エバセブ闘牌伝 
ー代打ち集団LeMU−

                              鳴きの虎


第10話 最終局前編 可能性

―満貫縛り、失点の回復無しのルールによって行われた、空&沙羅VS天&ひろゆき、武&つぐみVSホクト&秋香奈の
組み合わせで行われた準決勝・・・。
空&沙羅VS天&ひろゆきの対戦は壮絶な死闘となり、天と空のオープンリーチ合戦の末、僅差で天が制した・・・。
一方、武とホクトの親子チーム対決は、和やかな雰囲気の中、流れを掴んだホクトのチームが制することとなった。(汗)
こうして、天&ひろゆき、ホクト&秋香奈の2チームにより、いよいよ決勝戦が始められる・・・。
これに勝利したチームが、優勝と最高額の賞金、500万円を獲得することとなる。
そして、準決勝終了後、決勝戦に関するミーティングが、原田の立会いで始められた。―

原田:「いよいよ、明日の対局が決勝戦だ・・・。
勝ち残ったのは、天、ひろゆき、そして倉成ホクト、田中優美清秋香奈の2組だな・・・。
そこで俺の方から、決勝戦に関して新ルールの提案がある・・・。いいか?」

天:「何だ?新ルールとは?」

原田:「今回も色々あったが、ほぼ全てが俺の予想を裏切る形となった・・・。
決勝は準決勝のルールのままで行こうと思ったが、それではつまらんからな・・・。
天とひろゆきはともかく、倉成、田中の両名がここまで勝ち残ることができたのが、
単なる運によるものか、それとも実力なのか、それを最大限に測るためのルールを提案したい。」

天:「もったいぶらずに早く言え。一体何だ?」

原田:「単刀直入に言おう。お前たちには、命題を一つ課すこととする。それは、役満を和了することだ。」

ホクト:「ええっ?役満を?」

天:「まさかお前、役満以外認めないなんてルールを提案するんじゃねえだろうな・・・。」

原田:「まさか・・・。いくらなんでもそんな無茶苦茶は言わんさ。
ただ、このルールは、ステージA、ステージBと進むことで進行する。
まず、両チームは、役満をクリアすること、これがステージAだ。
役満和了の条件は、直撃でもツモでも、味方からの差し込みでも構わない。
とにかく、役満を和了ること。これが、ステージAにおける命題だ。
なお、このステージAでは、点棒のやり取りは無い。
どんな和了でも、役満を和了する以外、このステージをクリアしたことにはならない。」

秋香奈:「ふうん・・・。とにかく、ステージAでは、何が何でも役満を和了しろってことなのね。」
それで、ステージBとは一体何なの?」

原田:「ステージBとは、どちらのチームでもステージAをクリアしたら、両チームとも自動的に進むステージだ。
とにかく、どちらかのチームが役満を和了したら、ステージAは終了。ここから、点棒のやりとりが始まる。
ただし、役満を和了したチームと和了できなかったチームとでは、保有する点棒の数が異なる。
役満クリアを達成したチームは一人20000点、達成できなかったチームは一人10000点だ。
尚、今回も準決勝と同じく点棒の加算は無い。チームの一人が箱割れした時点で終了となる。」

ホクト:「なるほど・・・。役満を和了したチームの方が、ステージBで有利な条件となるわけだね。」

天:「積み場、リーチ棒の供託に関してはどうなる?」

原田:「これは、準決勝と同じだ。積み場は何度連荘しても発生しない。尚、リーチ棒も便宜上出すのみで、
失点の対象とはならない。以上が、決勝戦のルールだ・・・。何か、他に質問はあるか?」

天:「いや、俺からは特に無い。君達はどうだ?」

ホクト:「ところで、役満について質問があるんですが、いいですか?」

原田:「何だ?」

ホクト:「役満っていっても、色々ありますよね?代表的ものとしては、大三元、四暗刻、国士無双、大四喜、小四喜、
字一色、緑一色、大車輪などですけど、ローカルなルールでは、これ以外にも色々な役満があると聞きます。
これらに関してはどうなんですか?」

原田:「ふむ・・・。そうだな。それも一応認めることとしよう。それから、四カンツ、十三不搭も認めることとする。
無論、数え役満もだ。一応、開始までに認める役満の種類に関してはこちらで整理して、紙に書いて配布する。
尚、ローカルルールの役満に関しては、その内容、条件を各自で整理しておいてくれ。」

