エバセブ闘牌伝 
ー代打ち集団LeMU−

                              鳴きの虎


第7章 信頼



東:武 白川:南 西:健 北:つぐみ

  武:「親は俺からだな。」

  健:「ほな、お手柔らかに・・・。」

東1局 武の親

  健:「(手つき、牌の持ち方からいって二人とも素人やな・・・。
      まあ、倉成はんの方は幾分かやり込んどるようやが・・・。)」

−7巡後−

  武:「リーチ!」

  健:「(典型的な、棒テン即リー(テンパイ後すぐにリーチをかける打ち方)の打ち筋やな。
      あいにく、ワイはまだまとまらん・・・。ここは倉成はんの和了で終わるやろ・・・。)」

  武:「来た!リーチ、ツモ、イーペーコ−、裏ドラ1で親満だ!」
     

つぐみ:「最初からツイてるわね、武。」

  武:「まーな。まだまだ行けるぜ。」

  健:「(・・・・・。)」

東1局 一本場

  武:「よし!リーヅモドラ3!4100オール!」

−その後、武は白川からリーチのみを直撃し、3本場となる。−
  
  健:「(倉成はんは、カンチャン、ペンチャンもお構いなしの和了方やな・・・。
      つまり、相手からの振込みは一切期待しとらん・・・。
      それでも引きが強い・・・。ツモ和了で押し切る打ち方や・・・。
      これ以上、調子に乗らせるわけにはいかんな。」

東1局 三本場

  武:「リーチ!」

−つぐみ、三筒切り−

  健:「ポン!」

つぐみ:「(あっ、武のツモが。)」

−白川、五索切り−

  健:「ロン、タンヤオのみ・・・。1900や。」

  武:「あっ、これで折角のドラ3がおジャンだ。もうちょっとだったのにな。」

  健:「これ以上和了られたらたまらんからな・・・。
     許してくんなはれ、倉成はん。」

つぐみ:「(いよいよ動き出したわね、この男が。
      気を引き締めていかないと。)」

−つぐみ、何気なくツモ山を崩す−

つぐみ:「(やっぱり・・・。武の当たり牌が3つは積まれてる。
      おまけにこの男の和了、数巡でタンピン三色に辿り着く手なのに。
      修羅場をくぐっただけあって、危険を察知する能力が強いわね。)」

東2局:白川の親番

 白川:「ポン!」

−白川、東と發をポン−

つぐみ:「(ダブ東、發で三翻。ドラが絡めば親満の手ね。
      武、気をつけて。)」

−つぐみ、タンヤオ、ピンフのテンパイ−

つぐみ:「(三萬は少し危ないわね・・・。
      でも、こいつ等を相手に後ろ向きな姿勢を見せたら、勝てそうにないわ。)」

−つぐみ、三萬強打−

つぐみ:「(何とか通った・・・。
      武、ここは慎重に行くのよ。)」

−つぐみ、武に目配せする。“気を付けろ”という意思表示である。
 この二人は“通し”を多用した打ち方をするわけではないが、お互いの考えていることを読む位は容易なことである。
 そして、武は次巡、白川の現物を切る−

  健:「あ、それや。」

  武:「ん?」

  健:「ロン!タンヤオ、ドラ3で満貫や。」

  武:「あっちゃ〜、もう少しで俺もテンパイだったんだけどな。」

つぐみ:「(しまった・・・。白川は撒き餌だったのね。
      ドラを持っていたのは健の方か。
      次はこいつの親。このまま行くと流れをもっていかれる。)」

東3局 健の親番

−その後、健が武狙いで連荘を繰り返す。二人とも健のテンパイスピードについていけず、
 和了に辿り着けない−

  武:「早いなあんた・・・。早和了の本場で鍛えられてるだけあるな。」

  健:「まあな。ワイも早和了には少しは自信があるんや。」

つぐみ:「(いいえ・・・。この早和了は関西のルールで鍛えられただけのものじゃない。
      この男には、必ず独自の必勝の原理があるはず。)」

−つぐみ、卓上を見る−

つぐみ:「(やっぱり。必勝の原理が少しは見えてきたわ。
      もし、私の考えが正しければ・・・。)」

−つぐみは自分が三面張にも関わらず和了できなかったこと、そして健がシャボ待ちで和了できたこと、そして卓上の捨て牌の
 様子から健の必勝の原理を見つけ出した。
 健は場の状況が奇数場か偶数場かを読むことでその先端を突っ走っていたのである。
 奇数場、偶数場とは場の状況に奇数、偶数の牌が偏って捨てられる場のことを言い、奇数が多ければ奇数牌で待つと和了しやすく、
 偶数が多ければ偶数牌による待ちが和了りやすいという形になる。
 健はその場の流れを引き入れることで必勝の原理としていたのだ。
 その証拠に、つぐみは三、六、九、の待ちであったにも関わらず健の二、八のシャボ待ちに先を越された。
 偶数場であることを健は読んでいたのだった。−

東3局 5本場

つぐみ:「(場は奇数場の様子を現してる・・・。
      おそらく健は奇数牌で待ちを作るはず。だったら、それらを私が押さえるまで。)」

つぐみ:「ポン!」

−つぐみ、一筒、九筒、中をポン−

  健:「(ちとまずいな・・・。混一色、対々和・・・。
      この姉さん、しかも奇数牌を押さえとる・・・。
      やが、倉成はんはまっすぐ来る打ち筋や。
      ここは鳴いて連荘狙い・・・。)」

