エバセブ闘牌伝 
ー代打ち集団LeMU−

                              鳴きの虎


第9章 空か、天か


2回戦の翌日、午後1時に準決勝に関するルール発表が改めて行われ、
同時に残った4組の対戦カードが決定した。
準決勝は天&ひろゆきVS空・沙羅、武&つぐみVSホクト&秋香奈という形となった。
また、ここで改めて準決勝のルールを説明しておく。

※東西戦準決勝ルール
@満貫縛り
四翻、五翻(特定の条件によっては三翻)の満貫(親で12000点、子で8000点)
以上の和了以外は減点の対象とならない。
それ以下の点数の和了は単に場が回るだけとする。
A時間無制限
箱割れ(点数が無くなること)した者が出た時点でゲームは終了。
箱割れした者を出したチームは負けとなる。
持ち点は全員20000点とする。
B勝ちが積もらない
和了によって減らされた点数は、その後加算されない。
また、和了しても点数は増えることは無い。
※補足
リーチ棒は便宜上出すだけで、減点の対象とはならない。
また、連荘しても積み場(百点棒1本につき300点)による加算も行われない。
ノーテン罰符も発生しない。
ツモで同時に両陣営に箱割れが発生した場合は、残りの点数が多い陣営の勝利となる。

 ホクト:「結構、厳しいルールだね。」

 秋香奈:「まあ、準決勝だし仕方ないわよ。」

 ホクト:「でも僕、まだそんなに役の名前に詳しくないんだ。
      満貫以上か・・・。難しいなあ・・・。」

 秋香奈:「まあ、始まるまで時間はあるし、それまでに役の名前を吟味してみたら?
      あ、そうだ。桑古木とココはもう暇だから、ちょっと練習に付き合ってもらったらいいんじゃない?」

 ホクト:「あ、それもそうだね。」

   空:「残念です・・・。くじ引きの結果で、小町さんとはお互いが勝ち進んで決勝でということになりますね。」

 つぐみ:「まあ、私はいいんだけど・・・。
      結局、私達の再戦は決勝ということね。」

   空:「でも、小町さんはお得ですよね・・・。
      相手はホクトさんですから、かなり気楽じゃないですか?」

 つぐみ:「かもね・・・。」

   空:「それに比べて私は・・・。今回くじ運が悪くて強い人ばかり当たってるような気がします・・・。
      尾神さんといい、天さんといい過去にこの大会でその名を轟かせた人ばかりですし・・・。」

 つぐみ:「私に愚痴られても困るわよ。
      文句があるなら、作者に言うことね。」

  作者:「空さんは名勝負を描くのに欠かせない人だと思うので、ご勘弁を。(笑」

そして午後6時より、準決勝は開始された・・・。
特に「勝ちがつもらない」というルールは中でも異光を放つ・・・!
このルールは、相手の首も締めるが同時に自分の首も締めることとなる・・・!
「勝ちがつもらない」ということは、即ち失点の挽回がきかないということ・・・。
振り込めば、それは即、死へのカウントダウンとなる・・・!
必然的に、今までより厳しい一打一打、命を削る闘牌、抜き身の麻雀・・・!
この麻雀に、希望と安全は皆無・・・!
あるのは恐怖と殺意・・・!ギリギリまで煮詰められ、濃密になった時間・・・!
の、はずなのだが・・・(汗

 ホクト:「やった!ロン!
      ええっと、リーチピンフドラ1、裏ドラは・・・。
      あっちゃ〜、駄目だ・・・。」

   武:「はっはっは。甘いぜホクト。
      そこは焦らずに、せめてタンヤオを付けるべきだったな。」

 ホクト:「う〜ん、裏ドラが乗ると思ってたのに・・・。」

 秋香奈:「ところで、今回の勝負、私達の間で何か賭けてやらない?」

   武:「それは面白そうだな。で、何を賭けるんだ?金か?」

 ホクト:「お父さん、それは基本的には違法だよ。」

   武:「じゃあこうするか。
      お前らが勝ったら、今度お前らがデートするとき、こづかいやるよ。
      俺が勝ったら、ホクトと優で一週間晩飯の当番な。」
 
 ホクト:「ホント?お父さん!」

 秋香奈:「そんな条件でいいの?こっちは全然懐も何も痛みそうにないし、
      そっちばかり損するような条件で、ちょっと気が引けるんだけど・・・。」

   武:「実は結構、そうでもないぜ。
      休み明けからはちょっと俺もつぐみも忙しくなりそうだからな。
      だから、誰かが夕飯作っといてくれると助かるんだよ。」

 秋香奈:「ふうん・・・。」

 つぐみ:「ちょっと武、夕飯はともかくとして、そんな約束していいの?
      あなたの小遣い、そんなに余裕があるわけじゃないんでしょ?」

   武:「心配すんなって。昼飯代削ってでもどうにかしてやるぜい。」

 つぐみ:「(もう・・・。見栄張っちゃって・・・。
       武が負けた時は、せめて半額は出してあげようかしら。)」

−一方、来賓席・・・−
  原田:「こ、こいつら・・・!
      俺の仕切りの場で暢気に家族麻雀やりやがって・・・!」

  僧我:「・・・・・(苦笑)」

  黒服:「ま、まずい・・・。
      原田さん、顔には出さねど、相当イライラしてるぞ・・・!」

  黒服:「ああ・・・。
      こりゃ近づかない方が身の為だな・・・。
      触らぬ鬼に、祟り無しだ・・・。」

−ざわ・・・ざわ・・・俄かにざわめく黒服達・・・。そして一方、天の卓では・・・−

   天:「何だ?卓から変な音がするな・・・。」

ひろゆき:「・・・牌詰まりじゃないですか?」

   空:「多分そうですね。早く直さないと。」

  黒服:「すみません・・・。すぐに直します。
      それまで、少々お待ちください・・・。」

   天:「分かった。頼むぜ。」

  原田:「(チッ・・・。さっきからイラつく事ばかりありやがる・・・。)」

−全自動卓が直るまで待機中の4人−

   天:「卓が直らないんじゃ、どうしようもないな。
      お二人さん、何なら手積みでやらないか?」

   空:「それは別に構いませんが・・・。沙羅ちゃんはどうですか?」

  沙羅:「手積みそのものは構わないけど、一つ忠告しておくよ♪」

   天:「何だい?」

  沙羅:「倉成一家に、電気を消しての天和九蓮宝塔は通用しないでござる♪
      何より拙者、忍者ゆえ夜目が利くので♪」

   天:「(ギクッ!)」

  沙羅:「その顔、図星のようでござるな♪」

   天:「ハハハ・・・。俺の負けだね。」

−ここからちょっと番外編。
 天の「天和九蓮宝塔講座」をお送りします−

  沙羅:「ところで、天の天和九蓮宝塔って、どうやってやるの?」

   天:「ああ、あれね。あれはツバメ返しといって、昔からある牌すり替えの大技だよ。」

  沙羅:「どんな仕組みなの?」

   天:「麻雀はまず最初に、手で積むときは17枚ずつ2段にして積むだろ?
      今はそれを全自動卓でやってるけどな。
      自分が親番のとき、下の段の14枚を、和了できる形にして積んでおき、
      牌を配り終わった後、目の前の牌の山を前に出すふりをして、素早く14枚すり替えるんだ。
      別に九蓮宝塔の形にしなくでもいいんだけど、俺は必ず九蓮宝塔の形にしておくのが流儀だ。」