ホクト:「分かりました。」

秋香奈:「ところで、ステージBについて質問なんだけど、場が進んで誰かが大きな手をツモ和了した場合、
両方のチームで箱割れが発生する事も考えられるわよね?この場合、どうなるの?」

原田:「なるほど・・・。それははっきりさせておくべき問題だな。
両チームで箱割れ発生の場合は、その時点で点棒を多く所有しているチームの勝利とする。
この場合、和了した際のマイナス分も合わせた合計で勝ちが決まる。
順当に考えれば、ステージAをクリアしたチームにとって有利な条件となるはずだ。
これでいいか?」

秋香奈:「分かったわ。」

原田:「まだ他に、何かあるか?」

ホクト:「これ以上は、特にありません。」

原田:「分かった。これでミーティングは終了とする。では各自、解散してくれ。」


―ルールミーティング終了―

ホクト:「まさか、僕たちがここまで来れるなんて思わなかったよ。
よく考えたら、田中先生に人数が足りないからって無理矢理参加させられたイベントだったのにね。」

秋香奈:「まあいいじゃない。麻雀だけじゃなくって、観光とか温泉も十分楽しめたし。
ここまで来たら、一気に決勝もいただくわよ。」

ホクト:「そうだね。折角ここまで来れたんだから、僕も気を緩めたりしない。もてる力を存分に発揮して、全力で勝ちにいくよ!」

秋香奈:「その意気よ!ホクト!」

武:「お、ホクトの奴、何やら気合入ってるな。」

つぐみ:「そうね、何だかこの数日で、とても成長したように思えるわ。」

武:「何しろ、一流の勝負師たちと真正面からやりあいながら、決勝まで行ったわけだしな。
あいつ将来、大物になるかもよ。」

つぐみ:「どんな大物よ・・・(苦笑)。ところで武、あなた、準決勝で負けたわけだけど、
そのときにホクトに言ってたこと覚えてる?」

武:「え?俺、何かホクトに言ったっけ?」

つぐみ:「自分で言っといて、自分で忘れてどうするのよ・・・。
あなた、言ったでしょ?武が負けたら、あの子達にデートのこづかいあげるって・・・。
本当に大丈夫なの?」

武:「え?あ、ああ、そういえば約束したんだったっけな・・・。
まあ大丈夫だって。一週間の昼飯の、弁当の回数を増やせば何とかなるだろ。
俺も男だ。一度行ったことは絶対守るさ。」

つぐみ:「もう・・・。意地張っちゃって。そういえば最近、食べる量が増えてるわね。
仕事がきつい分、食費なんかも馬鹿にならないんでしょ?
幾らあの子達にあげるか知らないけれど、半額は出してあげる。
エネルギー不足で、大黒柱に倒れられても困るからね。」

武:「・・・ありがとな。」

つぐみ:「それから武、あなた、さっきわざと負けたんじゃないの?」

武:「え?何の話だ?」

つぐみ:「ラストであなたが捨てた牌、あれはあなたの和了牌だったはずよ。
なのに、それをあえて捨てた・・・。しかも、あれをホクトの和了牌と読んだ上で切ったのね。
とぼけたって無駄よ。私には分かるもの。」

武:「やれやれ・・・。全部お見通しか。」

つぐみ:「それにしても、何でわざと負けたのよ?別にあなたを責めてるわけじゃないけどね。」

武:「大した意味なんかありゃしないぜ。ホクトのやつ、ここまで実力で来たわけだからな。
あいつが決勝までいって、頑張る所を見たいと思ったからそうしただけさ。
ま、父親が子どもにプロレスごっこで負けてやるようなもんだ。」

つぐみ:「・・・何なのよ、それ・・・。(苦笑)」

武:「それにさ・・・。」

つぐみ:「?」

武:「俺はホクトの、成長する所を見守ってやれなかった・・・。
17年間、海の中で寝ていて父親らしいことなんか何一つしれやれなかったしな。
さっきホクトと麻雀していて、親父が小さい頃トランプとかでさりげなく俺に花をもたせてくれたことを思い出したんだ。
それで、何となく同じようなことをしてみたくなった・・・。それだけだよ。」