−健、白川にサインを出す。その後、白川三索切り−

  健:「あ、それポンや。」

つぐみ:「残念、それ当たりよ。
     ロン、中のみ。」

  健:「う・・・。」  

−卓上を見る健−

  健:「(この姉さん、早くもワイの必勝の原理に気付いたようやな・・・。
      奇数牌を早めに押さえ、混一色狙いに見せかけてワイの親を流しよった・・・。
      麻雀そのものは素人かもしれんが、物事の本質を見抜く目は一流や・・・。
      これはワイも気を引き締めんとな・・・。)」

東4局 つぐみの親番

  健:「(うっ・・・。何やこの圧迫感は・・・。
      この姉さん、とんでもないプレッシャーかけてきよる・・・!
      そういえば、卓に着いたときから隙が全く見当たらなかった・・・。
      下手はイカサマは、通用せんな・・・。)」

−つぐみ、「黒き圧力」発動
 7巡後、索子の混一色、一通ドラ2テンパイ、ドラの中、二索のシャボ待ち−

つぐみ:「(絶好の手でテンパイしたけど、捨て牌から二人とも手は読んでるはず。
      おまけに、ツモ牌からもなかなか出てこないわね。
      多分ドラは、この二人のどちらかが持っている・・・。)」

−つぐみ、一筒ツモ−

つぐみ:「(本来ならすぐにツモ切りするところだけど、このまま膠着状態にいても意味はないわね。
      よし、このドラを起爆剤にして、この場を動かす・・・。)」

−つぐみ、中切り−

 白川:「ポン!」

  健:「(ドラを捨てた・・・?絶好のテンパイを崩すつもりか?
      何か狙っとるな・・・。)」

−つぐみ、次巡三筒ツモの後、中を捨てる−

つぐみ:「(これで、一通のカンチャン待ち。
      でも、まだまだ振り込んでくる可能性は低いわね。あいにく二筒は初牌・・・。
      健は警戒して、絶対に切ってこない。
      でも、私の狙いは白川・・・。ドラ3を手に入れた以上、和了に持っていきたいはず。
      私の当たり牌を、この男から引き出してやる・・・。)」

−つぐみ、白川の捨て牌に目をやる−

つぐみ:「(白川は、六以下の筒子を捨てていない・・・。
      健も幾らか下の筒子をもっているようね。つまり、筒子の下があいつらの和了のカギになっている。
      一筒か三筒、どちらかが私の当たり牌になる。)」

−つぐみ、次巡二索ツモ。一筒か三筒のどちらかを切ることで単騎待ちとなる−

つぐみ:「(白川はあと一つで、テンパイに辿りつくはず。あの手牌の筒子は、多分一筒が二つ。
      形は恐らく、一一三五六辺りね。一筒がもし必要なら、鳴いた場合溢れてくる。)」

−つぐみ、一筒切り−

 白川:「ポン!」

−白川、三筒切り−

つぐみ:「ロン、一通のみ。」

  健:「(アホ・・・!ドラに釣られおって・・・。
      この姉さんが何でわざわざ混一色を崩したか分からんのか・・・。)」

−東4局 一本場

−つぐみ、健に挑発的な視線を向ける−

  健:「(ふん、一丁前にワイに喧嘩売る気か・・・?
      おもろいやんけ、受けて立とうやないか・・・!)」

−3巡後−

  健:「(初っ端から、索子の面子落としやと・・・?)」      

−健、七筒切り−

つぐみ:「ロン、イーペーコー、ドラ1。」

  健:「(さっき捨てた面子があれば、三色にもなるやないか・・・。
      手を崩してワイからの直撃を奪うのが狙いか?)」

−健、つぐみの手牌と捨て牌に目をやる−

  健:「(なるほど・・・。そういうことか・・・。
      この姉さん、絶一門でワイに喧嘩売る気やな・・・。)」

※絶一門
手牌の中の萬子、筒子、索子の内、一色を消して残った二色で手作りをするというもの。
こうなると必然的にテンパイ間際で溢れる牌が残った2色のいずれかということになり、
相手を討取り易いが自分も討取られ易くなる。
ボクシングに例えるなら、通常の麻雀はアウトボクシングであり戦いながらも逃げる足は残しているが
絶一門はこれに対しベタ足のインファイト、足を止めての打ち合いとも言える。

−この後、つぐみは健から直撃を奪い、連荘をものにする。−

−東4局 二本場

つぐみ:「リーチ!」

  健:「(く・・・!勢いが姉さんに傾きかけとる・・・。)」

−つぐみは黒き圧力を発動させていながらも、健の場をコントロールする悪形快速の打ち筋に対して警戒していた。
 そのため序盤に一色系の役を作っていることを悟られると、早和了で親を流される可能性がある。
 読まれ易い一色を作るよりも絶一門で健から直撃を奪い、確実に弱らせることを選択した。
 無論自分が直撃を取られる可能性もあるが、黒き圧力を発動している以上、こちらに分がある。
 自分が完全に流れを掌握したと確信した時に、一色系で止めをさすのが最終的な狙いである。
 2本場の展開は、萬子を切り捨てての絶一門となった。つぐみは奇数場において一、四、七の3面待ちを手に入れており、
 確実に優位に勝負を進めていた。