  沙羅:「でも、そんなことしたらズルしたのがバレバレじゃないの?」

   天:「まあね・・・。」

  沙羅:「あ、ってことは、天のその顔の傷って・・・。」

   天:「その通り。ズルした後はキツイお仕置きが待ってるんだよ・・・。」

  沙羅:「なんでわざわざそんなことするの?」

   天:「まあ、俺って沙羅ちゃんと違ってバカだからね・・・。」

  沙羅:「う〜ん、それはよく分かんないな。
      だけど、空さんが相手の場合はズルしても平気だよ♪」

   天:「そりゃそうだな、茜ヶ崎さんは優しそうだもんな。
      殴るような乱暴なことはしないだろうから安心だ。」

  沙羅:「ふっふっふ。甘いでござる。
      空殿のお仕置きは、一撃で影も形も残らないゆえ、痛みを感じる暇も無いのでござるよ♪」

   天:「・・・・?」

  作者:「(こればっかりは、E17のメンバーしか分からんだろうな・・・。)」

  沙羅:「あと、九蓮宝塔ってどんな形の役だったっけ?」

   天:「ああ、あれは萬子、筒子、索子のどれか一種類だけで、一を3枚、九を3枚、そしてその間にニ〜八の
      牌を一枚ずつそろえるという役で、麻雀の役の中で最も高い役満の手だよ。(親で48000点 子で32000点)
      数ある役満の中でも最も難しいものの一つで、“これを和了すると死んでしまう”なんていわれてる位だ。」

  沙羅:「なるほど、綺麗な形の役だね。こんなの和了できたらカッコイイよね。
      インチキ無しだったらの話だけど。」

   天:「可愛い顔して、結構言うことがキツイね・・・。」

 春香奈:「ちょっとちょっと、いつまで雑談してるのよ。
      もう直ったわよ。そろそろ始めなさい。」

  沙羅:「はーい。」

ひろゆき:「ちょっと天さん、沙羅ちゃんに余計な事教えないでくださいよ。
      それからすぐに、3巻以降の顔と雰囲気に戻ってください。
      これから本番なんですから。」

   天:「ああ、分かった・・・。」

 春香奈:「ところで作者、一言ツッコミだけど・・・。
     「ツバメ返し」は某少年向け雑誌の麻雀漫画で結構知れ渡ってるから、
      今更説明する必要も無かったんじゃない?」

  作者:「そうかもしれない・・・。(汗」

−これにて、天の「天和九蓮宝塔講座」は終了。
 ただし、決して実戦では真似しないよーに。それ以前に無理か。(BY作者)−

東:空 南:沙羅 西:天 北:ひろゆき

   空:「(配牌はまずまず・・・。
       高い手は望めそうにないですが、ここはリーチと裏ドラで満貫手に仕上げるのがベターですね。)」

−空、9巡後リーチ−

   空:「(対面は天さんですね。まあ、あまり効果は期待できませんが、ここはとりあえず・・・。)

−空、「天使の微笑」発動−

   空:「(・・・ニコッ)」

   天:「うっ・・・。」

−天、六萬切り−

   空:「え?一発ですか?ロン、リーチ一発、タンヤオ。
      裏ドラは・・・、無しですね。」

ひろゆき:「天さん!何ボーっとしてるんですか?
      それ、茜ヶ崎さんの本命牌ですよ!」

   天:「え?あ、悪い悪い・・・。
      つい、茜ヶ崎さんの笑顔に見とれちまってな。」

ひろゆき:「もう本番なんですよ!だからって、そんな牌を一発で切ってどうするんですか!
      裏ドラがもし乗っていたら致命傷だったんですよ!」

   天:「まあまあ、ひろ、そう熱くなるなって・・・。」

   空:「(予想に反して、効果がありますね。(汗
       これなら、今の内に・・・。)」

−その後の展開で、天が空の天使の微笑に翻弄されて一発で振り込む展開が続く・・・−

   空:「ロン!リーチ、一発、ピンフ、裏ドラは・・・。ダメでした。」

   空:「ロン!リーチ、一発、ドラ1・・・。またダメです。」

   空:「ロン!リーチ、一発、中・・・。ありません。」

ひろゆき:「・・・・・・。(呆れてものも言えない)」

  沙羅:「(これはこれで、何だか楽しいかも♪)」

−来賓席にて−

  原田:「(天の奴・・・!俺を愚弄してるのか・・・!?
       東の総大将ともあろう者が、女の色香に惑わされやがって・・・!
       天・・・!もしここで負けたら明日淀川に沈んでもらうからな・・・!)」

−懐のドスの柄を握り締める原田・・・−

  赤木:「・・・・・・・。」

   空:「(とりあえず、流れは掌握しましたね。
       ここは、確実な満貫手を作らないと。)」

−その後安手による流し、流局で場が進む。空、4巡後タンヤオ、ドラ3の満貫手−

   空:「(今は、天さんの親番ですから、ツモでも相手方のダメージのほうが大きい。
       ここは、先手を打って・・・。)」

   天:「それだ。」

   空:「え?」

   天:「ロン、中のみ。失点は無しだな。」

   空:「残念ですね。一筒の単騎待ちでなければ混一色で満貫手でしたのに。
      まあ、私もチャンスを逃したわけですが。」

−空、何気なく山を崩す。−

   空:「(次の私のツモ巡で、私の和了だった・・・。
       私はリーチをかけていないことに加え、まだ4巡目なのだから、普通の人ならまだ手作りの最中のはず。
       なのに、絶好の手を蹴って、私のリーチ無しの満貫手を察知してチャンスの芽を摘んだ。
       さすがはかつての東の総大将・・・。長期戦は厳しいですね。)」

−東4局の配牌後に空、沙羅に視線を送る−

  沙羅:「(あのサインは・・・。
       空さん、もうあの技を使うつもりなの?)」

   空:「(この技は対小町さん用の切り札でしたが・・・。 
       ここで負けては元も子もありません。
       短期決戦でいきます。)」

−空、6巡後リーチ−

   空:「原田さん、すみません。
      念のために確認しますが、今回オープンリーチは認められていますか?」

  原田:「あ、ああ・・・。一応、認めてはいる・・・。
      無論、純粋な二翻役としてだ・・・。
      振り込んだとしても、役満払いというわけではない・・・。」

※オープンリーチ
リーチをかける際に、自分の牌を倒して待ちを公開する形のリーチ。
ローカルルールでは、オープンリーチの際には手牌を全部倒す、またはオープンリーチに故意に
当たり牌を捨てると役満払いというルールもあるが、現在は自分の当たり牌を知らせるための部分を倒すだけに留める。
または純粋に二翻役として扱い、役満払いという扱いはしないというルールが多い。

