エバセブ落語劇場 死神
                              鳴きの虎



優春:「ちょっと涼権、今日の稼ぎはこれだけ!?」

桑古木:「うるせーな、今日はこれしか売れなかったんだよ!仕方ないだろーが!」

優春:「こんなんじゃ、今月分の店賃(家賃のこと)も払えないじゃない!どうするのよ!」

桑古木:「・・・どうするって、まあ、明日頑張るだけだよ。」

優春:「その台詞、昨日も聞いたわよ!まったく、こんなんじゃあんたが火事で焼いた店の再建なんて夢のまた夢よ!」

桑古木:「・・・それを言うな。死にたい気持ちになる・・・。」

優春:「それは私も同じよ!まったく、昔からドジで悪運で、甲斐性が無いんだから!」

桑古木:「悪かったな!」

優春:「あんたみたいな甲斐性無しは、豆腐の角に頭ぶつけて死んじまいな!」

桑古木:「言ってくれるじゃねーか!なら、お望み通りにしてやらあ!」

−お膳の上の豆腐を、頭にぶつける桑古木・・・。当然豆腐は台無し(汗)−

優春:「あーーーーーーっ!今夜のおかず、どうしてくれるのよ!」

桑古木:「お前がやれって言ったんだろーが!」

優春:「本当にやるバカがどこにいるのよ!もう頭にきた!
こうなったら、あんたには裏稼業に復帰してもらって、死ぬ気で稼いでもらうからね!」

作者:「おい!裏稼業って何だ!?裏稼業って!?」

桑古木:「誰が今更、あんな商売やるか!俺は地獄行きは真っ平御免だ!」

優春:「どうせあんたもあたしも、地獄の特等席が待ってるんだから、今更遅いわよ。(キッパリ)」

桑古木:「開き直って言うなっ!全く、お前って奴には、いい加減愛想が尽きたぜ!」

優春:「あたしだって同じよ!だったらとっとと出ていったら!?」

桑古木:「ああ!分かったよ!出て行ってやる!」

−その頃、隣の部屋の倉成家では・・・−

ホクト:「お隣さん、また始まったね。」

沙羅:「今夜も楽しいドツキ漫才でござるな♪」

つぐみ:「ふう・・・。相変らず近所迷惑ね。」

武:「ま、涼権のことだ。そのうち仲直りするさ。」

−というわけで、出て行った桑古木−

桑古木:「あーあ、魚は売れなかったし、家に帰れば優にどやされるし・・・。いい加減生きてるのが嫌になっちまったぜ。」

???:「ダメだよ〜、少ちゃん♪そんなこと言ってたら。少ちゃんより辛い目にあってる人は、他にも大勢いるんだよ?」

桑古木:「わわっ!?だ、誰だ!?」

−後ろを振り返ると、12、3歳くらいの黒地の着物を着た少女が立っている−

桑古木:「な、何だお前?こんな時間に一人で出歩くのは危ないぜ?」

???:「関係ないもーん。ココの姿は普通の人には見えないから。」

桑古木:「え?普通の人には見えないって?じゃ、じゃあ、お前は一体?」

ココ:「あ、自己紹介がまだだったね。こんにっちゃー♪死神の八神ココでーす♪」

桑古木:「し、死神!?随分とまた明るい死神だな・・・。」

ココ:「えへへ、死神にも色々あるんだよ♪」

桑古木:「・・・そうかい。で、死神が俺に何の用だってんだ?ま、まさか、俺を連れに来たなんていうんじゃないだろうな!?」

ココ:「違うよ〜♪連れに来たんならあんなことは言わないでしょ?」

桑古木:「まあそうだよな・・・。じゃあ、一体何しにきたんだよ?」

ココ:「うん!少ちゃんがあんまり困ってるみたいだから、助けてあげようと思って。」

桑古木:「死神が人助け?随分と変わった話だな。」

ココ:「実はね、昔、ココのご先祖様が少ちゃんのご先祖様に助けてもらったんだ。だから、恩返しに子孫が困っていたら
助けてあげるって約束したの。少ちゃんは今、お金に困ってるんでしょ?だから、お金がもらえる方法をココが教えてあげる。」

