「鬼怨流の起源は、未だに明かされてはいないの。八神さんも全ては把握していないだろうし、私が知ってることとなれば、ほんの一握りのことだけ。」 「・・・・・・そんなにも危険なのですか?」 優春ですら全貌を把握できない鬼怨流。それらの秘密に触れると言うことが、正直空には恐ろしかった。 「でも八神さんのことなら知っている。そのくらいのことなら、私も知ることが出来るみたい。」 「八神さん・・・・・・一帯何故あの人の名前が?」 「彼は鬼怨流の“体”の技全てを受け継ぐ者。そして星野さん、あの人は“剣”の技を受け継ぐ人。あともう一人、“槍”を受け継ぐ者が居るんだけど・・・・・・これに関しては私も知らないの。 けど彼ら鬼怨の技を扱うには、ある洗礼を受けなければならない。八神さんからは、そう聞いているわ。」 「洗礼、とは?」 「“呪の御祓(しゅのみそぎ)”と呼ばれる儀式らしいわ。詳細は知らないけど、その洗礼を受けることによって、いわゆる法力や呪力を目覚めさせることが出来ると聞いてる。 そしてそれによって、初めて鬼怨の技を受け継ぐ資格が出来上がる。そこから様々な武術を会得していくの。殺人のための体術と呪術のドッキングによって生み出される技。それが鬼怨の正体よ。 そして皆伝の領域まで達するには、自らの闘争本能や殺戮衝動を司る深層心理を目覚めさせることにより、自らの力を120%引き出さなければいけない。それが“業”・・・・・・具体的な方法は知らないんだけどね。」 「その“業”が目覚めたとき・・・・・・その人間は、どうなってしまうのでしょうか?」 「・・・・・・それは解らないわ。知っているのは、多分あの子だけでしょうね。」 |
B−T−B |
HELLCHILD |
「覚悟を決めてもらおうか・・・・・・」 もう既に戦闘態勢に入っているユータ。気合いはバッチリと言うべきだろう。 だがそんなところに、一人水を差す者が居た。そいつはいきなり立ち上がり、真っ直ぐにユータを喰い殺そうと襲いかかってきた。 「ウガアアアッ!!」 「―――――――――――!?」 すんでの所でかわしたが、そのスピードは洒落にならないほどに速い。 「くそっ、アニイ・・・・・・まだ“業”から目覚めていないのかっ!」 そう、気絶していたのも束の間、すぐさま起き上がり、再び肉食獣の如く飛び掛かってきた。 一瞬でユータの間合いに入り、ラッシュを繰り出す。本能に任せた前のめりのパンチのため、避けることは容易かった。だがこれ以上の反撃に転じることは出来ない。本当にトールを殺しかねないからだ。 『ハハハ、仲間割れか! 私が手を下すまでもないか?』 高圧的な笑い声を発する魔神皇。しかし実際の所は、ユータと戦う体力が殆ど残されていないだけだった。 「チッ・・・・・・!」 舌打ちをしている間にも、トールの攻撃は決して止むことはない。一瞬でも気を抜けば、たちまちサンドバッグにされて終わりだ。 「んなろっ!」 トールの両肩に手を置き、力を込めて押し倒す。そして仰向けになった身体に馬乗りになる。完璧にマウントポジションを取った。だがユータは攻撃には転じず、トールの両を見ながらこう言った。 「・・・・・・オレの目をよく見ろ、アニイ。」 「ウガガガッ! ガがガ、ガ・・・ガぁ・・・・・・が・・・・・・」 獣のような吠え声が収まっていき、目の充血も引いていく。荒かった呼吸が落ち着いていき、それに比例してユータに対する抵抗は収まっていった。 「・・・・・・ゆう、た・・・・・・」 そう、人間の言葉を発した。獣かが解けたか、と思いきや、途端にトールは気絶した。 「・・・・・・・・・ぐがぁ〜・・・・」 ・・・・・・否、気絶したように眠ってしまった。