つぐみ:「ロン!リーチ、一発、タンヤオ、ピンフ・・・。
     裏ドラ1で親満ね。」

−東4局 2本場−

 白川:「ポン!」

−白川、中をポン。これで二副露−

  健:「(まあ当然やな・・・。こないな展開で流れを持っていかれる前に流す方が懸命かもしれん・・・。
      だが、これも姉さんの狙いの範疇のはずや・・・!」

−白川、三筒切り−

つぐみ:「ロン!タンヤオ、ドラ1。」

  健:「(鳴いて流すのも一つの手やが、絶一門を狙うばかりが姉さんのやり方やない・・・。
      今度はこっちの防御が甘くなったところを、単騎待ちでの狙い撃ち・・・。
      こっちが鳴いた分、退路は狭まるし、かといって門前では今のテンパイ速度に追いつけへん・・・。
      どっちに転んでも、姉さんの思うツボや・・・。)」

−この後もつぐみは絶一門の戦いを優位に進めていき、直撃、ツモで点差を開いていく。
 そして東4局は六本場を迎える。
 白川は大きく凹み残り4000点を切り、健も15000程度となる。

  健:「(遂に来よったか・・・。
      姉さんの捨て牌、明らかに一色系や・・・!
      満貫ツモで白川はトビ・・・、ワイもハネ満直撃で終いや・・・。
      ワイが生き残るかどうかは、今回にかかっとるな・・・。」

−つぐみ、筒子の混一色のテンパイ−

つぐみ:「(よし、發、混一色の三、六筒待ちね。
      六筒が来れば、一通も付いて高めのハネ満。
      直撃でもツモでも、十分にこの勝負を終わらせられる・・・。)」

つぐみ:「リーチ!」

  健:「(絶一門が続いたことで、ツモ牌が少々偏っとる・・・。
      ワイは索子の清一色リャンシャンテン・・・。
      やが、こっちのツモだけでは、和了には届かん・・・。
      ならば・・・。)」

−白川、二索切り−

  健:「チーや!」

−白川、九索切り−

  健:「ポン!」

−健、清一色テンパイ。四、七のシャボ待ち−

  健:「(何とかテンパイや・・・。
      やが、ここから和了るのが難しい・・・。
      二人からの出和了が理想やが、それよりも姉さんのツモが先やろな・・・。
      白川にサシコミちゅう手も残されとるが、今はワイへのアシストに徹している以上、
      和了る形にはなってへんやろ・・・。
      無論、白川からのサシコミはハコ割れになるから不可能や・・・。)」

−今の状況においては、白川は筒子を抑えに周り、つぐみの和了を防いでいた。
 だが、状況は限り無く健にとって不利であった。
 白川が四、七索を次々とツモってしまい、手の中に健の和了牌を3枚も引き込んでしまう。
 残り1枚も武の手の中で使われており、実質健のテンパイは死に体となった。
 さらに、健は危険牌の筒子もツモることになり、一度手にした清一色は見る影も無くボロボロになる・・・。−

  健:「(最早、この局ワイも白川も和了り目は無い・・・。
      倉成はんに差し込もうにも、今の状況では絶対に牌を倒すことはあり得ん・・・。
      幾らワイが当たり牌を抑えても、あと一、二巡で姉さんはツモるやろ・・・。
      それだけは何としてでも避けなあかんのや・・・!
      ならば・・・。)」

−健、三筒切り−

つぐみ:「(何ですって?私の当たり牌を切った?
      生憎三筒で、一通は消えるけど仕方無いわね。)」

つぐみ:「ロン!リーチ、發、混一色!」

−つぐみ、裏ドラに手を伸ばす−

つぐみ:「(これで裏が一枚でも付けば、ハネ満で健はハコ割れね。)」

−裏ドラは南・・・。つぐみの手は親満に留まる・・・。−

つぐみ:「(惜しかったわね・・・。裏ドラ1枚で私達の勝ちだったのに。
      でも、この状況であいつが私の当たり牌をわざわざ切るかしら?
      まさか、わざと・・・?)」

−つぐみ、次の自分のツモ牌を見る。(六筒)−

  健:「(やっぱり・・・!
      あいつの狙いは、私のツモ和了の阻止だったのね。
      あの捨て牌の様子から、あいつは一度はテンパイしたはずの清一色を崩してる・・・。
      おまけに、私へのサシコミも王牌に筒子は殆ど無いと確信してのものに違いないわ。
      もし裏ドラが乗ったらその時点であいつの息の根は止まる。
      プロであるあいつが、何の確信も無しにこれほど無謀な真似をするはずが無い。
      あいつから直撃を奪ったとしても、今止めを刺せなかったのは痛いわね。)」