つぐみ:「武・・・。」

武:「ま、いずれにせよ、明日で終了だからな。残った時間、十分皆で楽しもうぜ。」

つぐみ:「そうね。それじゃ私、温泉に入ってくるわ。」

ココ:「つぐみ〜ん!ちょっと待って!」

つぐみ:「ココ?どうしたの?」

ココ:「なっきゅ先生が、お風呂に入ったら、ホクたんとなっきゅ以外の人は、3階の部屋に集まるようにって言ってたよ。」

つぐみ:「優が?一体何なの?もう、今日の対局は終了のはずだし・・・。」

武:「・・・つまり、負けたチーム全員集まれってことか。何が始まるんだ?」

−そして数十分後、3回の大部屋に集合したE17のメンバー達(武・つぐみ・ココ・桑古木・空・春香奈)・・・−

春香奈:「これで全員集まったわね。ところで負けたあなたたちには、一つゲームをしてもらいたいのよ。
それに今回は、私も加わるわ。」

武:「ゲーム?一体何だ?敗者復活戦でもやれってのか?」

つぐみ:「・・・ところで優、もうお風呂も入ったし、私は早く寝たいんだけど・・・。」

春香奈:「まあまあ、そう言わないで。麻雀は徹夜でするのが醍醐味よ?それに、この勝負に勝った人には、
何と賞金1000万円が待ってるわよ。」

武:「なんじゃそりゃ!?それって今回の優勝賞金の2倍だろ!?一体どんな内容だ?」

ココ:「・・・・(コックリコックリ)」

春香奈:「ルールは簡単よ。これからある人物をゲストに呼ぶから、彼に半荘一回の勝負で勝利し、尚且つトップをとればいいの。
もうすぐ、空が読んでくるわ。」

ココ:「くぅ〜・・・。」

桑古木:「おい、ココはもう寝かせた方がいいんじゃないか?子どもは寝る時間だぞ。うわっ!?」

ココ:「きゃっ!?」

−突如、外で雷鳴が鳴り響き、猛烈な雨が窓に叩きつけられる・・・−

ココ:「ふええ・・・。少ちゃん、ビックリしたよ〜。」

桑古木:「あ〜、悪いなココ、こんな時間まで、優のワガママで付き合せて・・・。
しかしそれにしても、いきなり何故雷鳴が・・・?」

つぐみ:「・・・来るわ!」

武:「どうした、つぐみ?」

つぐみ:「誰だか知らないけれど、凄まじい気配がこの部屋に近づいてくるのを感じる・・・。」

武:「?」

空:「田中先生、お連れしました。」

春香奈:「いいわ。入って。」

−キィィィィ・・・。ゆっくりとドアが開き、空と同時に、一人少年らしき人物が入ってくる・・・−

桑古木:「何だ・・・子ども?うっ!?どこかでみた顔だな・・・。」

つぐみ:「白髪・・・。まさか・・・?」

武:「(こいつの気配、どこかで・・・。)」

ココ:「こんにっちゃ〜♪八神ココで〜す♪あなたのお名前、なんてーの?」

武:「わわっ!?」

桑古木:「・・・さすがココ。誰が相手でも、物怖じしないな・・・。」

少年:「赤木しげる・・・」

つぐみ:「(やはり・・・。)」

武:「お、お前、赤木なのか?」

ココ:「ええっ?つまり、小さい頃のおじちゃんなの?」

桑古木:「お、お前、年齢は?」

アカギ:「13・・・。」

武:「ちょっと待った!優!この会場に、既に50代の赤木が来てるってのに、何で13歳の頃の赤木がここにいるんだよ!?」

春香奈:「ええ、一昨年から昨年にかけて、赤木の若かりし頃の伝説がアニメ化してヒットしたからね。折角だから、ゲストで読んだのよ。」

武:「アニメのヒットと、何の関係があるんだよ・・・。」

春香奈:「というわけよ。私が1000万円出すのも分かるでしょ?そのくらい難関だからね、この勝負は。
皆、心してかかった方がいいわよ。何しろ、年取って丸くなった“赤木しげる”と違って、今の“アカギ”は、狂気に満ちているから。
あ、それともう一つ。もしこの勝負で、4位になった人には罰ゲームが待っているから、気をつけてね。
それじゃ、始めるわよ。」