   空:「そうですか・・・。では、オープンです。」

−空、北単騎待ち−

   天:「(な・・・!
       多面待ちならまだしも、北の単騎待ち?
       この手、七対子か?)」

−天、空の手牌に目をやる−

   天:「(いや・・・。
       この捨て牌は単純に早い形の安手のリーチだ・・・。
       七対子は考えにくい・・・。
       それに、七対子は普通にリーチをかけてツモり、裏ドラが2枚でハネ満に届く・・・。
       わざわざオープンにする必要など無い・・・。
       だが・・・。それにしても不自然だ。
       北の単騎待ちなら、この序盤なら普通にリーチをかけても北は整理される牌として俺たちから早めに切り出され、
       最悪一発で振り込む可能性すらある・・・。
       裏ドラが上手くからめば、満貫に届く・・・。
       茜ヶ崎さん・・・一体何が狙いなんだ?」

−天、順当に牌を整理していき、タンピン三色をテンパイ−

   天:「(下手に北をツモって、振り込んだらつまらんからな。
       ここは、ダマで出和了を待つか・・・。)」

−だが、テンパイして数巡後・・・−

   天:「(うっ・・・!
       早速来たか・・・。北が・・・!
       折角綺麗に作ったタンピン三色に、不純物が混じってしまった・・・。!
       これでこの手、単騎待ちに作りかえなきゃならない・・・。
       だが、タンヤオもピンフもこれで失う・・・!
       三色だけでは、リーチ無しで満貫に届かない・・・!)」

−天は当然テンパイを崩し、一歩後退
 そしてその数巡後−

   空:「ツモ!オープンリーチ、ツモ、裏ドラ1で満貫です。」

   天:18000
ひろゆき:16000
   空:20000
  沙羅:18000

   天:「(ツモられたか・・・。しかし、随分と運否天賦のやり方だな。
       あれが序盤だからいいものの、もし俺達の手配に全部北が来ていたら、
       和了り目無しで、目も当てられないはず・・・。
       あのオープンリーチには、必ず勝算があるはずだ。)」

   空:「オープンです。」

   天:「(またか・・・。
       今度は白と二索のシャボ待ち・・・。
       迂闊にリーチはかけられない・・・。
       だが、満貫を作るのが命題の今回、リーチ無しでは高めの手作りをしなくちゃならない・・・。
       とてもそんな時間は・・・。」

−ひろゆき、三萬切り−

  沙羅:「ロン!中、イーペーコー、ドラ2で満貫。」

ひろゆき:「(うっ・・・。沙羅ちゃんはダマテンだったのか。
       まずい・・・。茜ヶ崎さんのオープンに気を取られてた・・・。」

   天:18000
ひろゆき: 8000
   空:20000
  沙羅:18000

−沙羅の和了の直後、天はひろゆきの手牌に手を伸ばす−

ひろゆき:「え?天さん?」

   天:「(これは・・・。)」

−その後数局、天とひろゆきは安手で場を流し、何とか凌ぐ−

   天:「(茜ヶ崎さんのオープンリーチは、あれ以降影を潜めている・・・。
       だが、今回の闘牌において、あれは茜ヶ崎さんの必勝の切り札のはずだ・・・。
       勝負時には、必ずあれを用いてくるはず・・・!
       あの本質を見抜かない限り、俺に勝機は無い・・・!」

−天、今までに得られた情報から空のオープンリーチを推察する・・・−

   天:「(茜ヶ崎さんのオープンリーチは、必ず字牌が絡んでいる・・・。
       だが、同じオープンなら、待ちが多い方がツモった場合満貫に届き易い・・・。
       なのに、必ず字牌を絡めているのは必ず理由がある・・・!
       まず一つ・・・!
       字牌を用いる理由は、俺達の手を凍りつかせることにある・・・!
       さっきの俺の三色のテンパイの時がそうだった・・・。
       俺が北をツモった時、あれでタンヤオとピンフを失い、テンパイを崩した・・・!
       また、ひろゆきもあのときタンピン系のテンパイを狙っていた矢先、手持ちの白を切りきれずに手が凍りつき、
       テンパイへの道を足止めされていた・・・!
       しかし、幾ら手牌を凍りつかせるためとはいえ、何の勝算も無しに混一色、チャンタ以外役の絡みにくい字牌で
       オープンリーチをかけるとは考えにくい・・・。
       俺達のテンパイを封じ、尚且つリーチをかけにくくする・・・!
       こいつは厄介だな・・・。)」
       
−天は戦略を見極めるため、静かに場を静観する・・・−

   天:「(あのオープンリーチ・・・。あの技を仕掛けるには何よりまず最初にテンパイすることが重要となる・・・。
       何度か見て分かっていたが、茜ヶ崎さんの打ち筋は大物手を作るよりも、テンパイまで最短で行くことを
       重視している・・・。
       リーチ、一発、裏ドラが絡めば手は安くとも、満貫以上に化ける可能性は常にあるからな・・・。
       まず、先手を取ることが第1の戦略・・・。
       そして、第2の戦略において重要なのは、何よりも“情報”だ・・・。
       彼女がオープンリーチを仕掛けた時、俺達の手の中に待ちの牌があれば俺達はそれを切りきれず、
       テンパイへの道は閉ざされ、身動きできずに死に至る・・・!
       かといって、迂闊にリーチを仕掛ければ、茜ヶ崎さんの当たり牌をツモっても捨てるしかなく、振り込む・・・。
       だが、もし俺達が混一色、チャンタ、七対子で手が進んだらどうする・・・?
       逆に当たり牌を握りつぶされて、自分が逆に振り込むことになりかねない・・・。
       オープンリーチを仕掛けるためには、まず自分がツモれるだけの牌が山に残っているか、
       または俺達の手の中で浮いている、それらの条件が必要になる・・・。
       そのために、茜ヶ崎さんはどこからか、“情報”を得ているはずだ・・・。)」

−対局前の空と沙羅の作戦会議−

   空:「今回はかなり厳しい対局になりそうですので、私達の特殊能力を最大限に
      生かした形で勝ちに行きたいと思います。
      そこで、沙羅ちゃんに頼みたいことがあります。」

  沙羅:「透視能力で、天さんかひろゆきさんの手配を見通して、それをサインで送ればいいのかな?」

   空:「それも作戦の一環ですが・・・。
      今回、満貫以上が減点の対象ということですので、オープンリーチを使おうかと思ってます。
      私の場合はテンパイは早いですが、生憎その分安くなりがちですので。
      そこで、天さんとひろゆきさんの足止めも兼ねて、字牌を絡めたオープンリーチを仕掛けます。
      私がリーチをかける前に、対面の方と沙羅ちゃんの手牌の中に残っている字牌を教えてください。
      受け取る情報次第で、オープンリーチを仕掛けるかどうかを決めますので。」

  沙羅:「なるほど、字牌を応用して足止めと攻撃の両方に行くというわけだね。」

   空:「ただし、透視できない対面以外のもう一人の方にも十分注意してください。
      それから、今回は沙羅ちゃんは極力リーチをかけないで手作りをお願いします。
      もし不利な状況に陥った場合は、安い手で場を流していただければと思います。」     
      