−つぐみのハネ満ツモを食い止めた健だが、遂に残りの点棒は2000点を割る。
 健、白川共にサドンデスの状況に追い込まれたのは確かである。

−東4局 七本場−

つぐみ:「(よし、清一色テンパイ。しかも六面待ち。
      これをツモ和了すれば、勝負は決まる。)」

  健:「(くそっ・・・!
      流れが来てへん、ゴミ手や・・・。
      だが、この局だけは何としても和了らなあかん・・・。)」

−白川、二萬切り−

  健:「ポンや!」

−白川、五筒切り−

  健:「チー!」

−健、鳴きを入れてつぐみに突っ掛かる。
 だが、役はタンヤオのみ、しかもカンチャンの七筒待ちの悪形、
 加えて七筒は場に二枚切れていた。
 片や清一色の六面待ち、片やタンヤオのみのゴミ手・・・。
 端から見れば、健に勝機などある筈も無い・・・!−

  武:「チー!」

−武、つぐみの切った八筒を六七八の形で鳴く。−

つぐみ:「(健のあの表情・・・。
      武が鳴いた牌の中のどれかにロン牌があったみたいね。
      あとは私が6つの索子の内のどれかを引くだけ。
      これで、私達の勝ち・・・、え!?」

−つぐみ、六筒ツモ−

つぐみ:「(何てこと・・・。
      この辺は健の当たり牌の可能性が大きいわね。
      武が八筒で鳴きを入れたってことは、少なくとも八筒はロン牌じゃない。
      つまり、六筒が七筒のどちらかということになる。
      振っても安いけど、それは駄目。
      この場であいつに振り込むことは、今後にとって致命傷になりかねないわ。)」

ーつぐみ、六筒を手に入れ、テンパイを崩す。
 遊びの麻雀なら迷わず六筒を切るだろうが、この場が本当の真剣勝負である以上、そうはいかない。
 つぐみは健から大きく点棒を奪っているが、それは現時点では相手の戦力を下げたとは言い難い。
 つぐみの攻勢はあくまでツキと流れに身を任せてのものであり、決して健の麻雀そのものに
 ダメージを与えたわけではないのである。
 ましてや、今つぐみには最高の形で流れが来ている。
 健に振り込むということは、自分が手にしているツキと流れを手放すことになるのだ。
 そのギャップによる自分へのダメージは計り知れない。
 それらを危惧して、つぐみは手を変えていくことにする。−

つぐみ:「(残り二巡・・・。何とかテンパイを建て直したわ。
      和了が理想だけど、流局で我慢するしかなさそうね。)」

  健:「(白川も結局七筒をツモれなかったか・・・。
      ならば、あとは自力で引くしかないんや・・・!)」

−自分の最後のツモに手を伸ばす健−

  健:「(七筒か、否か・・・!
      これでワイの生き残りは決まる・・・!)」

−そして・・・−

  健:「ツモ!タンのみや!」

つぐみ:「・・・・・・・。」

  武:「これで、東場が終了か。目茶目茶長かったぜ。
     つぐみ、それにしても惜しかったな、
     もう少しで俺たちの勝ちだったのに。」

つぐみ:「ええ・・・。」

−東場で勝負を決するには至らなかったものの、健、白川に大きな差をつけた武とつぐみ。
 だが、つぐみはこれから始まる南場に対して大きな危機感を抱いていた。−

つぐみ:「(点棒なんて、幾らあっても元々自力が違うのだから大した意味はない・・・。
      問題は、私が東場で健を仕留められなかったこと、そして、あいつは自力で生き残ったということ。
      おまけに親番で勝負を長引かせたために、力と運を殆ど使ってしまった気がするわ。
      私は今回の勝負を、東場で終わらせるつもりだったのに・・・。
      麻雀を生業としているあいつ等のことだから、今回のような状況は日常茶飯事のはず。
      そして、この状況からの逆転もまた然り・・・。
      さっきの健のツモ和了で、流れは間違い無くあいつらに傾いていく・・・。)」

−危機感を募らせるつぐみに対して、何処吹く風の武−

  武:「ふあ〜あ、昼間遊んだから流石に疲れちまったぜ。」

南1局 武の親番

  武:「(ドラの東が3枚か。親番だと相変らずツキが来るぜ。
      今も大学時代も同じだな。)」

−数巡後−

  武:「カン!」

−武、ドラの東を暗カン−

つぐみ:「(武は親番で、ツキが来てる。
      それに対して私は、さっきから手が進まない・・・。)」

  武:「リーチ!」

  健:「(早速来たな・・・。
      ここでツモられてもワイの負け・・・。
      だが、今なら阻止することはそう難しくも無い・・・。)」

 白川:「ポン!」

  健:「ポン!」

  健:「それもポンや!」

つぐみ:「(まずい・・・。二人で鳴き合って武のツモを封じてる。
      あのままだと、また安手で流される。
      ツモれなければ、折角テンパイしても意味が無い。
      ここは、武に親を続行させるために点棒を譲り渡しておいた方が良さそうね。)」

−つぐみ、武に視線を向ける−

  武:「(サシコミの合図か。
      わかった、頼むぜつぐみ。)」

つぐみ:「(OK、武)」

  武:「ロン!リーチ、東、ドラ4で親ッパネだ。」

  健:「(ワイのテンパイに気付いてのサシコミか・・・。
      普通ならツモ和了でワイのハコ割れを狙うのが得策やが、
      ワイが鳴いてツモを封じているために
      倉成はんが自力でツモるのは難しいと判断してロン牌を差し込んだんや・・・。
      つまり今、姉さんは自分の衰運を感じ取っているんやな・・・。
      ここからは、倉成はんの援護に向かうはず・・・。
      つまり、姉さんは今ノーガードの状態なんや・・・。)」