口の端からは涎を垂らし、イビキをかきながら幸せそうな寝顔を見せた。 「やれやれ、収まったか・・・・・・」 呆れたようなホッとしたような、そんな口調で言葉を発しながらトールの身体から手を離すユータ。それに従ってトールの身体は地面にぶつかったが、それでもトールは起きることはない。 気を取り直すように表情を引き締めるユータ。その目線の先には、倒すべき敵がいた。 「今度こそ行くぞ・・・・・・これで終わりだ!」 『よかろう・・・・・・消え去れ!!』 「ひぃ、ひぃ、ひぃ・・・・・・」 「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・・・・」 「おい、俺の頭を落とすなよ。」 その頃、全員ボロボロになっていたカリヤ達は、自分たちが乗ってきたボートに向かって必死で歩いていた。庵遠はテレポートの要領で自分たちの元へ来るだろうし、ここは自分たちだけでもと必死で歩いていた。 カリヤの傷は回復していた。まだ所々傷を負ってはいるが、歩くだけの体力は回復していた。胸の辺りには、いちいち文句が多いアルバートの頭を抱えている。 文華も全身が回復し、傷一つ残っていない。しかし・・・・・ 「・・・・・・何でカリヤさんの古くさくて汗くさいジャージなんて着なきゃいけないんですか〜!!」 「仕方ねーだろ!! 何も着ないで歩くよりかはマシと思え!!」 ヒサシの攻撃で、文華の下半身は吹っ飛んでいた。それはつまり(下着を含めて)下半身を覆う服が全て無くなったと言うことを意味していた。仕方がないのでカリヤの寝間着であるジャージを庵遠が調達してくれたのだ。かなり有り難迷惑だ。 「・・・・・・何ですか、この股間の辺りの妙なシミは〜。」 「いちいち細かいことを気にするな! ほれ、見えてきたぞ。」 100m程先にある船が、カリヤ達の乗ってきた船である。悲鳴を上げる身体に鞭打って、無駄に重いアルバートの頭を抱えながら、カリヤは歩いた。 「早くしろ。B−T−Bが来たらどうする。」 「何もできないクセに文句を言うな! 何でこう無駄に重いかなぁ、お前の頭は。」 「腕力がないな。それでも飛炎の使い手か?」 「この傷で飛炎を扱うことなんか出来ねーよ!!」 そんな問答を繰り返している内に、船に辿り着いた。ゼェゼェと息を荒くしながら船に乗り込む3人。 「ひぃ、ひぃ・・・・・・み、水〜。」 「わ、私も〜・・・・・・カリヤさん、取って〜。」 船内にある水を取ろうと、ミニの冷蔵庫に向かう。だが・・・・・・ 「おおっと、出血多量の身体に水はヤバイぜぇ?」 「ええ!?!?」 その声には、聞き覚えがあった。この世で最も関わり合いになりたくない者の声、そしてこの世で最も恐ろしい者の声だった。 「あ、あああ、あなたは・・・・・・」 「な・・・・・・何故あなた達がここに〜!?」 「私も居ますよ、文華。」 「「ぐぎょぅげっ!?!?!」」 奇妙な叫び声を発するカリヤと文華。それは恐怖から引き出された物だった。 「こっぴどくやられてんじゃん、ええ?」 「やはり侮れませんか、B−T−B・・・・・・流石です。」 その二人は、対照的な格好をしていた。 一人は言葉遣いの荒い男。筋肉粒々の上半身を被うのは、タンクトップ一枚。そこから見える太い腕は、トライバルのタトゥーで埋め尽くされていた。 大人しい方は、純白のタキシードを始めとして、インナーシャツや時計、靴に至るまで、全てが白で統一されている。髪は金髪で、肌の方も白い。 「うひぃぃ・・・・・・た、たひけて・・・・・」 「たたたた、たしゅけてくらひゃい!! い・い・いにょちだけはぁぁ〜〜〜〜!!!」 