エバセブ闘牌伝 
ー代打ち集団LeMU−

                              鳴きの虎

第6章 鎖の闘牌


桑古木:「(よりによって、2回戦で天に当たるとはな・・・。
      相手はかつての東西線を制した東の総大将・・・。
      どうやったら勝てるんだよ・・・。)」

 ココ:「ねえねえ、早くやろうよ〜。」

  天:「あ、ああ・・・。」

桑古木:「(ココは相変らずだな・・・。
      勝つとか賞金だとか、そんな事は何も考えてないだろうし・・・。
      一回戦から、常にマイペースだもんな・・・。)」

−回想−

 ココ:「どーん!それ当たりだよ!
     やったぁ〜!ココの勝ち〜♪」

 男A:「(な、何でや・・・。
      何でわしらが、こないなガキに負けなあかんのや・・・)」

 男B:「(こないなことが知れたら、ワシらもうこの世界で食うていけへんわ・・・。)」

 ココ:「えへへ、約束だよ♪
     ココが勝ったから、おじちゃんたちココのお願い聞いてね。」

 男A:「ああ、約束やからな・・・。
     で、何やお嬢ちゃん、お願いってのは?
     飴玉でも買うてほしいんか?」

 ココ:「ううん、違うよ。
     ココといっしょに、“ひよこごっこ”してほしいの!」

男A&B:「ひ、ひよこごっこ!?」(驚愕)



 ココ:「えへへ〜♪ぴよぴよぴい〜♪」

とても楽しそうに、ひよこごっこに興じるココ・・・。
そして、半泣きで付き合わされる男二人・・・(汗)

男A&B:「(な、なんでわしらがこないな恥ずかしいことせなあかんのや・・・。(涙)
       この世界でやってくどころか、もう表を歩くこともでけへんわ・・・(血涙)」

一日に何時間も座っており、腰を痛めがちの麻雀打ちに、これは辛い・・・。
男二人の、肉体的、精神的ダメージは計り知れなかった・・・(笑)

−回想終了−

桑古木:「(そうだ!相手がだれであろうと、それに臆せずマイペースを貫けばいい!
      勝負は半荘1回、俺たちの力を駆使すれば決して勝てない相手じゃないはずだ。
      これで、勝機が見えてきたぜ・・・。)」

東:ひろゆき 南:ココ 西:桑古木 北:天

ひろゆき:「(配牌はいまいち・・・。
       親だってのに、何だかな・・・。)」

−ひろゆき、天の方を見る−

ひろゆき:「(天さんもどうやら、良くも無く悪くも無いといったところか・・・。)」

−ひろゆき、西切り−

 桑古木:「ポン!」

ひろゆき:「(これで桑古木さんは1翻確定か・・・。
       まずいところを切ったな・・・。)」

−四巡目−

 桑古木:「ロン!」

ひろゆき:「チャンタか・・・。
      あなたと打つのは初めてですけど、早いですね・・・。」

 桑古木:「実はそうでもなかったんだ・・・。」

ひろゆき:「?」

 桑古木:「ここの3人が捨てた牌が全部で9、俺のツモが2回・・・
      その合計、俺は11回ツモった気分・・・痛って!!!!
      誰だ!こんな真似しやがったのは!?」

−桑古木の頭に、トンカチがぶつけられる−

  作者:「調子に乗るな・・・!
      貴様如きに許される台詞ではない・・・!
      次は命が無いものと思え。」

 桑古木:「命が無い・・・だと?
      フッ、忘れてもらっちゃこまるな。
      俺は不死身のキュレイ・キャリアだ。
      甘く見てもらっちゃ困るぜ。」

  作者:「・・・ならば都合が良い。
      桑古木涼権を帝愛グループ地下懲役労働17万年と決定する。
      無論、45組特別待遇だ。
      ・・・即刻、確保しろ。」

  黒服:「はっ。」

 桑古木:「・・・ごめんなさい。
      もう生意気いいません・・・。」

ひろゆき:「あの・・・、誰と話してるんですか?」

 桑古木:「いや、こっちの話・・・。
      もう終わったから。」

  ココ:「ほえ?どうしたの?少ちゃん?」

 桑古木:「・・・何でもないよ。」

  ココ:「ほえほえ?」

   天:「(俺、さっきから殆ど台詞無えな・・・。)」

−対局再開−

  ココ:「リーチだよ。」

ひろゆき:「(早いな・・・。まだ3巡なのに。
       まだロン牌を絞り切れないか・・・。)」

−2巡後−

  ココ:「ドーン!当たりだよ。」

 桑古木:「ココ、ドンじゃなくてロンだよ。
      ええっと、リーチのみで、2000点か。」

   天:「やるね、ココちゃん。」

  ココ:「えへへ、ココ強いでしょ♪」

東二局 一本場

  ココ:「あ、それポンだよ。」

−ココ、ポンの後五索切り−

  ココ:「ふふふ♪早くトリさん(一索のこと)来ないかな〜。」

 桑古木:「あ、ココ、言っちゃ駄目だよ。」

  ココ:「いいも〜ん。すぐに鳥さんはココの所に来てくれるから!」

−ココ、次巡のツモ−

  ココ:「やった!上がりだよ!」

   天:「ははは・・・。ココちゃん凄いね。
      はい、点棒。」

東二局 二本場

   天:「ココちゃん、俺も負けないよ。
      二人でどっちが早く和了るか競争する?」

  ココ:「うん!」

   天:「ポン!」

  ココ:「ポンだよ。」

   天:「チー!」

  ココ:「ココもチーだよ。」

−そして数巡後−

  ココ:「やった!また上がりだよ。」

   天:「あちゃあ〜、負けちまったか・・・。
      まったく、敵わないな、ココちゃんには。」

−そして、その後ココは連荘を繰り返し、7本場まで場は進んだ−

ひろゆき:「(天さん、遊んでる場合じゃないだろ!
       ココちゃんがさっきから和了ってるのは一翻の役ばっかりだけど、
       7本も場が進めば、三翻に匹敵する点数になるんだから!)」