−この後、健は武の捨て牌、ツモ牌に注意しながら手を進めていく。−

  武:「ポン!」

−武、南と發をポン−

つぐみ:「(武はもう少しでテンパイね。
      役牌の南と發に、混一色を絡めれば満貫に届く。
      よし、ここは武のテンパイを援護して・・・。)」

−つぐみ、一萬切り−

  健:「ロン!」

つぐみ:「え?」

  健:「七対子、ドラ2。」

つぐみ:「(しまった、私が今は武のアシストに回ってることを読まれてる・・・。)」

−ここからが、つぐみの危惧したとおりの展開になっていった。
 流れを失ったつぐみは次の親のに2度振ってしまう。
 そして白川は健に点棒を譲り渡し、双方の点差が縮まっていく−

  武:「ふああ・・・。
     最初は行けると思ったんだけど、ツキが無いよな。
     俺達が最初に稼いだ分がパーだぜ。」

つぐみ:「ちょっと武、さっきから欠伸ばっかりして不謹慎ね。」

  武:「しょーがねーだろ。
     今日は観光の最中にココがピピを探しに言って迷子になるわ、
     チャミが蛇に襲われてもう少しで喰われそうになるわ、
     俺は腕を噛まれるわで大変だったんだぜ。
     流石に疲れたよ。」

  健:「(蛇に噛まれた後で、ここで平気で麻雀打ってるあんたは何者や・・・?)(汗)」

    (武はキュレイなのでこれ位は平気。
     あとは優春が持っていた特効薬のお陰で治療は完了。
     無論蛇はつぐみが秒殺。死骸は空がRSDレーザーで焼却。)

−武とつぐみの会話の最中、健が捨て牌に手を伸ばす−

つぐみ:「(あっ!)」

−だが、気付いた時には既に遅く、健はすり替え完了。
 そして数巡後−

  健:「ロン!リーチドラ3、裏1で親ッパネ・・・。
     逆転やな。」

  武:「あっちゃ〜、でかいの振っちまった・・・。」

−横から凄まじい殺気を感じる武・・・。
 そして突然、つぐみが席を立つ−

  健:「な、何や姉さん・・・。まだ勝負は途中やぞ。」

つぐみ:「すぐに戻るわ。飲み物買いにいくだけよ。」

 黒服:「あ、すみません・・・。
     飲み物でしたらすぐにお持ちしますが・・・。」

−ギロッ!つぐみに睨まれ、後ろに下がる黒服。−

  武:「(やべ・・・。
      つぐみ、マジで怒ってる?)」

−そのまま放っておくわけにもいかず、つぐみを追いかける武。
 そして自販機へ・・・−

  武:「悪いつぐみ・・・。
     眠気のせいで、つい油断しちまって・・・。
     え?おっとっと・・・。」

−憮然とした様子で缶コーヒーを飲んでいるつぐみ。
 そして、武の所に缶コーヒーを投げてよこす−

つぐみ:「そんなに眠いんなら、それ飲んで目を覚ましたら?
     負けること自体は別に良いけど、あんな小細工をやられて負けるのは
     いくら何でも納得いかないわよ。」

  武:「・・・・・・。」

  健:「流れが奴等に傾きかけている以上、もう私たちに余裕は無いわ。
     さっきのようなスキを見せれば、あいつらは容赦なくイカサマを使ってくる・・・。
     本当に勝ちたければ、集中力を切らないこと。いいわね?」

  武:「ああ、分かった。
     さっきは悪かったな。
     俺も随分、緊張感が欠けていたようだ。」
     
つぐみ:「でも武、コーヒー1本くらいじゃまだ眠気は覚めそうもないわね。
     今から、武の眠気を覚ましてあげる。
     目を閉じて、歯を食いしばってなさい。」

  武:「(げっ・・・!
      つぐみ得意のボディーブローかよ。
      眠気が覚めるどころか、永遠に眠っちまうかも・・・。)」

−目を閉じて、来るべき瞬間に対し覚悟を決める武。
 だが、武に訪れたのは何かが唇に触れる柔らかく暖かい感触と、ほろ苦いコーヒーの味だった・・・。−

  武:「・・・・・・・・。」

つぐみ:「・・・目は覚めた?」

  武:「ああ、最高の眠気覚ましだったぜ。つぐみ。」

つぐみ:「それじゃ行くわよ。武。」

−踵を返して歩いていくつぐみ。その後を追う武・・・−

−南3局 二本場−

つぐみ:「(点差はまだ、逆転できない程のものじゃない・・・。
      武の強運があれば、まだ大物手は来るはず。
      今はチャンスを待つことね。)」

−つぐみは武へのサシコミの準備として、中張牌を集め始める−
 数巡後、武はタンピン系でのリーチをかける−

つぐみ:「(武の待ちは、捨て牌から見てタンピン系のようね・・・。
      待ちは四、七か三、六・・・。
      衰運の私は、今は武をトップに押し上げる方が無難・・・。)」