−天、沙羅の方に目をやる−

   天:「(沙羅ちゃんは、さっきのひろゆきへの直撃から分かるように、茜ヶ崎さんのオープンリーチに振り込まないよう、
       ダマでテンパイを狙っている・・・。そんなことは見ていれば分かるが・・・。
       やはり、沙羅ちゃんが情報の出所であるのは間違い無い・・・。
       オープンリーチをかける前に、まずは沙羅ちゃんの手の中で当たり牌が有るか否かを知らせてもらっているはずだ・・・。
       もしあるとすれば、沙羅ちゃんの手が凍りつく危険性を鑑みてオープンはしないだろうし、
       無いとすればツモる可能性を考慮してオープンを仕掛ける・・・。
       だが、ここからが少し不自然だが・・・。
       沙羅ちゃんの手牌の中の様子が分かっても、あとは俺達の手の中で茜ヶ崎さんの当たり牌が使われているか否か、
       ここまでは完璧に把握できないはず・・・。
       卓上の様子を見て観察するのは当たり前だが、これは100%の確証にはなり得ない・・・。
       茜ヶ崎さんのオープンリーチは、沙羅ちゃんの手に当たり牌が無いこと、俺達の手牌で待ちの牌が浮いている、
       もしくは入っていないことが仕掛ける為の条件だ・・・。
       そして第1の目的はツモ和了、第2の目的は俺たちの手牌を仮死の状態に追い込むこと、リーチを封じること・・・。
       例え実らなくても、俺達が足止め食っている間に沙羅ちゃんが満貫以上の手作りが出来ればそれでもいい・・・。
       沙羅ちゃんの手作りをする時間を与えること、これが第3の目的か・・・。
       くそっ・・・!綺麗な顔して、十重二十重の戦略を仕掛けてきやがる・・・!」

   空:「リーチ、オープンです。」

   天:「(またかよ・・・。
       今度は九筒、北待ちか・・・。いずれにせよ切りにくい牌だ・・・。
       だが、この場は対子場の様相を示している・・・。
       俺の手には対子が5つ・・・。
       こいつを生かして、狙うは七対子だな・・・。」

−天、七対子テンパイ−

   天:「(ドラ2枚で七対子ドラ2、ツモで満貫だ・・・。
       これ以上調子に乗らせるわけにはいかない、ここは仕掛ける・・・!」

   天:「リーチだ!」

−数巡後−

ひろゆき:「リーチ!」

   天:「(何とかひろもリーチか・・・。
       ここは危険を覚悟で、捲り合いの勝負だ・・・!」

−数巡後、沙羅が天の当たり牌を切る−

   天:「・・・?
      ロン!リーチ、七対子、ドラ2!」

  沙羅:「え?うわっちゃ〜、やっちゃった・・・。
      あーあ、もう少しで四暗子だったのに。」

   天:18000
ひろゆき:8000
   空:20000
  沙羅:10000

−そのとき、沙羅の手牌に目を奪われる天・・・−

   天:「(何だと・・・?
       やはり、これは偶然ではないのか・・・?
       沙羅ちゃんの手には、ひろゆきの当たり牌のほとんどが握りつぶされている・・・。
       それに、あの捨て牌・・・。
       明らかにひろのテンパイを意識して回し打ちに転じたものだ・・・。
       しかし、それにしても出来すぎている・・・!
       さっきも確かそうだった・・・。
       危険牌を意識して、降り打ちに転じるならまだしも、これはあまりにも不自然だ・・・!
       沙羅ちゃんは、ひろの手牌を読んでるどころの話じゃない・・・。
       完全にひろの手牌を見通してるんだ・・・!
       この手、ガン牌か・・・?」

−この局の後、少し休憩に入る・・・−

   天:「ひろ、気付いたか・・・?」

ひろゆき:「ええ・・・。何となくですが・・・。
      多分そうだと思います。」

   天:「少しばかり小耳に挟んだんだが、2回戦の時、尾神は手牌を腕で隠していたと聞いた。
      それに、1回戦の時もそうだったらしいが、敗れた西の打ち手は沙羅ちゃんの対面の奴が、
      ほとんど当たり牌を握りつぶされていて、ほとんど和了できなかったらしい・・・。
      俺は超能力じみた話は大嫌いだが、やはりこれは、偶然じゃない・・・。
      多分沙羅ちゃんは、お前の手牌を見透かしているんだ。」

ひろゆき:「そんな・・・。
      麻雀の世界で手牌が透視できたりしたら、ほぼ無敵じゃないですか。」

   天:「だが、問題なのは沙羅ちゃんがしていることが超能力かガン牌かということじゃない・・・。
      沙羅ちゃんがお前の手牌を見通していること、この現実だけだ・・・。
      気付いていたかもしれないが、やはり沙羅ちゃんはお前の手牌にいつも視線がいっている・・・。
      常に対面のお前を意識しているということだ・・・。
      だが、生憎俺の手牌までは見通せていないらしい・・・。
      俺に振り込んだのが、その証拠だ・・・。
      沙羅ちゃんが俺の手牌を見通しているということで、大分茜ヶ崎さんのオープンリーチの
      戦略も看破できてきたぞ・・・。」

ひろゆき:「え?」

   天:「茜ヶ崎さんがオープンを仕掛けるに当たって、まず沙羅ちゃんにサインで送ってもらっている情報は、
      沙羅ちゃんの手の中の字牌の種類だ・・・。
      それから透視しているお前の手の中の字牌、その二つだ・・・。
      お前と沙羅ちゃんの手牌の中に無ければツモれる可能性はあるし、
      あれば少なくともお前の足止めは出来る・・・。
      河の字牌の数と、俺を除く自分と2人の手牌の中の字牌の状況に応じて、オープンリーチを使う状況を見極めているようだ。
      ひろ、お前は少しの間、守備重視に回った方がいいな。
      配牌が悪ければ、ベタオリしながらヤオチュー牌を集めて茜ヶ崎さんがあのオープンリーチに行くのを防ぐようにしてくれ。
      和了へは、俺が向かうことにする。」

ひろゆき:「分かりました。」

−その頃の空と沙羅−

  沙羅:「多分、私達の作戦はばれちゃったね。
      空さん、どうする?」

   空:「大丈夫ですよ。
      戦略が看破されることは、予想の範囲内ですから。
      それに、もう一つの戦略は動き始めてます。」

  沙羅:「え?」

   空:「とにかく、これでもう沙羅ちゃんが必要以上に透視やサインにこだわる必要はないですよ。
      あとは、流れに身を任せるだけです。」

  沙羅:「でもごめんね、空さん。あそこで私が振り込まなければ、磐石だったのに。」

   空:「仕方ないですよ。あの時の天さんの手は七対子の単騎待ち、しかも地獄待ちでしたから。
      お気になさらないで、頑張って下さいね。」

−対局再開−

   天:「(チッ・・・。テンパイだが、安めのピンフのみか・・・。
       満貫に届かせるには、あくまでリーチをかけて裏ドラ頼み・・・。
       ここは、流すか・・・。)」

   空:「リーチです。」

   天:「(むっ・・・。オープンか?)」

   空:「・・・・・。」

   天:「(オープンはしない・・・。普通のリーチ・・・。
       多分、ヤオチュー牌をひろに抑えられているのを知って、オープンは無しか・・・。)」

−天、その時あることに気付く・・・−

   天:「(し、しまった・・・!何てミスを・・・。
       何でこんな馬鹿げた指示をしてしまったんだ・・・!)」

−全員の点棒の状況を考察する天・・・−

   天:「(今は沙羅ちゃんが親とはいえ、もし満貫をツモられたら、残りの点棒のことを考えれば、
       不利になるのは俺たちだ・・・!
       互いの点棒の状況をダムに満ちている水だと考えるなら、衝撃を受けて、自軍のダムの水を幾らか
       流すことになっても構わないということ・・・。
       つまり流れる量が同じなら、最終的に勝つのは水位が上のダムか・・・。
       さっき沙羅ちゃんが振り込んだのはミス以外の何でもないが、ひろは大きくへこんで、もう一回直撃されたら終い・・・!
       俺達があのオープンリーチを意識して何らかの手を打ってくること・・・。
       そのこと自体も想定していたんだ・・・。)