武:「罰ゲーム?一体何だ・・・?」

作者:「・・・原作とアニメを見てる奴には、容易に想像がつくぜ・・・!?」

ココ:「ところでおじちゃん、おじちゃんって、小さい頃から髪が真っ白なんだね。どうして?」

アカギ:「・・・・・・・」

ココ:「黙ってないで、教えてよ〜。」

作者:「・・・自分が知りたいよ。」

−半荘一回目。面子は桑古木、ココ、春香奈、アカギ・・・−

春香奈:「ロン!満貫よ。」

桑古木:「ああっ!またかよっ!そういえば優、さっきからお前、俺ばっかり狙い打ちにしてるだろ!
この勝負は、アカギとの勝負じゃなかったのかよ!?」

春香奈:「馬鹿ねえ。最終的にトップをとればいいんだから、誰の点棒を取っても同じよ。」

桑古木:「それにしても、露骨過ぎだって言ってんだよ!俺の流れが悪いのを知っててやってるな!?」

春香奈:「何言ってるのよ。“弱きを挫き、強気を助ける”これが麻雀の当たり前のセオリーよ。
落ち目の奴を、徹底的に叩き、勝ちへと向かう。それから、強い奴には極力ぶつからない。
あなたも負けたくなければ、非情になりきるのね♪」