桑古木:「お金って・・・。どこかに財宝でも埋まってるのか?」

ココ:「そうじゃないよ。少ちゃん、あしたからお医者さんになればいいんだよ。」

桑古木:「医者だって?まあ、裏稼業の現役の時には闇医者で稼いでたんだが、最近はお上がうるさいからな・・・。」

ココ:「・・・そうじゃないよ。あるおまじないをして、病気の人を治すの。」

桑古木:「まじないだって?」

ココ:「うん、もし病気の人のところに死神がいたら、アジャカモクレンキューライソ、テケレッツノパと唱えたら、
ココたち死神は帰らなくちゃいけないんだ。そうやって病気の人を治してあげれば、お礼にお金が貰えるよ。」

桑古木:「ふうん、分かった・・・。アジャカモクレンキューライソ、テケレッツノパ・・・。随分おかしな文言だが、
これでいいんだな?」

ココ:「うん、そうだよ。でも、これは足元にいる死神さんじゃなくちゃ効かないからね。枕元にいる死神さんには効果が無いよ。
枕元にいる人はもう寿命が終わっちゃった人だから、お仕事の邪魔をしちゃだめだよ。
それから、助けられるのは1日1人、8人まで。あんまりやりすぎると、ココたちのお仕事が無くなっちゃうからね。」

桑古木:「何で8人なんだ?」

ココ:「えへへ、かけ算で言うでしょ?“しにが8”って。そしてココは、“しにが8”で本名は“八神ココ”じゃあね〜♪」

桑古木:「・・・随分と愛嬌のある死神だったな。まあいいか。ま、とりあえず帰るかな。
家では優がうるさいだろうけど・・・。」

−というわけで、涼権は優春にガミガミ言われつつも、理由を話すと昔使っていた医者の看板を立て掛けることにした。
 そして次の日、涼権の家を2人の男が訪ねてきた。1人は有名な高利貸しの番頭、もう一人は貧乏な菓子屋だった。−

桑古木:「(よりによって二人かよ・・・。タイミングが悪いな・・・)」

番頭:「お願いします。うちの主人がもう3日ももたないといわれてるんです。お礼はたっぷりとします。
だから何卒・・・。」

菓子屋:「どうか私の娘を助けてやってください。どうかお願いします。もう私にとっては、娘がすくすく育つ以外に
何の生甲斐も無いんです。お礼は何年、何十年かかろうと必ず払います。ですから・・・。」

優春:「・・・で、どっちにするの?」

桑古木:「(ううう・・・。一方は有名な悪徳高利貸しだが、謝礼が期待できるしな・・・。だが、心情的には菓子屋の方を
助けてやりたい・・・。だが、店の建て直しのことを考えると・・・・。)」

番頭:「お願いします。今ここに、20両あります。これとは別に、50両、いや、100両払います。」

菓子屋:「わ、私の方は、店を手放してでも金を作ります。無論、これからも死ぬ気で払います。
ですから、どうか娘の命を・・・。」

桑古木:「(ああああああっ!どうすれば、俺はどうすればいいんだあーーーーーーーっ!)」

−で、結局、菓子屋の娘の方を優先することにした桑古木。早速出向いてみると、死神は足元に座っている。−

桑古木:「あ、ご主人、これならすぐに治せますよ。では、娘さんと二人にして下さい」

菓子屋:「え?は、はい・・・。」

桑古木:「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」

娘:「お、お兄ちゃんはだれ・・・?」

桑古木:「大丈夫だよ。俺は医者だ。すぐに楽になるから、少しだけ待っててくれ。」

娘:「う、うん・・・。」

桑古木:「よし、すぐに助けてやるからな。アジャカモクレンキューライソ、テケレッツノパ。」

−桑古木が文言を唱えると、死神は少し悔しそうな顔をしたかと思うと、スーっと消えてしまった。
 すると、娘の顔にみるみる生気が戻り、しばらくするとゆっくりと布団から起き上がった。−