   天:「・・・・・。」

ひろゆき:「(さっきから何やってるんだ、天さん・・・。
       もしかして、ココちゃんが相手ということで勝負する気が薄れてるのか?」

−数巡後−

ひろゆき:「ポン!」

  ココ:「むう〜。トリさん取られちゃった・・・。」

ひろゆき:「(そろそろ、遊んでばかりもいられない・・・。
       この場を流すとするか。)」

−数巡後ひろゆき、ココの捨て牌に目をやる−

ひろゆき:(ココちゃんは、一、四索の両面待ち・・・
      だが、一索は自分が三枚持ってるし、四索も場に2枚捨てられている。
      残りの2枚も、俺の手の中だ・・・。
      これで、ココちゃんの連荘を終わらせることができる・・・。)」

  ココ:「やった!また来ちゃった!」

ひろゆき:「え?」

  ココ:「またココのアガリだよ!」

 桑古木:「ええっと、平和ツモか。」

ひろゆき:「(ココちゃんは、捨て牌なんか見てないはず・・・。
       本来なら和了れるはずの無い手なのに、それでも残り一枚を引いてきた・・・。
       なぜ、あそこまで引きが強いんだ?)」

   天:「(ひろゆきの奴、なぜココちゃんが和了れるか、分からないって顔してるな。
       それは、あの子が“無欲”だからだよ・・・。
       赤木さんの“無欲”とは違うが、あの子は本当に純粋な気持ちでこの麻雀を楽しんでる・・・。
       裏をかこうとか、和了り目を封じるとか、そういうことを考えてたら勝てねえよ。
       この卓の、この場だけは、純粋に楽しんだ奴が勝つ・・・。
       そういう世界なんだよ・・・。)」



−永遠に続きそうな勢いの、ココの特殊能力、「ひよこのくちばし」攻撃。
 そして東2局、十本場−

  ココ:「あ、当たりだよ♪」

   天:「またやられたね、ココちゃん。」

ひろゆき:「タンヤオのみ、これで十連荘か・・・。
      ん?あ、ちょっと待って。」

  ココ:「ほえ?」

ひろゆき:「あ、ダメだよココちゃん。ココちゃんの待ちは、五、八索待ちだよね。
      でも、よく見るとココちゃんは三筒でも和了れるんだよ。
      前にココちゃんに教えたよね?
      自分が和了れる牌を捨てている時にロンすると、フリテンになっちゃうんだ。」

※フリテン
前述の通り、自分が和了できる牌を捨てているときに相手からロンすると、ペナルティが課せられる。
この場合、他の3人に合計満貫分の罰符を支払わなくてはならない。


  ココ:「むう〜、せっかく上がったのに〜。」

   天:「まあまあ・・・、今回だけ見逃してやってくれないか?」

ひろゆき:「駄目ですよ、天さん。
      仲間内の遊びならともかく、公式の大会なんですから。
     (天さん、ホントに勝負する気無いな・・・。
      まあ、東の勝ちはほぼ確定してるし、当然かもしれないけど・・・。)」

   天:「ごめんなココちゃん。次から気を付けような。」

−結局ココは親満払いとなり、多少の差はあるものの全員の点棒が原点に近くなった形で再開となる−

  ココ:「リーチだよ。」

   天:「やれやれ、参ったねこりゃ。
      よし、これならどうだい?」

  ココ:「どーん!それ当たり!」

   天:「あちゃあ〜、またか・・・。」

−一方、来賓席−

  原田:「天の奴、さっきから何やってやがる・・・。
      ガキの遊び場じゃねえんだぞ・・・!」

  僧我:「フフ・・・、まあええ・・・。
      あないな子供相手に本気を出したとあっては、東の大将の名が廃るやろ・・・。
            それに、あんたとあの男はまたいずれ凌ぎを削る間柄や・・・。
      ツキに乗った姿を見せたくないのが本音と違うか?」」

  原田:「ふん・・・。」

−一方、春香奈−

 春香奈:「(調子がいいわね、ココも、桑古木も・・・。
       そうそう、その調子でいけばいいのよ。
       元々あなた達が勝てる相手じゃないんだけど、ココの無垢さが場の空気を弛緩させてる。
       川の水が流れていくように自然の流れに身を任せれば、多分ココがトップでこの勝負は決着がつくわ。)」

−東3局 桑古木の親番−

 桑古木:「(ココの調子が頗る良い・・・。
       このまま行けば勝てそうだ。だが、何かが引っかかる・・・。
       俺は、この場に何をしに来たんだ?」)

