【 れむーの一族 第3話「しゃいにんぐ」 】
                              かぱちゃぱ


  夕食後の倉成家。
  一番に沙羅がお風呂をいただき、順番待ちの間、武と
 ホクトは仲良くクイズ番組を見る。
  そして、つぐみは隣りで夕食の後片付けをしていた。
  そんなゆったりしたひと時の事。

    パタパタパタ・・・・・・・

「ふ〜〜〜〜♪ いいお湯だった♪」
  軽い足音と共に、濡れた髪をタオルで拭きながらテレビ
 を見ていた武とホクトの元にやってくる沙羅。

「次はお兄ちゃんが入るでござるか?」
「うんっ・・・って、おい。何だよその格好は〜〜〜。(赤面)」
  思わず目のやり場に困ってしまうホクト。
  なぜなら今の沙羅は、風呂上りの身体に男物のシャツを
 羽織った姿だったのだ。

「へへ〜〜。パパのシャツ借りちゃった。」
  上のボタンを二つ外し除く胸元から、下にはブラをつけて
 いない事が分る。

  普通の16歳の女の子は男親や兄の前でこんな格好を晒
 す事なんかしないのだろうが、この家族は普通とは一味も
 二味も違っていた。

「〜〜〜〜〜!!(赤面)」
  反射的に妹の悩ましい姿から目を反らすホクト。
  湯上りで桜色に染まっている所為か、妹の顔がいつもより
 大人びて見えた。

「あ〜〜♪お兄ちゃんってば、もしかして拙者で興奮してる?」
  胸元がワザと深く見えそうな角度でそっぽを向くホクトの
 顔を悪戯っ子の表情で覗き込む沙羅。
「やめろようっ。(焦り)」
  ほのかに香るシャンプーの匂いに顔を赤くして照れる可愛
 らしい仕草に沙羅が面白がって調子付く。

「ほら見て・・・・上の方は着けて無いのが分るでしょ?」
「う、うん・・・・」
  律儀に返事をする辺りが何とも・・・・
  妹のとは言え、薄っすらと透けて、浮かんで見える胸の形
 は少年にとってそれ程、甘く刺激的だった。

「じゃあ・・・・下の方は・・着けてるか・・着けて無いか・・分る?」
  大人っぽい声色でシャツの裾を捲くり、風呂上りでピンク色
 に染まった太股をワザと色っぽくチラつかせる。
「う〜〜〜。何とかしてようっ。お父さ〜〜ん。(涙)」
  とうとうホクトは、の○太の様に武に助けを求めた。

  パニくりまくるホクトに対して、武は父親の威厳(?)を見せ、
 落ち着き払った態度でこう言った。
「濡れた髪を降ろし、湯上りで火照った身体。そして男物のY
シャツ・・・か。確かにいつもに比べて色っぽくて驚いたぜい。」

「え〜と?お父さん?(汗)」
  ホクトはなんか妙な展開になって来た空気を感じた。

「きゃっ。パパったらぁ〜〜。(はーと)」
  しかし嬉しそうに身をスリスリと寄せてくる娘に武はこう付け
 加えた。  
「だが、・・・・・・甘い、な。(ニッ)」
「え?」
「俺に言わせれば、まだ甘い!温い!!そして青いっ!!!」
「ええ〜〜?そんな〜〜。ガクっ。(TT)」
  そこまで言うかとばかりに畳み掛けられ、沙羅の顔が曇る。
  でも何処か芝居がかっていたり・・・・・

「ぬぬっ!パパには拙者のお色気忍法が効かぬとでも?」
「あ、忍者モノのノリだ。」
  ようやく流れが読めたホクト。
  どうやら今回のお題は山田風太郎のくノ一忍法帖らしい。

  ニヤリと余裕の笑顔を見せ、武は言う。
「効かん!効かんわっ!!何故なら俺は、もっと凄いものを見
ているからだ。それも毎晩・・・・な。(不敵な笑み)」
「な、なんとっっ!?しかも毎晩とな!!」
  大げさなリアクションで返す沙羅。

「(ぶぴゅっっ―――)」
  話の成り行きに思わず驚き、鼻から噴きだしてしまうホクト。
  何故なら、武が言う所の凄いものとは、つぐみの事に他な
 らないからだ。