桑古木:「もういいですよ、ご主人。」

菓子屋:「え?ほ、本当ですか?」

−襖を開けると、娘が先程までが嘘のように元気な顔で布団から起き上がっている。−

菓子屋:「お、お花!?もう大丈夫なのか?」

娘:「うん、お兄ちゃんが治してくれたんだよ。」
 
−菓子屋は娘を抱きしめて、泣いて喜んだ。その様子を見た桑古木は、礼は要らないといって引き上げようとしたが、
せめてものお礼ということで、菓子を一包み貰って帰ることにした。−

優春:「・・・やれやれ、あんたらしいわね。100両を蹴って貧乏な方を助けてあげるなんて。」

桑古木:「・・・高利貸しは今まで散々好き勝手やって生きてきたんだ。ああいう奴は早く閻魔様の所に逝った方が世の為だよ。」

優春:「まあ、そうかもね。」

−そのころ、隣の部屋では・・・−

ホクト:「今日はお隣さん、ケンカしてないね。」

つぐみ:「ちょっと珍しいわね。それよりホクトも沙羅も、早く寝なさい。」

−内職の針仕事をしているつぐみ(萌−

ホクト:「はーい。」

−そして数日後の夜・・・−

ココ:「少ちゃん、少ちゃん。」

桑古木:「・・・何だ、ココか・・・。こんな時間に何の用だい?明日は一応魚売りの仕事に行かなきゃいけないんだよ・・・。」

ココ:「少ちゃん、偉かったね。悪いお金持ちじゃなくて、あの子を助けてあげるなんて。」

桑古木:「何だ、知ってたのか?」

ココ:「うん、悪いお金持ちの所には、ココが行ってたの。もし、あの時悪いお金持ちのところに少ちゃんが来たら、
少ちゃんに憑いちゃったかもしれないよ♪」

桑古木:「・・・笑顔で物騒なこと言うなよ。で、今夜は何の用だい?」

ココ:「うん、実は少ちゃんに、いいお話をもってきてあげたの。」

桑古木:「いい話って、何だ?」

ココ:「この町で有名な美人の、茜ヶ崎空さんを知ってるよね?」

桑古木:「ああ・・・。あの人がどうかしたのか?」

ココ:「あの人、今は病気で、もうすぐ死んじゃうかもしれないんだって。」

桑古木:「で、彼女のところにいる死神を俺にお祓いしろって言うのかい?」

ココ:「ううん、そうじゃないの。あの人のところには、死神さんはいないよ。」

桑古木:「じゃあ、俺にはどうしようも無いな。」

ココ:「そんなことは無いよ。少ちゃんは、空さんの所へある人を連れて行ってほしいの。
そうすれば、治るかもしれないんだ。」

桑古木:「連れてくって、誰を?」

ココ:「少ちゃんのお隣に住んでる、大工のたけぴょんだよ。」

桑古木:「え?武を?」

−前述の通り、茜ヶ崎空はこの町で有名な良家の令嬢で、その美しさは評判だった。
 そのため、今まで何人もの男に求婚されていたが、全て丁重に断っていた。
 だが、ある日空の屋敷の屋根の修理に訪れた大工の倉成武に、空は一目惚れしてしまった。
 空は自分から出向き、武に求婚したが、武は自分の昔からの恋人であったつぐみを選び、縁談を断った。
 この町の男たちの羨望と嫉妬が、表には出ずとも武に一斉に向けられたのは言うまでも無い(笑
 結局、失恋した形となった空は恋の病を患ってしまった。
 それで、数日の間に評判となった桑古木が武を連れて行けば、どうにかなるかもしれないとココは言うのである。−