二人とも恐怖心のあまり、まともな言葉を発する事もままならない。 いつもはカリヤをヘタレと馬鹿にしている文華でも、この二人の前ではカリヤと同レベルだった。 仕方がないので、アルバートが口を開いた。 「何故あなた方がここに?」 「おお、そうだそうだ。肝心のことを忘れてたぜ。ほらよ。」 床に4枚のカードを放り投げた。それをじっくりと読んでみると、それは第187番部隊全員分のパスポートだった。しかしそこにある名前は、カリヤ達のものではなかった。 「偽造パスポート? しかしこれは・・・・・」 「田中優美清春香菜は、あなた方の情報をICPOに売り渡しました。もう間もなく、あなた方は国際手配されるでしょう。」 「早い内に、どっか国外へ逃げた方が身のためだぜ。いろんな意味でな。」 「いろんな意味で?」 「こういうことですよ。」 真っ白な男が、スーツの内ポケットから何かを取り出した。それは一枚のテラバイドディスクだった。 「やっと回収に成功しました。ユウキドウ計画の遺産です。時空間転移装置の試作体はラディックの方に取り押さえられましたが、このディスクにある情報がない限り、使用方法すらも判明しないでしょう。」 「こいつがあれば、時空間転移装置の量産だって可能になる。 だが、それだけじゃねぇ。優希堂悟が残した様々な理論が、このディスクには収められてる。そいつらは“計画”には必要不可欠だ。」 「“計画”? となると、まさか・・・・・・」 「はい、プロジェクトを実行に移すときが来たようです。」 「クソ長ぇ準備期間だったがな、いよいよ本当のパーティーだぜ。」 「・・・・・・」 計画が実行される。それは全ての世界が変貌を遂げるということを意味していた。 そして立った今から、目の前にいる男達は、最凶最悪の敵と化した。 「心配すんな、被害が出ないようにパスポートを渡してやったんだろうが。国内に留まるのは、そういう意味でも危険なんだよ。」 「ただし、我々の計画を邪魔するのならば、例え仲間でも容赦はしませんがね。」 白尽くめの言葉に嘘はなかった。体中に纏うその殺気が、何よりもそのことを雄弁に物語っていた。 「計画が動くとなると、あと二人は一体?」 「“ジョーイ”はイタリアから日本に向かってる。“アイツ”は司紀杜で“鈴”を探してる最中だ。」 「全員が揃うのも時間の問題でしょう。」 アルバートには解っていた。あの4人が揃えば、人間の世界など容易く崩壊する。彼らの圧倒的な強さを間近で見てきた第187番部隊には、叩きのめされるように体感してきたことだった。 (遂に新世界創造の時が・・・・・・しかしそのとき、俺達は・・・・・・) バヂンッ!! 「くっ!」 『うおおっ!!』 二つのエネルギーが衝突し、拮抗し合い、そして弾ける。やがてそれらは強烈なウネリとなり、凄まじい風を巻き起こす。 そんな中でも両者は体勢を崩さず、持てる力全てを以て相手を倒さんとする。 ユータの持つ電撃と、魔神皇の魔法攻撃。物量的な差からして、魔神皇の方が押してると思いきや・・・・ (これなら・・・・・・オレが勝つ!) やはり魔神皇は、先程のトールとの戦いで、大幅に体力を消耗していた。それは動きの速さに現れていた。俊敏に動くユータに対して、魔神皇はその場を殆ど動かない。 そんな殆ど動かない相手に攻撃を当てることは容易かった。次々とヒットするユータの攻撃が、体力の消耗に一層の拍車を掛ける。 「どっちが先に攻撃を止めるか・・・・・・勝負だ!」 『ぬぅ・・・・・・ぐぅぅぅっ!!』 魔法の威力も弱まってきた。これならユータの電撃の方が勝っている。 小型爆弾並の破壊力を持つ攻撃を立て続けに喰らい、息が段々と切れ気味になってくる魔神皇。