桑古木:「鬼だ・・・。」

ココ:「ええと、どうしよう・・・。じゃあ、これかな?」

アカギ:「ロン、メンタンピン三色、ドラ2、ハネ満・・・。」

ココ:「ふえ〜。またやっちゃった・・・。」

−そしてオーラス・・・−

ココ:「どうしよう・・・。このままだと、ココがビリになっちゃう。」

−そして数巡後−

ココ:「え?少ちゃん、それ当たりだよ。」

桑古木:「え?あっちゃ〜、やっちまった・・・。つまり、俺がこれで4位、アカギが結局1位だな。」

春香奈:「(やるわね、桑古木・・・。自身のトップと再浮上への道をあえて閉ざし、好きな子を罰ゲームから
救うために身体を張ったというわけね。)」

ココ:「少ちゃん、ありがと・・・。ココがビリにならないように、助けてくれたんだね。」

桑古木:「え?い、いや、そんなんじゃないって!俺がヘタクソだったから、ビリになっただけだよ。」

春香奈:「確かに下手な振込みばっかりしてたのは、事実よね。」

桑古木:「うるさいっ!自分も結局トップ取れなかったくせに、威張るなっ!」

−そして、次の半荘は空、つぐみ、武、アカギの対戦となる・・・−

空:「(私がアカギさんの対面ですか。では、“天使の微笑”を・・・きゃっ!?)」

アカギ:「・・・・・・・・」

空:「(だ、駄目です・・・。雰囲気が凄まじすぎて、全く効果がありません・・・。
どうしたら、13歳でこんな凄味が出せるのですか?理解不能です・・・。)」

アカギ:「ロン、タンピンドラ2、満貫。」

空:「ああっ!」

−だが、この後、武、つぐみが強運と能力で攻勢をかけ、南2局、アカギを4位に追いつめた・・・。−

つぐみ:「カン!」

つぐみ:「(よし、カンドラが4つ、しかも嶺上牌がカンチャンに収まった。これでテンパイね。
しかもこれは3枚目の北、これを捨てて・・・)」

アカギ:「ククク・・・。ロン、3倍満・・・!」

つぐみ:「(なっ!?)」

−そしてオーラス・・・−

つぐみ:「(こうなったら、武をトップに押し上げるしかない。武はどうやら、大物をテンパイしたようね。
よし、これを捨てれば・・・。)」

武:「ロン!」

アカギ:「フフ・・・残念、頭ハネだっ・・・!」

武:「げっ・・・!アカギの18番かよ!?しかもアカギはラス親・・・。やられたっ!」

−結局、ラス親でアカギが武を直撃し、逆転・・・。武が4位となる。−

春香奈:「やれやれ、結局アカギには敵わなかったか。残念ね〜。このメンバーなら何とかできるかと思ったのに。」

桑古木:「ところで優、肝心の罰ゲームって、一体何なんだ?」

−その後、一同は近くの埠頭へ・・・−

春香奈:「さあ、4位の武と桑古木は、アカギとチキンランで勝負よ!最後のチャンス、これで勝っても1000万円!」

桑古木:「人の命を、罰ゲームで賭けさせるなーーーーーー!!!!!!!!」

春香奈:「キュレイのあんたが、何言ってるのよ。それに、そのベンツは襲撃を想定して、
防弾ガラスとかで頑丈だから少しは安心よ。」

つぐみ:「武・・・。」

武:「仕方ねーよ。罰ゲームは罰ゲームだからな。大丈夫だ。俺は、死なない。」

つぐみ:「・・・・・・・」

桑古木:「イチャついてないで、とっとと車に乗れよ・・・。(涙)」

春香奈:「それじゃ行くわよ。シートベルトはしっかり締めてね。」

桑古木:「(優の奴、覚えてろよ・・・!)」

武:「(あいつらのためにも、ボーナス稼いどかなくちゃな。)」

アカギ:「(ククク・・・狂気の沙汰ほど、面白い・・・!)」

ココ:「これを読んでる人は、真似しちゃ駄目だよ〜♪」

作者:「そんな奴いないって・・・。(汗)」

空:「あ、あの、田中先生・・・。」

春香奈:「どうしたの?空?」

空:「倉成さんたちの乗っている車って、私たちの車じゃありませんよね?さっき襲撃とかっておっしゃってましたけど、まさか・・・。」

春香奈:「ああ、心配ないわ。ちょっと借りただけよ。」

空:「まさか・・・。(汗)」

−一方その頃・・・−

原田:「おい天、俺の車のキーはどこに行った?この辺にあったはずだが・・・。」

天:「そんなもんいちいち知るかよ。大体お前、自分で運転するようなタマか?」

原田:「俺の勝手だろうが・・・。」

−というわけで、決勝戦前夜、大会本部の知らぬところでは、熱い戦いが繰り広げられていた・・・。
 そして翌日、いよいよ決勝戦が開始される。−

武:「いよいよだな。ま、気負わずにやれよ。楽しんでくればいいさ。」

ホクト:「ありがとう、お父さん。でも、やる以上、全力は尽すよ。優と一緒なんだからね。」

つぐみ:「ふふっ、彼女の前だから、余計に気合が入るのかしら?」

桑古木:「頑張れよ。お前らは俺達の最後の砦なんだからな。」

ココ:「ホクたん、ココたちの分まで頑張ってね!」

沙羅:「お兄ちゃん、勝利を信じてるからね!」

空:「幸運を、お祈りしています。」

秋香奈:「ホクト、そろそろ行くよ。」

ホクト:「うん!それじゃ行こう!」

秋香奈:「・・・ところでさ、ホクト・・・。」

ホクト:「どうしたの?優?」

秋香奈:「何で倉成と桑古木、頭に包帯巻いてんのよ?
それに、昨日部屋の外から車が猛スピードで走り抜ける音がしたんだけど、何か関係があるのかしら?」

ホクト:「さあ・・・。僕に聞かれても・・・。」

−そして卓に付く4人・・・−

天:「まずは、場所決めだ。」

−サイコロを振る天・・・。結果、東家ホクト、南家秋香奈、西家天、北家ひろゆきとなる。−

天:「(これは・・・。白が暗刻で發が対子、中も一枚・・・。大三元の可能性が十分だ・・・。)」

秋香奈:「(萬子が合計10枚・・・。上手く仕上げれば清一色に他の役をからめ、リーチをかけて数え役満・・・。
もしかしたら九蓮の可能性も・・・。)」

ホクト:「・・・・・・・。(BW発動中)」

−対局開始・・・。だが、ホクトは優の手牌に違和感を感じている・・・−

ホクト:「(違う・・・。あの手は優の型に沿っていない。優の特殊能力は、対子を集めることだ。
もし天さんのあの配牌が、優のものだったら噛みあっているんだけれど・・・。
あの萬子の手牌に、優の特殊能力がからんでいったら、必ず滞る。そんな気がする・・・。)」

−数巡後、天、中をツモ・・・。−

ホクト:「(まずいな・・・。大三元が完成に近づきつつある・・・。しかも、まだ捨て牌に三元牌が無い。
これは迂闊に捨てられないぞ・・・。)」

−ホクト、自分の手牌を見る。−

ホクト:「(やっぱり・・・。対子場だ。この局は、対子が有利・・・。これでもし優の手牌がまずまずのものだったら、
いい形にもっていけたかもしれない・・・。しかし、今の状況では・・・。)」

−開始直後、優の手牌には2枚連続で九萬がツモられた。このままいけば、九蓮さえ夢ではないと思われる好配牌とツモであったが、
優の能力が次第に発揮されていくにつれ、優の手牌に暗雲が立ち込めていく・・・−