桑古木:「なるほどな・・・。でも、こればっかりはどうしようもないぜ?どんなに金を積んだって、武がつぐみと
別れることなんて、考えられないな。」

ココ:「だけど、やっぱり空さんを救えるのはたけぴょんしかいないの。どうにかして、たけぴょんを空さんのところへ
連れて行ってあげて。」

桑古木:「・・・分かった。やるだけやってみるよ。だけどココ、何でそんなにあの人のことが心配なんだ?」

ココ:「うん・・・。空さんには、ココがまだ人だったときに、よく遊んでもらってたから・・・。」

桑古木:「なるほどな。じゃあ、俺に任せとけ。必ず、どうにかしてみせるぜ。」

ココ:「少ちゃん、頑張ってね。」

−というわけで、次の日隣の武の家へ・・・−

桑古木:「・・・というわけなんだ。とりあえず、空のところへ行ってやってくれないか?」

武:「そうか・・・。そんなに悪いのか、空の病状・・・。まあ、俺にも責任があるからな。
それじゃあ親方には断りを入れてから、屋敷に行こうぜ。」

−そして二人は、空の屋敷へ・・・−

世話係:「おお、お待ちしておりました。お嬢様がお待ちです。では、こちらへ。」

空:「はあ・・・はあ・・・。」

桑古木:「大丈夫か?早速、武を連れてきたよ。それじゃあ、あとは武に任せるから、俺は下がるぜ。」

−武と空を残し、部屋を後にする桑古木−

主人:「桑古木さん、娘は大丈夫なんですか?」

桑古木:「まあ、恋の病には恋のお相手に来てもらうのが一番ですよ。後は任せましょう。」

空:「く、倉成さん・・・。来てくれたんですね・・・。」

武:「ああ・・・。かなり具合が悪いって聞いたからな・・・。すまない、俺のせいで・・・。」

空:「いいえ・・・。倉成さんは何も悪くありません・・・。倉成さんには小町さんがいると分かっていながら
倉成さんを諦めきれない、私が悪いんです・・・。」

武:「そ、空、しっかりしてくれ!それより、どうしたら治るんだ?」

空:「そんなことを聞くのは、意地悪ですよ、倉成さん・・・。」

武:「あ・・・。」

空:「でも、もういいんです・・・。例え、倉成さんが今私と結婚してくれると仰ってくれても、
私は幸せにはなれないでしょう・・・。倉成さんの心の中には、常に小町さんがいるのですから・・・。」

武:「空・・・。」

空:「全ては、私の責任です・・・。私が我侭なだけです・・・。でも、こんな私のために、来てくれたんですね、倉成さんは・・・。」

武:「・・・・・・・。」

空:「・・・倉成さん、こんな私の、最後のお願いを、聞いて下さいますか?」

武:「何だ?何でも言ってくれ。」

空:「一度だけでいいんです・・・。口づけを・・・して下さい・・・。」

武:「え、ええっ!?」

空:「・・・ダメ、ですか・・・?」

武:「俺は・・・。」

−暫く押し黙る二人・・・−

武:「分かった・・・。今の俺には、それくらいしかしてやれることが無いからな・・・。」

空:「倉成さん・・・。嬉しいです。」

武:「じゃあ、いいか?」

空:「はい・・・。」

−そのとき、襖が開いて・・・−

つぐみ:「武、空の具合はどう?」

武:「・・・・・・・・・」

空:「・・・・・・・・・」

つぐみ:「た、武・・・。あんた、こんな所で何やってるのよ・・・?」

武:「・・・(凍り付いて動けない)・・・」

つぐみ:「武の、バカーーーーーーーっ!!!!!!」

空:「きゃあ!小町さん、落ち着いて・・・ああっ・・・。(パタリ)」

武:「ああっ!空、しっかりしろ!は、早く誰か医者を・・・。」

作者:「南〜無〜・・・迷わず成仏してくれ。」

空:「死んでません!(怒)」

桑古木:「こんな展開、本編にあったか?」

作者:「・・・そのまま進むと、武やつぐみの出番が無いからな。」

桑古木:「ま、今回もベタな展開だな。」

作者:「まあ、とりあえず謝礼もらって帰れよ。」

−というわけで、ドタバタが続いた結果、空の具合が落ち着いたので3人は帰ることに。
 そして次の日からも客が金持ちと貧乏人の二組が来るが、結局貧乏人を助けてしまい残りは2人となった。−