『お、おおおお父さん・・・な、なな、なんて事をっっ!?(愕然)』

  ちなみにその、つぐみなる人物は、外見こそ17歳の少女だ
 が、実はホクトと沙羅の実の母であり、二人の父親の武の奥
 さんである。
  付け加えれば人外の異能者が集うこの家で一番強く怒らせ
 ると鬼より怖い女性だった。
  ライプリヒ製薬の必死の追っ手から二十数年の間、余裕で
 逃げ切った事実がそのパワーを証明していた。

      ――――ザワザワっっっ

「っ!?うわっっ?(ビクッ)」
  その瞬間、となりのキッチンから恐ろしく鋭い不動明もかく
 やの具現化した殺気が壁一枚隔てホクトを貫く。
  どうやら件の怖い人はこちらの動きを伺っているらしい。

『聞こえてる?・・・・・お母さん、怒ってるんだろうな〜〜。(汗)』

  しかし、話の流れがヤバイ方向になってきた事にこの二人
 は全く気付いていないようだった。

「そ、そんなに凄いのでござるのか?(ドキドキ)」
  興味深々で武の話に喰らいつく沙羅。
「ああ。・・・・・凄い。凄いぜ。そしてエ○い!(ビシ)」

  コテンっ。と、思わずコケるホクト。
「あ・・あ・・・・あははは・・・・・・(泣き笑)」

    ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・

  二人が盛り上がる中、ホクトはドアの隙間からこちらを覗
 く視線を受け、背中に恐ろしいほどのプレッシャーを感じて
 いた。
  泣きたい上に、嫌な汗が額に滲んでくる。

「シャ、シャイニング・・・・・・・・・(冷汗)」
  ふと、ホクトの脳裏にステイーブン=キング原作・ジャッ
 ク=ニコルソン主演映画のワンシーンが浮かんだ。

  間違いなくLeMU圧壊級の危機はすぐそこまで迫っていた。
『ううっ。さっきまでのホノボノした空気はどこに行ったんだろう?』
  が、この凄まじいプレッシャーを本当に気付いていないの
 か無視してるのか更に話が弾んでいる様子の武と沙羅。

「しいて言えば。無垢な少女、貞淑な人妻。そして優しい母親
のハイブリッドにして夜は甘えん坊!!それがつぐみよ!」
「わ――!? おとうさ〜〜〜ん!!!(半べそ)」
  ホクトの心配も知らず、武はとうとうそこまで言い切った。
  最初の三つはともかく、最後のは確実にNGワードだ!
「ママ・・・・・・・・す・て・き。(ポッ)」
  確かに娘の沙羅が見ても、LeMU事件以降のつぐみからは
 それまであった険が取れて、女の子(?)としての魅力が増し
 た様に思える所があった。

  さて、こうなると沙羅の中にある女の子が母親を真似たい
 という憧れにも似た心理にも火が着くのだった。
  ・・・・・・・・もしくは単にノリがいいだけとか?(オイオイ)
「ぜひ。ぜひとも後学の為、拙者に詳しく教えてくだされ!」
「うむ!よかろう。さあ、もっとこっちに寄るが良い。」
  手招きする武の前に忍者風に肩膝で跪く沙羅。

  その時、太股の奥を隠していたシャツの部分が捲れ、ちゃ
 んと水色のストライプが入ったパンティーを履いていたのが
 確認出来てホッとするホクト。
『な〜んだ履いてるじゃないか。・・・・・じゃなくて〜〜〜。(涙)』
  ホクトはかなりパニくっていた。いわゆるメダパニ状態だ。
  いかん!頑張れホクト!二人を救えるのは君だけなんだ!