秋香奈:「(何よ・・・。九蓮に行きたかったっていうのに。結局八萬が暗刻になっちゃった。
九萬、八萬が暗刻だから、これに七萬がからめばよかったのに、私の手牌には一枚しかない・・・。)」

−ホクトの予感は当たった。九萬は端であるため、これに2〜8の萬子がうまくからめば、平和、一盃口、一通を絡める
ことが可能であったはずだが、八萬が暗刻となったため、これらの役をからめることが次第に難しくなっていった・・・。
しかも、七萬以降の萬子が対子とならず、中途半端な順子系の形となっているため、役満に届かせるには手が安めに
進んでしまっている・・・。このままでは、リーチ清一色のハネ満止まり・・・。役満にはまだ遠い・・・。
そしてその直後のホクトのツモ・・・−

ホクト:「(うっ!一萬か・・・。しかもひろゆきさんの捨て牌にも1枚・・・優が九蓮を作るのは難しいな。)」

−次巡、ひろゆき一萬切り・・・−

ホクト:「(これで、差込で九蓮を作ることは不可能だ・・・。別の手に行くしかないな。)」

−ホクト、一萬切り−

秋香奈:「(あっ、一萬が?なるほど、九蓮から別の道へ向かえって事ね・・・。
しかもこの手を鳴いたら、役満への道は閉ざされる・・・。こうなったら、不利を覚悟で、対子系の清一色にしていかないと。)」

−秋香奈、七萬切り、対子を生かして四暗刻へ向かう・・・−

秋香奈:「(よし・・・。三萬と七萬が来た。これで四暗刻イーシャンテン。あとは、六萬か一萬を捨てて・・・。)」

−秋香奈、次巡中をツモ・・・−

秋香奈:「(あっちゃ〜!よりによって何てとこツモるのよ・・・。これを捨てれば、下手すれば大三元放銃、
良くても大三元をテンパイさせちゃうじゃない。ここは握りつぶすか、それとも・・・。)」

−秋香奈、ホクトに目を向ける・・・−

ホクト:「(え?捨てろってこと?この超危険牌を?多分ホクトは、BWの力で振込みは無いと確信してると思うけど・・・。
でも、あの真剣な眼差し、“安心だから捨てろ”って意味じゃない。
“勝つために突き進め”って意味なのね。分かったわ。)」

−秋香奈、中切り−

天:「ポン!」

桑古木:「あの表情、危険を承知で中を捨てたな・・・。良くてイーシャンテン、またはテンパイだな。」

春香奈:「さて、いよいよ役満を賭けての意地の張り合いね。優の四暗刻か、天の大三元か・・・。」

沙羅:「だけど、なっきゅ先輩がかなり不利だね。天さんの大三元なら、ツモでもロンでも確実に役満だけど、
あの手はツモでないと四暗刻に届きそうにないし・・・。」

−ひろゆき、七萬切り−

秋香奈:「(ああっ!七萬?まずい・・・。折角さっき、七萬が対子になったのに。
これじゃ、残り1枚を自力でツモらないといけない・・・。)」

−次巡、ひろゆきツモ七萬切り・・・−

秋香奈:「(何てこと・・・。これで、七萬をツモでの四暗刻は和了できない。
あとは六萬を対子にして、最後にツモ和了しか・・・。でも、そんな都合よくいくかどうか・・・。)」

ホクト:「(これで、僕たちの四暗刻はほとんど死に手だ・・・。運よくもう一枚、優が六萬をツモっても、和了できるかどうか・・・。
生憎六萬は初牌だ・・・。見る限り、ひろゆきさんや天さんの捨て牌、手牌にも無い・・・。
でも、僕は感じる・・・。優のあの手はまだ脈打っている・・・。役満への道が残されている・・・。そんな気がする・・・。)」

−ホクト、自分の手牌に目をやる・・・−

ホクト:「(僕の手の中には、優の援護になりそうな萬子が多く残ってる・・・。四暗刻は門前でないと和了できないけど・・・。
この手牌が、必ず僕たちを役満に導くはずだ・・・。)」