優春:「とりあえず、空の家から貰ったお金で借金とかは何とかなったけど、店の建て直しには程遠いわね・・・。
全く・・・。あんたの人の良さには呆れるわよ。この分じゃ、この先お金には縁が無いかもね、私達。」

桑古木:「・・・あっそ。だったら、俺なんかとっとと捨てて、金持ちとでもくっついたらいいじゃねーか。」

優春:「もうっ!そういう言い方しないの。あんたがそういう男だから、余計に放っておけないのよ。」

桑古木:「・・・誉めてんのかけなしてんのか、どっちだよ?」

優春:「さあ、どっちかしら?そういえば、あんたのこと、町では評判になってるわよ。
欲の無い、大した男だって。」

桑古木:「へえ・・・そうかい。ま、人が何と言おうと、俺には関係無いけどな。それよりもう寝ろよ。明日早いしな。」

優春:「それもそうね。」

−そして次の日の夕方・・・−

桑古木:「おーい、今帰ったぜ。おや?またお客か?」

番頭:「あ、先生、お待ちしておりました・・・。私、越後屋の使いのものです・・・。」

優春:「用件は、聞かなくても分かるでしょ?」

桑古木:「あ、ああ・・・。それより優、今日は客は一人だけか?」

優春:「ええ、そうだけど?」

桑古木:「へえ・・・。これはツイてるな、番頭さん。今日の客ははあんただけだ。案内してくれ。」

番頭:「へえ、お願いします。うちのご主人を、何卒よろしくお願いします。」

−そして、桑古木は越後屋へ・・・−

番頭:「どうぞ先生、よろしくお願いします。」

桑古木:「ええと、どれどれ・・・あ、こりゃ駄目だ。助からない。」

−死神が、枕元に座っている−

番頭:「そ、そんな・・・先生は、今まで見てきた客は、全部治したって評判じゃないですか。」

桑古木:「いや、それはたまたま運が良かっただけで・・・。治したくても、越後屋さんの寿命はもう尽きてるんですよ。」

番頭:「そこをどうにか・・・。百両でも、二百両でも、いや、五百両でもお支払いします。でないと、うちの店は・・・。」

桑古木:「そう言われてもな・・・。」

−何とか断って帰ろうとする桑古木だが、番頭に引きとめられて接待三昧で帰るに帰れない・・・−

桑古木:「はあ・・・。もう勘弁してくれよ・・・。」

番頭:「おい、早く先生に次の料理を運べ!次は芸者を・・・。おい、お前さん、お膳が反対じゃないか!
そうそう、反対にぐるっと回して・・・」

桑古木:「おっ!?そうだ、いいことを思いついたぜ。番頭さん、この店で力自慢の人を4人集めてくれ。」

番頭:「えっ?力持ちなら、店に何人でも・・・」

桑古木:「いや、4人だけでいいんだ。」

−番頭に命じて、力自慢の男を4人集めた桑古木。そして、その4人を主人の布団の四隅に座らせる。−

桑古木:「いいかい?俺が合図したら、一気に布団をぐるっと回してくれ。今と枕元が反対になるようにな。」

−疲れているのか、死神が居眠りをしているのを見計らっている桑古木。そして・・・−