−空が序盤に用いたオープンリーチは、多くの戦略が含まれていた・・・。早くとも安手のテンパイを満貫に仕上げるために二翻役の
 オープンリーチを使うのはもちろんだが、空の狙いはまず何より先に早い和了で自分たちの有利な状況を築くことだったのである。
 あまりにも不自然なやり方ではあるが、それが天たちにオープンリーチに何らかの戦略があるのではないかと意識させた・・・。
 天が見抜いた戦略は全て的を射てはいるが、それをさせまいとひろゆきにヤオチュー牌を抱え込ませたのは大きな痛手となった。
 互いの点棒の合計の差が4000点とはいえ、ツモられれば特にひろゆきに対する打撃は大きく、あと2回も満貫をツモられたら
 箱割れが確定する。加えて、空のリーチは捨て牌から見て満貫に届きそうな勢いを見せている。何とかこの場を流したい天だが、
 天の待ちは真ん中の牌であり、ヤオチュー牌とその周辺の牌を抱え込んでしまったひろゆきには差し込みができない・・・。
 空のあまりに不自然な打ち筋に“戦略”を意識してしまった時点で既に天達は術中に嵌められていたのだ。−

   天:「(よくよく考えれば、あんな馬鹿げたやり方が、必勝法でなどあるはずがねえっ・・・!
       序盤から俺達はあまり配牌に恵まれていないこともあったが・・・。
       とにかく今回の準決勝において大事なのは、茜ヶ崎さんのように、早めに満貫を叩き込んで流れを掌握することだったんだ・・・。
       くそっ・・・!嫌気がさすぜ、自分のヘボさ加減に・・・!」

   空:「カン!」

   天:「(うっ・・・!これで満貫手は確実か・・・。ここで和了られたら、終いだ・・・!
       何とかここを引いてこないと・・・!)」

−2巡後、天、ピンフのみで和了−

   空:「(ふう・・・。流石は東陣営の総大将を勤めただけのことはあります。
       この土壇場で、強運も筋金入りですね。)」

   天:「(何とか凌いだ・・・。だが、こんなことで、果たして俺達に流れが来るかどうか・・・!)」

−天、配牌後−

   天:「(やはり・・・。一つ凌いだだけで、何一つ状況は変わっちゃいねえ・・・。
       配牌は悪い・・・。四シャンテン・・・。
       満貫以前に、和了すら難しい・・・。)」

−空の5巡後の捨て牌からテンパイ気配が濃厚となってくる・・・−

   天:「(いよいよとどめを刺しに来やがったか・・・。
       捨て牌から見て、上側の三色手が濃厚・・・。
       5678辺りが捨て牌に無い・・・。
       裏ドラ次第でハネ満、倍満にも届く・・・。
       くそっ・・・!
       流そうにも、タンヤオ、役牌すら可能性が無い・・・。)」

−天、ひろゆきにサインを送る−
   
   天:「(ひろ、そちらはどうだ?)」

ひろゆき:「(僕は索子の染め手の気配です・・・。
       茜ヶ崎さんの危険牌と思しき牌を押さえているうちに、2シャンテンまで来てます。)」

−ひろゆき、白を捨てる−

  沙羅:「ポン!」

−ひろゆき、次巡發を捨てる−

  沙羅:「ポン!」

ひろゆき:「(うっ・・・!)」

   天:「(ひろが字牌を整理していったら、沙羅ちゃんに二つとも鳴かれたか・・・!
       しかも中は初牌・・・!
       どう見ても、沙羅ちゃんの場合は大三元が濃厚じゃねえか・・・!
       前門の虎、後門の狼とは正にこのことだぜ・・・!」

  沙羅:「(天さん・・・。敵は空さんだけじゃないよ。
       私の手牌には最初から三元牌の対子が来てるんだ。
       例え空さんがツモれなくても、私がこの手を完成させて、和了すればそれで勝負は決まる。
       残念だけど、もう私達の絶対的な優位は動かないよ。)」
       
   天:「(だが、俺が警戒すべきは沙羅ちゃんの大三元よりも、茜ヶ崎さんの方か・・・。
       もう少しでリーチをかけるはず・・・。
       放っておけば、リーチをかけて少なくとも4巡以内にはツモ和了するだろう・・・。
       何とか、茜ヶ崎さんのツモ和了だけは阻止しなければ・・・。)」

−天、ひろゆきにサインを送る−

   天:「(いいかひろ・・・。
       お前の手牌は沙羅ちゃんに筒抜けだろう・・・。
       だが、中以外はツモっても強気で真っ直ぐ行け・・・!
       その代わり、リーチはかけるな・・・。)」

ひろゆき:「(はい・・・。)」

−空、8巡後−

   空:「リーチです。」

   天:「ポン!」

−天、空の捨て牌をポン−

   天:「(よし・・・。何とか一発ツモは回避・・・。
       で、次は何をツモる・・・?)」

−天、八筒ツモ−

   天:「(危なかった・・・。
       ここで狙って鳴けなかったら、一発ツモでほぼ勝負は終いだった・・・。
       だが、ここからが要注意だ・・・。
       このゴミ手で下手にテンパイを狙うのは危険・・・。
       ここから先、俺の手牌に入ってくる牌は要注意だ・・・!)」

−天、次巡五筒ツモ−

   天:「(これはどう見ても、茜ヶ崎さんの当たり牌だな・・・。
       何とかこいつらを押さえつつ、この局を凌ぐ・・・。)」

−数巡後、天、四枚目の八筒をツモ−

   天:「カン!」

   空:「・・・・・・。」

   天:「(よし・・・!茜ヶ崎さんの三色の片鱗、八筒は俺が封じた・・・!
       さて、つぎはひろの方だな・・・。)」

−天、ひろゆきにサインを送る−

ひろゆき:「(何とか、清一色ドラ3ののイーシャンテンです。
       今は僕が親ですから、ツモれば倍満には確実に届きます。)」

   天:「(分かった・・・。だが、今はテンパイしてもリーチに行くのは早急・・・。
       何とか俺が、道を開く・・・。
       あとはあの二つの牌が、この局の命運を握るはず・・・!
       行け・・・!ツモる指先と卓上の気配に集中しろ・・・!
       俺があの牌の在り処を感じられるかどうかで、生き残りは決まる・・・!)」

−天、五筒ツモ−

   天:「(来た!よし、ここで・・・!)」

   天:「カン!」

  沙羅:「(ええっ!?)」

   空:「(これで私の待ちは、カラに・・・?)」

ひろゆき:「(やった・・・!流石は天さん・・・。)」

   天:「(茜ヶ崎さん・・・。確かに効率よく最短でテンパイに行くのは重要なことだ・・・。
       ましてや短期決着の可能性の高い今回においてはそれは常識・・・。
       だが、麻雀には無数に運の転換期、状況の変化というものが存在する・・・。
       リーチをかけるということは、後々の状況変化というものに対して全く無防備になる・・・。
       何があろうと無力になる危険性を孕んでいるんだ・・・。そしてもうすぐだ・・・!
       あんたは麻雀における状況変化の恐ろしさを知ることになる・・・!)」