−ホクト、熟考して手が止まる・・・−

ココ:「ホクたんどうしたの?さっきから動かないけど、大丈夫?」

赤木:「フフ・・・。いい目つきになってきたな、坊やの奴・・・。」

ココ:「わっ!?おじちゃん?いつの間に来たの?」

赤木:「・・・あの坊やが気になってな・・・。今来たところさ。まあ見てな。これから面白いことが起こるぜ・・・。」

ココ:「ほえ?」

ホクト:「(優のあの手牌、四暗刻へ行くのはほとんど不可能・・・!今あの手は車輪が凍りついて、動かない列車と同じだ・・・。
だけど、僕の手牌が、凍りついたあの手を再び動かす・・・!必ず・・・!
見えた!役満という終着駅への、細くても確実にある道が・・・!)」

−ホクト、九萬切り。そして、優に目を向ける−

秋香奈:「(え?な、何?まさか、こいつを鳴けっていうの?ホクト、何考えてるのよ!?この手鳴いたら、役満にはならないのよ?)」

ホクト:「(優!お願い!僕を信じて!僕を信じているなら、それに答えて!)」

−ホクトの真剣な眼差しに、圧倒される優・・・。しかし、その眼差しにうたれた優、ついに決断・・・!−

秋香奈:「カン!」

ひろゆき:「(なっ!?田中さんはツモで四暗刻狙いのはずじゃ・・・?一体何を・・・)」

原田:「(あの娘の手牌の中には、八萬が暗刻のはずだ・・・。九萬をカンしたところで、カンドラが乗る可能性はほとんど皆無・・・。
それなのに、あえてカンを・・・。あの小僧、何か考えついたな・・・。)」

−優、リンシャン牌へ手を伸ばす。リンシャン牌は、六萬・・・!そしてホクト、八萬切り−

秋香奈:「カン!」

−さらに優、リンシャンツモ、今度は二萬ツモ・・・!

−ホクト、三萬切り−

秋香奈:「カン!」

−優、三度目のリンシャンツモ、リンシャン牌は、六萬・・・
優、テンパイで六萬と二萬のシャボ待ち・・・−

桑古木:「優もホクトも、一体何を考えてるんだ?あの手は清一色三カンツ対々和の倍満テンパイ・・・。
しかも、カンドラだって一枚も乗っていない。あんな手で、一体何を?」

春香奈:「いいえ、あれで完成よ。あの手、一点を引ければ、役満になる。
もっとも、これはローカルルールのものだから、馴染みが無いかもしれないけどね。」

桑古木:「ええっ!?あの手が役満だってのか?」

空:「桑古木さん、田中さんの手牌の萬子の数字の数の合計を出してみれば分かりますよ。」

沙羅:「あっ!分かった!確か、ローカルな役満のことをお兄ちゃんに教えてたよね?」

桑古木:「待てよ・・・。九萬が4枚、八萬が四枚、三萬が4枚で、36+32+12で、合計80。
あと、六萬と二萬が対子で、12+4で16。これに、さっきの80を足すと・・・合計96か。
それに、優が言ってたあと一点ってのは・・・。そうか!百万石か!」

春香奈:「ご名答。役満、百万石よ。」

※百万石
ローカルルールの役満の一つ。
萬子の漢数字の合計が百以上の状態で和了すると、役満となる。

つぐみ:「ここからが難関ね・・・。二萬がひろゆきと天の捨て牌に1枚ずつ・・・。
七萬も2枚捨てられているから、リンシャン牌の六萬の対子に切り替えたけれど、
果たして残り2枚の六萬を引けるかどうか・・・。」

天:「ポン!」

ホクト:「(天さんも二副露・・・。大三元をテンパイしたな・・・。残るツモは一牌ずつ・・・。
僕が優が、六萬を引ければ・・・。うっ!?駄目だ、萬子じゃない・・・。)」

秋香奈:「(ホクト、残念だけど引けなかったのね。だったら、私が・・・。お願い!来て!
あっ!?萬子?もしかして・・・?」)