−つぐみ、武のロン牌と思われる牌を切ろうとする。
 だが、その時武がつぐみに大して顔を向ける・・・。−

つぐみ:「(え?武・・・。
      切るなって言うの?)」

−つぐみはこの南場、身を削って武を援護しようとしていた。
 その懸命さが、武に伝わったのは間違い無い。
 だが、武はつぐみの置かれた苦しい状況を察して、これ以上無理をさせたくは無かった。
 南場に入って、つぐみに少々焦りと緊張が見られている。
 そんな彼女の焦りと緊張を解きほぐすかような笑顔を、武は向けたのだった。
 その笑顔は、どこまでも自信と優しさ、力強さに満ちていた・・・。−

つぐみ:「(そろそろ、あなたの本領発揮というわけね。
      頑張って、武・・・。)」

−つぐみ、現物を切る−
      
  健:「(チッ・・・。
      もう少しで姉さんからロン牌がこぼれそうやったのに・・・。)」

−健もこの時、真ん中の牌で張っていた。
 焦りの見え始めていたつぐみが迂闊に武のロン牌と思しき牌を切れば、
 その瞬間に振り込んでいた。
 サシコミを狙っていた時のつぐみの判断力が、僅かながら鈍っていたのは事実である。
 健は二人のやりとりを、単に危険回避のサインを出したものと判断していたが、
 二人のそれは、そんな単純なものではない。
 お互いを誰よりも信じ、信頼できるからこそ武はつぐみに迫っていた危機を回避できたのだ。
 そして数巡後、武はツモ和了る・・・。−

  武:「ツモ!リーチ、タンヤオ、ドラ2!」

この満貫で、武もトップ戦線に浮上する。
次のオーラス、白川以外の誰かが満貫以上を和了すれば、トップに駆け上がるという状況となる。

南4局 オーラス

健:「(配牌でドラ4・・・。
    勝負をつけるには絶好の手や・・・。
    この手、ツモでもロンでも和了ればワイの勝ちは確定や・・・。」

  健:「カン!」

−健、カンドラ表示牌を捲る。−

  健:「(ドラ8・・・!
      来とる・・・!間違い無く運は来とる・・・。
      あとは卓下ですり替えを・・・。
      白川、頼むで。)」

つぐみ:「(あっ、また・・・。
      くっ、汚い手を・・・!)」

−つぐみは、一瞬健と白川が卓下で牌をすり替えたのに気付いていた。
 だが、白川は左手で健に牌を渡したため、つぐみの位置からでは
 手を掴むことは出来ない。
 事が済んだ後では何を言っても水掛け論になり相手にされないだろう。
 最早、二人にとって状況は最悪の展開を迎えていた・・・。−

健:(生憎役は確定してへんが、待ちは両面で中張牌・・・。
   できればダマで待ちたかったが、ここはリーチをかけても問題無いやろ・・・。)」
        
健:「リーチや!」

−健、二人の捨て牌を見る−

  健:「(生憎二人とも、タンピン系の捨て牌やな・・・。
      テンパイするためには、どうしても中張牌を整理せなあかん。
      そこでこのワイの待ちにぶち当たる・・・。
      さあ、切らんかい。)」

つぐみ:「(またすり替えを使ったようね・・・。
      疲れと衰運で私も集中力が鈍ってきてる。
      今の状況では、もう黒き圧力は使えない・・・。
      ならば、私にも考えがある・・・。)」

−つぐみ、一枚不用牌を手に握りこむ−

つぐみ:「(そちらが汚い麻雀を打つなら、こっちもその気でいかせてもらうわ。
      私の運動神経をもってすれば、すり替えぐらい難しいことじゃない。
      次の私のツモ巡で・・・え?)」

−つぐみが牌を握った右手を卓下に降ろした瞬間、武がその手を握る・・・。
 そして、つぐみに大して微笑を見せる−

つぐみ:「(武・・・・・。)」

  武:「(どうしたんだよつぐみ・・・。お前らしくないな。
      あっちがどんな真似をしようと、俺達は俺達らしく行けばいい。
      ただ、ありのままの自分を貫けばいいんだ。
      そうすれば、道は開けるぜ。)」

−この間、二人は言葉を交わしていたわけではない。
 だが、つぐみは武が自分に向けた微笑から彼の心のメッセージを全て感じ取っていた。−
 そして一方では・・・。−

  空:「ううう・・・。
     羨ましいです、小町さん・・・。
     倉成さんからあんなに優しい微笑を向けていただけるなんて・・・。」

 沙羅:「勝負の最中でも、相変らずラブラブでござるな〜。
     これ以上は、目の毒でござるよ、空殿。」

  空:「・・・心にも毒です・・・。」

−(空と沙羅は既に対局終了)−

つぐみ:「リーチ!」

  健:「(この局面でリーチやと?
      ワイのドラ8の倍満手相手に、大した度胸やな。)」

つぐみ:「(あとは私が引いて、満貫を確定させるだけ・・・。
      健がカンしている以上、表ドラは無くても裏ドラが乗る確立は高いはず。)」

−数巡後、つぐみ、ツモ和了−

つぐみ:「引いた!リーチ、ツモ!」

  健:「(くっ・・・!何て事や・・・!
      だが、この手はリーヅモのみの安手・・・。
      裏ドラさえ乗らなければ・・・。)」

つぐみ:「(ドラが2枚乗れば、私の勝ち・・・。
      お願い、何とか・・・!)」

−だが、結果的に裏ドラは乗らず・・・。
 結局つぐみはトップを確定させるには至らず、オーラスは2本場へと持ち越される・・・−

  健:「(ククク・・・。
      倍満和了は成らなかったが、これで勝負あったな、姉さん・・・。
      最後の最後で、あんたは完全に運に見放された・・・。
      泣いても笑っても、次で終いや・・・。)」