−靄のかかった様な心境で、麻雀を続ける桑古木−

 桑古木:「(別に、今回俺達が勝ったって賞金を除けばメリットがそれほどあるわけじゃない・・・。
       おまけに負けたって、失うものも俺には無い。
       別に代打ちの世界で生きてるわけじゃないんだからな。
       でも、このままでいいのか?)」

−東3局 一本場−

 桑古木:「(大体、天も天だよ。
       名の知れた代打ちなのに、全然本気を出してない。
       せっかく東の大将と卓を囲んでるのに・・・。
       どうせなら、思い切り勝負を楽しまなきゃ損だ。)」

−桑古木の顔が、冒険好きな少年のように変わる−

 桑古木:「ポン!」

−桑古木、南をポン−

   天:「おっ、また速攻チャンタか。
      じゃあ、これは通るかな?」

−天、九索切り−

 桑古木:「ロン!混老頭、ドラ2、親ッパネだ・・・。」

   天:「うっ・・・!」

ひろゆき:「(た、たった5巡で、ハネ満の手を作ったのか・・・?」

 桑古木:「(へへっ、どうだい?東の大将さん。
       少しは目が覚めただろ?)」

−してやったりという表情の桑古木−

 春香奈:「(バ、バカ!何やってんのよ!
       そのまま行けばあんた達の勝ちだったのに、天にケンカ売ってどうするのよ!)」

 桑古木:「天さん、ひろゆきさん・・・。
      このまま漫然と勝負を続けても、面白くない。
      そこで、提案があるんだ。」

   天:「・・・何だい?」

  ココ:「ほえ?少ちゃんどうしたの?」

 桑古木:「あんた達と俺で、サシ馬やらないか?」

※サシ馬
点棒の多少によって、一定の金額を賭けて勝負を行うというもの。
点が100点でも上回った方が勝ちとなり、賭け金を得ることができる。

  ココ:「ほえ?少ちゃんおウマさんを刺すの?
      ダメだよ〜、そんなことしたら。」

 桑古木:「あ、ココ、そうじゃないって・・・。
      これは天さん達と俺の話だから、ちょっと待ってて。」

  作者:「(オイオイ、子供の前で賭博の話なんかするなよ・・・。)」

ひろゆき:「僕は構いませんが・・・、天さんは?」

   天:「俺も構わないが・・・。で、幾らだ?」

 桑古木:「100万でどうだ?
      もし俺が勝ったら、あんた達から50万ずつ貰う。
      俺が負けた時は、俺一人であんた達に100万払う。
      これでいいか?」

   天:「ああ、分かった・・・。」

ひろゆき:「(天さんの顔が、勝負の時の顔になった・・・。
       さっきまでの弛緩した雰囲気が一瞬にして消え失せてる・・・。)」

−その光景を見て、やれやれといった感じの優春−

 春香奈:「(あのバカ・・・、一体何考えてるのよ。
       確かに大物直撃して流れが来てるかもしれないけど
       そんな点棒の差なんて、あの男には何でもないはずよ。
       天貴史が本気で勝負に来たら、付け焼刃の能力しかない私達のレベルではお話にならないわ。
       仮に負けても、100万ぐらい桑古木なら払えない金額じゃないけれど、
       こんな何でもない勝負でサシ馬なんて・・・。
       まったく、男ってすぐムキになるのよね。
       こんな卓上の遊びでも・・・。)」

−やんちゃな弟を心配する姉の心境の優−

−東3局 1本場−

ひろゆき:「(桑古木さんの捨て牌に字牌が少ない・・・。
       チャンタ狙いか?)」

 桑古木:「・・・・・。」

−東3局 終盤−

ひろゆき:「(結局流局か。
       何も起こらなかったけど、これは正に、“嵐の前の静けさ”ってやつだな。)」

  ココ:「テンパイだよ。」

ひろゆき:「テンパイ。」

   天:「ノーテン。」

 桑古木:「テンパイ」

ひろゆき:「(うっ・・・!)」

−桑古木、国士無双のテンパイ−

ひろゆき:「(まさかとは思っていたが、やはりそうか・・・。
       僕が白を暗刻で持っていたから助かったけど。」

−東3局 3本場−

 桑古木:「ポン!」

−桑古木、一筒と九萬をポン−

ひろゆき:「(今度はまた混老頭か・・・、まさかとは思うけど・・・。)」

−ひろゆき、タンヤオ、ピンフ、ドラ1のテンパイ−

ひろゆき:「(九索を切って、五、八索の両面待ち・・・。
       五索は場に出ていないし、ここはリーチを・・・。)」

−ひろゆき、九索に手をかけた瞬間、手が止まる−

ひろゆき:「待てよ・・・。
      既に八索は3枚切れている・・・。
      つまり、七八九の順子を構成することは難しい・・・。
      七索は僕の手の中に一枚ある以外は、一枚桑古木さんが捨てている。
      七八九の順子が構成できないなら、九索は場に捨てられているか、もしくは誰かが暗刻、対子で
      持っているはずだ・・・。
      桑古木さんが二つ九索を持っているとすれば、あの七索は溢れた牌ということになる。
      となれば、テンパイしているなら桑古木さんは九索と他の対子のシャボ待ちだ・・・。」

