感想BBS| The angel of darkness |
| 蒼樺 |
| 一つの命が生まれるのに、一つの愛があった。 人と人。生きていくために、そしてこの世界にあるモノを子々孫々受け継ぐために、人と人は出会う。 純粋な出会い。不意の出会い。望まぬ出会い。 深く意識することなく、人は出会う。 子供は愛の結晶と言ったのは果たして誰であっただろうか……出会い、愛し合った者の間に生まれる小さな命、それは確かに数多の可能性の中からいくつもの偶然が折り重なって出来上がった結晶なのかもしれない。 親から沢山の愛を受けた子は、きっと幸せな人生を送ることが出来るだろう。 しかし、世の中はすべてがそうなるわけではない。特に、この世界では。 かつて、スフィリアという名の大陸には〈神〉がいて、魔法が存在していた。魔法は大陸全土に渡って深く浸透し、一部では魔法が大きな勢力を保持していた。しかし、その“魔法文化”もキルテミア大戦と呼ばれる〈神〉となった古代魔導師たちの因縁に決着がつき、〈神〉の消滅と共に消え去ることとなった。時代は、魔法という非科学的なものから、科学、工学、生物学と言ったものへと変わっていく。 切っ掛けとなったのは４００年ほど前、アーネスという都市にあった科学研究所であった。ここでは大陸に棲む動物の生態を解明するのと共に、とある研究が行われていたのだ。 プロジェクト『テラー』。 その名にある通り、人工的に“恐怖”を作り出すプロジェクトだ。その内容は人間と獣の合成生物を創りだすこと。そして、その対象となったのは親を亡くした孤児たちであった。 結果として、この計画は成功する。成功例の少年少女は《悪魔の落とし子》と呼ばれ、普段の見かけは体の一部――瞳や肌など個体によって区々――を除いて人間と変わらないが融合した獣へと変態することが出来る。体力や身体能力、そして寿命などに関しては人間を上回る。 だが、当然の如く彼らは怒り、反乱を起こした。始まりの５人を筆頭とする７０人の少年少女は、人間すべてに対して復讐の刃を剥いたのである。これが、俗に云う『悪魔聖戦』である。戦いは人間側が多大なる損害を負った頃に、話し合いで集結された。話し合いと言っても、中身は圧倒的な強さを誇る少年たちに赦しを請い、各都市に彼らが安全に暮らせる場所を提供するといった敗北宣言であった。そして、その事件を目の当たりにした当時の人々は等しく彼らのことを恐れ、戦いたのだった。 図らずとも、彼らは“化け物”と呼ばれ、プロジェクトは完全な成功を収める。しかし、事態は思ったよりも深刻な方向に進んだ。 隔壁によって遮られていたはずの人間の中から、《悪魔の落とし子》が生まれてきたのである。その原因はわかっていない。 ただ、それによって人々は余計に《悪魔の落とし子》を恐れ、“恐怖”を失うことがなくなった。人間という種族が、壁の向こう側を思い、臆病になってしまったという事実が隠されたまま…… ※主な用語説明 《悪魔の落とし子（ハーフ・デーモン）》 人と獣の合成生物の総称。特徴としては見かけは人間と変わらないが、全員が自分の持つ“もう一つ”の遺伝子の生物へ変態することが出来る。寿命は種族にもよるが一律して人間よりも長い。種類は犬、猫、鳥、鰐など、多種に渡るが、その動物に完全に変態する者と、体の一部が変化する者とがいる。 《進化した人間（ニークシェア）》 《悪魔の落とし子》の当人たちが名乗る総称。当然のことだが彼らは自分たちのことをおとしめる呼び方を良しとせず、この名を（またはニンゲンと）呼んでいる。その元となったのは一人の少女の名である。また、彼らと共存の道を目指す数少ない人間たちもこの総称を使っている。 《恐怖のかけら（ピース・オブ・テラー）》 《悪魔の落とし子》の中でも始まりの５人を指す。彼らは伝説上の生物に変態することが出来るとされ、その能力は全くの未知数である。また、聞くだけで死に至る呪いや、見ただけで狂い死にするとまで云われている。 プルート・スラム 《悪魔の落とし子》たちが暮らす町。スフィリア大陸にある五大都市にそれぞれあり、「門」と呼ばれる長い通路で食料や生活必需品を人間側から提供されている。逆に、装飾品などを作り、交換している。 対魔監査官 《悪魔の落とし子》の監視や、彼らが起こした事件を専門に扱う職業。条件として、《悪魔の落とし子》に対する憎悪や恐怖が強すぎないことが必須となっている。職業柄か、親ニンゲン派の者が多い。 ハンター 《悪魔の落とし子》を憎む人々の中で、彼らを殺すことに特化した者たち。殺しても罪にならないことから、殺人者や傭兵が多い。また、近しい者を殺された者が復讐のためになることもある。 |
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