しかしまだ倒れようとはせず、むしろ最後の力を振り絞って前に突進してきた。 『ぐぬぅ・・・・・・ふざけるなああ!!!』 ゴスッ!! 「くぅっ!?」 魔神皇のラリアットが、ユータの首に直撃する。ガードも何もしていなかったせいもあり、約10mは後ろに吹っ飛ぶ。 『何故だ・・・・・・認めぬ! 貴様のようなチンケな人間ごときに、私が負けてなるものかぁぁぁ!!!』 「・・・・・・っざけんじゃねーよ。」 立ち上がり、体勢を立て直すユータ。ダメージを負ってはいるが、それほど堪えた様子はない。 「30年以上奪われてきた自由を、この手で取り戻すんだ・・・・・・そのためにオレ達は鬼怨の技を手にしたんだ! その志と力と努力を、チンケだとは言わせない!!」 ユータの身体からの放電が一層激しくなる。並の人間がその身体に触れようものならば、一瞬で消し炭と化すだろう。それ程に周りの温度が上昇していた。 『これで決すか・・・・・・ならば!!』 魔神皇の身体が白く輝き始めた。その身体に秘められた魔力全てを昇華しているのだ。 どちらが勝つのか、それは正に“神のみぞ知る”だった。互いの力はピタリと同じだ。 そして双方の力が最大に高まり、今その勝負が決そうとしていた。 「うおおおおおおおおおっ!!!」 『があああああああああっ!!!』 「・・・・・・大丈夫なのか、ユータは。」 既に2時間は経過していた。苛立たしげな声でヒデが呟く。 「大丈夫だろ、何せアイツが本気出しゃあ、辺りには草も生えないくらいボロボロになるんだから。」 既にアツシとヒデは、こういった問答を2時間中に20回は繰り返していた。 「・・・・・・・・・」 ヒサシの方は相変わらずだ。半目開きでボーッとしている。 優春や空も心配そうな顔つきだ。口元に手を当てて考え込むような動作をしている。 と、100m先に光の柱が立った。そこはユータがマントラを描いたあの場所だった。 「「「!!??」」」 B−T−Bの三人はいち早く反応した。それからワンテンポ置いて、優春や他のスタッフ達が気付き始めた。 「行くぞ!」 「ああ!」 「うん・・・」 猛スピードで走り出す三人。その速さに、常人が追い付けるわけがない。 「あ、ちょっと待って!」 「私たちも行きますっ!」 置いて行かれまいと走り出す優春と空。それに他のスタッフが引き続く形で、行列が出来ていった。 その場所はドーム状の光に包まれていた。中はまだ見えない。 だが時間が経つに連れ、その光も段々と弱まってきた。その中から姿を現したものは・・・・・・ 「・・・・・・ユータ。」 そう、ユータだった。右肩に爆睡しているトールを背負い、左手でVサインを送っている。その顔は笑顔だった。 二人とも体中に傷を負い、服が焼け焦げてはいるものの、重傷は負ってはいなさそうだった。 「へヘッ・・・・・・オレが勝ったよ!」 自慢気に言う彼の顔には、一点の曇りも無かった―――――――――― |
あとがき な、長かった・・・・・・これで終わりだぁぁ〜〜〜〜〜〜!!! 2本平行連載なんて間違ってもやるもんじゃないですね、本当に学習いたしました。 取り敢えずエピローグは少ししか量がないので、すぐに終わると思います。まあお楽しみに。 でもこれでバトルの描写とか随分アップしたと思うんだけどなあ・・・・・・そういうことを考えれば、これって結構貴重な経験だったのかも? とりあえず、えぴろーぐをみてください。それでは〜。 BGM『キミガシン・・・ダラ』BUCK−TICK |
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