−改めて、卓上の牌に目をやるひろゆき−

ひろゆき:「(卓上に、二枚捨てられている一、九の牌が無い・・・!
       ということは、桑古木さんの手は混老頭どころか、清老頭(役満)か・・・?」

−ひろゆきの推察は当たっていた・・・。
 ズバリ、桑古木の手は九索、一萬のシャボ・・・!
 つまり、振れば一撃で勝敗を決する手を既に完成させていたのである・・・。
 ひろゆきは打ち込みを避け、回し打ちに転じるが結局和了には至らなかった−

−東3局 4本場−

−桑古木の捨て牌に、中張牌ばかりが目立つ−

ひろゆき:「(桑古木さんが、チャンタ系が得意だというのは分かる・・・。
       しかし、あんな見え見えの打ち方をしていたら、誰だって警戒するに決まってる。
       なぜだ、なぜあんな打ち方ばかりするんだ?)」

  ココ:「リーチだよ。」

ひろゆき:「(うっ・・・。
       今度はココちゃんか・・・。
       捨て牌の様子から見て、タンピン系だな。)」

−ひろゆき、ココの現物の九索切り−

 桑古木:「ロン、チャンタ、ドラ1」

ひろゆき:「(し、しまった・・・!)」

−この後、ひろゆきは既に桑古木の術中に嵌まっていたことに気付くが、
 その状況は容易く打開出来るものではなかった−

ひろゆき:「(駄目だ・・・。
       中張牌を切れば、ココちゃんのリーチに当たる・・・。
       かといって、ヤオチュー牌(一九字牌)を切れば、桑古木さんに当たる・・・。
       しかも、桑古木さんは門前で手を進めてる・・・。
       チャンタならともかく、国士無双の可能性だってあるんだ・・・。)」

−現物を切るひろゆき−

 桑古木:「ツモ、門前チャンタ」

ひろゆき:「(回し打ちに転じてこちらの手が遅くなれば、ツモでもいいわけか・・・。
       まずい、ますます流れが悪くなってる・・・。)」

−この後、天がツモ和了をものにして桑古木の親は終了。
 だが、状況を打開できたわけではなく、ひろゆきは焦りを隠せない−

−東4局 天の親−

ひろゆき:「(ようやく天さんの親か・・・。
       何とかして今の流れを変えないと・・・。)」

−7巡後−

  ココ:「リーチだよ。」

ひろゆき:「(うっ・・・。まだ3シャンテンなのに・・・。)」

−ひろゆきの手牌の中には中張牌が8枚、ヤオチュー牌が5枚。
 ここで止まることなく手を進めていったひろゆきだが、終盤にテンパイした瞬間、手が止まる−

ひろゆき:「(何とか九萬を切ってタンヤオ系に持っていきたいが、九萬は桑古木さんに危ない・・・。
       かといって、真ん中の牌も安心して切れる牌じゃない・・・。
       動けない・・・。
       この感覚、鎖か何かで縛り付けられているようだ・・・。
       その鎖こそが、この九萬・・・。
       今僕が置かれているこの状況こそ、桑古木さんの狙いだったんだ・・・。)」

−桑古木のチャンタに苦戦するひろゆきは、昔を思い出していた。
 それは、あの赤木と初めて出会ったときのことである・・・。
 天、ひろゆきとはじめて相対した時の赤木は、チャンタによる戦法で天を大いに苦しめた。
 その際、天はチャンタという役の本質を見事に言い当てている。
 役作りを考えればタンヤオが最適であり、横に自由自在に伸びるため、これを基本として麻雀は役作りが進められる。
 それに対してチャンタは123、789の順子が横への伸びが期待できないため、その質は暗刻に誓い。
 だが、視点を変えて考えてみると、牌の総数の内タンヤオに使われる牌は84、それに対してチャンタは100であり、
 チャンタの方が数は16枚も多いのである。
 しかも、チャンタを作るのに必要なヤオチュー牌は不要牌として手の中から捨てられたり、ツモっても捨てられることが多い。
 これは対局中最初から最後まで見られる現象である。
 つまり、チャンタという役の怖さとは、対局の最初から最後まで振り込む可能性を持つ役だということなのだ。
 今の卓上の桑古木は、照準機をつけたライフルで相手を狙い続ける必殺の狙撃手なのである。
 迂闊に踏み出し、ヤオチュー牌を切れば撃ち抜かれる。
 かといって、ヤオチュー牌を抱え続ければ和了への道は遠くなる。
 切れないヤオチュー牌は、抱えたものにとっては“鎖”にもなり得る。
 ヤオチュー牌を引き寄せる桑古木にとって、それ等は麻雀における強力な武器なのだ。−

 桑古木:「(ようやく気付いたようだな、ひろゆきも。
       だが、こんなやり方は大したものじゃない。
       狙いが見え見えの打ち筋なんだから、それにわざわざ振り込んでくる奴はいないぜ。
       これを破りたければ、さっさと鳴いて安手で流してしまえばいいだけだ。
       だが、今の状況は違う・・・。
       俺の隣には、ココがいるんだ。
       ココは真っ直ぐに手作りをしているだけだ。見え見えのメンタンピン系の役を作っているわけだが、
       俺のチャンタを警戒して真ん中を切れば、今度はココに当たる。
       つまり、中張牌もヤオチュー牌も、現物以外軒並み保障を失ったってことさ・・・。
       俺が不運を運に変えるってのは、国士や清老頭が作りやすいということじゃない。
       不運ゆえに引き寄せられるヤオチュー牌を鎖にして、相手の心理を縛り上げることで
       勝ちへの道を開くということ・・・。
       この“ヤオチュー牌の鎖”こそが俺の最大の武器というわけだ。)」