 沙羅:「気になって見にきてみたら、ママ、調子悪そうだね・・・。
     空殿、本当にパパとママは勝てるのかな・・・?」

  空:「・・・現時点では何とも言えませんが、最後の最後でチャンスを逃してしまったのは致命的です。
     あの状況で小町さんが和了できたことだけでも、ある意味奇跡みたいなものですから。
     次も、果たしてチャンスが来るかどうか・・・。」

南4局 オーラス 二本場

−つぐみの配牌に目をやる空−

  空:「(最悪とまで言いませんが、重い配牌ですね・・・。
      どう見ても、自力で和了するのは難しい。
      光明は、中の対子とドラ1枚・・・。
      でも、あれでは逆転に届くかどうか・・・。)」

−健、中切り−

つぐみ:「ポン!」

  健:「(やはり鳴きよったか・・・。
      早和了の特急券、中鳴き・・・。
      これで勝ちに近づいたつもりかもしれんが、大きな間違いや・・・!
      その中はワイがくれてやった、地獄行きの特急券・・・。
      鳴いてラス親の連荘で、逆転に向かう・・・。
      素人の典型的なパターンやな・・・。
      アホが・・・!
      さっきまでの腰の重さが消えとるで・・・。
      そんな逃げ腰の麻雀など、恐るるに足らんわ・・・。)」

つぐみ:「チー!」

−つぐみ、筒子を鳴いて二副露。
 その後萬子を外す−

  健:「(萬子を外しての形作り・・・。
      字牌は大方切れとるから、あとは索子か筒子のどちらかやな・・・。)」

−だが、この後つぐみは裏目を引き続ける・・・。
 落とした一萬、三萬の急所のカンチャンとなる二萬を引き、実質一つの面子を無駄にした形となる。−

  健:「(ククク・・・。思ったとおりや・・・。
      何気なくカンチャンを整理したつもりやろが、すべて裏目に出た・・・。
      この後はひたすら索子か筒子の出を待つはず・・・。
      ほれ・・・!
      これが本命やろ、くれたるわ・・・。)」

−健、三索切り−

つぐみ:「ポン!」

  空:「(だ、駄目です小町さん!
      これはすべて健さんの罠です。
      そんなに鳴いてしまっては、防御が・・・。)」

  健:「(これで三副露、そろそろテンパイか・・・。
      ワイはタンピンイーペーコー、ドラ1のイーシャンテン・・・。
      リーチをかけずとも、ツモで十分や・・・。」
      
−だが、つぐみは順子の材料になる牌をツモ切りし、テンパイした気配が見られてこない・・・。−

  健:「(さっきからツモ切りばかり・・・。
      3つも鳴いて張れないとは、よほどツキに見放されとるんやな・・・。)」

−健、三色テンパイ。次巡、一筒をツモる−

  健:「(こいつはまだ、場に一枚しか切れてへん・・・。
      姉さんがテンパイしてればこいつはかなりの危険牌やが、
      捨て牌には二、三筒が捨てられとる・・・。
      こいつは姉さんの手牌の中に対子として入っている可能性が高い・・・。
      両面待ちで当たる可能性は無いが、シャボ待ちの可能性はある・・・。)」

−健、つぐみの捨て牌に目をやる−

  健:「(待てよ、さっき三索を鳴いた時に切ったのは二索・・・。
      本当は三索をチーできれば理想やったが、対面のワイからではポンしかできん・・・。
      つまり、三索の刻子を作った際に一、二のペンチャンは整理するしかなかったんや・・・。
      姉さんは一索は一枚手牌から切ったし、もう一枚はツモ切っとる・・・。
      索子の下目の対子は持っていないんや・・・。
      ならば、あの手牌の中は筒子の対子はあっても、索子の上目で張っとるか、
      テンパイしてないかのどちらかや・・・。
      ならば、こいつを切れば・・・。)」

−健、一筒切り−

つぐみ:「ポン!」

  健:「(ククク、追い詰めたで・・・。
      何とかテンパイやが、崖っぷちの裸単騎・・・。
      最早逃げ場は無い・・・。
      あとはワイに振るだけや・・・。
      その手、焦らずに行けば順当にツモれたものを・・・。
      ワイに喧嘩売ったこと、後悔せえや・・・!)」