「あ、あの・・・・あのね。お父さん?沙羅?もうその辺で・・・・」
  まだ間に合うかもしれない。そう信じ、何とか元凶となってい
 る話題の流れを断とうと話し掛けるが・・・・・
「ふぇ?あ〜〜♪お兄ちゃんも一緒に聞きたいんだ?(ニマ)」
「そうかそうか〜。お前もこういう事に興味がいく年頃なんだな
〜。父さんは嬉しいぞ。よし、なら二人に教えてしんぜよう。」
  ボケられた上に共犯にされてしまった。

「・・・・・ちゃうねん。(心の涙)」
  思わずホクトの口から、らしからぬツッコミが零れる。

    コトッ。    キシっ・・キシっ。
『ビクッッッ!!』
  つぐみが発する物音ひとつひとつに異様な程の迫力をホク
 トは敏感に感じていた。


「いいか、沙羅。ただHな衣装で煽情的な格好をしようともそれ
だけでは駄目だ。むしろ攻める気がミエミエでは逆効果よ。」
「な、なるほど〜〜〜。(ふむふむ)」
  気が着けば、熱心に父親からレクチャーを受ける沙羅。
  もうホクトもどこら辺に突っ込んでいいのか分らなくなって
 いた。
「ねえ〜。お父さん〜。沙羅〜〜。(泣きべそ)」

  ホクトの声を無視するかのようにレクチャーが進む。
「かえって予備知識がなく、受けに徹する方が萌えるのもまた
事実なり!」
「そうでござったか!ママはそういう手で・・・(尊敬の眼差し)」
  
「ねえってば〜!ホントは二人とも聞こえてるんだろっ?!」
  キレ気味にホクトの声が大きくなればなる程、二人の会話
 に熱が入って行くようだ。
「うむ!無防備で・・・それでいてちょっと怯えた感じで上目使い
に俺を見詰るその仕草!!これだけで俺は御飯3杯はお代わ
りできるぜいっ!!!(ΦωΦ)クワッ!」
「さ・・・3回!?じゃなくて3杯も!?や、やるでござるなあ。流
石は拙者のママ!!!(ΦωΦ)クワッ!」

      バンッ。

  ドアが開き、そして遂にその時が来た。

   ギシ・・・・ギシ・・・・・ギシ・・・・・・ギシ・・・・・・
  ホクトの横を、拳を握り締めた怖い人が通り過ぎる。

「お・・お父さん・・・。もう止めて。って言うか逃げて・・・・・」
  プレッシャーに耐えて何とか声を搾り出すものの武の耳に
 は当然の事ながら届かず・・・・

  ふと、海に沈んで行く武に向って叫んだあの時の自分と重
 なったり。

「例えば今日の朝、目が醒めて、ふと横を見ると夕べのままの
全裸に上着を引っ掛けただけのつぐみが俺に気がついて、
  『―――あっ?・・・おはよう武。(ポっ)』
なんて言われた日にはもう朝から―――――」
「きゃっ♪ママってば可愛い・・・・――――あ、ママ?(汗)」

  そして、沙羅とホクトの目の前で、とうとう最後の一線を越え
 た武につぐみからのキツ〜〜〜イ鉄槌が下る時が来た!

  いまだ熱弁を振るう武の背後に立つと、そっと肩をつつく。
「・・・・・たけし?」
「――て、口では言いながら実は嫌がってないのは・・・・ん?」
  武が振り向いた瞬間、つぐみは拳を勢い良く愛する夫の脳
 天に振り下ろした!

「た・け・し・の・・・・・バカー――――っっっ!!!!(大激怒)」

       ゴンッッッッッッ!!!!!!!   ドサッ。



  その後、頭に大きなのコブを作って床に倒れ付した武の代
 わりとして、怒って拗ねるつぐみにひたすら謝るホクト。

「ごめんなさい!ごめんなさい。ごめんなさい〜〜。(涙)」
「知らないっ! もう・・武なんか知らないから――っ!(赤面)」

  ホクトが必死になって頭を下げるも、今日のつぐみの怒りは
 思いの他、深かった。
  さて、そんな二人の横で娘に介抱されている武はと言うと。
「ふ・・・・・見たか沙羅。ああいう・・・所も・・・また・・可愛い・・・」
「うん。・・・・うん。正に萌えの極地でござるな。(涙)」

  懲りない父娘であった。(チーン)




         【 あとがき 】

 武もまだ若い・・・というか本当に身も心も二十歳なんで、実の
子供とは言え、ほぼ同世代の沙羅やホクトとはこういった話に
なるのは自然であり必然と・・・・・・・・
 まあ、何はともあれ楽しい楽しい家族って事ですわ、ハイ!(ビシ)
 


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