−ひろゆきはヤオチュー牌をツモる度に、手が縛られていくことを実感する−

ひろゆき:「(最初の国士無双、清老頭テンパイも今の状況のための布石だったのか。
       鳴いて安手のチャンタならまだしも、迂闊に切って役満を振り込んだ場合は最悪の形となる・・・。
       見え見えの打ち方をしながら役満に対する恐れを抱かせることも戦略の一つだったわけだ・・・。)」

−地力は桑古木よりひろゆきが勝っているのは確かだが、最初から流れが来ていない上に心理面で不利な立場に
 立たされている以上、苦戦は必至である。
 おまけに半荘一回となれば、勝負がどう転ぶかも分からない。
 だが、眠れる獅子、天はただ静かに今の状況に相対していた・・・
 そして、今の状況に何ら臆することなく、危険牌を切り続けている。
 そして、2回程ツモ和了をした後、東場は終了した。−

ひろゆき:「(流れの来てないままに、南場入りか・・・。
       しかし、天さんからは僕に対し何のサインも無い。
       つまり、僕一人で今の状況を乗り越えろということか・・・。)」

南1局 ひろゆきの親

 桑古木:「(今は完全に俺に流れが来てる・・・。
       よし、ラス親まで行く前に、一気に止めを刺す!)」

−桑古木は配牌で既に、純チャン三色二シャンテンの手が入っていた・・・!
 本来桑古木は序盤は中張牌を切りつつ振り込みながらも、最後にチャンタ系で逆転するというパターンが
 多かったものの、ココのツキが同時に桑古木にもツキを呼び込んでいた・・・。
 それに対し、ひろゆきの手牌には相変らず艶が無い・・・。
 それは天も同様だった。−

 桑古木:「(よし、これでテンパイだ。
       だが、ここはリーチをかけずとも、ドラ2つでハネ満が確定。
       勝負あったな、お二人さん。)」

ひろゆき:「(あの切り方からして、恐らくテンパイか・・・。
       リーチをかけないということは、大物手だな。)」

−この後、何とかひろゆきは危険牌を切りながらテンパイへと歩を進めていく。
 点差もあり不利な状況に立たされながらも、ひろゆきは冷静に状況を見極めていた。−

ひろゆき:「(何とかテンパイだ・・・。
       しかし、七、九筒で八筒のカンチャン待ち・・・。
       ツモでなければ役無し、加えて2枚は桑古木さんの手の中だ。
       和了するのは、難しいな。)」

−だが、次巡ひろゆきは八筒をツモ−

ひろゆき:「(この状況で、八筒を持ってくるとは・・・。
       だが、この手を和了ってもツモのみのゴミ手・・・。
       そういえばさっきから、気になることが一つあったな・・・。
       ここは、彼の手牌を見るとするか。)」

−結局、南1局は流局に終わる−

ひろゆき:「テンパイ」

   天:「ノーテン」

  ココ:「ノーテンだよ。」

 桑古木:「テンパイ」

ひろゆき:「(間違い無い・・・。思った通りだ。)

 桑古木:「(ん?待ちは八筒?ということは、さっき和了ってたのか?
       終盤だったからリーチをかけないというのは分かるが、なぜ和了を放棄したんだ?)」

ひろゆき:「(桑古木さんのチャンタに、穴が見えた・・・!
       彼に最もツキが来てる今の状況、間隙を突ければ勝てる・・・!)」

−南1局 一本場

 桑古木:「リーチ!」

−桑古木8巡後リーチ−

 桑古木:「(よし、待ちは八筒のカンチャンで、チャンタ、三色の満貫確定。
       裏次第でハネ満に届く・・・。
       しかも、八筒は場に切れてない。
       さっきは和了れなかったが、これで勝負あったな。)」

−ひろゆき、七筒切り−

 桑古木:「(随分と危ない所を切ってくるな・・・。
       まあ、プロだから簡単には動じないか。
       だが、俺がツモ和了すればそれですむ話だ。)」

ひろゆき:「リーチ!」

 桑古木:「(いよいよ反撃に出てきたな。
       よし、どっちが先にツモるか勝負だ!)」

−ひろゆきのリーチから三巡後−

ひろゆき:「ロン!」

 桑古木:「うっ・・・。」

ひろゆき:「リーチ、タンヤオ、ドラ1・・・。
      裏ドラ二つで親満だ。」

 桑古木:「(何?俺の当たり牌の八筒を全部持っている・・・。
       道理でどこからもこぼれてこなかったわけだ。)」

−南1局 二本場−

 桑古木:「(よし、これでテンパイ。六、九索の両面待ちだ
       仮に六索が来ても、三色は確定してるから問題ないぜ。)」

ひろゆき:「ロン!中、ドラ1。」

 桑古木:「(またかよ・・・。俺のロン牌を5枚止めてる。)」

−そして桑古木は、何故かひろゆきに当たり牌を止められた上で安手により和了を持っていかれる。−

 桑古木:「(おかしい・・・。俺は当たり牌を絞り切れない6巡以内にはテンパイしてるのに
       なぜか和了をものに出来なくなってる。
       南場の初めに、俺はひろゆきに何かを見抜かれたんだ。
       一体、俺の何をひろゆきは見ているんだ?)