−つぐみ、六索に手をかける−

  空:「(ああ!そ、それは駄目・・・!
      それは健さんの・・・。)」

−つぐみ、六索切り−
      
  健:「姉さん、チョコマカとネズミみたいに逃げ回るのもここまでやな・・・。
     鬼ごっこは終いや・・・。」

  空:「うっ!」

−思わず顔を覆う空・・・−

つぐみ:「武、とうとうやったわね。」

  空:「え?小町さん?」

  健:「何やと・・・!?
     何余裕かましてるか知らんが、これで終いや!
     ロン!タンピンイーペーコー、ドラ1・・・。」

  武:「ああ、ありがとな、つぐみ。
     残念、悪いけどそれ頭ハネだぜ。
     ロン!タンヤオ三色ドラ3、ハネ満!
     俺のトップで終わりだな。」

  健:「な、何やて・・・!?」

−健、驚愕して卓上を見渡す・・・−

  健:「(和了られたら負けのこの土壇場、ワイを誘導してきたんか?
      この姉さん・・・。
      オーラスに持ち込まれた場合、不利になることは承知の上で最初からワイに喧嘩を売ってきたんや・・・!
      鳴いて逃げ切る姿勢を見せれば、それをさせまいと自然に姉さんに意識が行く・・・。
      普段のワイなら、そんなことをせず順当に勝ちを狙ったはず・・・。
      だが、あの姉さんは危険を承知でワイの意識を引き付けていたんや・・・!
      序盤からの絶一門での狙い撃ち・・・。
      そして逃げ腰に見せかけてのあの鳴き・・・!
      すべては、この時の布石やったんや・・・!
      姉さんへの対抗心が、ワイの意識を姉さんへの直撃へと向かわせた・・・。
      その対抗心が、倉成はんの姿を終盤ワイの視界の中から見失わせた・・・。
      いや・・・。
      この結果は、ワイの落ち度に限ったことやない・・・。
      あの二人がどれ程の腕かは知らんが、所詮は素人・・・。
      理屈をこねて勝てる勝負ではなかったはずや・・・。
      最後の逃げ腰に見せかけた姿勢と鳴き麻雀、そして頭ハネ・・・。
      姉さんがあれ程のリスクを背負うことができたのは、倉成はんを信頼しとったからや・・・。
      よほどの信頼が無ければ、あそこで六索を切れるはずがない・・・。
      全く、見せつけてくれるやないか・・・。
      よほど仲がいいんやろな、あの二人・・・。)」

−健、席を立ち上がる−

  健:「今日のところは、これで終いや。
     久しぶりに熱くさせてもらったで、倉成はん・・・。
     それにしても、大した嫁さんもらったもんやな。
     ま、この調子で明日も頑張ることや・・・。」

  武:「ああ、俺も楽しかったぜ。
     機会があれば、また打とうか。」

  健:「望むところや・・・。
     やが、今度は今日のようにはいかんで。
     次はもっと腕を上げてくるさかい、覚悟しといてや。
     ほな、また・・・。」

−健、白川と共にその場を去る−

 沙羅:「パパ、かっこよかったでござるう〜!」

  武:「わわっ!沙羅、お前いつの間に?」

 沙羅:「さっきからずっと後ろで見てたでござるよ。」

  空:「倉成さん、おめでとうございます。
     これで、準決勝進出ですね。」

  武:「おっ、空も来てたのか。
     どうだ?勝ったのか?」

  空:「ええ、何とか私達も準決勝進出です。」

  武:「そうか、おめでとさん。
     あ、そういえばホクトはどうなった?」

  空:「ええ、ホクトさんも準決勝進出だそうです。
     何でも、今回の西側の最高クラスの方に勝利したそうで、大会本部の方も驚いていました。」

  武:「そうか、ホクトも勝ったか。
     ええと、あとは桑古木か。あいつは勝ったのか?」

桑古木:「悪い武・・・。
     俺は2回戦敗退だ・・・。」

  武:「そうか。残念だったな。
     まあ安心しろ。お前のお前の分まできっちり楽しんできてやるぜい。」

桑古木:「・・・仇を取ってくれるとは言ってくれないのか?」

  武:「俺ん家は天に結構世話になってるからな。」

桑古木:「・・・・・・。」

春香奈:「今日はご苦労様。みんなよくやったわね。」

秋香奈:「あ、お母さん。」

春香奈:「いよいよ明日は準決勝ね。
     今日はそろそろ休んだ方がいいわ。
     それにしても倉成、ラストは危なかったわね。
     あそこで負けたら代打ち集団LeMUのリーダーとしての面目に関わるわよ。」

  武:「だから、その怪しげなチーム名はやめろよな・・・。
     それにしても、いつ俺がリーダーに決まったんだよ?」

春香奈:「まあまあ、17年前も一応リーダーみたいなものだったんだからいいじゃない。
     この大会が終わったら、私がオーナーで本格的に組織を作るからそのつもりでね。
     もし今大会で優勝できれば、代打ちの世界であなたの名が知られることになるわよ。
     頑張って、あの赤木を凌ぐ伝説を打ち立ててね♪」

  武:「あのな!」

秋香奈:「お母さん、何だかノリノリね・・・。」

 沙羅:「このままだと、勝手にコードネームとかまで付けられそうな雰囲気でござるな。」

秋香奈:「作者はそこまできちんと展開を考えてるのかしら?」

 作者:「・・・考えてねーよ。」








あとがき

今回は何度も書き直したり、予定が忙しかったりして投稿するのが大幅に遅れてしまいました・・・。
確か、第6章を投稿した時から半年近く経ってますね・・・。
今後は、より時間的に厳しくなりそうなので、マジで頑張らないと・・・。


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