   天:「チー!」

   空:「(え・・・?五筒と八筒のカンツが出来たのなら対々和にももっていけるはず。
       なのに、なぜ役無しになる九萬を・・・?)」

   天:「(今だ!ひろ!)」

ひろゆき:「リーチ!」

  沙羅:「(ま、まずいよ空さん・・・。ひろゆきさんは、索子の清一色ドラ3で、しかも多面待ち。
       振り込んだら、一発で箱割れになっちゃう・・・。)」

   空:「(まずい状況になってしまいましたね・・・。
       ここは何とか、現物を引くことができれば・・・。え?)」

−空、中をツモる−

   空:「(こ、これは・・・。
       ということは、まさかあの天さんの、九萬鳴きは・・・?)」

   天:「(気付いたか・・・。でも、もう遅いんだよ!)」

−空、中切り、沙羅、その場で手が止まる・・・−

  沙羅:「(これを鳴けば、大三元テンパイ。これが私一人の状況なら、喜ぶべきことかもしれない・・・。
       だけど・・・だけど・・・!
       ここで私が中を鳴いたら、空さんに責任払いが発生しちゃう・・・。)」

※責任払い
麻雀における役満手の大三元、もしくは大四喜(東西南北を3枚づつすべて集めた手)で最後の役牌を鳴かせた者には
役満を確定させた罰として、確定させた者がツモ和了の場合は全額、ロン和了の場合は半額を支払わなくてはならない。
今回の場合、すでに白と發を鳴いている沙羅に対して空が中を鳴かせた場合は大三元が確定となり、
沙羅が和了した際にツモ和了なら32000点全額、ロン和了なら半分の16000点を支払う義務が課せられる。

−沙羅は、この場において運命の分岐点に立たせられていた・・・。
 本来なら鳴かずに静かに流局を待つのが定石だが、今は対面のひろゆきが親の倍満手をテンパイしているのである。
 今回の場合、沙羅にとってひろゆきの手牌が見えていることが仇となった。
 天は沙羅にひろゆきの手牌を透視されているのを承知の上で、強行突破を命じたのだ。
 自分が中を鳴き大三元を確定させてしまえば、ツモ和了で空は箱割れとなってしまうし、ロン和了でも16000点のマイナスである。
 かといって、もしそのまま持ち越せば、多面待ちのひろゆきがツモる可能性は高い・・・。
 既にリーチ清一色ドラ3で倍満は確定・・・。ツモで確実に三倍満に届く・・・。
 この場合、12000オールとなり、残り丁度10000の沙羅は箱割れとなってしまうのである。
 大三元を確定させることもなく、そしてひろゆきのツモ和了も無ければ万々歳だが、それはあまりに他力本願である。
 しかも、捨て牌には索子は少なく、ひろゆきがツモる可能性は遥かに高かった・・・。
加えて空は待ちがカラとなり、完全に無力な状況に追い込まれている。
 責任払いによるダメージか、ひろゆきのツモかを天秤にかけた沙羅が、最終的に出した結論は・・・。−

  沙羅:「ポン!」

   天:「(これで茜ヶ崎さんに責任払いが発生する・・・!これで沙羅ちゃんのツモ和了も封じた・・・!
       よし、次は・・・!)」

−天、沙羅の当たり牌と思しき牌を切る・・・−

  沙羅:「(うっ・・・!これは私のロン牌なのに・・・。
       だけど、これを和了したら・・・。)」

−沙羅、空に視線を投げる−

   空:「(沙羅ちゃん・・・。仕方がありません。ここは、和了して下さい。
       確かに16000点のマイナスは大きいですが、これは同時に天さんも大きなダメージを追うことになります。
       負けが確実となるひろゆきさんのツモ和了よりは、遥かにマシです。
       この場は確実に生き残る道を選択しましょう。)」

  沙羅:「ロン・・・。大三元。」

   天:2000点
ひろゆき:8000点
   空:4000点
  沙羅:10000点

 桑古木:「何て異様な場なんだよ・・・。
      一度も振り込んでいない空が、直撃でもないのに16000点のマイナスなんて・・・。
      不合理もいいとこだぜ・・・。」

  赤木:「ククク・・・。その不合理というやつこそが、博打の本質、快感ってヤツだ・・・。
      一寸先で、何が起こるか分からねえし、有り得ねえことが起こる・・・。
      だからこそ、博打は面白いのさ・・・。」

−天は、配牌もツモも最悪な状況の中、必死に状況をひっくり返す術を模索していた・・・。
 空が確実にツモることが可能なこの局の状況を考慮し、空と対面である自分が空の捨て牌を鳴くことでツモ巡を入れ替え、
 空の当たり牌を確実に握りつぶしていった・・・。
 加えて、状況が不利なのを承知しながらも、ひろゆきの清一色の強行突破でお互いが一撃で確実に破滅する状況を
 作り上げたのである。そして大三元の材料である中の在り処を必死で模索し、鳴きを入れることで、リーチをかけて
 無防備となっている空に中を掴ませ、責任払いを発生させた・・・!
 天とひろゆきを吹き飛ばすための爆薬の詰まった火薬庫は、天が空に掴ませた中が火種となり、空、沙羅の陣営を
 逆に吹き飛ばす形となった・・・!
 同時に天も多大な一撃を被りながらも、圧倒的優位に立っていた空に、一矢を報いたのである・・・!
 まさに、別領域からの刃・・・!
 責任払い、大三元・・・!

 桑古木:「だが、依然として優位な状況にいるのは空たちだぜ。
      天は残り2000点・・・。ひろゆきがもし満貫をツモれば今度は天が箱割れだ。
      つまり、さっきの大三元でひろゆきのツモ和了は不可能だ。
      それに対して空と沙羅は、どちらが満貫をツモっても、天を確実にとばせるんだ。
      ダメージを与えたとはいえ、天が逆に自分の首を締めたのも確かだ。」

 春香奈:「フフ・・・。桑古木。まだまだあなたは考えが甘いわよ。」

 桑古木:「え・・・?」

 春香奈:「あくまであの状況を作り出したのは天の方よ。確かに未だに空が有利なのは確かだけど、
      “優位”はあくまで“優位”であって、“勝利”とは別物よ。
      責任払い大三元だなんて、有り得ない状況が起きている時点で、この場は常識というものじゃ計れないわ。
      既に、時空は捻じ曲がっている・・・。
      この場は順当に沙羅がツモ和了で勝利なんて結果が起こるとは、私にはどうしても考えられないわね・・・。」

 桑古木:「(馬鹿な・・・。オカルトにも程がある。
       空・・・沙羅・・・、焦るなよ。順当にツモ和了で勝ちを狙うんだ。
       あんな馬鹿げた状況が、そう何度も起こるわけが・・・。)」