ひろゆき:「(桑古木さん・・・。
       確かにあなたの打ち方は理外のものだった・・・。
       だが、それは捨て牌だけだ。あなたの手牌は、既に理の内なんだよ。)」

−ひろゆきが南場の初めに、和了を蹴ってまで確かめたのは桑古木の手牌の役ではなく、その牌の並べ方であった。
 桑古木は麻雀牌を、左から右へと萬子、筒子、索子、字牌の順に並べている。
 ひろゆきは桑古木に和了られながらも、彼の手牌や捨て牌に見られる癖などを見出そうとしていた。
 いつものようにヤオチュー牌が偏って来る場合は牌の並びが規則的になるとは限らないが、ツキが来ている桑古木には
 チャンタ三色の材料となる萬子、筒子、索子が手の中に入ってきている。
 つまり、ひろゆきは桑古木の手牌の並べ方の規則性を見抜いた上で、何が当たり牌かを識別しているのだ。−

 桑古木:「(ひろゆきの力量ならば、ある程度は当たり牌を読めるだろう。
       だが、読みやすい両面待ちならともかくカンチャン、ペンチャン待ちを意図的に抑えている・・・。
       何故だ?俺の何を見ているんだ?)」

※麻雀の基本的な待ち方について
今更かもしれないが、麻雀の基本的な待ち方を幾つか紹介しておく。
両面(リャンメン)待ち:二、三または五、六と持っていて一、四や四、七など両側の二つで和了る形。もっとも基本的な待ち方
カンチャン待ち:例えば一、三または七、九を持っていてその間の二や八で和了る、間を埋める形。
ペンチャン待ち:一、二または八、九と持っていて端の三や七で和了る形。
シャボ待ち:対子(同じ牌二つの組み合わせ)を二つ持っていて、どちらかが来れば和了れるという形。
 単騎待ち:残り一つの牌で、アタマ(雀頭)を待つ形。非常に読み辛い。

−加えて、桑古木にはもう一つ癖が存在していた。これは桑古木に限ったことではないが、チャンタを作る際に必要な
 七筒、七索、三索、三筒は上下対称でないため自分にとって見易いように一瞬牌を回して手牌の中に入れることが多い。
 桑古木がチャンタ系を作ることを前提として考えるならば、 牌を少しでも回して手牌の中に入れた場合
 上下対象でない一索、三索、七索、三筒、七筒などが手に入っていてカンチャン、両面の可能性があり
 そのまま手牌に入れれば上下対象の牌である八、九筒、八、九索によるペンチャンで待っている可能性がある。
 萬子や字牌は漢字で書かれているために牌を回して入れることが多いが、桑古木の手牌においてツモった牌を入れる場所の
 規則性を見抜くことができれば、ひろゆきにとってはどの牌をツモったか理解することは容易い。
 これらを見抜いたことが、ひろゆきが状況を打開する要素となっていたのである・・・!−

−南2局目−

 桑古木:「(何だよこれは・・・。
       中途半端なカンチャン、ペンチャンの組み合わせばかりだ・・・!)

−ひろゆきに自分の癖、打ち筋を見抜かれたことで桑古木の流れは徐々に失われつつあった。
 ツモ牌にヤオチュー牌が偏って来るならともかく、面子にならない牌ばかりが来るようになる。
 裏目ばかりを引き、一向に面子がまとまらない・・・。−

 桑古木:「(まずい・・・。このままだと確実に負ける。
       こうなったらココにサシコミして、トップに押し上げるしかないな。
       サシ馬には負けるが、試合そのものに負けたら話にならない・・・。)」

  ココ:「リーチだよ。」

ひろゆき:「(ココの能力はまだ衰えていない。
       ひよこの口ばしで、連荘に持っていけるな。)」

−桑古木、七筒切り−

  ココ:「どーん!当たり!」

   天:「ごめんなココちゃん、それ頭ハネ。」

  ココ:「ええ〜。じゃあココのは無しなの?」

   天:「邪魔して悪いね。後で何か買ったげるから、勘弁な。」

  ココ:「むう〜。じゃあ後でみんなにアイス買ってね♪」

   天:「OK、OK。」

−で、この後桑古木、ホクト、春香奈、秋香奈、沙羅も含めて高いやつを奢らされることになったとか・・・−

 桑古木:「(し、しまった・・・!
       俺がこの局、勝負から離れるのを待ってたのか。」)

ひろゆき:「(桑古木さん、もう遅いよ。
       あんたが勝ちたければ、最初からそうしていればよかったんだ・・・。
       だが、勝負において自分を曲げた打ち方をするのは、勝負から降りるのと同じことなんだよ。)」

−この後、ひろゆきが安い手をツモ和了し、天は桑古木から直撃を奪った。勝負は南場4局、オーラスへと突入する。
 トップは天で、桑古木との点差は7000点前後となっていた。
 東:天 南:ひろゆき 西:ココ 北:桑古木

ひろゆき:「(この手は、早和了が可能だ・・・。
       軽く和了って、天さんのトップを維持して終わるか。)」

 桑古木:「(ヤオチュー牌が8個か・・・。
       いつもなら迷わず国士無双に行く所だが、オーラスでそんなのは愚の骨頂だ。
       この二人相手に、そんなものは通用しない・・・。
       だが、そんなものを和了できなくても、俺には最後の手段がある・・・!)」

