気づく。 「すみません耕介さん……この卵割ってみて貰えませんか?」 「へっ? あ、あぁ……」 不思議そうな表情を浮かべつつも、耕介さんは言った通りに卵を割る…… ボールに飛び出た黄身にはしっかりと先程の衝撃が【徹】されていた。 それからの経緯は惨々たるものだった。 黄身に衝撃を【徹】すこと34個。 スクランブルエッグになること51個。 殻入りのまま仕上げること17個……。 気づけば夕方も差し迫り、那美さんと忍さんは帰ってしまった。 台所では只の炭と化した119個目の失敗作が打ち捨てられたところだ。 「はうぅぅ……」 ……ある程度自覚はしていたのだが、まさかこれ程までに自分が料理下手だったとは…… 私の心の中には今、北シベリアの荒風よりも激しい寒波が吹き荒れていた。 流石の耕介さんもこの現状には苦笑いを浮かべるしかないみたいで…… 『今日はもう諦めて止めましょうか?』 と言おうとした瞬間。 「……料理の一番大切な心得、知ってるかな?」 「……え?」 あんまりにいきなりな一言に私の頭が一瞬白く染まった。 耕介さんは続ける。 「味付け? 盛りつけ方? 食材の高級さ? ……どれでも無いよ。一番大切なものは」 そういって自身の胸を差し。 「ここだよ……心を、気持ちを込めることが大切なんだ」 「気持ちを……込める?」 「そう……まずは思い描くんだ、自分の作った料理を食べて笑顔になる人達の事を。特定の人物でも、そうでなくても構わない……そうしたら次はその思いを指先に集めるんだ……そのチカラはゆっくりと、だが確実に料理に染み込んで……最高の調味料になる。本当に、真摯な思いを込めた料理はどんな高級食材を用いた心ないものよりも美味しいんだ」 「気持ちを……込める……」 「……さぁ、もう一度やってみようか」 柔らかな耕介さんの笑顔に支えられながら。 私は120個目の卵を割った。 思い浮かべるのは、この家の思い出。 晶と喧嘩から知り合った事。 赤ん坊だったなのはをあやした事。 フィアッセが遊びに来てくれてた事。 初めて恭ちゃんから御神の剣を教わった事。 辛い事。 悲しい事。 だけど何より『楽しい事』を大切にしてきた事。 色んな『幸せ』が溶け込んでいくのが感じ取れた。 「……美由希!」 額に汗を浮かべながら、恭ちゃんが台所に駆け込んできた。 「? どうしたの恭ちゃんそんなに慌てて……」 「……赤星から聞いた……お前が今日密やかに料理の特訓をするとな……家が炭化しては困るから急いで帰ってきた」 荒く吐いていた息を素早く整えて恭ちゃんが毒を吐く。 「まぁまぁ恭也君……そう言う前にこれを食べてみて?」 そう言って耕介さんが差し出したのは……さっき完成した120個目のオムレツだった。 形は崩れ所々黒焦げているし、殻も少なからず入り込んでしまった。 そんなオムレツに視線を移して ―― 恭ちゃんは黙って一口頬張った。 少し離れていても聞こえる石灰質の擦れ合う不快な音にも眉一つ動かさずに咀嚼して、飲み込む。 「……焦げてて苦いし殻も入ってた。焼きすぎてて食感もパサパサだ」 相変わらず容赦のない感想を漏らす。 でも……恭ちゃんはふっと、時折見せる優しい微笑みを浮かべて ―― 「……だがまぁ、不味くはない」 と消え入るような声で呟いた。 「……恭ちゃん!!」 私は嬉しくて思わず恭ちゃんに抱きついてしまった。もう子供じゃない事は分かっていても、今、内側から溢れてくる嬉しい気持ちを止める事なんて私には出来なかったから。 「言ったでしょ?『気持ちのこもった料理は美味しい』って」 そう言う耕介さんの優しさが嬉しくて ―― 私はほんのちょっぴり、涙を流した。 「……ところで、その大量の卵の残骸はどうする」 「……あ」 |
明さんが那美さんにヘロヘロで、兄者がフィアッセLIKE♪ なので自分は美由希萌えです>挨拶 正直、眼鏡&三つ編みというのは自分のストライクゾーンから外れているのですが、 そういうレベルじゃなかったんですよ、とにかく。 何と言うかひたむきさというか一生懸命さというかギャップというか(以下略) まぁ、色々あって自分は美由希が好きなのです(まる) そんな(色々と間違ってる)感情を込めて一心不乱にケータイで書いた文章を変換してみました(何) 少しでもまったりしていただければこれ幸いです♪ ではではω 口ずさみソング『See you 〜小さな永遠〜』(KOTOKO&MELL) |
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