 春香奈:「確かに、あのまま合理的な形で場が進んでいけば、勝利は空のものだったかもしれない・・・。
      でも、天はさっきまでの状況を、自分の手で覆したのよ。
      正に今の状況は一か八か・・・。天は、空を自分の土俵、すなわち博打打ち同士の異様な場に引きずり込んだ・・・。
      合理性の塊ともいえる空が、博打打ちの土俵でどれだけ耐えられるかが見ものね・・・。」

   天:「ポン!」

−天、白と南をポン−

   空:「(まずいですね・・・。これで天さんは混一色を絡めれば満貫確定・・・。
       親はひろゆきさんですが、ツモで私も残り2000点になってしまう。
       つまり、沙羅ちゃんが満貫以上の手をツモ和了することが不可能となる・・・。
       何とか私も、早く満貫をツモって決着をつけないと・・・。)」

−空、九筒ツモ・・・−

   空:「(うっ・・・。これでタンヤオが消える。
       しかし、ドラの九萬が絡めば何とか・・・。)」

−空、六萬ツモ−

   空:「(さっきから裏目ばかり・・・。
       三色もタンヤオも消えて、只のピンフのみ・・・。
       これでは、リーチをかけて裏ドラ頼みですね。
       でも、こんな手ではとても満貫には・・・。)」

−天、九索切り−

   空:「(あの捨て牌、天さんはテンパイですね・・・。
       私もテンパイですが、こんな手ではとても太刀打ちできない・・・。
       せいぜいこの手を使って流すしか・・・。)」

−何気なく、牌をツモる天の姿を見る空・・・−

   空:「(何て気迫なの・・・。
       望んだ形ではあっても、自分たちが圧倒的に不利な状況に追い込まれ、残りの点棒は2000点だというのに、落胆も恐れといった
       マイナス思考が、欠片も無い・・・。
       ただ・・・。真っ直ぐ・・・。背負おうとしている・・・。
       そのままを背負っている・・・。
       例えどんなに不利な状況、境遇でも・・・。
       投げ出していない・・・。ごまかすことを拒否している・・・。
       それに対して私は・・・。何とか自分たちの優位を守ろうと、安手でこの場を流し、逃げることを考えている・・・。
       そんな逃げ腰で、この人に本当に勝てるの・・・?
       例え逃げられたとしても、それは勝利から目を逸らしただけの事ではないの・・・?
       退けば、勝利というゴールに辿り着くまで、確実に遠い距離を走らなくてはならないことに間違い無い・・・。」

−その時、空の心に見えざるもう一人の自分の声が聞こえてくる・・・!

   空:「 茜ヶ崎空・・・!いい加減に気付きなさい・・・!
       先程の様な、有り得ない別領域からの一撃を受けて、まだ分からないの・・・?
       既に、この場の時空は捻じ曲がっていることが・・・!
       “理”では天さんには決して勝てない・・・!
       この場では、有り得ないことが必ず起こる・・・!それは既に実証済み・・・!
       逃げれば、天さんは必ず和了牌を手にする・・・!
       恐れを抱いては駄目・・・!逃げれば、自分が抱いた恐れに食い殺される・・・!
       行きなさい・・・!勝つための道を・・・!
       ただただ阿修羅の中・・・!我執分け入った先を・・・!」

   空:「リーチ!オープンです。」

ひろゆき:「(な・・・?何だこれは・・・?
       両面待ちのオープンリーチということは、ピンフか・・・?
       でも、ドラは既に2枚捨てられ、残りは僕の手の中に2枚・・・。
       しかも、ロン牌は既に6枚捨てられ、ツモる可能性は限りなく低い・・・。
       無茶苦茶だ・・・!普段のこの人からは考えられない打ち筋・・・!
       一体、何があったんだ?)」

−空と天、卓を挟んで壮絶なツモり合いを展開する・・・!−

 桑古木:「空の奴、何考えてんだよ・・・?
      確かにピンフのみじゃリーチをかけても、満貫には届かないが・・・。
      あの局面で満貫を作るためとはいえ、オープンリーチなんかかけるか?普通・・・。
      天は索子の一、四、七の三面張・・・。空のロン牌は残り2枚・・・。
      無謀もいいとこだぜ・・・。
      しかも裏ドラが無ければ、直撃の際満貫には届かない。
      あんなの、死人の行く道だ・・・。」

   空:「フフフ・・・。」

 桑古木:「何が可笑しいんだよ、優・・・。」

 春香奈:「空も当てられたわね、博打打ちの熱に・・・。」

 桑古木:「え・・・?」

 春香奈:「桑古木、勝負で勝つって、どういうことか分かる?」

 桑古木:「それは・・・。」

 春香奈:「空も天との戦いで、“勝負”というものが見えてきたようね。
      “確率”なんて、あんなもの、勝負の場では大抵ずれた能書きよ。
      確率どおりやって勝てるのなら、誰も苦労はしない。
      勝つというのは、そういうことじゃない・・・。
      相手の心臓を掴むこと、掴んだら搾ること・・・。
      そして、潰すこと・・・!
      例え自分の置かれた状況がどんなに不利でも、リスクを背負ってお互いの破滅を賭けて向かい合う・・・。
      その覚悟無くして、“勝負”に勝つことなど出来はしない・・・。
      10年前にこの場に集まったことのある者たち全員が、常識として肝に銘じていることよ。
      そうでしょう?赤木・・・。」

  赤木:「ククク・・・。」

 春香奈:「天は、さっきの一撃で、空を勝負(ギャンブル)という土俵に引きずり込んだわ。
      それに気付いた空も、その勝負(ギャンブル)を、受けて立った・・・。
      当たり牌が10枚だろうと1枚だろうと、三面待ちだろうと地獄待ちだろうと、
      引く者は引く、引けない者は引けない。
      誰が勝つかなんて、誰も分からない・・・。
      それが勝負というものよ。
      空は捨てたのよ、安全というものを・・・。
      沙羅のツモに頼るとか、安手で場を流すとか、そんなことはもう毛ほども考えていない・・・!
      天貴史との、本気の潰し合いに臨む気だわ・・・。」

−結局、この局は流局に終わる・・・。
 だが、天と空の二人に、安堵の表情など、欠片も無い・・・!

   空:「(感じる・・・!
       天さん、いや、“天貴史”という存在が放っている熱を・・・!生の鼓動を・・・!
       心音、血流、呼吸、果ては細胞の一片一片が躍動する音が聞こえてくるようです・・・。
       今なら分かる・・・。この人が“麻雀”という遊戯に自分の全てを賭けて戦ってきたことが・・・。
       麻雀のプロフェッショナルと言われる人達が、お金、名誉、地位、その他色々なものを賭けて
       対局に臨むというのは、理解できます・・・。
       この人も、確かにその例には洩れない・・・。
       でも、この人も赤木さんと同様、根底にあるのはそういったものへの執着じゃない・・・!
       ただただ、この人は「時」を追いかけている・・・。
       人間の限られた一生、その生涯における、最高の「時」を迎えたい・・・。ただそれだけ・・・。
       お金にも、名誉にも執着の無いこの人が麻雀という遊戯を通して得たい唯一のものが、きっとそれなんですね。
       だから私も、敗北に背を向けるのではなく、向き合います・・・!
       向き合うことで、どんな重圧にも屈することなく、進んでいく・・・。
       負けるときは、攻めて負ける・・・。
       さあ、行きます・・・!
       この手で、勝利への道を開きます・・・!」

  沙羅:「(よし・・・。配牌は悪くない・・・。
       でも、対面のひろゆきさんもかなり良さそう・・・。
       早く、満貫ツモでこの勝負の決着をつける・・・。)」

−だが、序盤から好配牌に恵まれていた沙羅、ひろゆきのツモ牌には、無駄ヅモが続く・・・。
 8巡経って、手がセメント漬けのように、配牌から動かない・・・!
 まるで、この場に二人が介入することを拒否しているかのよう・・・!