−ひろゆき、6巡後テンパイ−

ひろゆき:「(カンチャン待ちか・・・。形は悪いがあいにく当たり牌は初牌で、場に出ていない。
       ここはリーチをかけて・・・。)」

   天:「・・・・・!」

ひろゆき:「(え?天さん?リーチをかけるなっていうのか?)」

−天からのサインを無視できず、ひろゆきはリーチをかけずに、ツモ狙いのまま進んでいく。
 それに対し桑古木は、ヤオチュー牌を切りながら手を進めていく。−

ひろゆき:「(桑古木さんも、捨て牌の様子からタンピン系狙いか・・・?
       ツモ次第で逆転できない点差ではないからな。)」

−この後、ひろゆきは手を入れ替えてタンヤオ、ピンフでテンパイ−

ひろゆき:「(よし・・・。理想的な形になった。
       これで、後は出和了かツモを待つばかりだ・・・。
       桑古木さんは表情に焦りが見え始めてる・・・。
       予想以上に手が進んでいないみたいだ。
       あの捨て牌と表情から、国士無双を諦めた打ち方をしたのを後悔してるんだな。)」

−だが、理想的な形にも関わらず、ひろゆきは和了できない−

ひろゆき:「(おかしいな、まだ出てこないのか?
       まあいいか、残りのツモ牌もそんなに無いし・・・。
       流局しても、まだこちらに流れはあるんだ・・・。)」

−何気なくツモ牌を切ったひろゆき。その時、ふと桑古木の手牌が目に入る−

ひろゆき:「(な・・・?
       桑古木さんの捨て牌が、ヤオチュー牌だけ?
       じゃあ、桑古木さんの狙いは・・・。)」

 桑古木:「(今頃気付いたか・・・!
       でも、もう遅いぜ!)」

−桑古木は、オーラスで自分に流れが無いことは分かっていた。
 それに対し、ひろゆきや天には早くて理想的なタンピン系が来ることも予測していた。
 本来の自分なら国士無双、チャンタにもっていくところだが、それらを作る以上は
 中張牌を切らなくてはならないためそこを狙い撃ちにされて敗れる可能性が高い。
 また国士狙いの見え見えの打ち方では逆に二人に警戒されて、安手のサシコミで終わらせられることもある。
 ましてや純粋なテンパイ競争に持ち込んだところで、絶対に今の自分に勝ち目は無い。
 全てが自分にとって絶対的に不利な状況において、桑古木が見出した最後の手段は今狙っている流し満貫であった。
 桑古木は流し満貫を狙いつつも、同時に二人の当たり牌となる中張牌を抱え込むことで攻撃と防御の両方を実践していた。
 だが、流し満貫も捨て牌から狙いが明らかになりやすい役である。
 そのためわざと焦ったような表情や打ち方を演じることで、二人がまっすぐ勝負にくるように仕向けたのであった。−

※流し満貫
捨て牌がすべてヤオチュー牌(一九字牌)であった場合、満貫になるという特殊役。
ただし、捨てた牌を鳴かれた場合は無効となる。

 桑古木:「(天は、早い段階から俺の狙いに気付いていたようだ。
       だから、ひろゆきにリーチをかけるなというサインを出した・・・。
       リーチで手を縛ってしまえば、後々対処できないからな。
       天・・・!今まであんたとは勝負らしい勝負もしていなかったが、
       オーラスのここからが、あんたとの最後の勝負だ!)」

−桑古木は自分の狙いに気付かれながらも、ひたすらヤオチュー牌を切り続ける・・・!
 天は桑古木の下家になるため、字牌はともかく一、九の牌はチーによって
 流し満貫を無効にされる恐れもあるが、そうした雑念を全て振り払い、勝利へと突き進んでいった。−

ひろゆき:「(何て気迫だ・・・。捨て牌に迷いが無い。
       下手すればポンかチーで流し満貫を無効にされる恐れが十分にあるのに
       それをものともせず、危険牌を切っている・・・。
       まるで、あの一牌一牌が血で濡れているかのようだ・・・。
       魂を削るかのようなあの流し満貫・・・。
       やはり、この人は只者じゃない・・・!)」

−そして、残されたツモは2回、桑古木の手の中のヤオチュー牌は一索、中、九萬となった・・・。−

ひろゆき:「(流し満貫を和了るのに必要な牌はあと二つ・・・。
       捨て牌の様子から、中、一索は一枚しか切れていない。
       九萬は2枚切れているが、チーを防ぐために桑古木さんの手の中に一枚はあるはずだ・・・。
       あと、一索、中も・・・。
       恐らくこれが、最後の勝負になるな。
       桑古木さんが流し満貫を完成させるか、それとも天さんが鳴いて無効にするか・・・。)」