桑古木:「今だ!」

男たち:「そーれっ!」

死神:「ええっ!?」

桑古木:「でかしたっ!アジャカモクレンキューライソ、テケレッツノパ!」

死神:「きゃっーーーーーーーーっ!?」

桑古木:「よしっ!成功だ!」

越後屋:「う、ううん・・・。」

番頭:「だ、旦那様!?」

越後屋:「腹が減った。鰻重と天丼を持って来ておくれ。」

番頭:「だ、旦那様が治ったーーーーーっ!先生、ありがとうございます!ありがとうございます!」

−というわけで、死神を出し抜いて謝礼を貰った桑古木・・・−

桑古木:「ふう・・・。食った食った。謝礼とは別に、10両も足代として貰っちまったし・・・。
これで、店の建て直しができるな。それにしても、あの死神の驚きようったら傑作だったぜ。
キャーッと天井まで飛び上がっちまって・・・」

ココ:「・・・ビックリするのは当たり前だよ、少ちゃ〜ん!?(怒」

桑古木:「え?お、お前はココ?ということは、さっきの死神って、ココだったのか?
変な頭巾みたいなの被ってたから、分からなかったぜ?」

ココ:「・・・よくも、ココのお仕事の邪魔をしてくれたね〜!?」

桑古木:「わ、悪かったよ・・・。もしあれがココだって知ってたら、あんなことは・・・」

ココ:「・・・やっちゃったことは、取り返しがつかないのが世の中ってもんだよ?
こんなことがバレたら、ココはみんなに笑われちゃうよ・・・!
少ちゃん、一緒について来て。」

桑古木:「お?な、何だよ、大胆だな。ココから俺の手を握ってくれるなんて。」

ココ:「もうっ!ふざけてないで、早く来て!」

−というわけで、どこか妖しげな洞窟の中へ連れてこられた桑古木・・・。その周りには、何百何千という蝋燭が・・・−

桑古木:「な、何だ!?この蝋燭だらけの場所は?」

ココ:「これが、人の寿命だよ。みんなの命の長さは、この蝋燭によって現されてるの。」

桑古木:「へえ・・・。長いのから短いのまで、色々あるな・・・。おっ、これは良く燃えてるし、長いな。」

ココ:「それは、少ちゃんの奥さんの、なっきゅの娘っ子ちゃんの寿命だよ。」

桑古木:「なるほど、優の子なら、長生きするはずだ・・・。で、この仲良く並んで威勢のいいやつは?」

ココ:「それは、少ちゃんのお隣さんの、たけぴょんとつぐみんの寿命だよ。」

桑古木:「やっぱりね。お?今度はもうすぐ、消えそうなやつがあるぞ?こいつは誰の寿命だ?」

ココ:「ふふふ、何を隠そう、それが少ちゃんの寿命だよ?」

桑古木:「ええーーーーーーーっ!?お、俺はこの通り元気だぜ?病気一つしちゃいないってのに、何でこんなに短いんだ?」

ココ:「・・・ホントはね、少ちゃんの寿命はこっちだったの。だけど、さっきココをうまく騙して、お金持ちを助けたよね?
何も無いところから、寿命もお金も出てこないよ?少ちゃんはね、さっきので、お金持ちと自分の寿命をとりかえっこしちゃったの。」