  沙羅:「(やっぱりこの場は、普通じゃない・・・!
       4人で囲んでいるはずのこの卓において、私達はその存在を拒否されているみたい。
       まるでこの場は、空さんと天の二人だけの決闘場・・・!
       間違い無い、決着をつけられるのは、この二人の一撃だけ・・・!
       もう私達には、この卓の命運を左右することなんてできない・・・。
       できることは、ただただ空さんと天さんの決着がつくのを見守るだけ・・・。」

ひろゆき:「ポン!」

−ひろゆき、役牌の二鳴き−

ひろゆき:「(このまま手をこまねいて、見てられるか・・・!
       ツモは無理でも、僕が茜ヶ崎さんを直撃すれば勝負は決まる・・・。
       何としてでも、満貫を完成させる・・・!)」

−ひろゆき、混一色イーシャンテン−

ひろゆき:「(よし・・・!あとは残った三筒を切れば、テンパイだ。)」

−だが、その時ひろゆきは空の視線から、恐ろしい殺気を感じる。
 その気配は、先程までの空とはあまりに異質なものであった・・・!
 その視線は、ひろゆきにこう告げている・・・!“邪魔をするな”と・・・!

   空:「オープンです。」

−空、三、六、九筒の三面待ちオープン。役はピンフ、ドラ1で満貫確定−

ひろゆき:「(うっ・・・!これで僕の混一色が死んだ・・・!
       間違い無い・・・!完全にこの場は僕が入っていける場所では無くなったということか・・・。)」

   天:「俺もオープンだ!」

−天、二、五、八筒の三面待ちオープン。役はタンヤオ、ドラ1で満貫確定−

 春香奈:「お互いにオープンリーチで、満貫を確定させた・・・。
      普通のリーチでは裏ドラ頼みだけど、今あの二人は裏ドラに期待してなどいない・・・。
      直撃した際に、確実に葬る気ね・・・。
      既に、沙羅とひろゆきは脱落した・・・。
      間違い無く、この局で決着がつくわね。」

  ココ:「ねえねえ少ちゃん・・・。何だか今の空さん、怖いよ・・・。」

 桑古木:「かもな・・・。だけど、その位今の空は真剣になっているということさ。
      俺達は、黙ってみていようぜ。」

  ココ:「うん・・・。」

 桑古木:「(俺には、今の空が祈りを天に向かって届かせるために、業火の中へ飛び込もうとしている聖女のように見えるぜ・・・。
       いや・・・。そんな小奇麗な表現など似合わないか・・・。
       今あの二人は、博打の業火に身を焼く勝負師以外の何でもない・・・!
       どちらが早く焼け死ぬか・・・。あとは神のみぞ知る、だな・・・。)」

−お互い、壮絶なツモリ合いを続ける天と空・・・
 だが、お互いのロン牌は何枚かがひろゆきと沙羅の手の中に入っていき、残りのロン牌は確実に少なくなっていく・・・。
 優の言う通り、待ちの多さなどこの場で大した意味は持たなかった・・・。
 それでも、二人は可能性を信じて、向かい合う・・・!−

   空:「(もうお互い、退路などありません・・・。決着をつけましょう、天さん・・・。)」

   天:「(真面目なあんたが、博打を打つとはな・・・。麻雀ってやつは、本当に怖いぜ・・・。)」

−そして天、自分の最後のツモ牌に手を伸ばす・・・。−

 桑古木:「(これで天のツモが、筒子でなければ勝負は決まる・・・!
       どうだ・・・?ツモったのか・・・?)」

−だが、天の指の下から、“萬”の文字が見え隠れする・・・!

 桑古木:「終わったな・・・。
      筒子じゃない・・・。おそらく、最後にツモるのは空だ・・・。」

 春香奈:「フフ、果たしてそうかしら?」

 桑古木:「え?」

−天のツモは、二萬・・・!そして、天の手牌の中には、二萬の暗子が・・・!

   天:「カン!」

   空:「・・・・・!」

   天:「(これで俺のツモは最後・・・!
       ラスト、このリンシャン牌に賭ける・・・!)」

−リンシャン牌は、八筒・・・!

   天:「引いた!オープン、嶺上開花、タンヤオ、ドラ1!裏一丁でハネ満だ!」

ひろゆき:「ハネ満ツモってことは・・・。」

   空:「私の、箱割れが確定ですね・・・。」

−空、6000点払いで箱割れが確定、結果、天とひろゆきのコンビの勝利となる・・・
 そして、空がツモるはずだった牌を見る天・・・。−

   天:「(やはりな・・・。俺が二萬をカンできなかったら、負けだった・・・。今回も、かなり際どかったな・・・。)」

  沙羅:「ふう・・・。これで私達は負けか・・・。
      それにしても惜しかったね。ラストが回ってくれば、私達の勝ちだったのに。」

   空:「いえ・・・。これは単純な運否天賦による決着ではありません・・・。
      沙羅ちゃん、天さんの和了の形を見てください・・・。」

  沙羅:「え?どういうこと?」

   空:「私の手牌と、天さんの手牌・・・。何が違うかお分かりですか?」

  沙羅:「そう言われても、ピンフとタンヤオの違いくらいしか・・・。
      え?そういえば・・・。」

   空:「天さんの手牌に、暗子が二つあるのが分かりますよね?
      これが、どういうことかお分かりになりますか?」

  沙羅:「そういえば天さんは、ラストに嶺上開花で和了した・・・。
      つまり、暗子が二つあるということは、暗カンできる可能性がまだ残されてるってことだよね?」

   空:「その通りです。私が作ったピンフと、天さんの作ったタンヤオには、決定的な差が存在したということです。
      私の場合は、リーチをかけてしまえば既に変化はそれ以上見られない・・・。
      それに対して天さんは、リーチをかけても普通にツモる以外でも和了できる可能性のある役を作ったということ・・・。
      勝負に対して熱くなっていたようで、その本質は冷静に、常に現実(リアル)を見ていたということです。
      熱くなっていた私には、その現実が見えなかった・・・。
      それが、今回の勝負における私と天さんとの決定的な差となったのです。
      “天”は、“空”よりも高いものが見えていた・・・。そんな気がします。」

  沙羅:「なるほどね・・・。」

   空:「ですが、結果的に負けたとしても悔いはありません。麻雀という遊戯の奥深さを、改めて知ることができましたから。
      今回は、本当に楽しかったです。」

  沙羅:「私も理屈抜きに楽しかったよ。空さん、ありがとう。
      あ、そうだ。次の空さんの闘牌は、多分パパを賭けてのママとの再戦だね♪
      今回のことをバネにして、頑張ってね。」      

   空:「・・・・(苦笑)」











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