−今の状況においては、桑古木も手が止まっている。状況からして、天が一索、中をどちらか対子で持っている
 可能性があるため、迂闊に切ることはできない。−

ひろゆき:「(待てよ・・・。
       そういえば、ココちゃんは一索に愛着を持っていたな。
       俺にポンされて取られた場合は、かなり惜しそうな顔をしていたっけ・・・。
       天さんの手の中に一索が無いとすれば、ココちゃんが持っている可能性がある。
       もし、天さんが鳴かなくても、ココちゃんが鳴けば流し満貫は無効だ・・・。
       その危険性を考えれば、桑古木さんは一索は切らない。
       加えて中は、最も天さんが持っている可能性が高い・・・。
       あと、天さんの捨て牌にはラスト近くに七萬、八萬が切られている・・・。
       あれは多分、桑古木さんから九萬を引き出すための天さんの渾身のブラフ・・・。
       恐らく桑古木さんは、九萬を切る。それを鳴いて、流し満貫は無効だ。」

−だが、ひろゆきの思惑を裏切り、桑古木は一索を切る−

ひろゆき:「(え?一索切り・・・!
       じゃあ、ココちゃんは?」

  ココ:「・・・・・。」

−ココ、真剣な眼差しで桑古木の方を見ている−

ひろゆき:「(微かに一索に反応したみたいだけど、鳴く様子が無い・・・。
       ココちゃんは、桑古木さんが流し満貫を狙っていることを分かってるのか?
       僕はココちゃんに、麻雀の基本的なやり方しか教えていないから細かい役まで詳しく教えたつもりは無いんだが・・・。)」

   天:「・・・・・。」

ひろゆき:「(え?天さん、鳴けないのか?)」

−そして南4局、最後のツモへ−

ひろゆき:「(あとこぼれてくる可能性がある牌は、中か、九萬・・・!
       天さんが鳴けるか否かで、勝負は決まる・・・!どっちだ・・・!?」

 桑古木:「(これで最後・・・!俺の流し満貫和了か、天が鳴くか・・・!
       天、勝負だ!)」

−桑古木、中切り−

 桑古木:「どうだ!?天!」

   天:「・・・・・。」

−一瞬沈黙した天の口から、勝負を決める一言が発せられた・・・!−

   天:「ポン!」

 桑古木:「・・・・・・・。」

−南4局、桑古木流し満貫和了ならず・・・。
 次の局で、天はツモ和了を決め、トップを維持して勝敗は決した・・・。−

ひろゆき:「勝ちましたね、天さん。」

   天:「ああ・・・。」

ひろゆき:「やっぱり、天さんが中を2枚持っていたんですね。あれが無ければ、僕達の負けでしたよ。」

   天:「いや、あれはラスト近くまで2枚持っていたわけじゃない・・・。
      俺が中を2枚揃えたのは、桑古木さんが一索を切った直後のツモだった・・・。」

ひろゆき:「え・・・?」

   天:「あの時、俺の所に中が来なければ俺の負けだった・・・。今回は、ほんの少しだけ俺にツキがあっただけの事だ・・・。」

ひろゆき:「天さん・・・。」

   天:「桑古木さんは強かったよ・・・・。まだまだ、世の中には凄い打ち手がいることを思い知らされるな・・・。」

−その頃の桑古木とココ−

 桑古木:「ごめん、ココ。負けちゃった・・・。」

  ココ:「ううん、ココ全然気にしてないよ。とっても楽しかったから。
      それに今日の少ちゃん、カッコよかったよ。」

 桑古木:「え?ホントに?」

  ココ:「うん♪」

 桑古木:「ところでココ、一つ聞きたいんだけど・・・。」

  ココ:「?」

 桑古木:「俺が最後の方でトリの牌を捨てたときに、ココはそれを二つ持ってなかった?」

  ココ:「うん、持ってたよ。」

 桑古木:「いつものココならポンしたんじゃないかと思うけど、どうしてそれをしなかったんだ?」

  ココ:「あの時少ちゃんが一生懸命頑張ってるのが分かったから、ココがジャマしちゃいけないって思ったからだよ。」

 桑古木:「そうか・・・。」

 春香奈:「二人とも、色々お疲れ様ってトコね・・・。
      それにしても桑古木、調子に乗って啖呵切った割には大したこと無かったわね♪」

 桑古木:「何だとー!」

 春香奈:「ふふふ♪冗談よ。プロ相手に良くやったじゃない・・・桑古木の割には♪」

 桑古木:「ったく・・・ホントに誉めてんのかよ。まあいいさ、馴れ合いの勝負をするよりはずっと楽しかったからな。」

  ココ:「えへへ、少ちゃん♪またココといっしょに“まあじゃん”しようね。」

−試合には負けたものの、清清しい気分で対局を終えた桑古木。
 あの天やひろゆきを驚愕させた今回の対局は、今大会の屈指の名勝負となった。
 ココ&桑古木コンビ、2回戦敗退。天&ひろゆきコンビ、準決勝進出決定−









あとがき

今回はマジで疲れました・・・。
色々迷いましたが、今後の展開のためにココと桑古木は今回脱落という形になってしまったため
桑古木が完全燃焼する所まで行けるように頑張ってみました。

 桑古木:「最初は俺のこといじめてただろーが、作者!
      おまけに、立場は第三視点のくせにしゃしゃり出てきて俺の頭にトンカチぶつけやがって!」

  作者:「この期に及んでつべこべ言うな・・・!
      マジで地下懲役と45組待遇にするぞ・・・!」

 桑古木:「うっ、汚え・・・!」

  ココ:「ねえねえ、“チカチョーエキ”とか“ヨンゴーグミ”って何?」

  作者:「・・・周りにたくさんいる黒服さん達に聞きなさい。」

黒服軍団:「ざわ・・・ざわ・・・」



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