桑古木:「じゃ、じゃあ、こいつが消えたら、俺は死ぬってのか!?じょ、冗談じゃない!
わ、悪かったよ!た、頼むココ!なんでもするから、助けてくれ!」

ココ:「無理だよ。寿命が終わった人を助けるなんてコト、死神さんがするわけないでしょ?
もうすぐ消えるから、ココが連れてってあげるね。」

桑古木:「ま、待ってくれ!そうだ、さっき助けたので、7人目なんだ!残りの一つで、自分を助けられないか?」

ココ:「ふーん、まだ一人残ってたんだね。じゃあ、少ちゃんに、これをあげる。」

桑古木:「こ、この蝋燭は・・・。」

ココ:「それを移し変えれば、少ちゃんの寿命はのびるよ。だけど、ココはお手伝いしないよ。自分でやってね?」

桑古木:「あ、ああ・・・」

−震える手で、蝋燭の火を移し変えようとする桑古木・・・しかし、後ろで・・・−

ココ:「ねえ少ちゃん、ココのコメッチョ聞きたい?昔々ねえ・・・。」

桑古木:「し、静かにしててくれよ!今、それどころじゃない!」

ココ:「・・・というわけで、○○さんは・・・。」

−というわけで、必死に火を移し変えようとする桑古木と、コメッチョを連発して邪魔するココ。だが・・・−

桑古木:「フフフ・・・。ククク・・・ハーハッハッハッハッハッ!」

ココ:「え?少ちゃん、ココのコメッチョ、そんなに面白かった?」

桑古木:「・・・甘いぜ?ココ。それに、こいつを読んでる読者諸君・・・。」

ココ:「?」

桑古木:「ま、普通なら、火を移し変える前に火が消えるか、もしくは移し変えたとしても、自分で吹き消しちまうって
オチで終わりなんだが、生憎そうはいかないぜ?」

ココ:「え?え?」

桑古木:「・・・これが、Ever17のメンバーで構成されてる話だってのを忘れるなよ?
こんなこともあろうかと、本番前から、こいつを用意しておいたんだ。」

ココ:「え?少ちゃん、その注射器は何?」

桑古木:「これこそ俺の切り札、キュレイウィルスの抗体!こいつはTBすら駆逐するスグレモノだ!
こいつを俺に打てば、あら不思議、体中に不死身の活力が込み上げてくるぜ!
おまけに見ろ!あの消えかかっていた蝋燭を!消えるどころか、ぐんぐん伸びてやがるぜ!
そして、天をも焦がす勢いで燃えてやがる!
吹き消そうとしても、団扇で扇いでも、百歩神拳(!)を食らわせても消えねーぞ!」

ココ:「あーーーーーーーーーーっ!少ちゃん、そんなのずる〜い!」

桑古木:「ハッハッハッハ!頭は使いようだぜ!散々作者に酷い目に遭わされてきたからな。
ちったあ、成長するってもんさ。」

作者:「一本取られた・・・。」

桑古木:「というわけだ、ココ。俺はもうそろそろ帰ることにするぜ。」

ココ:「うう〜、少ちゃんのイジワル・・・。こんなことがみんなに知れたら、もうココ、今のお仕事やっていけないよ。
こうなったら、いつか少ちゃんに終わりがくるまで取り憑いて、その間ずっとコメッチョ聞かせてあげるんだから!」

桑古木:「ああ、大歓迎さ。遠慮なくうちに来いよ。優秋の遊び相手にでもなってくれたら助かるぜ。」

ココ:「うう〜〜〜〜(怒」

−というわけで、ココは死神の仕事をやめて、桑古木の家に住み着いたそうな。
そして、桑古木の立て直した店で、幼い優秋の子守をしながら、楽しく暮らしたという・・・。

優秋:「ふええ・・・」

ココ:「あー、泣かない泣かない。もうすぐご飯できるからね。ほら、風車だよ。」

桑古木:「ははは、微笑ましいな。」

めでたしめでたし。(笑




あとがき

桑古木:「今回は俺の勝ちだな。」

作者:「やられた・・・。」

空:「倉成さん、先ほどのシーンの続きをお願いします♪」

武:「お、おい、空・・・。」

つぐみ:「た〜け〜し〜!」

武:「じょ、冗談だって・・・。」

空:「くすん・・・(涙)」

沙羅:「見事に作者と読者さんを出し抜く形になったね。(汗)」

ホクト:「でも、当然の結果じゃないのかな?桑古木さん、金持ちを助けたのは一回だけで、あとは貧乏な人を助けてあげてたからね。」

優春:「“情けは人のためならず”というわけよ。分かる?」

作者:「・・・肝に銘じておきます。」


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