ホクト:「(優!?引いたの?)」

秋香奈:「・・・・・。」

−だが、力なく優の手が河に落ちる・・・。引いたのは、五萬・・・!−
そして、この後ひろゆきが天にロン牌を差し込みし、ステージA終了・・・−

ホクト:「すいません・・・。ステージBに入る前に、少し休憩させてもらってもいいですか?」

天:「ああ・・・。俺はかまわないが・・・。ひろゆきはどうだ?」

ひろゆき:「・・・僕も別にいいですよ。」

秋香奈:「私、何か飲んでくるわ。ホクト、一緒に来てくれない?」

ホクト:「うん、いいよ。一緒に行こう。」

−ホクトと優、自動販売機へ・・・−

ホクト:「う〜ん、疲れたっ!たった1局終わっただけなのに、何時間もやったような気がするよ。」

秋香奈:「結局、ステージAは負けちゃったわね。ごめん、折角私にチャンスをくれたのに・・・。」

ホクト:「気にすることないよ。優も僕も、最後まで頑張ったんだから。」

秋香奈:「でも、私の能力を最大限に生かしても、結局あの手を成就できなかった・・・。ちょっと情けないな・・・。
それに、ステージBは、私たちにとってかなり不利な条件だし・・・。」

ホクト:「優、なんだか優らしくないよ。」

秋香奈:「え?」

ホクト:「優と僕は、最後まで可能性を捨てないで、突き進んだんだ。天さんたちに先にゴールされちゃったけどね。
確かに、僕たちの勝てる可能性はほとんど無いかもしれない。
だけど、次がいくら僕たちにとって不利だからって、それで勝負が決まったわけじゃないんだ。
どんな逆境でも、可能性は絶対に0じゃない。
最後まで追うんだ、可能性を。僕と、優の2人で!」

秋香奈:「ホクト・・・。」

桑古木:「いよいよ、ステージBか・・・。天とひろゆきは20000点ずつもってるのに対し、
ホクトと優は10000点ずつか・・・。素人同士の勝負ならいざ知らず、ベテランと素人の対決だからな。
二人の不利は、火を見るより明らかだぜ。」

武:「だけどさ、失点の挽回がきかないのは両方とも同じだろ?序盤で優かホクトが、満貫を直撃してやれば少しは楽な条件になるだろ。」

つぐみ:「・・・あのね武、ベテランのあの2人が、素人相手にそうそう振り込むわけが無いでしょ。
それに、元々10000点差があるってことで、あの2人には更に過酷な条件が強いられてるのよ?」

武:「更に過酷な条件?何だそりゃ?」

つぐみ:「・・・バカ。麻雀の経験者なら、少しは考えなさいよ。それは、ツモ和了が制限されるってことよ。
あの2人が、天やひろゆきから満貫、ハネ満クラスの直撃を取ることはかなり難しい。
つまり、あの2人が天たちの点棒を確実に減らすには、ツモ和了しか無いわけだけど・・・。
もし優かホクトが、序盤流れをつかんで、いい手を何度かツモ和了できたとしても、
チームによる対決でのツモ和了は、味方の点棒も減らしてしまう。
我慢比べをして、先に箱割れになってしまうのは、ホクトたちの方よ。
おまけに、失点の挽回もきかないし、差込みをして持ち点を増やすこともできないんだから。」

武:「あ〜、なるほどな。だけどさつぐみ、お前、ホクトがもう負けるって決まってるようなこと言ってるぞ。」

つぐみ:「え?あ・・・。」

武:「確かにホクトたちが、不利といえば不利だけどさ。そんなこと、それ以上でもそれ以下でもないだろ。
条件が不利なことと、勝負の結果はあくまで別物だぜ。
そんなことより、信じてやれよ。あいつらのことを。
何と言おうと、あの2人は自分たちの力でここまで勝ちあがってきたんだ。
誰が相手だって、可能性は残されてるさ。」

つぐみ:「(小声で)準決勝は最終的に、あなたがホクトを押し上げてやったくせに・・・。)」

武:「何か言ったか?つぐみ?」

つぐみ:「いいえ、別に何も?(微笑)」

春香奈:「いずれにせよ、勝負はこれからよ。次は、さっき以上に緊張感のある闘牌になるはず。
最後まで、見守りましょう。」

沙羅:「(お兄ちゃん、なっきゅ先輩、頑張って・・・。)」












あとがき

いよいよ、決勝戦開始です。恐らく次で、最後になるかと思います。
若い頃のアカギ登場のネタは、「アカギ」のアニメ化を祝う形で加えさせていただきました。
あんまり喋ってないですが。(笑)
実は、武&つぐみVSホクト&秋香奈の準決勝に関しては、何度も手直しをしたのですが
結局納得いく展開を書くことが出来ず、残念ながら割愛させていただくこととなりました。
かなり心残りですが、時間の都合上ということでお許しください。







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